2023年12月27日更新
歯科業界のM&A・売却・買収!動向、成功事例、ポイント、案件の探し方を解説【2022年最新】
近年、歯科業界では、M&Aの需要が高まっています。本記事では、歯科業界の最新動向や、M&Aによる買収・売却事例をまとめました。M&Aによる買収・売却のメリットや、成功させるためのポイントも詳しく解説します。
目次
1. 歯科業界のM&Aとは
歯科業界とは
歯科業界に含まれる業種は以下のとおりです。
- 歯の治療を行う歯科医院(病院・診療所およびクリニック)
- 人工歯を作成する歯科技工
- 歯の材料や歯科機器の製造販売などを行う企業
- 医薬品の製造販売などを行う企業
本記事は、歯科業界の中でも特に歯科医院にフォーカスして話を進めます。
歯科業界の現状
歯科業界の現状を以下の3項目に分けて紹介します。
- 個人経営が多い
- 虫歯予防をメインにする歯科も増加
- デンタルローンを取り扱う歯科も増えている
個人経営が多い
歯科医は、他の専門医と比べて、独立して個人事業主となる割合が高い分野です。その理由としては、設備などの初期投資が安く抑えられることのほか、勤務医としての枠が少ないこと、定年がないことなどが挙げられます。
歯科医院の数は飽和状態となっており、コンビニエンスストアの数よりも多い状況です。日本歯科医師会の「歯科医師・歯科医療機関の数」によると、2016年時点における歯科診療所の数は68,940と報告されています。
その一方で、日本フランチャイズチェーン協会の「JFAコンビニエンスストア統計調査月報」を見ると、2020年5月時点のコンビニ店舗数は55,769です。
虫歯予防をメインにする歯科も増加
歯科医院の数は飽和状態であるため、開業しても十分に稼げない歯科医院も増えています。歯科医院の増加による競争激化、虫歯になる子供や高齢者の虫歯本数の減少なども相まって、これまでの虫歯治療のみでは十分な収益が上げられない歯科医院が増加しているでしょう。
これを受けて、近年の歯科業界の動向として、虫歯予防・ホワイトニングなどの分野で収益を上げる歯科医院が増えてきました。
デンタルローンを取り扱う歯科も増えている
近年では、デンタルローンを取り扱っている歯科医院の増加も目立ちます。デンタルローンとは、患者が保険適用されない治療を受ける場合にローンで支払える仕組みです。
前述したように、従来の虫歯治療では収益が上げられない歯科医院が増えていることから、近年では、予防分野・ホワイトニング・歯科矯正などをメインに運営している歯科医院が増えています。
その中には保険が適用されない治療・施術もあるため、デンタルローンの需要が高まっている状況です。
M&Aとは
M&Aとは、「Mergers & Acquisitions」の略称になります。Mergerは合併、Acquisitionは買収の意味です。M&Aは、企業間の会社・事業部門の売買取引、あるいは企業間の組織再編行為の総称です。具体的なM&Aのスキーム(手法)には、以下のようなものがあります。
M&Aによる事業承継
事業承継とは、現在、行っている事業を後継者に引き継ぐことです。誰を後継者にするかで、以下の3種類に分かれます。
- 親族内承継:現経営者(歯科医院長)の子供など親族を後継者とする事業承継。
- 社内承継:社内(歯科医院内)の従業員や役員を後継者とする事業承継。
- M&Aによる第三者への承継:会社(歯科医院)を売却することで、その買い手が後継者となる事業承継。
一般的に、第一に後継者候補となるのは親族です。しかし、親族で後継者が見当たらない場合、次善の策として社内(歯科医院内)で後継者を探します。それでも後継者がいない場合の対策として、近年、用いられるようになってきたのが、M&Aによる事業承継です。
後継者がいないまま経営者(歯科医院長)が引退時期を迎えれば、会社(歯科医院)は廃業(廃院)するしかありません。
2. 歯科業界のM&A・売却・買収動向
歯科業界のM&A・売却・買収動向は近年、変化してきており、以下のような特徴が見られます。
- 廃業が多い業界でありM&Aも多い
- 居抜き物件を求める医師も多い
- 親族内承継が多い
①廃業が多い業界でありM&Aも多い
歯科医院の動向としては、競争激化による廃業件数の増加が目立ちます。廃業の増加は、子供が継がないケースが増加している点も原因の一つです。開院数が多く、全体として歯科医院の数は増え続けています。しかし、廃業の数も右肩上がりです。
M&Aによる第三者への譲渡の実施件数も増加しています。M&Aにより歯科医院を引き継ぐ側からすると、施設や設備・従業員・顧客などをそのまま引き継げるといったメリットがあります。
一方の売却・譲渡側からすると、従業員の雇用を引き継いでもらえるうえに、売却・譲渡益が得られるといった点がメリットです。
②居抜き物件を求める医師も多い
歯科医院の開業に関する動向としては、ゼロから施設を建てるのではなく、居抜き物件を購入するケースが多く見られます。
居抜き物件とは
居抜き物件とは、廃業した歯科医院の施設・医療機器などがそのまま残されている物件のことです。施設や医療機器がそろっているために、ゼロから開業するよりも開業資金を安く抑えられます。
医療分野に強い不動産会社・医療系コンサルタント会社などに依頼した場合、居抜き物件の購入を勧められるケースが多いです。ただし、M&Aによる売却・譲渡のように、従業員や顧客を引き継げない点は注意しておく必要があります。
③親族内承継が多い
以前よりも徐々に減ってきていますが、割合としては親族内承継が行われている歯科医院は多いです。特に個人の歯科医院の場合、子供が継いでいるケースが多く見られます。
子供への承継は周りからの納得が得やすく、金銭的にもスムーズに承継が行われる点がメリットです。将来的なトラブルのリスクも少ないでしょう。ただ、子供に経営者の適性がない場合や、経営権に関する親族間トラブルが起きる可能性があることが懸念点として挙げられます。
3. 歯科業界の開業資金をM&Aと居抜きで比較
前提として、歯科医院の開業資金は3,000万円~5,000万円程度が一般的です。しかし近年の動向を見ると、内装にこだわったり最新機器を持っていたりしないと顧客がつきにくいため、特に都市部ではより高額な開業資金をかけている歯科医院が多く存在します。
これに対して居抜きの場合には、物件にもよりますが、ゼロから開業するよりも初期投資を大幅に抑えられます。ただし、居抜きでは内装リフォームや医療機器の買い替えが必要な場合もあるため、慎重な検討が必要です。
M&Aを用いて歯科医院を買収する場合、歯科医院の規模や依頼するM&A専門家によって費用は大きく変動します。しかしながら、M&Aの大きなメリットである、施設や設備だけでなく従業員や顧客も譲渡してもらえる点は、ほとんどのケースで享受可能です。
そのほか、前医院長やスタッフなどから顧客情報・経営ノウハウなども吸収できるため、M&A後の初年度から十分な収益の計上が期待できます。
4. 歯科業界のM&A・売却・買収・譲渡事例
ここでは、歯科業界におけるM&A・売却・買収・譲渡事例を紹介します。
- メディカルネットによるオカムラのM&A
- AccelmedによるKeystone DentalのM&A
- CLSAキャピタルパートナーズによるノーザとの資本業務提携
- デンタスによるネオックスのM&A
- CBCによるabc dentalのM&A
- エア・ウォーターによる歯愛メディカルとの資本業務提携
- 松風によるMetz Dental GmbHのM&A
- 日本ピストンリングによる石福金属興業のM&A
- アサヒホールディングスによるフジ医療器のM&A
- 三井化学によるヘレウスの歯科材料事業のM&A
①メディカルネットによるオカムラのM&A
2018年11月、歯科関連のポータルサイトを運営するメディカルネットは、歯科関連製品を販売するオカムラを株式譲渡により完全子会社化すると発表しました。
本件M&Aにより、メディカルネットでは、歯科関連製品の販売事業に参入して、ポータルサイトとのシナジー効果の獲得を見込んでいます。
②AccelmedによるKeystone DentalのM&A
2018年6月、イスラエルの医療機器開発会社であるAccelmedは、アメリカの歯科インプラント製造会社であるKeystone Dentalを完全子会社化しました。
本件M&Aにより、Accelmedでは、アメリカ市場で伸び悩んでいるKeystone Dentalのインプラントをヨーロッパやアジアなどアメリカ以外の市場で売り出すことでシェアの獲得を目指しています。
③CLSAキャピタルパートナーズによるノーザとの資本業務提携
2018年4月、アジア系総合金融機関のCLSAキャピタルパートナーズは、投資ファンドを通して、歯科医療情報システムの開発などを行うノーザと資本業務提携を行うと発表しました。
ノーザは、歯科医療情報システムで国内トップシェアを持っている会社です。本件資本業務提携により、CLSAキャピタルパートナーズでは、自身の豊富な経営資源やネットワークを生かしながらノーザの成長をサポートするとしています。
④デンタスによるネオックスのM&A
2017年3月、歯科医療機器のレンタル事業などを営むデンタスは、歯科技工事業を営むネオックスから、歯科医療機器のレンタル事業を譲受しました。
歯科技工業界では、機器の進化が急速に進んでいます。本件M&Aは、デンタスからすると、シナジー効果の獲得を見込んだ事例です。
⑤CBCによるabc dentalのM&A
2017年2月、総合商社のCBCは、歯科材料・歯科機器販売などを行うabc dental ag(スイス)を買収すると発表しました。本件M&Aにより、CBCでは、abc dental社の技術を組み合わせることで、スイスやヨーロッパにおける歯科業界の成長につなげる目的です。
⑥エア・ウォーターによる歯愛メディカルとの資本業務提携
2016年10月、医療全般の支援業務を行うエア・ウォーターは、医療機関への通信販売事業などを行う歯愛メディカルと資本業務提携を結びました。
本件資本業務提携により、当事会社では、エア・ウォーターの医療関係における総合力と歯愛メディカルの専門性を合わせて、新たな事業の創出を見込んでいます。
⑦松風によるMetz Dental GmbHのM&A
2015年2月、歯科材料・歯科機器の製造などを行う松風は、人工歯の製造を行うMetz Dental GmbH(ドイツ)を買収しました。本件M&Aにより、松風では、歯科事業のグローバル展開を進めています。
⑧日本ピストンリングによる石福金属興業のM&A
2014年6月、自動車エンジン部品の製造販売を行う日本ピストンリングは、石福金属興業から、インプラント事業を譲受しました。本件M&Aにより、日本ピストンリングでは、自動車エンジン開発の技術をインプラント製造に生かして、医療機器分野への参入を果たしています。
⑨アサヒホールディングスによるフジ医療器のM&A
2014年5月、アサヒホールディングスは、連結子会社のジャパンウェイストを通じて、健康関連機器の製造・販売を行うフジ医療器を買収しました。アサヒホールディングスは、全国の病院・歯科医院を顧客に持っている会社です。
本件M&Aにより、顧客への販売製品ラインアップの増加とともに、フジ医療器の顧客に対するアサヒホールディングス製品の販売促進を図っています。なお、2019年10月、アサヒホールディングスは、フジ医療器をジョンソンヘルステック(台湾)に譲渡しました。
本件M&Aは、アサヒホールディングスからすると、マッサージチェアを中心とする健康機器事業をさらに拡大すべく、国内シェア向上に加えて米国・中国など海外市場の開拓を求めた事例です。
⑩三井化学によるヘレウスの歯科材料事業のM&A
2013年4月、ヘルスケア事業を行う三井化学は、歯科関連事業を行うヘレウス社(ドイツ)から、事業譲渡によって歯科材料事業を譲受すると発表しました。
もともと三井化学は、子会社のサンメディカルにて歯科材料事業を手がけており、国内で一定のシェアを持っています。今後の成長にはグローバル化が必要と判断して、へレウス社の事業買収を実施しました。
5. 歯科業界のM&A・売却・買収の主な流れ
歯科業界のM&Aによる売却・買収は、主に以下の流れで進みます。
- 売却の相談と簡易的な戦略策定
- 売却に向けての委託契約・本格的な戦略策定
- 売却・買収の手続きや各種契約書の締結
- デューデリジェンスや条件交渉
- クロージング
それぞれの流れを順番に見ていきましょう。
①売却の相談と簡易的な戦略策定
売却側で最初に行うのが、M&A仲介会社などの専門家に売却の相談をしながら、おおまかな売却戦略を策定することです。売却戦略を策定する際は、より良い条件で売却するために、いかなる事前準備が必要で、いかなるスキームを用いるべきなのかなどが話し合われます。
②売却に向けての委託契約・本格的な戦略策定
M&Aを依頼する専門家が決まったら、委託契約を結んで本格的に戦略策定を進めます。M&A完了までのスケジュール・M&Aの費用や手数料・スキームなど詳細な戦略を詰めるプロセスです。
③売却・買収の手続きや各種契約書の締結
売却先が決まっている場合には、契約締結などの手続きを進めます。売却先が決まっていない場合には、売却先を選定するプロセスを実行します。
④デューデリジェンスや条件交渉
売却先が見つかり基本的な契約を締結したら、買収側によってデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスとは、売却側企業に対する監査のことです。
買収側は、デューデリジェンスによって買収後のリスクなどを徹底的に洗い出します。そしてデューデリジェンスの結果をもとに最終交渉を行い、合意できれば最終契約書の締結です。
⑤クロージング
最終契約書に記されている各種手続きの履行を、クロージングといいます。具体的には、売却側は歯科医院の引き渡しなど、買収側は対価の支払いなどのことです。
6. 歯科業界のM&A・売却・買収のメリット
歯科業界では、M&Aによる売却・買収で得られるメリットは数多く存在します。ここでは、代表的なメリットを解説します。
売却側のメリット
売却側が得られる主なメリットは、以下のとおりです。
- 事務員・医師の雇用確保
- 後継者問題の解決
- 売却・譲渡益の獲得
- 資本力を得てサービスの充実
- 債務・個人保証・担保・廃業費用などの解消
事務員・医師の雇用確保
廃業を検討している経営者からすると、スタッフの処遇は大きな悩みだといえます。M&Aで売却すれば、スタッフを相手企業にそのまま引き渡せる可能性が高いでしょう。
後継者問題の解決
近年、経営者の高齢化などで経営の継続が困難であるにもかかわらず、子供などの後継者がいないために、廃業せざるを得なくなったケースが数多く見られます。M&Aによる売却を実施すれば、多くの候補の中から最適な後継者が探せるでしょう。
売却・譲渡益の獲得
経営者からすると、引退後の生活は心配の種です。廃業の場合には、資金を得られないばかりか、さまざまな出費が伴います。M&Aにより売却・譲渡益を得れば、まとまった金額を引退後の生活に充てることが可能です。
資本力を得てサービスの充実
M&Aの売却後も、売却先企業に残って経営者を続けるケースもあります。M&Aでは、売却先の経営資源を活用できるため、これまでよりも良いサービスを提供できるようになる可能性が高いです。
債務・個人保証・担保・廃業費用などの解消
経営者が子供への事業承継をためらう理由としては、個人保証や債務などの心配が挙げられます。ただし、廃業するにしても廃業費用などの出費が伴ってしまうでしょう。
M&Aで第三者に売却すると、多くの場合で債務は買い手に引き継がれます。個人保証や担保は解消され、廃業費用のような出費もありません。
買収側のメリット
買収側が得られる主なメリットは、以下のとおりです。
- 医師・事務員などの確保
- 低コストで歯科医院を獲得
- 設備・施設などを低コストで獲得
- 顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
- グループの拡大・事業エリアの拡大
医師・事務員などの確保
ゼロから開業する場合、スタッフの募集も自身で行わなければなりません。しかし、近年では、歯科スタッフの人材不足が叫ばれています。地域によっては、募集してもなかなか集まらないのが現状です。
M&Aによる買収であれば、医師や事務員などの人材もそのまま引き継げます。
低コストで歯科医院を獲得
歯科医院の開業には、通常で3,000万円~5,000万円かかります。内装や機器にこだわれば、それ以上の資金が必要です。M&Aによる買収であれば、案件や交渉にもよりますが、比較的割安で歯科医院を引き継げます。
設備・施設などを低コストで獲得
ゼロから開業する場合、施設や設備の費用が大きな負担となります。理想の場所を探すのは簡単ではありません。M&Aによる買収であれば、立地も含めて最適な施設・設備を割安で入手できる可能性があります。
顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
ゼロから開業する際に問題なのは、顧客や取引先・経営ノウハウの獲得です。多くの歯科医院では、開業からしばらくの期間は利益を出せません。M&Aによる買収で顧客・取引先・ノウハウを得れば、M&A直後から事業を軌道に乗せられます。
グループの拡大・事業エリアの拡大
事業を拡大する際にも、M&Aは有効です。新規に開院する場合には多くの費用と時間がかかります。M&Aによる買収であれば、効率良くグループの拡大・事業エリアの拡大などを実現できます。
7. 歯科業界のM&A・売却・買収・事業承継のデメリット
前章で挙げたように歯科医院のM&Aには多くのメリットがありますが、その一方でデメリットもあります。ここでは、M&Aだけでなく、親族内承継・社内(院内)承継、廃業(廃院)のデメリットも合わせて確認しましょう。
M&Aのデメリット
歯科医院のM&Aのデメリットとしては、主に買収側に挙げられます。
- M&A後、簿外債務などが発覚し経営上のダメージを受ける(売却側に損害賠償請求できますが手続きなど余分な労力が生じます)。
- 経営者(院長)が代わったことに反発する従業員・医師が退職してしまい、人材確保のメリットが享受できない。
売却側の従業員の立場からすると、あまり見ない例ではありますが、M&A後に待遇が悪くなり、損を被る可能性があります。
親族内承継のデメリット
親族内承継の後継者の代表格は子供ですが、その子供が必ずしも経営者としての適正を有しているとは限りません。歯科医師資格と経営者のスキルは全くの別物です。後継者(子供)の適正を考えず事業承継した場合、歯科医院の経営が傾く危険性があります。
院内承継のデメリット
歯科医院の従業員や医師が後継者となって事業承継するには、親族のように経営権を相続はできないので、金銭で取得しなければなりません。つまり、相応の資金が必要です。後継者の手持ち資金が足りなければ、金融機関などから融資を受ける必要があります。
M&A後も、それを返済していく負担はデメリットでしょう。場合によっては、それを嫌って後継者が事業承継を辞退するケースもあります。
廃院のデメリット
廃院のデメリットは、費用発生と関係者へのフォローの手間です。廃院費用としては、具体的に以下のようなものがあります。
- 登記や手続きの費用
- 医療廃棄物の処分費用
- 医療機器の処分費用
- 賃貸物件であれば原状回復費用
- 従業員の退職金・解雇予告手当
- 借入金の清算
従業員に対しては転職先の紹介、患者に対しては転院先の紹介などを行う必要があります。その手間はかなりの労力といえるでしょう。
8. 歯科業界のM&A・売却を成功させるポイント
歯科業界でM&Aによる売却を成功させるには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 設備や立地などアピールポイントを持つ
- 売却・譲渡までに準備を行う
- 地域性やアクセスなどのメリットを打ち出す
- 若い人材をそろえておく
- 歯科売却の専門家に相談する
①設備や立地などアピールポイントを持つ
競争激化が進む歯科業界では、買収側は、設備や立地など買収後に他と差別化できる要素を求めます。設備や立地などで他と差別化でき、利益を上げられるアピールポイントがあれば、買い手がつきやすいです。
②売却・譲渡までに準備を行う
M&Aによる売却・譲渡では、事前の準備が必要不可欠です。具体的な準備としては、歯科医院としての魅力・価値を上げておくことや、ノウハウや資産・契約関係を整理しておくことなどが挙げられます。
買収側からすると、本当に引き継いでよいものか不安を抱えるケースもあります。売却・譲渡までに不安要素をなるべく減らしておくことが大切です。
③地域性やアクセスなどのメリットを打ち出す
歯科医院は、地域によって求められるポイントが異なるものです。都市部であれば、独自性・先進性・駅から近いことなどが求められる傾向にあります。これに対して地方では、特色の強過ぎる歯科医院は敬遠されたり、車の停めやすさが求められたりする傾向が強いです。
M&Aによる売却・譲渡の際は、地域性に合わせてメリットを明確に打ち出すと買い手がつきやすくなります。
④若い人材をそろえておく
歯科医院では慢性的な人材不足が問題視されています。若いスタッフがなかなか入ってこないうえ、辞めていく若いスタッフが多いことで悩む経営者が多いです。長く働く若い人材がそろっている場合には、大きな魅力・アピールポイントになります。
⑤歯科売却の専門家に相談する
歯科医院におけるM&Aでは、規模の小さい歯科医院であるといった理由で、専門家を通さずに自力で売却・譲渡を進めるケースも見られます。しかし、M&Aは、幅広い知識・ネットワーク・実務経験が必要となる専門分野です。
M&Aの成功率を高めつつ、売却・譲渡後も後継者に安定した経営を続けてもらうためにも、M&A仲介会社などの専門家からサポートを受けながら手続きを進めましょう。
M&A総合研究所では、M&Aによる売却の実務経験を豊富に持つアドバイザーが専任につき、手続きをフルサポートします。随時、無料相談を行っていますので、歯科業界でのM&Aをご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。
9. 歯科業界のM&A・買収を成功させるポイント
歯科業界でM&Aによる買収を成功させるには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- M&Aによる買収の目的を明確化する
- M&A仲介会社に相談する
- M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す
- 金融機関や行政機関などに相談する
①M&Aによる買収の目的を明確化する
歯科業界でM&Aによる買収に着手する前に、まずは買収の目的を明確化しておきましょう。たとえ多くの費用をかけてM&Aによる買収を行ったとしても、目的がハッキリしていなければ十分な成果は得られません。
目的を明確化しておくほど、適切なM&A相手を探しやすくなり、M&Aの成功確率を高められます。目的を洗い出すには、現在抱えている経営課題の整理から着手するのもよいでしょう。
②M&A仲介会社に相談する
歯科業界でM&Aによる買収を成功させるには、M&Aに関する専門知識に加えて医療分野での知識や実務経験が必要不可欠です。売却側の医院長・経営者などと交渉する際には、高いコミュニケーション能力も求められます。
M&A仲介会社は、それぞれ異なる特徴を持つため、自社の目的に合う仲介会社を選ぶとよいでしょう。
③M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す
近年のM&A需要の高まりから、M&Aマッチングサイトの数も増加中です。マッチングサイトには多くの案件が集まっており、個人事業主向けの案件を中心に取り扱うサイトも多くあります。
最近では、AIによるマッチングシステムを採用しているサイトや、無料でマッチングサイトを利用できるサービスなども多いです。数多くの案件から候補を探せる点がマッチングサイトのメリットといえます。
しかし、M&Aマッチングサイトでは、相手先を探せても、その先のサポートが不十分になる点がデメリットです。歯科業界でM&A・買収を成功させるには、初めからM&A仲介会社に依頼するとよいでしょう。
M&A総合研究所では、M&Aによる買収の経験豊富なアドバイザーが専任となってフルサポートします。無料相談を随時受け付けていますので、歯科業界でM&A・買収を検討中の方は、お気軽にご相談ください。
④金融機関や行政機関などに相談する
近年の動向を見ると、地方銀行や公的機関でも事業承継に本格的に取り組む動きが目立っています。M&A仲介会社に比べると実績は少ないですが、気軽に相談しやすい点はメリットです。
10. 歯科業界のM&A・売却・買収に関するQ&A
ここでは、歯科医院のM&A・売却・買収の検討の際に多く寄せられる質問事項を抽出し、その返答を掲示します。
業績が悪くても買い手は見つかる?
業績が悪い場合、売却側は売れるのか?という不安から、M&Aをあきらめてしまうケースがあります。しかし、企業や歯科医院には、業績とは無関係に何らかの無形資産や有形資産、従業員や患者があるため、無価値ではありません。
したがって、業績が悪くても高望みをしなければ、基本的に買い手が見つかる可能性は十分あります。
企業価値評価の方法は?
M&Aでいうところの企業価値評価(バリュエーション)とは、M&Aの取引価額を決めるに等しい、売却側企業(歯科医院)の売却金額の算定のことです。そこには、さまざまな専門的な算定方法が確立されています。
通常、算定にあたっては、公認会計士やM&A仲介会社などの専門家が、複数の算定方法を複合的に用いて算出します。昨今は、無料で簡易算定を行うケースも増えてきました。M&A仲介会社などに相談する際に、問い合わせてみるとよいでしょう。
売り手の簿外債務にはどのように対処すればよい?
買収側にとって簿外債務は大きな問題です。しかし、売却側自身も気づいていない簿外債務もあるため、まずはM&Aの契約を締結する前のデューデリジェンスを徹底的に行い、簿外債務の有無を確認することが重要です。
M&Aの最終契約を締結する際には、その中に「表明保証」という条項が設けられます。これは、売却側に対し、具体的に掲げられた項目の保証を約束させるものです。これに違反があった場合には、損害賠償請求できることや、具体的な賠償内容を定めておけます。
デューデリジェンスで簿外債務が発見できず、M&A後に発覚したようなケースでも、最終契約書の表明保証違反として、損害賠償請求できます。
11. 歯科業界のM&A・売却・買収まとめ
本記事では、歯科業界のM&A動向・事例・M&Aのポイントなどを紹介しました。本記事の概要は以下のとおりです。
・歯科業界のM&A動向
→廃業が多い業界でありM&Aも多い、居抜き物件を求める医師も多い、事業承継も多い
・歯科業界のM&Aにおける売却側のメリット
→事務員・医師の雇用確保
→後継者問題の解決
→売却・譲渡益の獲得
→資本力を得てサービスの充実
→債務・個人保証・担保・廃業費用などの解消
・歯科業界のM&Aにおける買収側のメリット
→医師・事務員などの確保
→低コストで歯科医院を獲得
→設備・施設などを低コストで獲得
→顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
→グループの拡大・事業エリアの拡大
・歯科業界のM&Aによる売却・譲渡を成功させるポイント
→設備や立地などアピールポイントを持つ
→売却・譲渡までに準備を行う
→地域性やアクセスなどのメリットを打ち出す
→若い人材をそろえておく
→歯科売却の専門家に相談する
12. 歯科業界の成約事例一覧
13. 歯科業界のM&A案件一覧
【沖縄県南部・高収益】歯科クリニック
介護・福祉・医療/九州・沖縄案件ID:2317公開日:2024年10月09日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
①1億円(出資持分譲渡+借地契約) ②3.2億円(出資持分譲渡+事業不動産売買)
沖縄県で歯科クリニックを運営する法人の出資持分譲渡案件です。
【安定集客/首都圏】歯科医院運営
介護・福祉・医療/関東・甲信越案件ID:2277公開日:2024年09月24日売上高
5000万円〜1億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
1億円〜2.5億円
首都圏で歯科医院を経営
【技工士多数在籍/新設備により単価向上】西日本の歯科技工所
医薬品製造/非公開案件ID:1749公開日:2024年04月08日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
1億円〜2.5億円
歯科技工所の運営
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