M&Aの手数料が高い理由は?相場や手数料の種類、安く抑える方法も解説

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&A仲介サポートを専門家に依頼すると、高い金額の手数料が発生します。専門家によって料金体系は異なりますが、数百万円から数千万円程度が1つの目安です。本記事では、M&Aの手数料が高い理由や相場、手数料の種類を解説します。

目次

  1. M&A手数料が高い理由とは
  2. M&A手数料の主な種類
  3. M&A手数料を安く抑える方法
  4. M&A仲介会社の手数料以外での選択ポイント
  5. 中小企業のM&A手数料に悩んだときの相談先
  6. M&Aの手数料が高い理由まとめ
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1. M&A手数料が高い理由とは

一般的に、M&A仲介サポートの手数料は高いことで知られています。M&Aの進捗に応じてさまざまな手数料が発生するため、場合によっては売却益の大半を高い手数料の支払いに充てる事態に発展しかねません。

M&A手数料が高い主な理由は、人件費です。M&Aは成約までに幅広い分野の知識が必要になるので、対応できる人材を稼働させるためには高い人件費が求められます。

企業の適正な価値を算出する企業価値評価や、企業の潜在的リスクを調査するデューデリジェンスなど、財務・税務・法務・会計などの知識が必要不可欠です。

当事会社の規模が大きいほど評価・調査範囲が広くなるため、手数料も高い傾向にあります。逆に中堅・中小規模であれば、範囲が限定的になるため、手数料は安くなりやすいです。

【関連】M&Aの手数料はいくら?相場や算出方法、仲介会社の報酬体系を徹底紹介!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

M&A手数料の種類別相場

M&A手数料の相場を一概に示せません。前提として、M&A業務は不動産業のように法的・公的資格を必要としないうえに、報酬額に関する規定や違反した場合の罰則などもありません。

仲介会社が独自の報酬体系を設定してアドバイザリー業務を行っており、各社のサポート体制によって携わる人材や業務時間が大きく変わるため相場も安定しないのが現状です。

下表は、複数の仲介会社の手数料を参考にまとめた相場です。依頼先の仲介会社や取引規模次第では相場からかけ離れることもあるので注意が必要です。

手数料 相場 タイミング
相談料 0〜1万円 仲介会社に相談したとき
着手金 0〜200万円 仲介会社に依頼したとき
最低手数料 200万〜2,000万円 M&Aが成約したとき
(成功報酬に含まれる)
リテイナーフィー 0〜200万円/月 仲介会社に依頼してから毎月発生
中間報酬 0〜200万円
(成功報酬の10〜30%)
基本合意を締結したとき
(成功報酬に含まれる場合が多い)
デューデリジェンス費用 0〜200万円 基本合意の締結後まもなく
成功報酬 レーマン方式 M&Aが成約したとき

上記のようにM&A手数料の相場は不安定であり、特に最低手数料は大手の仲介会社や証券会社の場合は3,000万円を超えることもあります。

完全成功報酬制(成功報酬以外の手数料が無料)の仲介会社もあります。下限と上限の幅は非常に広く、相場からかけ離れた料金体系の所も少なくありません。

相場はあくまでも目安として捉えておき、具体的なM&A費用を知りたいときは複数の仲介会社に問い合わせて比較検討することをおすすめします。

【関連】M&A手数料の相場はいくら?計算方法や仲介会社に支払う報酬について解説!

2. M&A手数料の主な種類

M&Aを円滑に進めるためにはM&Aの専門家のサポートが必要不可欠ですが、複数の専門家を比較する際は手数料の種類を把握しておくことが大切です。

ここでは、M&Aの専門家であるM&A仲介会社が採用している手数料の種類を取り上げます。各手数料の扱いや発生するタイミングを順番に解説します。

  • 相談料
  • 着手金
  • 最低手数料
  • リテイナーフィー
  • 中間報酬
  • デューデリジェンス費用
  • 成功報酬

相談料

相談料はM&A仲介会社へ相談した際に発生する手数料です。相談時点では正式なサポートの依頼は確定していませんが、専門的知見に基づいたアドバイスなどのサービスを受けるため、人件費として相談料が発生します。

基本的に少額設定の仲介会社が多いですが、相談前に確認しておくと間違いがありません。相談の結果、正式に依頼する場合は相談料を無料にする形式を取っている仲介会社もあります。

近年は、M&A業界の競争激化により相談料を完全無料とする仲介会社が増えています。無料の機関でも検討材料を手に入れられるので、積極的に相談することがおすすめです。

着手金

着手金はM&A仲介会社へ正式に依頼した際に発生する手数料です。依頼以降はM&Aアドバイザーやコンサルタントが本格的なM&A準備に取り掛かるため、人件費として支払います。

具体的な準備内容としては、業界調査・資料作成・M&A相手の選定などが挙げられます。いずれもM&Aの進行に必要不可欠なので、初期段階で済ませておくのが一般的です。

費用は数百万円以上かかることもありますが、M&A成約に至らなかった場合でも返金されないので注意が必要です。近年は、他社との差別化の一環で着手金を無料にする仲介会社が増えています。手元資金に不安がある場合、まずは着手金無料の仲介会社に相談するのも有効です。

最低手数料

最低手数料はM&Aの規模に関係なく必ず支払う手数料です。簡単に仕組みを説明すると、最低手数料100万円であれば、M&Aが短期間で成約したとしても100万円は支払います。

M&Aの成功報酬はレーマン方式(取引金額に応じて報酬率が逓減)による算出が一般的のため、極端に取引規模が小さいときは仲介会社の採算が取れなくなることもあります。

仲介会社の最低限の利益を確保するためには、最低手数料が必要です。特に中堅・中小企業の仲介をメインに取り扱っている仲介会社では、最低手数料を設けている機関が多いです。

リテイナーフィー

リテイナーフィーは毎月発生する手数料です。仲介会社によっては月間報酬の名称を扱っていることもあります。主にM&Aアドバイザーやコンサルタントの人件費に充てられます。M&A成約までに継続的に業務を行うため、活動費が必要です。

継続的に発生する特性上、M&Aが長引くほど高い手数料を支払います。そのほかの手数料と同様、返金されることもありません。仲介会社の活動資金が潤沢になるほどM&Aの選択肢も増えやすいのは事実ですが、必ずしも成果に結びつくとは限りません。

リスク回避を重視するならば、成約を急ぐなどの特別な理由がない限り、リテイナーフィー不採用の仲介会社に相談することをおすすめします。

中間報酬

中間報酬は基本合意の締結時に発生する手数料です。基本合意は成約に向けて現時点での基本的な条件に関して売り手・買い手の双方で合意を示すための契約です。

基本合意はM&Aの成約を保証するものではありませんが、締結以降はデューデリジェンスなどの大掛かりな調査に取り掛かるため、書類として双方の意向を明らかにしておきます。今後の進行次第ではM&Aが破談になることもありますが、中間報酬が返金されることはありません。とはいえ、交渉は一段落しているので着手金と比較するとリスクは低いといえます。

中間報酬は成功報酬に含んでいる仲介会社が多いです。成約しなかった場合の仲介会社側の保険として、成功報酬の一部の前払いを受けている形式が多く見られます。この場合、M&A成約後に成功報酬から中間報酬を差し引いた手数料を仲介会社に支払います。

デューデリジェンス費用

デューデリジェンス費用は基本合意の締結後に発生する手数料です。最終契約の前に売り手企業の潜在的リスクを把握する必要があるため、買い手側は専門家を派遣してデューデリジェンスを実施します。

デューデリジェンスは、財務・税務・法務などあらゆる観点から調査を行います。規模が大きいほど調査時間や携わる人材の数が増えるため、費用も増加する仕組みです。

基本的に買い手側の主導で行われるため、売り手側は特別な出費はありません。たとえ出費が発生しても、調査の立ち合いやマネジメントインタビューなどの対応で、多少の人件費が必要になる程度です。

成功報酬

成功報酬はM&Aが成約した際に発生する手数料です。数ある手数料の中で最も高い手数料ですが、成約時点で発生するものなので費用が無駄になることはありません。

報酬額の算出には、レーマン方式と呼ばれる計算式を用います。取引価格に一定の料率をかける方法であり、仲介会社の業務量に応じた手数料を算出できると考えられています。

取引規模によっては成功報酬が低く算出されて仲介会社が赤字になることがあるため、最低手数料が設定されていることが一般的です。

【関連】M&Aの費用とは?相場、算出方法、安くするコツ、仲介会社ごとの報酬体系を解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

レーマン方式とは

レーマン方式とは、取引金額に応じて手数料率が逓減する仕組みの計算方法です。M&A仲介会社をはじめ、M&Aアドバイザリー業務に取り組む専門家の多くは、成功報酬の算出にレーマン方式を用いています。

レーマン方式の基準になる取引金額は、「移動資産ベース」と「譲渡価格ベース」の主に2とおりがあります。基準が高いほど算出される手数料も高くなるので重要なポイントです。

移動資産ベースは、株式価格+負債総額を基準とします。資産価値に負債も加えられるため、基準価格が高くなり成功報酬も高くなる仕組みです。

譲渡価格ベースは、実際の取引価格のみを基準とします。単純な株式価値のみになるので、移動資産ベースと比較すると成功報酬は安くなる傾向にあります。

レーマン方式で用いられる手数料率

レーマン方式は、基準価格に手数料率をかけることで成功報酬を算出します。手数料率が高いほど算出される成功報酬も高くなるため、仲介会社が採用する手数料率は重要なポイントです。

下表は、一般的に採用されている手数料率です。手数料率は仲介会社が自由に設定できますが、他社と比較しやすいこともあり、高く設定されることはそれほどありません。
 

取引金額 手数料率
5億円までの部分 5%
5億円超10億円以下の部分 4%
10億円超50億円以下の部分 3%
50億円超100億円以下の部分 2%
100億円超の部分 1%

上記のように、取引金額が低い部分には高い料率、取引金額が高い部分には低い料率がかけられる仕組みです。中にはレーマン方式で成功報酬を算出した結果、最低手数料を下回ることもありますが、その場合はレーマン方式よりも最低手数料が優先されます。

最低手数料は大手の仲介会社は2,000万~3,000万円、中小は500万~1,000万円前後で推移しています。小規模案件で高い最低手数料を支払うのは負担が大きいので、規模に合わせて依頼先を決める必要があるでしょう。アドバイザリー型の場合、片方の依頼主からのみ手数料を受け取るため、手数料率を倍に設定することがあります。

3. M&A手数料を安く抑える方法

本章では、一般的に高いと考えられているM&A手数料の金額をなるべく安く抑えるために役立つ方法を3つのステップに分けて解説します。

手数料以外の要素を加味して2~3社に絞り込む

まずは、手数料の金額以外の要素で自社にふさわしいと考えられるM&A仲介会社を複数社ピックアップします。絞り込むためには、M&A仲介会社のWebサイトや、業界に精通する人の評判、専門家からの紹介などを活用することが望ましいです。

前提として、M&A仲介会社は手数料が安ければ良いわけではなく、自社に最適な売却先が見つからなければ、どれほど手数料が安くても意味がありません。そこで、まずは自社にふさわしいM&A仲介会社を探すことが大切です。

各社に手数料の見積もりを依頼する

2~3社まで絞り込んだら、それぞれのM&A仲介会社に手数料の見積もりを依頼します。直接電話して依頼するのが最もスムーズです。電話の場合、匿名でも答えてもらえる可能性が高いです。

すべての要素を考え合わせて最終的に1社に決定する

最後に、手数料も含めたすべての要素を踏まえて、最終的に自社が依頼するM&A仲介会社を決定します。このように、手数料以外の要素も踏まえて決めることが、結果的に手数料を安く抑えることにつなげられます。

4. M&A仲介会社の手数料以外での選択ポイント

M&A手数料はM&A仲介会社を比較する際の重要なポイントですが、M&A手数料が安いだけで依頼先を決めてしまうとM&Aが失敗する可能性が高いです。

近年は、M&A需要の増加によりM&A業界に参入する事業者が増えています。相談・依頼する際は専門家としての力量を測ることも大切です。この章では、M&A仲介会社を選ぶときのM&A手数料以外のポイントを解説します。

  • サポート体制が充実
  • 特化している業種や事業規模
  • サポートタイプで選ぶ

サポート体制が充実

M&Aに必要な工程は、M&A相手の選定や交渉、契約書の作成・締結などさまざまです。各工程には専門的な知識を必要とするため、場合によっては別の専門家に依頼する費用や手間がかかることもあります。

一貫したサポート体制の仲介会社はすべての工程を補えるため、依頼者が独自に専門家を探して依頼する必要がありません。M&A仲介会社は外部の専門家とのつながりによって、サポート体制を充実させている機関も多いです。

M&A仲介は基本的に売り手と買い手をマッチングさせて成約を目指すものですが、その仲介会社が持つネットワークだけではM&A相手の選択肢が狭まりやすい問題もあります。外部の士業などの専門家とのつながりを持つ仲介会社は、広大なネットワークでM&Aマッチングの選択肢も増えるメリットがあります。

特化している業種や事業規模

M&A仲介では、該当業種の知識が必要です。仲介会社や担当者の業種に関する理解が深ければ、M&Aをスムーズに進行できます。

特に業界の動向調査は、M&Aのタイミングを計る際に重要です。業界内の再編の動きを察知できれば、買い姿勢の企業に対して効果的にアピールすることも可能です。

事業規模は、上場企業同士のM&Aやクロスボーダー(海外M&A)などの大規模M&Aを得意とする機関もあれば、中堅・中小規模のM&Aに特化している機関もあります。規模が大きくなるほど手数料も高くなるので、自社の規模に合わせた仲介会社を選ぶことが重要なポイントです。

仲介会社の得意な業種・規模は実績から確認する方法が有効です。多くのM&A仲介会社は自社のWebサイトで実績を公開しているので、自社の業種・規模に該当する実績があるか確認しましょう。

サポートタイプで選ぶ

M&Aサポートには「仲介型」と「アドバイザリー型」の2種類があります。仲介会社の立ち位置が異なるため、M&Aの成否や手数料に直結する要素の1つです。

仲介型は、売り手と買い手の仲介に入り双方の要望・条件をすり合わせて成約を目指すタイプです。友好的なM&Aを実現しやすく、双方から手数料を受け取るため、費用は安くなる特徴があります。

アドバイザリー型は、片方の依頼者の立場から交渉を行うタイプです。売り手・買い手に別々の専門家がつくため交渉が長期化しやすく、支払う手数料も高い特徴があります。

成約スピードや手数料を重視するならば仲介型、高い手数料を支払ってでも曲げたくない条件があるならばアドバイザリー型が適しています。

【関連】M&AのFA(アドバイザリー)が担う役割とは?仲介との違い、業務・費用を解説【図解】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

5. 中小企業のM&A手数料に悩んだときの相談先

M&A仲介会社を選ぶ際は、M&A手数料や得意業種・規模、サポート体制が重要なポイントになります。M&A総合研究所は、中堅・中小規模のM&A仲介の豊富な実績があり、幅広い業種を手掛けるM&A仲介会社です。

M&Aの経験豊富なアドバイザーが相談からクロージングまでの一貫サポートを行っていますので、安心して進行をお任せできます。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。中小企業のM&Aに関して無料相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

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6. M&Aの手数料が高い理由まとめ

M&A手数料は仲介会社や取引規模によって変わります。相場からある程度の目安を付けることは可能であるものの、実際にかかる費用を一概に提示できません。

仲介会社のM&A手数料を詳しく知りたい場合は直接問い合わせるのが確実です。いくつかの候補をピックアップしてから比較検討すると、自社に合った仲介会社を見つけやすくなります。

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