2024年10月28日更新
化粧品業界のM&A・譲渡・売却!事例10選・動向・価格相場を解説【2024年最新】
本記事では、化粧品会社のM&Aによる譲渡・売却について、近年のM&A動向や譲渡・売却価格相場、化粧品会社のM&Aを成功させるポイントを解説しています。化粧品会社のM&A・異業種M&A事例や、化粧品会社のM&Aに関しても併せて紹介します。
目次
1. 化粧品業界のM&A・譲渡・売却・買収
化粧品会社のM&A事例やM&A動向をご紹介する前に、まずは化粧品会社の定義やM&Aの意味を解説します。
化粧品会社とは
化粧品会社とは、化粧品の研究開発・製造・販売を行う企業をさします。化粧品会社が取り扱う化粧品には、スキンケア製品・メイクアップ化粧品・ボディケア化粧品・ヘアケア化粧品などがあります。
大手化粧品会社の場合は、研究開発・製造・販売までを一貫して行うケースが多く、中小化粧品会社は特化して事業を行うケースがほとんどです。
近年の国内化粧品市場は、インバウンド需要の高まりによって順調に伸びてきました。年齢層の高い女性向け化粧品や、高機能化粧品による購入単価の上昇、男性向け化粧品の普及による購入層の広がりなどの傾向が見られます。
化粧品業界の変遷
化粧の歴史は古く、化粧品製造業・販売業は17世紀末の元禄時代から発展しました。近代化粧品工業は 明治中期以降、文明開化の影響を受け、「資生堂」「桃屋順天館」「ライオン」など化粧品メーカーが誕生しています。
高度経済成長とともに1970年以降、化粧品メーカーは季節ごとに旬の女優やタレントを起用したテレビコマーシャルを流し、販売促進に活用しました。
1980年代〜1990年代は、自然派志向やソフト志向が顕著となり、化粧品の効果や成分を重視する化粧品時代でした。2000年代に入ると、美白・アンチエイジングなどの効果のある化粧品が多くのメーカーから発売されました。
近年は、インターネットを使った通販専業の化粧品メーカーも増え、異業種からの参入も相次いでいます。一躍注目を集めたのが、富士フイルムでしょう。
その後、味の素、サントリー、江崎グリコなど、さまざまな業種から化粧品業界への参入が相次いでおり、競争は激化しています。
化粧品業界の特徴
化粧品業界の特徴として、大きく以下の2種類に分けられます。
- リテール業態:百貨店やドラッグストア、ECサイトなど、一般消費者向けに購入できる業態
- プロフェッショナル業態:サロン専売品など、業務専用に開発された商品を扱う業態
リテール業態の中でも、メーカーから消費者に直接販売する場合は高利益となりますが、百貨店やドラッグストアなど小売店に卸す場合は、化粧品会社の利益率は低くなるでしょう。
法人向けの販売の場合、ディーラーが美容室やエステサロンなどの店舗に販売するのが通常です。大手化粧品会社は、自社で工場を保有し、商品開発からマーケティング、販売、PRなど全てを行っています。
化粧品業界を取り巻く環境
富士経済の発表によると、2021年の国内化粧品市場規模は前年比3.3%増の2兆8,415億円でした。2020年の化粧品出荷額は、前年と比べて大きく落ち込みました。
2021年はインバウンド需要の高いパックの需要回復は鈍いものの、スポットケアや美容液はメーカーによるオンラインカウンセリングの導入が進んでいるほか、外出機会の増加に伴い需要が回復し、市場が拡大したものと見られます。
矢野研究所の「化粧品市場に関する調査を実施(2023年)」によると、2022年度の市場規模は2兆3,700億円でした。2023年度以降は国内需要の回復基調、インバウンド需要の拡大などで2兆4,500億円になると予測されています。
デジタル・EC化の動向
経済産業省と日本化粧品工業連合会の「化粧品産業ビジョン」における資料によると、ベンチャー企業を中心にEコマースの普及、デジタル店舗の進展、SNSや口コミサイトを活用したデジタルマーケティングやECを基軸とする商品開発・販売が試みられます。
これによって消費者の嗜好(しこう)がダイレクトに伝わるため、消費者に合わせた商品の提供や、メーカーによる自社ECサイトでの直接小売販売が拡大しつつあるでしょう。大手メーカーはベンチャー企業や研究機関と協働で商品開発を進め、営業・販売もデジタル技術の活用が加速しています。
今後はオフラインとオンラインを融合した形のオムニチャネルモデルが確立され、自社サイトからのライブ配信やプラットフォーム型でのライブコマースが一般的となるでしょう。
商品・ブランドの多様化・細分化
化粧品ブランドは、プレステージブランド(一般的に高級なイメージが持たれているブランド)とマスブランド(大量生産・大量流通の低価格帯ブランド)に二分されていました。昨今はその中間を狙ったマスプレステージ(高価格帯ながらやや値ごろ感のあるブランド)といったブランドが広がりつつあるでしょう。
特定の悩みにフォーカスした商品や嗜好(しこう)に沿った商品、独自の自然成分を活用した商品も発売され、ターゲットに合わせ多種多様なニーズに対応したニッチな市場が開拓されています。近年は男性向け化粧品の市場も拡大しています。
化粧品業界の課題・展望
化粧品業界の国内需要は、コロナ禍で長引く不況により消費者の節約志向が進んでいるため縮小傾向です。商品の単価が下がっていることや、化粧品自体が嗜好品(しこうひん)の位置付けされているため、化粧品業界全体の利益が減少している見方が大半です。
国内需要が見込めない昨今、日本の化粧品業界はグローバル展開へと拍車をかけるでしょう。海外への越境ECなど、アウトバウンド需要の獲得が加速するとみられています。
昨今、ドラックストアで販売されているコスメは安価で高品質な商品が多く、需要も高いです。しかし、送料の発生するECサイトは、件数が多くても売り上げに伸び悩んでいる側面もあります。
化粧品業界のマーケティング戦略では、SNSの影響力も無視できません。Instagramなどを利用し、直接購入するのも可能なため、ターゲットを絞ってSNS広告を出稿するなどのマーケティング戦略も必要です。
ターゲット拡大の余地としては、男性用化粧品の開発です。大手の海外ブランドは、基礎化粧品、ファンデーションなどのメイクアップ商品なども男性用化粧品をそろえています。今後、幅広い顧客を取り込めれば、国内需要も拡大できるでしょう。
M&A・譲渡・売却・買収とは
M&Aとは、株式譲渡や事業譲渡、合併、株式交換、会社分割などの手法を用いて、事業の売買・統合・組織再編を行うことをさします。広義には資本業務提携もM&Aに含まれるでしょう。
化粧品業界では前述したような環境の変化にあわせて、製品ラインアップ拡充や販路の拡大、ブランド力や技術力獲得目的のM&Aが行われています。
2. 化粧品業界のM&A・譲渡・売却動向
化粧品会社のM&A動向は以下のように推移しています。
- 国内外で有名企業によるM&Aは行われている
- 研究施設や製造工場を求めるM&Aも増加
- 国内企業による海外企業の買収も見られる
- 異業種の参入による業界再編が目立つ
- ベンチャー企業を対象としたM&Aも増加
- 増える化粧品会社を買収する異業種企業
①国内外で有名企業によるM&Aは行われている
近年、大手化粧品会社は、国内外で積極的なM&Aを行っています。国内では、消費者ニーズの多様化や企業同士の競争激化に対応するためのM&Aが増加傾向です。
国外では、特に中国や東南アジアの顧客を獲得するため、M&Aによって販路を獲得するケースが目立ちます。
②研究施設や製造工場を求めるM&Aも増加
安くて高機能な化粧品を求める消費者ニーズに応えるため、研究施設や製造工場をM&Aによって獲得し、自社グループ内で研究開発・製造を行うケースも増加しています。
研究開発・製造効率を高める目的で、OEM(受託製造会社)をM&Aによって自社グループに取り込むケースもあります。
③国内企業による海外企業の買収も見られる
近年、国内化粧品会社による海外企業の買収先には変化が見られており、以前は欧米企業の買収や提携が目立っていた化粧品業界ですが、アジア企業の買収や提携が目立つようになってきました。
アジア市場の中でも、中国市場から東南アジア市場へのシフトが始まっています。
④異業種の参入による業界再編が目立つ
近年、自社の強みを生かして、化粧品市場に参入する他業種企業も目立つようになりました。本業の研究開発・マーケティング力・販路などを応用できるので、低コストでの事業参入が可能なことが要因に挙げられるでしょう。
近年、新規参入が急増していることで化粧品業界の競争は激化し、撤退を余儀なくされる他業種企業も存在します。そのような中、富士フイルムや味の素など大手の他業種メーカーが、自社の技術を生かし化粧品の開発に取り組み、成果を上げています。
特に富士フイルムの「ASTALIFT」は、消費者にも大きなインパクトを与えました。そして2007年の発売以降、エイジングケアブランドとして高い支持を維持しています。
ほかにも味の素のアミノ酸、サントリーの酵母、江崎グリコのグリコーゲンなど、異業種メーカー各社は、開発・商品化している成分を化粧品に応用しています。健康志向や、アンチエイジグ、再生医療などに消費者からの高い関心が寄せられているため、今後も追い風となるでしょう。
⑤ベンチャー企業を対象としたM&Aも増加
化粧品業界では、商品の高機能化、販売・マーケティングのWeb化が重要になってきています。高機能な化粧品の研究開発や、デジタルマーケティングへの対応などを目的とした、ベンチャー企業へのM&Aも増加しています。
⑥増える化粧品会社を買収する異業種企業
前述でも少し触れましたが、他業種企業が化粧品会社を買収するケースが増えています。写真フイルム事業が本業だった富士フイルムは、2006年に化粧品業界へ参入しました。
以降、写真フイルム事業で培った技術とM&Aによって獲得した技術を合わせ、ASTALIFTシリーズに代表される高機能化粧品で成功を収めました。
サントリーは、飲料の開発過程で研究を進めてきた成分をサプリメントや化粧品に応用しています。ほかにも、通販会社による化粧品会社の買収や、マーケティング会社による化粧品会社の買収など、本業とのシナジー効果を見込んだ買収が増加しています。
3. 化粧品業界のM&A・譲渡・売却理由
ここでは、化粧品業界のM&A・譲渡・売却理由に関して譲渡側のメリットと買収側のメリットを紹介します。
譲渡側のメリット
化粧品会社は以下のような目的で、M&Aによる譲渡・売却を行っています。
- 後継者問題の解決
- 施設・設備への投資負担の影響
- 大手メーカーの傘下に入り安定したい
- 従業員の雇用先の確保
- 譲渡・売却益の獲得
①後継者問題の解決
中小規模の化粧品会社では、事業承継により後継者問題の解決を図るケースが増えています。政府や公的機関の後押しがあることや、M&Aに対する印象が以前よりも良くなっている点も増加理由の1つと考えられます。
②施設・設備への投資負担の影響
化粧品の開発・製造を自社で行っている中小化粧品会社の場合、近年化粧品の利益率が落ちている中で、開発・製造環境に投資し続けることは容易ではありません。
施設・設備への投資負担が大きくなったため、M&Aによる譲渡・売却を選択するケースもあります。
③大手メーカーの傘下に入り安定したい
トレンドの移り変わりが激しい化粧品業界では、安定的に事業を続けるために、大手化粧品会社の傘下に入ることを選ぶケースもあります。大手化粧品会社の傘下に入れば、資金・ブランド力・販路などを獲得でき、事業の安定を図れるでしょう。
④従業員の雇用先の確保
経営者が会社の将来を考える際に、従業員に対する責任の果たし方で悩むケースは少なくありません。したがって、従業員の雇用が確保できるM&Aは、経営者にも大きなメリットがあるといえるでしょう。
⑤譲渡・売却益の獲得
譲渡・売却益の獲得を目的として、M&Aを行うケースもあります。譲渡・売却益の使い道はさまざまですが、引退後の生活資金への充当だけでなく、中には新しいスキンケア製品の開発を始める経営者もいます。
買収側のメリット
買収側のメリットは主に以下です。
- 事業の選択と集中
- 新製品や新技術の開発
- EC・デジタルマーケティングの強化
- 既存事業と化粧品事業の融合による業容拡大
買収側のメリットとして、1つ目は事業の選択と集中ができる点です。不採算・ノンコア事業の切り離しが可能となり、コア事業への経営資源に集中できます。
2つ目は、新製品や新技術の開発を加速させられることです。例えば化粧品原料メーカーを買収することによって、開発力を強化することが可能となります。
3つ目は、EC・デジタルマーケティングの強化が可能となる点です。ECやデジタルマーケティングを展開する企業を買収すれば、ブランドが直接消費者とコミュニケーションを取りマーケティングが実施できるでしょう。
4つ目は、既存事業と買収先の化粧品事業の融合による事業拡大が可能となります。昨今は、M&Aをとおして異業種から化粧品事業に参入するケースも多くあります。メンズコスメや化粧品D2Cなどの成長分野に属する企業を買収し、事業領域の拡大が図れるでしょう。
4. 化粧品業界のM&A・譲渡・売却価格相場
化粧品会社のM&A相場平均は、高くなる傾向にあります。その理由は、買収される化粧品会社は収益性の高いケースが多いことや、自社で製品の開発製造を行っている場合は、設備代や特許代などが上乗せされるためです。
ここでは、化粧品会社のM&A価格の算出方法を詳しくみてみましょう。
化粧品会社の価格算出
化粧品会社のM&A価格を算出する際は、コストアプローチ・マーケットアプローチ・インカムアプローチといった方法を用いて企業価値を算定します。そこに、将来的な収益力や商品開発力・企業のブランド力などを総合的に判断したのれん代を加えて、M&A価格を決定します。
しかし、化粧品会社のM&A価格を的確に算定するのは容易ではなく、最終的にはM&A当事者間の交渉によって変動するでしょう。
5. 化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例
ここからは、化粧品会社における以下のM&A・譲渡・売却事例をご紹介します。
国内企業による海外企業へのM&A
化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例から、まずは国内企業による海外企業へのM&A事例をご紹介します。
①三井物産によるDermaceutical Laboratories, LLCを買収
2023年8月、三井物産株は、Dermaceutical Laboratories, LLCの全ての株式を取得しました。
三井物産は、金属、エネルギー資源や機械、化学品などの国内卸売および外国間貿易など全世界に広がる営業拠点とネットワークを保有している企業です。対象会社のD-LABは、米国およびグローバルブランドオーナー向けに化粧品の企画・設計・製造事業を行う企業です。
今回のM&AによりD-LABをビューティ・パーソナルケアの米州中核事業として、機能性素材や新たな技術の提案、三井物産が保有する素材調達力やBPC事業アセットとのシナジー効果により、事業群形成を目指します。
②資生堂によるドイツのヘンケル社への事業譲渡
資生堂は2022年2月、「SHISEIDO PROFESSIONAL」など、ヘアサロン向け業務用を中心としたヘアケア剤、ヘアカラー剤、パーマ剤、スタイリング剤など、日本とアジアで展開するプロフェッショナル事業をHenkel AG & Co. KGaAへ譲渡しました。
Henkel AG & Co. KGaAは、ヘアサロン、コンシューマー向けヘア領域に強みがあり、ビューティーケア事業をグローバルに展開している会社です。
譲渡により、事業ブランド「SHISEIDO PROFESSIONAL」に関する商標権の使用をライセンスすることになります。傘下のヘアケアを中心としたブランド商品に関しては、譲渡しました。
今回のM&Aにより、対象事業の日本国内での関連資産を承継する会社をとおして、資生堂は対象事業のさらなる成長をサポートする予定です。そして、欧米でのヘア領域の事業で豊富な実績を有するHenkelグループと一体化し、グローバルレベルの投資機会と事業体制を目指します。
③SACI-CFPAから住友商事へのM&Aによる譲渡・売却
化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例は、SACI-CFPAから住友商事へのM&Aによる譲渡・売却です。2019年4月、フランスで化粧品メーカーへ化粧品素材の卸売を行うSACI-CFPAは、住友商事へ株式譲渡を行い、子会社となりました。本買収により、住友商事は、地域のニーズに合わせた化粧品素材事業が行えるとしています。
④ジョンソン・エンド・ジョンソンによるシーズHDの買収
化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例は、ジョンソン・エンド・ジョンソンによるシーズHDの買収です。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、「ドクターシーラボ」などのスキンケア製品を販売するシーズHDへTOBを行い、2019年1月に子会社化が完了しました。
これにより、ジョンソン・エンド・ジョンソンは商品ラインアップを拡充し、シーズHDの製品を世界に広がる販売網に乗せています。
⑤台灣千冠莉有限公司からビューティガレージへのM&Aによる譲渡・売却
化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例は、台湾千冠莉有限公司からビューティガレージへのM&Aによる譲渡・売却です。2018年8月、美容サロン用の化粧品などを販売する台湾千冠莉は、プロ向け美容品の通販を行うビューティガレージへ株式譲渡を行い子会社となりました。
本買収により、ビューティガレージは、アジアの美容商社としての事業成長を図っています。
国内企業同士のM&A
続いて、化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例の中から、国内企業同士のM&A事例をご紹介します。
①日本コルマーホールディングスによるトキワ・コスメティクス・グループの買収
2024年6月、日本コルマーホールディングスは投資会社のThe Carlyle Groupより、トキワ・コスメティクス・グループの全ての株式を取得しました。
日本コルマーホールディングスは、日本国内最大の化粧品受託製造メーカーです。対象会社のトキワは、化粧品開発・製造を行う粧品受託製造会社です。
今回のM&Aにより、化粧品受託市場のリーディングカンパニーとしてさらなる事業推進を目指します。
②FFF SMART LIFE CONNECTEDによるFEATHER AQUAの買収
2024年8月、FFF SMART LIFE CONNECTEDはFEATHER AQUAの全ての株式を取得しました。M&Aにより、対象会社のFEATHER AQUAは、「FEATHER AQUA JAPAN」へ社名変更しています。
FFF SMART LIFE CONNECTEDは、PC、PCパーツ、PC関連商品の企画・開発・販売を行う企業です。FEATHER AQUAは、化粧品や美容家電の企画販売を行う企業です。
今回のM&Aにより、両社の経営資源を共有し、ビジネス拡大を目指します。
③エステーによるシャルダンの子会社化
エステーは、2024年5月20日の取締役会において、2024年7月1日を効力発生日として、エステーを株式交付親会社とし、シャルダン(東京都世田谷区)を株式交付子会社とすることを決定しました。これにより、シャルダンはエステーの子会社となる予定です。
エステーは日用品の開発、製造、販売を行っています。シャルダンは損害保険代理業や不動産賃貸業などを展開しています。
エステーグループは、ブランド価値の向上と持続的な成長を目指して、「既存事業の高収益化」、「原価高騰への対策」、「成長分野への投資と新規事業の創出」、そして「ESG時代に適応する基盤作り」に取り組んでいます。
また、コーポレート・ガバナンスの強化を図り、資本コストや資本収益性を重視した経営を行うために、経営指標を「売上高営業利益率」から「ROE」に変更し、資本効率の向上に努めています。さらに、経営環境に対応した迅速な資本政策の実行も重要な課題としています。
エステーの経営執行体制では、資本政策の見直しも検討しており、株主構成や株式の流動性を改善することが企業価値向上のために重要であると認識しています。
この株式交付は、エステーの株主構成と株式の流動性を改善し、コーポレート・ガバナンスおよび株主価値のさらなる強化と向上を目的としています。
④新日本製薬によるノインとの資本業務提携
化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例は、新日本製薬によるノインとの資本業務提携です。新日本製薬は2021年11月、ノインに対し出資および事業面の提携や人材交流などの資本業務提携を実施しました。新日本製薬は、福岡県福岡市中央区に拠点を置く、化粧品、健康食品、医薬品の販売を行う会社です。
対象会社のノインは、ダウンロード数250万DLを誇る日本最大級のコスメショッピングアプリ「NOIN(ノイン)」を運営しています。SNSのマーケティング力が高く、化粧品への情報感度の高いZ世代のユーザーから支持されています。
今回のM&Aにより、Z世代の顧客データベースとSNSマーケティングのノウハウ、高いシナジー効果が実現できるとしました。
⑤アジュバンコスメジャパンによる連結子会社の吸収合併
化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例は、化粧品などの販売を手掛けるアジュバンコスメジャパンが行った吸収合併です。アジュバンコスメジャパンは、2019年12月に100%出資の連結子会社で化粧品、美容・理容器材の商品企画や生産・品質管理を行うアジュバンコスメティックを吸収合併しました。
これにより、アジュバンコスメジャパンは、意思決定の迅速化と組織運営の効率化を見込んでいます。
異業種によるM&A
最後に、異業種による化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例をご紹介します。
①丸紅によるSHIGETAとの資本提携
化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例は、丸紅によるSHIGETAとの資本提携です。丸紅は2021年9月、フランスのクリーンビューティーブランドである「SHIGETA PARIS」を展開するSHIGETと資本提携を行いました。
クリーンビューティーとは、自然派商品かつサステナビリティへの配慮、エシカルソーシング(動物実験不実施や労働環境配慮など)の条件を満たした化粧品をいいます。
SHIGETA PARISは、セラピストCHICO SHIGETAによってパリで創設されました。オーガニックコスメ認証の中でもCOSMOS認証を取得し、パリの自社製造工場にて研究開発からパッケージングまで全てを行っています。
今回の資本提携により、丸紅はSHIGETAの日本およびアジア市場でのブランド認知向上、販売面支援、企業価値向上とともに、事業拡大を目指します。
②バルクオムによる刀との資本提携
化粧品業界のM&A・譲渡・売却事例は、バルクオムによる刀との資本提携です。メンズスキンケアブランド「BULK HOMME」を展開するバルクオムは2021年3月、刀と資本提携を行いました。
バルクオムは「メンズスキンケアブランド世界シェアNo.1」をミッションとし、スキンケア商品を展開しています。刀は、マーケティングライセンシングカンパニーで、高度なマーケティングノウハウを持っており、消費者に向き合うブランド設計を行う会社です。今回の資本提携により、バルクオムは刀とともに最短かつ最大限の事業成長を目指します。
なお、2024年6月現在、資本提携はすでに解消されています。
6. 化粧品業界のM&A・譲渡・売却を成功させるポイント
化粧品会社がM&Aによる譲渡・売却を成功させるには、以下のポイントを意識して行うことが重要です。
- 準備を計画的に行う
- 希望する譲れない条件を決める
- M&Aの目的を明確にする
- 収益性や技術など自社の強みをまとめる
- M&Aの専門家に相談する
①準備を計画的に行う
化粧品会社の場合、買収後に想定していたシナジー効果が得られず、再び譲渡・売却が行われるケースも少なくありません。そのような事態を避けるためには、譲渡・売却先の選定など、M&Aの準備は計画的に行う必要があります。
②希望する譲れない条件を決める
近年は、化粧品業界に詳しくない他業界からのM&Aも増えていることから、さまざまな交渉方法や条件提示の仕方が見られます。希望する条件・譲れない条件を明確にするなど、交渉に臨む態度を毅然(きぜん)とさせるのも重要といえます。
③M&Aの目的を明確にする
M&Aによる譲渡・売却目的を明確にしておかなければ、条件の良し悪しだけに振り回されかねません。M&Aの目的を明確にすると、M&Aを仲介する専門家や相手企業との意思疎通が行いやすくなり、交渉をスムーズに進めることが可能です。
④収益性や技術など自社の強みをまとめる
国内消費が減少傾向にある化粧品業界では、買収側が利益を上げるには、M&Aによって他社と明確に差別化ができるようなシナジー効果を得なければなりません。
収益性や技術など自社の強みを明確にしておくことで、買収企業も明確なビジョンを描きやすくなります。
⑤M&Aの専門家に相談する
大手・中堅化粧品会社への譲渡・売却や、他業界企業への譲渡・売却を行うには、化粧品業界に精通した専門家のサポートがおすすめです。
できるだけ早い段階から専門家に相談しておくことで、戦略策定をしっかりと行え、結果としてM&Aによるメリットも得やすくなります。
7. 化粧品業界のM&A・譲渡・売却時におすすめの相談先
化粧品業界でM&Aによる譲渡・売却を満足いく形で進めるには、M&Aや化粧品業界に精通した仲介会社によるサポートがおすすめです。
M&A総合研究所では、実務経験が豊富なM&A専門のM&Aアドバイザーによる専属フルサポートを行っており、化粧品業界でも重要性が増しているIT分野・マーケティング分野にも強みを持っています。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、化粧品会社のM&A・譲渡・売却をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
8. 化粧品業界のM&A・譲渡・売却まとめ
本記事では、化粧品会社のM&A事例や動向などをご紹介してきました。化粧品会社のM&A相場平均は、高い傾向にありますが、成功させるためには自社にあったスキームを選び、戦略をたてて進めることが大切です。
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