物流業界のM&A動向と2024年問題!会社売却のメリットや成功のポイントと事例30選を解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

物流業界では、人手不足や2024問題の解決を図るためのM&Aが活発化しています。この記事では、物流会社でM&Aによる会社の売却や買収を検討している経営者に向けて、業界動向やM&Aのメリットや物流業界での事例、注意点など解説します。

目次

  1. 物流業界の概要
  2. 物流業界の動向
  3. 物流業界の2024年問題とは
  4. 物流業界のM&A動向
  5. 物流会社のM&Aメリット
  6. 物流会社のM&Aデメリット
  7. 物流会社のM&A相場を計算する方法
  8. 物流会社のM&A・買収・売却事例20選
  9. 物流会社のM&Aにおける成功のポイント
  10. 物流業界のM&A・事業譲渡まとめ
  11. 運送・物流業界の成約事例一覧
  12. 運送・物流業界のM&A案件一覧
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1. 物流業界の概要

物流業界では、人手不足や2024問題、業務のDX化など、多くの課題を抱えている会社が多く、M&Aでの解決を模索する動きが活発化しています。この記事では、物流業界の近年の動向と、M&Aのメリット、事例、M&Aを成功させるための注意点などについて解説します。

物流業界とは

物流とは、製品や商品をメーカーや生産者から、消費者に届けるまでの流れのことで、物流業界とは製品や商品の流れを支える会社で成り立つ業界のことです。

製品や商品の流れを支える業界としては流通業界もあります。物流と流通の違いは、製品や商品の所有権がどこにあるのか、という点です。

流通では卸会社などの流通会社にその都度所有権が移ります。一方、物流では顧客からの依頼に基づいて商品を運送したり保管したりするので、商品の所有権は物流会社ではなく顧客です。

物流には保管・包装・荷役・流通加工・運送・情報システムという6つの機能があり、それぞれ以下のような内容が該当します。
 

保管 生産者と消費者との間に位置し時間的な隔たりを埋めたり調整したりする機能
物流センターや倉庫など
包装 商品への汚れや衝撃を防止し安全に届けるために行う作業
個別包装あるいは段ボール詰め作業など
荷役 鉄道・飛行機・トラックなどへ荷物を積みこんだり荷降ろししたりする作業
運搬・積み付け・集荷(ピッキング)・保管・荷揃え
流通加工 商品をギフト用に詰め合わせたり値札を貼ったりなどの作業
主に物流センター内や倉庫で行う
運送 商品を生産者から消費者へ送り届ける機能
運送手段にはトラックや鉄道などがある
情報システム 管理システムなどによって倉庫内業務の効率化を行う機能
在庫管理やピッキング指示などがある

このように物流と一口にいっても非常に幅広い業務が含まれています。物流業界は、国内の産業を強化し、どこに住んでいても同じような商品を使うことができる生活の豊かさに直結する業界であることから、重要な社会的なインフラの一つです。

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2. 物流業界の動向

物流業界の近年の動向についてみていきましょう。

物流業界の市場規模

物流業界の近年の動向についてみていきましょう。

令和元(2019)年の国内貨物の輸送総量は約45億トン、営業収益は28兆5,813億円でした。2020年には新型コロナ禍の影響で輸送総量は約40億トンに減少しています。

全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題2023」

出典:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/yusosangyo2023.pdf

長期的な輸送量の推移をみてみると、新型コロナ禍に襲われる前年の令和元年まで、営業用トラック、海運、鉄道、空運ともほぼ横ばいで推移している中で、自家用トラックの輸送量が、平成9年の3,159トンから令和元年の1,275トンと、約4割に減少しています。

自家用トラックは、建設業界などでの輸送に利用されることが多く、建設業界では1995年ころをピークに売上の減少が続いていることから、自家用トラックでの輸送量の減少につながっているものと思われます。

参考:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」 日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題2023

物流業界の現状

物流業界には、国内のありとあらゆる場所にモノを届ける、社会インフラとしての重大な役割があります。しかし近年、次のような重大な問題が山積しており、社会インフラとしての物流を今後も維持し続けることが難しくなっていくのではないかともいわれています。

燃料費の高騰

燃料費は、世界情勢の変化と円安の状況で近年急激に高騰しています。ガソリン1Lあたりの価格は、2000年頃には100円程度でしたが、2015年頃には150円から160円、2020年以降は170円から180円と、20年ほど前の倍近くまで高騰しています。物流業者の経営を圧迫しているのが現状です。

宅配需要の増加

物流業界での人手不足問題が深刻化する一方で、宅配便の取り扱い個数は増加が続いています。

宅配便・メール便取扱実績

日本でインターネット通販が本格的に登場したのは1990年代後半です。その後、EC市場は急拡大し続けており、現在まで宅配便やメール便の取扱量は増加し続けています。

その上、2020年からの新型コロナ禍では、巣ごもり生活でインターネット通販を利用する人が増加した影響で、宅配便取り扱い量が急増しました。

物流業界の人手不足が加速する一方で、2024問題に対応しながら物流業界に対するニーズの増加にどのように対応していくのか、物流会社には難しい課題が突きつけられています。

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3. 物流業界の2024年問題とは

2024年問題とは

物流業界の2024問題とは、2019年に働き方改革の一環として改正された労働基準法の時間外労働の上限規定が、物流業界にも2024年4月から適用されることです。

物流業界など一部の業界では5年間の猶予が認められてきましたが、2024年3月で猶予期間が終了します。トラックドライバーの時間外労働上限が規定されることで、ドライバー1人あたりの年間稼働時間が減ってしまい、輸送量の減少や宅配便の迅速な配達ができなくなるおそれがあります。

2024年問題の影響

人手不足

ドライバーの高齢化と若い人が入ってこないことでの人手不足問題も、多くの物流会社の経営を直撃しています。2024年4月からは時間外労働の上限規定が物流業界にも適用されたため、いかに人手を確保するかが大きな課題のひとつです。

人手不足

現在、全職種の平均年齢は42.2歳ですが、大型トラックのドライバーの平均年齢は47.5歳、中小型トラックのドライバーは45.4歳です。

トラックドライバーの平均賃金は他の職種と比較すると安いといわれており、若い人が入ってきません。そのために、年々ドライバーの平均年齢は上がり続けています。

また、定年退職する人の代わりになる人も入ってこないのが現状で、人手不足が加速しており、近年は5割以上の企業でトラックドライバーが不足している状態です。

ドライバーの収入減少

物流・運送業界で働くドライバーは、道路事情などに業務が影響するため時間外業務が生じることも多いです。ドライバーの収入には時間外手当も含まれるため、働き方改革によって時間外労働に上限が設けられることで、収入が減少する可能性もあります。

収入が大きく減少するとなれば離職を選択するドライバーが出てくる可能性もあるため、事業者にとっても事業運営に大きく影響するケースも起こり得るということです。そのため、事業者にとっては、ドライバーの生活を守りかつ事業運営を円滑に進めるための対策が重要であると考えられます。

売上と利益の減少

働き方改革によりドライバーの労働時間に上限が設けられれば、1日あたりの運搬量が減少するため売上や利益へも影響がでます。また、2023年4月から「月60時間の残業代に対する割増賃金引上げ」が中小企業にも適用されました。

事業者がこれまでと同様の運搬量を維持するためにはドライバーの補充が必要ですが、単純に人件費が増えるだけでなく割増賃金が引き上げによる負担も大きくのしかかると考えられます。

働き方改革の制定理由

働き方改革関連法は、従来からある労働関係の法律に働く人々がそれぞれの事情に応じた柔軟な働き方ができるよう、加えられた法律です。通称であり、働き方改革関連法という名称の法律が新制定されたということではありません。

制定された主な理由は、少子高齢化による労働力減少や介護・育児などとの両立が必要な働き手への対応を進めるためです。働き方改革関連法は改正法が2018年6月に成立、2019年4月から(中小企業では2020年)段階的に施行されています。

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4. 物流業界のM&A動向

物流業界ではどのような目的でM&Aが実施されているのでしょうか。物流業界におけるM&A動向をみていきましょう。

成長戦略としてのM&A

M&Aで他の物流会社を買収する側の目的としては、自社の成長戦略のためのM&Aを実施する例がみられます。

他社と一緒になることで規模を拡大しようとする動きや、冷凍・冷蔵の輸送や保管、在庫管理など、自社にはないノウハウを手に入れるためのM&Aがみられます。また、拠点を増やすことで中継地点を増やす目的で対象地域の物流会社を買収するといったM&Aも多いようです。

後継者問題の解決としてのM&A

会社を売却、譲渡する側では、後継者問題を解決するために第三者へのM&Aを希望する例が多くみられます。

他社への会社売却は社内に適切な後継者がいない場合に、会社を廃業することなく存続させることができる有力な手段となります。

DX化に向けてのM&A

現在、多くの業種でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいます。

物流業界では、今までの輸送データや在庫管理データをすべてデジタル化して分析することで、配送ルートの最適化や、トラックの積載効率の向上により、時間あたりの総輸送量を増やすことが可能になります。

しかし、業務のDX化には多大な予算と時間が必要であり、中小企業ではなかなか対応が難しいのが現状です。

そこで、M&AによりすでにDX化のノウハウを持つ大手物流会社の傘下に入ることで、DX化のノウハウを自社に取り入れる動きがみられます。

人材不足のためのM&A

物流業界では、人材不足解消のためのM&Aも多く行われています。

人材不足を解消するためには、給料の引き上げや福利厚生の充実など、待遇改善が必要ですが、経営に余裕がない中小企業には難しい点があるでしょう。

そこで、売却側は大手企業の傘下に入ることで、従業員の待遇を向上させて、離職を防いだり新しい人材を採用したりしやすい環境を作るためのM&Aが実施されています。

一方、買収側は他社の人材を自社に取り込むためのM&Aを積極的に行っています。

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5. 物流会社のM&Aメリット

物流会社をM&Aで売却、譲渡するメリットにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは売り手側・買い手側のメリットについて解説します。

売り手側のメリット

売り手側のメリットには主に以下6つが挙げられます。

後継者問題の解決

物流業界に限らず、現在、日本では6割以上の会社の社長が60歳以上と高齢化が進んでおり、約4割の会社で社内に適切な跡継ぎがいない後継者問題が深刻化しています。

物流業界でも、業績はいいのに、将来的に後継者問題で廃業を検討せざるをえない状況の会社が増えており、後継者問題は大きな問題となっているのが現状です。

経営者の親族や従業員ではなく、会社と全く関係ない第三者に会社を譲渡するM&Aは、後継者問題を解決するための手段として近年大いに注目されています

廃業することで、地域の物流インフラに打撃を与えたり、従業員を解雇したりするのであれば、M&Aによる後継者問題の解決は検討してみるメリットが大いにあるでしょう。

取引先との関係維持

物流会社をM&Aで売却するメリットには、取引先との関係を維持できるという点も挙げられます。

都市部で多くの物流会社が競争しているような地域であれば、1社くらい廃業しても変わりの会社がすぐに見つかるでしょう。

しかし、地方で物流会社があまりない地域では、後継者問題などで1社が廃業してしまうと、その会社に配送を依頼していた取引先が次を見つけるのが難しくて困る可能性があります。

M&Aで会社を売却すれば、取引先との関係も基本的に継続してもらえるので、現在の経営者が経営を続けられなくなっても安心です。

ドライバーの雇用確保

後継者問題などで物流会社を廃業することになると、従業員は全員解雇することになります。

トラックドライバーは全国的に人手不足なので、すぐに再就職先が見つかる人もいるでしょう。しかし中には条件などが合わずに、次の仕事が見つからない人もいるかもしれません。また、ドライバーではない事務職員は年齢が高いと再就職が難しい人もいるでしょう。

M&Aでは、売却側の従業員は買収側が基本的に引き継ぎます。M&Aで会社を売却すれば、ドライバーや事務職員を解雇する必要がなく、雇用を維持し続けることが可能です。

事業の成長・発展

中小企業では資金調達やDX化への対応が難しい場合も少なくありません。また、事業規模を拡大させたくても、人手不足が深刻なトラックドライバーの新規採用も難しいでしょう。

M&Aで大手企業の傘下に入れば、大手企業の看板のもとで金融機関の審査も通りやすくなったり、DX化のノウハウを使えるようになったり、従業員の待遇を引き上げたりすることができるようになる可能性が高まります

会社をより成長させて、発展させていくためのM&Aも検討の価値があるでしょう。

売却益の獲得

M&Aを行えばまとまった利益を得ることが可能です。M&Aの対価は株式譲渡であれば株主(オーナー経営者)、事業譲渡では法人(企業)が受け取ります。

株式譲渡の場合、オーナー経営者であれば一度にまとまった現金を得られるので、引退後の生活費に充当したり売却益を資金として新しい事業にチャレンジしたりすることも可能です。

個人保証の解除

中小企業が金融機関から借り入れを行う場合、経営者個人が連帯保証を負うケースが多いです。経営者にとって個人保証の負担・不安は非常に大きく、親族や従業員への事業承継を考えていても個人保証の引継ぎが足かせになり頓挫するケースも珍しくありません。

M&Aの場合、個人保証は買い手側が引き継ぐ形で解除されるケースが大半です。金融機関での解除手続きは必要ですが、個人保証の解除は経営者にとって非常に大きなメリットといえるでしょう。

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買い手側のメリット

買い手側のメリットには主に以下5つが挙げられます。

人材の獲得

物流業界は全体として慢性的な人手不足を抱えています。特に時間外労働の上限規制が始まったことで、トラックなどドライバー確保は企業にとって喫緊の課題です。

新規採用を行って人材を獲得する方法もありますが、必要な人材数を確保するまでには時間とコストがかかります。その点、M&Aであれば売り手企業の人材(雇用契約)を引き継ぐことができるため、効率的な人材確保が可能です。

車両の獲得

M&Aを行えば売り手側の人材(雇用契約)だけでなく、トラックなどの車両や運送機材なども引き継ぐことができます。人材や車両などのリソースをまとめて獲得できるのは、買い手側にとって非常に大きなメリットです。

事業の拡大

事業拡大を独力で図るためにはリソースや時間が必要であり、当然のことながらリスクもあります。M&Aであれば、売り手側の事業エリア・取引先・顧客も獲得できるので、時間やコストを大幅に削減して事業の拡大を実現することも可能です。

また、売り手側の実績から将来の収益をある程度予測できるので、リスクが抑えられるというメリットもあります。

ノウハウの獲得

ノウハウは企業が事業運営を行ううえで大きな強みとなる要素です。特に新規で事業参入する場合、ノウハウを構築するための時間もかかります。

M&Aでは売り手側のもつノウハウなどの無形資産も買い手側が引き継げるため、事業拡大や新規参入を考えている場合は非常に大きなメリットです。

シナジー効果

シナジー効果発揮はM&Aを行う最も大きなメリットともいえる部分です。M&Aで得られるシナジー効果には、スケールメリットの増大やノウハウなどリソースの相互活用、売上の増加などがあり、自社単独で事業を行うよりも成長スピードを加速させたり発展させたりすることができます。

物流業界は比較的シナジーが見込みやすい業界といわれており、同業種あるいは関連業種とのM&Aであれば大きなシナジーを見込むことも可能です。

6. 物流会社のM&Aデメリット

前述のように物流会社のM&Aには多くのメリットがありますが、当然デメリットやリスクもあります。M&Aの検討を行う場合、メリットだけでなくデメリットも理解しておくことが重要です。ここでは、物流会会社のM&Aデメリットを売り手側・買い手側それぞれ説明します。

売り手側のデメリット

売り手側のデメリットとなり得るのは以下の3点が考えられます。

競業避止義務

競業避止義務とは、M&A後の一定期間は売り手側が譲渡した事業と同一事業を隣接する区域内で行ってはならないという取り決めです。義務が課されるのは原則20年間ですが、その期間は売り手側・買い手側が合意すれば自由に決めることができます。

なお競業避止義務についてはほとんどのケースにおいて最終契約書に記載されますが、スキームが事業譲渡だった場合は最終契約書に条文がなくても、会社法の定めにより売り手側は競業避止義務を負うため注意が必要です。

従業員・顧客からの反発

M&A後は売り手側企業(または譲渡対象の事業)の支配権が買い手側へ移ります。売り手側企業の取引先や顧客からすれば、M&A後に契約条件や料金設定が変更される可能性もあるため、取引先や顧客から反発を受けるケースもあるでしょう。

取引先や顧客がM&Aをきっかけに離れてしまうと買い手側にとってもデメリットとなるため、条件のすり合わせを交渉時に丁寧に行っておくとともに、取引先や顧客に対して丁寧に説明する必要があります。

希望条件で売却ができない可能性

M&Aの条件や価額は買い手側との交渉によって決まるため、売り手側の希望条件どおりに売却ができない可能性もあります。また、条件譲歩が必要となるケースだけでなく、希望条件に合った買い手候補がみつからずにM&A実行を断念せざるを得ないケースもないとはいえません。

より満足度の高い売却を目指すためには、M&A実行前に希望条件の優先順位を決めておくことがポイントです。より希望条件に合う買い手を探すためには、M&Aを検討したら早期段階から準備を進めておく必要があります。

買い手側のデメリット

買い手側のデメリットとなり得るのは以下の2点があります。

簿外債務を承継する可能性

貸借対照表上には計上されていない債務を「簿外債務」といい、未払い残業代や債務保証などはその一例です。M&Aの使用スキームによっては、売り手側の簿外財務を買い手側が引き継ぐ可能性があります。

簿外債務を引き継ぐのは株式譲渡などの包括承継スキームの場合であり、買い手側は売り手側の資産・負債をすべて承継しなければなりません。簿外債務の額によってはM&A後の事業運営にも影響が及ぶため、デューデリジェンスを徹底して行うことが重要です。

また、取得したい範囲が売り手側の一部事業である場合などは、株式譲渡ではなく事業譲渡を用いるのも方法のひとつです。事業譲渡ではM&A対象および範囲を細かく決めることができるので、簿外債務の引継ぎリスクを避けることができます。

シナジーが生まれないリスク

M&Aによってシナジー効果が発揮されれば、売上向上や事業規模拡大などが図れるので、買収資金以上の利益を得ることも可能です。しかし、シナジー効果は必ず発揮されるとは限らず、M&A後のPMIがうまくいかないなどの原因で発揮されないケースもあります。

シナジー効果発揮を見込んで買収価額を決定しても、それ以上の効果が得られなければ買い手側にとっては大きな痛手となり、場合によっては既存事業の運営に支障を要因となるかもしれません。買い手側はM&Aによるシナジー効果は必ず得られるとは限らないことを念頭に置き検討することが重要です。

7. 物流会社のM&A相場を計算する方法

物流会社をM&Aで売却することになったら、どのくらいの価格で売却できるのか気になるところでしょう。M&Aでの売却相場はどのように計算するのでしょうか。

おおよその売却相場は
物流会社の相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 2~5年
を目安に考えます。

企業価値の計算方法は、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチの3つの方法のいずれか、もしくは複数の方法を組み合わせて算定します

マーケットアプローチとは売却される会社の市場価値に注目する方法です。
上場企業の中から売却企業と似た状況の会社を選んで、その会社の市場価値や公開されている財務指標を参考にする類似企業比較法か、過去に行われた類似企業のM&Aの結果を参考にする類似取引比較法などで、売却価格を算定します。

インカムアプローチとは、売却される会社の将来性に注目する方法です。売却される会社が将来生み出す利益やキャッシュフロー、配当と、今後に考えられるリスクを考慮した上で、現在の価値を算定します。

コストアプローチとは、売却される会社の純資産価値に注目する方法です。貸借対照表の資産の合計金額から負債の合計金額を差し引いて純資産を算出して、企業価値を算定します。

どの方法も、メリットとデメリットがそれぞれあります。会社を売却する場合には、買収側からの金額の提案を鵜呑みにして受け入れるのではなく、M&Aの専門家に自社の適正価格を算定してもらって交渉材料にしたほうがいいでしょう。

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8. 物流会社のM&A・買収・売却事例20選

物流会社でM&Aによって会社を売却、買収した事例を紹介します。

ヤマトHDがナカノ商会を子会社化した事例

2024年11月、ヤマトホールディングスは、老境と江戸川区のナカノ商会を子会社化すると発表しました。子会社となるナカノ商会は、コントラクト・ロジスティクス事業などを手掛ける企業です。

ナカノ紹介は保管業務・庫内業務・輸送サービスだけでなく、顧客仕様に合わせた物流施設のサブリースなども行っており、複数サービスを自社で一貫提供することで、EC事業者・小売事業者・メーカーなど多数の法人顧客を有しています。

今回の子会社化はヤマトグループは、宅急便ネットワークの強靭化・基盤領域の拡大による利益成長・事業ポートフォリオの変革が目的です。

ヤマトクループはナカノ商会を傘下に加えることリソース共有によるコストシナジー創出や法人ビジネス領域の拡大を図るとしています。

参考:株式会社ナカノ商会の株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ

JPメディアダイレクトがヤマトダイアログ&メディアを子会社化した事例

2024年9月、日本郵政グループのJPメディアダイレクトは、 ヤマトホールディングス傘下のヤマトダイアログ&メディアを館z電子会社化すると発表しました。

子会社化となるヤマトダイアログ&メディアは、ダイレクトマーケティングに関わる業務を手掛けています。JPメディアダイレクトは、ダイレクトメディア事業・BPO関連サービス事業・マーケティングプロモーション事業などを行っており、今回の子会社化は提供サービスの利便性向上が主な目的です。

JPメディアダイレクトは、両社のリソースやノウハウを相互活用することで顧客の課題解決へ貢献していくとしています。なお、今回の子会社化に伴い、ヤマトダイアログ&メディアは社名を「YDM株式会社(英文:YDM Co., Ltd.)」へ変更予定(2024年11月1日付の予定)です。

参考:ヤマトダイアログ&メディア株式会社の株式取得(連結子会社化)について

アート引越センターがヤマトホームコンビニエンスを完全子会社化した事例

2024年8月、アート引越センターは子会社であるヤマトホームコンビニエンスの株式49%をヤマトホールディングスから取得し、完全子会社化すると発表しました。

ヤマトホームコンビニエンスはアート引越センターの株式51%を2022年に取得して子会社化しており、今回のM&Aで残り株式49%をヤマトホールディングスから取得するかたちです。

アート引越センターとヤマトホームコンビニエンスはともに引越事業や国内物流事業を手掛けており、ヤマトホームコンビニエンスは単身者向け「わたしの引越」や大型家財配送「らくらく家財宅急便」などのサービスを行っています。

アート引越センターはヤマトホームコンビニエンスの子会社化により、大型家財配送をグループ事業の新たな柱とすべく取り組みを進めてきましたが、主軸である引越事業と大型家財配送事業とのシナジーが確実に実を結んでいるとし、今回の完全子会社化に至りました。

なお、今回のM&Aに伴い、ヤマトホームコンビニエンスは「アートセッティングデリバリー株式会社」へ社名変更する予定だとしています(2025年1月1日付の予定)。

参考:アートグループによるヤマトホームコンビニエンス株式会社の完全子会社化のお知らせ

東部ネットワークが相模新栄運送を吸収合併した事例

2024年8月、東部ネットワークは完全子会社である相模新栄運送を吸収合併すると発表しました。本M&Aは東部ネットワークを存続会社、相模新栄運送を消滅会社とする吸収合併方式で行い、合併後相模新栄運送は解散します。

東部ネットワークは貨物自動車運送業・石油製品や車両などの販売およびリース事業を手掛けており、相模新栄運送は特定旅客自動車運送事業と貨物自動車運送事業を行う企業です。

東部ネットワークグループは貨物自動車運送業がグループの主力事業ですが、2024年問題により状況は厳しさを増しており、輸送の配車効率改善などを行い収益基盤の安定化を図る取り組みを行ってきました。

今回の吸収合併のその一環であり、貨物自動車業務を集約することで業務効率の向上が図れ、新たな事業の拡大にもつながるとしています。

参考:完全子会社の吸収合併(簡易・略式合併)に関するお知らせ

エスライングループ本社が拓進物流を子会社化した事例

2024年7月、エスライングループ本社は埼玉県三郷市の拓進物流を完全子会社化すると発表しました。子会社となる拓進物流は、商品保管管理から荷作り梱包業務までをワンストップで行う物流サービスを関東エリア中心に展開しています。

エスライングループ本社は物流サービス・輸送サービス・ホームサービス事業をグループで展開しており、今回の子会社化はリソースの相互活用や情報システム共有などによって生産性の効率向上と拡大を図ることが目的です。

エスライングループ本社は拓進物流を新たにグループに加えることで、同社が手掛ける商品保管やピッキングなどの業務と、エスライングループの配送ラインを連携させ、より付加価値の高いサービスを提供していくとしています。

参考:「株式会社 拓進物流」の株式取得に関するお知らせ

SBSホールディングスがNSKロジスティックスを子会社化した事例

2024年7月、SBSホールディングスは日本精工傘下のNSKロジスティックスの株式66.61%を取得し、同社を子会社化すると発表しました。

子会社となるNSKロジスティックスは、NSKグループで運送・荷役・保管・梱包などの物流事業を手掛けています。SBSグループは総合物流事業の規模拡大および事業ポートフォリオの拡充、ノウハウ・経験を有する人材などを確保するなど、成長戦略手段としてM&A を位置付けており、今回の子会社化もその一環によるものです。

SBSホールディングスは本M&AによりグループのインフラやノウハウをNSKロジスティックスと共有することでシナジーを生み出し、より付加価値の高い物流サービス提供を目指すとしています。

参考:NSK グループの物流事業の譲受に関する合意について

セイノースーパーエクスプレスが関東エアーカーゴの航空部門事業を取得した事例

2024年6月、セイノーホールディングス傘下のセイノースーパーエクスプレスは、関東エアーカーゴから航空部門事業を吸収分割により承継すると発表しました。

関東エアーカーゴは東海運の子会社であり、一般貨物運送事業を手掛ける企業です。セイノースーパーエクスプレスは、貨物自動車運送業・貨物運送取扱業・港湾運送業などを行っており、埼玉県と栃木県の集配業務を一部関東エアーカーゴへ委託しています。

今回の航空部門事業を承継することにより、ポテンシャルのある埼玉県と栃木県の直接的な管理を行い、営業拡大とEXPRESSネットワークの維持および品質向上が主な目的です。

セイノースーパーエクスプレスは、輸送ネットワークの維持と品質向上をさらに図り、倉庫・金融・人材・物流システムなど周辺領域までを一貫提供し、さらなる顧客へのサービス向上と貢献を目指すとしています。

参考:セイノースーパーエクスプレス株式会社における 吸収分割による事業承継に関するお知らせ

鴻池運輸が印SPD India Healthcare社を子会社化した事例

2024年6月、鴻池運輸はインドのSPD India Healthcare Pvt. Ltd.の株式82%を取得し、同社を子会社化すると発表しました。子会社となるSPD India Healthcare Pvt. Ltd.は、手術器具滅菌受託事業を手掛けるています。

鴻池運輸は、港湾運送事業・倉庫事業・製造請負事業などを手掛けており、今回の子会社化はインド市場での事業拡大が目的です。近年、インドでは経済規模の拡大や政府の医療拡充政策などにより病院数が大きく増加しており、医療市場が拡大しています。

鴻池運輸は中期経営計画においてメディカル事業とインド事業を注力事業に揚げており、今回のM&Aによって同国市場での成長を図る狙いです。

参考:鴻池運輸、インド医療器材滅菌事業会社の株式取得

セイノーホールディングスが三菱電機ロジスティクスを子会社化した事例

2024年6月、セイノーホールディングスは三菱電機ロジスティクスの株式66.6%取得し、同社を子会社化すると発表しました。子会社となる三菱電機ロジスティクスは三菱電機の傘下であり、今回の株式取得後の残り33.4%の株式は三菱電機が保有する予定としています。

三菱電機ロジスティクスは、ロジスティクス事業・倉庫業・輸配送事業などを手掛けており、今回のM&Aはエレクトロニクス領域における対応力を強化が主な目的です。

セイノーホールディングスは、三菱電機ロジスティクスの持つ半導体や精密機械の輸送ノウハウや資産大型機器・設備等の特殊輸送ノウハウなどを活用し、国内拠点やロジスティクス機能のさらなる拡大を図り、物流全体の最適化を目指すとしています。

参考:子会社の異動の完了及び商号変更に関するお知らせ

鴻池運輸が加Pine Valley Packagingグループを取得した事例

2024年6月、鴻池運輸はカナダのPine Valley Packagingグループを取得すると発表しました。Pine Valley Packagingグループは自動車部品のデザインパッケージング事業を手掛けるカナダの企業で、今回のM&Aではその持ち株会社の1000868639 Ontario Inc.の株式を取得するかたちです。

現在、鴻池運輸は北中米地域において生産設備の輸送や据付事業を行っています。今回のM&Aでデザインパッケージ事業を取得することで既存顧客に対して梱包業務などの新たな提案が可能となり、Pine Valley Packagingグループの顧客に対してもフォワーディング・エンジニアリングの提案するなど、事業拡大を図ることが狙いです。

鴻池運輸は、将来的には北中米地域から中国やインドなどの自社拠点がある地域、電子産業やその他業界への水平展開を進めていくとしています。

参考:カナダ・メキシコにおけるデザインパッケージ事業会社の株式取得 および合弁会社の設立に関するお知らせ

センコーグループホールディングスが日東テクノブレーンを子会社化した事例

2024年5月、センコーグループホールディングスは、埼玉県の日東テクノブレーンを完全子会社化すると発表しました。子会社となった日東テクノブレーンは、データ処理・システム運用管理・ITアウトソーシング事業・BPO事業を展開する企業です。

センコーグループは、2021年にもオーストラリアのAirRoad Pty Ltdを子会社化しており、近年は3PL事業の拡大に向け積極的に取り組んでいます。

今回のM&Aもその一環で行われたものです。センコーグループホールディングスは日東テクノブレーンの子会社化によって、ビジネスサポート事業としてデータ入力・コンタクトセンター・経理事務代行・人材派遣などさまざまなBPO事業を展開し、事業領域の拡大を図るとしています。

参考:埼玉有数の総合BPO事業会社をグループ化 ~拡大するBPOニーズへの対応を強化~

アイディオットとAZ-COM丸和ホールディングスが資本業務提携した事例

2024年5月、システムやプロダクト開発などDX支援を手掛けるアイディオットと、医薬品や低温食品の物流や3PLを手掛けるAZ-COM丸和ホールディングスが資本業務提携を開始したことを発表しました。

本資本業務提携の目的は、DXやAIなどの活用により物流が抱える「輸送最適」「在庫最適」「拠点最適」「CO2削減」など社会課題の解決です。

AZ-COM丸和ホールディングスが保有する全国247カ所の拠点と物流ネットワークおよび会員制ネットワーク、アイディオットが保有するデータプラットフォームとAIシステム開発のノウハウを活用し、物流の最適化を図るとともに国が提唱するフィジカルインターネットの導入に向け検討を進めていくとしています。

参考:データプラットフォームを展開する「アイディオット」が「AZ-COM丸和ホールディングス株式会社」と資本業務提携を実施、AIやDXを通した、フィジカルインターネット実現に向けた協業を開始

センコーがオプラスを子会社化した事例

2024年4月、工場内物流・国際物流海上運送なそを手掛けるセンコーは、和歌山県のオプラスを完全子会社化すると発表しました。

子会社となるオプラスは、ドラッグストアやスーパーマーケット向けに日用品の運送や食品の低温輸送を手掛ける企業です。和歌山ではトップクラスの総合物流企業であり、和歌山のほかに大阪と三重にも拠点を持っています。

オプラスの子会社化により、センコーは輸配送ネットワークの和歌山エリアを強化し、新規顧客の獲得につなげる狙いがあります。

参考:和歌山エリアの配送網を強化し、事業拡大を図る ~県内トップクラスを誇るオプラスを5月に子会社化~

セイノーホールディングスが日祐を子会社化した事例

2024年4月、セイノーホールディングスは横浜市の日祐を完全子会社化することを発表しました。セイノーホールディングスは西濃運輸などを傘下に持つ大手物流グループで、貨物自動車運送事業を主軸として幅広い運送事業を展開しています。

子会社となった日祐はメール便配送を主軸事業とする企業です。神奈川県エリアを配送エリアとしており、メール便配送だけでなくカタログ制作やメーリング加工、コールセンターも一括受託する体制を構築しています。

現在、セイノーホールディングスは人材不足や環境問題といった中長期的な課題のほか、2024年問題を見据えてさまざまなパートナー企業との連携を強化しており、本M&Aもその一環によるものです。

本M&Aにより、セイノーホールディングスは、首都圏エリアにおけるメール便・ポスティング業務のネットワーク強化を図るとしています。

参考:日祐株式会社のグループ入りに関するお知らせ

東部ネットワークがテーエス運輸を子会社化した事例

2024年3月、東部ネットワークは兵庫県尼崎市のテーエス運輸を完全子会社化することを発表しました。東部ネットワークは物流・運輸倉庫・運送を手掛ける企業で、物流3PLアウトソーシングを得意としています。

子会社となったテーエス運輸は、液化窒素や液化酸素などの特定貨物自動車運送事業を手掛ける企業です。東部ネットワークは長期計画において、継続的な事業成長に向けてM&Aや資本業務提携を積極的に行う方針を掲げています。

今回の子会社化もその一環で行われたものであり、新エネルギーとして今後期待されているアンモニアや水素などの輸送拡大と、産業用資材輸送事業の成長スピード加速を図る狙いです。

参考:テーエス運輸株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

オプティマスグループがオーストラリアの自動車総合物流会社を子会社化した事例

2024年2月2日に、株式会社オプティマスグループから、同社の100%子会社Optimus Group Australia Ply Ltdが、Autocare Services Pty Ltdの全株式を取得する株式取得契約締結を決議したことが発表されました。

オプティマスグループは、1988年に設立された中古自動車の輸出事業を始めとする検査や物流に関する事業を展開している会社です。

Autocare Servicesは、オーストラリアの自動車総合物流会社で、輸入自動車の輸送や補完、清掃、通関手続き、整備点検などを行っています。

オプティマスグループでは、オーストラリアを重要戦略国と位置づけて、事業領域の拡大とリューチェーンの構築に取り組んでいます。

すべての自動車の供給を輸入に頼るオーストラリアでは車両輸送はとても重要であり、このM&Aによりグループの経営効率化を図ることができるとのことです。

参考:Autocare Services Pty Ltdの株式取得契約締結に関するお知らせ

センコーグループホールディングスが豪Simon National Carriersを子会社化した事例

2024年1月、センコーグループホールディングスはオーストラリアのSimon National Carriersを子会社化すると発表しました。

子会社となるSimon National Carriersは、陸上輸送・鉄道輸送、倉庫事業を手掛ける企業で、オーストラリア国内で幅広く事業を展開しています。大手グローバル企業や日系企業などとの実績も多く、物流サービスの質の高さに定評がある老舗企業です。

センコーグループは、2021年にもオーストラリアのAirRoad Pty Ltdを子会社化しており、近年は3PL事業の拡大に向け積極的に取り組でいます。

今回の子会社化もその一環で行われたものであり、Simon National Carriersのノウハウやネットワークを活用して事業拡大を進め、グローバル顧客の獲得も図る狙いです。

参考:オーストラリアで物流事業を拡大 ~重量物輸送に強みを持つ地元企業をグループ化~

ジェイフロンティアがグリフィスを子会社化した事例

2024年1月12日に、ジェイフロンティア株式会社から、株式会社グリフィスの発行済株式の40.0%を取得して子会社化することが発表されました。

ジェイフロンティアは、オンラインでの診療や服薬指導を行うためのプラットフォーム「SOKUYAKU」の運営事業や、自社ブランドの健康食品などの提供などを行っているヘルスケアテック企業です。

グリフィスは総合物流企業で、北海道、東北、関東、中部地方と幅広い地域に物流ネットワークを持っています。特に、3温度帯での配送に強みのある会社です。

このM&Aにより、ジェイフロンティアとしては「SOKUYAKU」の処方薬の当日配送エリアの拡充や要冷蔵の薬や血液や尿などの検体の配送、冷蔵、冷凍での弁当などの配送の効率化を図ることが可能になるとしています。

参考:株式会社グリフィスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

六ツ星運送がナワショウから2拠点の運送・倉庫事業を子業譲受した事例

2023年12月、陸上運送業を手掛ける六ツ星運送は大阪府のナワショウから一部事業を譲受すると発表しました。買い手の六ツ星運送は、食品物流を中心として倉庫・運送事業などを手掛ける五健堂の子会社で貨物自動車での陸上運送業を行っています。

ナワショウは総合物流サービス・人材サービス・不動産販売サービスの3事業を手掛けおり、今回のM&Aで譲渡対象となったのは同社の神奈川拠点である厚木三田倉庫および伊勢原営業所、愛知拠点の小牧営業所です。

六ツ星運送は、今回のM&Aで愛知県と神奈川県の拠点を取得したことでさまざまな運行ルート構築が可能となり、五健堂グループ全体の収益向上と業容拡大が図れるとしています。

参考:当社子会社による一部事業譲受及び特定子会社への該当に関するお知らせ

安田倉庫がHIROMIカンパニーを子会社化した事例

2023年12月23日に、安田倉庫株式会社から、株式会社HIROMIカンパニーの全株式を取得して子会社化することが発表されました。

このM&Aは、HIROMIカンパニーの子会社である株式会社オリエント・サービスのグループ化を目的としたものです。

安田倉庫は、首都圏を中心に倉庫、陸上輸送、港運、国際輸送などの総合物流や不動産事業などを手掛けている会社です。

株式会社オリエント・サービスは、愛知県春日井市の一般貨物自動車運送業の会社で、170台の車両と自社の営業倉庫を組み合わせた幅広い物流サービスを提供しています。

このM&Aにより、すでに関東と関西に拠点を持つ安田倉庫としては、中継地点となるオリエント・サービスの中京エリアでのネットワークをグループ内に取り込むことができ、さらなるグループの発展を期待できるとのことです。

参考:株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

関通が河出興産から出版物流サービス事業を取得した事例

2023年11月15日に、株式会社関通が、河出興産株式会社から事業の一部を譲り受け、譲り受けた事業の受け皿となる物流子会社を設立することを発表しました。

関通は兵庫県尼崎市に拠点を置く物流サービス事業を展開する会社で、Eコマースロジスティクスのパイオニア的存在です。

河出興産は主に出版社に出版物の物流サービスを提供する会社で、出版物の入庫、在庫管理、返本管理、改装、出庫などを行っています。

このM&Aでは、出版物の物流サービス事業とEコマース事業者向けの物流事業などを譲り受け、関通が持つ物流サービスやITサービスの利用技術を取り入れることで、譲り受ける事業の付加価値をより一層高めていくことができるとしています。

参考:河出興産株式会社からの一部事業譲受及び 物流子会社の設立並びに特定子会社の異動に関するお知らせ

トナミホールディングスが山昭運輸を子会社化した事例

2023年11月、総合物流企業グループのトナミホールディングスは横浜市の山昭運輸を完全子会社化すると発表しました。子会社となった山昭運輸は、横浜港を起点とする海上コンテナ輸送事業を手掛ける企業です。

トナミホールディングスは中長期計画「TONAMI NEW PLAN 2023」を現在進めており、M&Aや業務資本提携を継続的成長の戦略として積極的に展開しています。

今回の子会社化もその一環によるものであり、山昭運輸を子会社化することでの海上コンテナ輸送の拠点を増やし、業容のさらなる拡大とロジスティクス提案力を強化が図れるとし本M&Aに至りました。

参考:「山昭運輸株式会社」の株式取得に関するお知らせ

ニッコンホールディングスが古河環境サービスを子会社化した事例

2023年11月、ニッコンホールディングスは茨城県にある古河環境サービスの全株式を取得し、同社を子会社化すると発表しました。子会社となった古河環境サービスは、産業廃棄物の収集運搬業や茨城県古河市の公共ゴミの収集サービスを行っています。

ニッコンホールディングスは、廃棄物の回収・処理・運搬事業、倉庫事業を手掛ける企業です。今回の子会社化によって、ニッコンホールディングスの既存事業と古河環境サービスの事業とで連携を図り、互いのノウハウやネットワークを活用してサービス品質のさらなる向上を図るとしています。

参考:古河環境サービス株式会社の株式取得に関するお知らせ

ニッコンホールディングスがエムピーを子会社化した事例

2023年11月、ニッコンホールディングスは、長野県のエムピーを完全子会社化すると発表しました。子会社となるエムピーは、段ボール製品の加工・販売事業を手掛ける企業です。

ニッコンホールディングスは、廃棄物の回収・処理・運搬事業、倉庫事業を手掛けており、自社の梱包分野の既存事業とエムピーとの連携を図るととも、ネットワークやノウハウを相互活用することにより、サービス品質のさらなる向上を目指すとしています。

参考:株式会社エムピーの株式取得に関するお知らせ

NIPPON EXPRESSホールディングスがCargo-Partner Group Holding AGを子会社化した事例

2023年5月12日に、NIPPON EXPRESS(以下、NX)ホールディングス株式会社が、Cargo-Partner Group Holding AGとその子会社、合計5社から、中東を拠点として世界でロジスティクスサービスを提供する複数の子会社の全株式を取得することを発表しました。

NIPPON EXPRESSホールディングスは、日本通運などのNXグループを統括する持株会社で、世界中の国々や地域に、陸海空の多様な輸送モードを使ったサプライチェーンソリューションを提供しています。

Cargo-Partnerはオーストリアのウィーンを拠点に、中東地域に強固な物流事業基盤を築いており、NXグループが成長戦略のコア事業と位置づける、自動車、電気、電子、医薬品作業における海運、航空物流事業を、欧州、アジア、北米で展開しています。

NXグループとしては、対象会社をグループ内に迎え入れることで、両社の優位性を活かしながら相乗効果を発揮して、物流事業の強化や営業活動の活発化ができ、グローバル史上での存在感を高めることができるとのことです。

参考:cargo-partnerの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

丸和運輸機関がM・Kロジを子会社化した事例

2022年6月27日に、株式会社丸和運輸機関が、株式会社M・Kロジの全株式を取得して子会社化することを発表しました。

丸和運輸機関は、埼玉県吉川市に本社のある物流会社で、「桃太郎便」を運営しています。M・Kロジは、福岡県に拠点があり、倉庫業や物流アウトソーシング、物流コンサルティングなどを手掛ける会社で、D2C事業者向けの3PLサービスの提供に強みがあります。

丸和運輸機関としては、EC市場において高品質なサプライチェーンの一貫物流プロセスの構築での顧客ニーズの充足とさらなる事業の拡大を図っています。

このM&Aにより、丸和運輸機関グループのEC事業での機能強化を図り、両社の企業価値を向上させることが可能であるとのことです。

参考:株式会社M・Kロジの株式取得による子会社化のお知らせ

丸和運輸機関がファイズホールディングスを連結子会社化した事例

株式会社丸和運輸機関が、ファイズホールディングス株式会社の発行済株式の公開買付を行い、発行済株式の58.44%を取得して、連結子会社化することを2022年3月23日に発表しました。

ファイズホールディングスは、大阪市北区に本社のある、倉庫業務やロジスティクスなどを請け負う総合物流会社です。

丸和運輸機関では、社会インフラとしての物流ネットワークの構築を目指している中で、ラストワンマイルの構築などの課題があります。ファイズホールディングスは、全国各地に拠点を構えており丸和運輸機関にはないノウハウを持っています。

このM&Aにより、両社のノウハウを活用することで、さらなる3PL事業の拡大を図ることが可能になるとのことです。

参考:ファイズホールディングス株式会社株式(証券コード:9325)に対する 公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ

ニッコンホールディングスが安川トランスポートを株式取得した事例

2022年2月4日に、ニッコンホールディングス株式会社から、株式会社安川トランスポートの発行済株式の86%を取得して連結子会社にして、さらに同社の社名を株式会社ニッコン北九に変更することが発表されました。

ニッコンホールディングスは、1053年に日本梱包運送社として設立された貨物自動車輸送事業などを行う運送会社です。

安川トランスポートは、株式会社安川電機の子会社である株式会社安川ロジスティクスの子会社で、北九州を拠点に運輸、物流サービスを行っていて、安川グループを始めとする輸送需要に応えてきました。

ニッコンでは、梱包、運輸、倉庫といった総合物流事業を展開しています。このM&Aで、安川グループの資本効率化を図り、ニッコンの物流に関する豊富な経験を活用することで、品質、価格、納期、サービスの向上を目的とするとのことです。

参考:株式会社安川電機の孫会社(株式会社安川トランスポート)の株式取得に関するお知らせ

ヤマタネがシンヨウ・ロジを子会社化した事例

2022年1月21日に、株式会社ヤマタネから、株式会社シンヨウ・ロジの全株式を取得して子会社化することが発表されました。

株式会社ヤマタネは、東京都江東区に本社のある倉庫業の準大手の会社です。食品や情報、不動産事業も展開しており、食品では米の卸売の大手企業でもあります。

シンヨウ・ロジは、千葉県千葉市に拠点を構える生鮮食品を始めとする食品全般の日配や食品量販店のセンター運営などを行っている会社です。

シンヨウ・ロジは、冷凍冷蔵保管や冷凍冷蔵配送のノウハウを有しており、このM&Aでヤマタネの食品事業とのシナジー効果が期待できるとしています。

参考:株式会社シンヨウ・ロジの全株式取得(⼦会社化)に関するお知らせ

シモジマがグローバルブランドを子会社化した事例

2021年11月2日に、株式会社シモジマから、株式会社グローバルブランドの全株式を取得して、子会社化することが発表されました。

シモジマは包装用品や店舗用装飾品、慶弔用品、事務用品などを扱っている専門商社です。グローバルブランドは、海外物流事業と越境EC事業を展開している会社で、独自の海外物流システムと、越境EC事業での販路拡大で成長を続けています。

このM&Aにより、シモジマとしては、グループ全体の企業価値向上を図り、グループの発展に寄与するとしています。

参考:株式会社グローバルブランドの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

【関連】運送会社のM&A・買収・売却の案件10選を紹介!最新動向や価格相場も解説!

9. 物流会社のM&Aにおける成功のポイント

物流会社のM&Aを成功させるための注意点を解説します。

M&Aの専門家に相談をする

1つ目の注意点は、M&Aの専門家に相談することです。最近は、M&Aの情報サイトが充実してきたので、経営者自らが売却先探しや交渉に当たる場合も増えてきました。

しかし自分だけで進めると、最適な売却先探しや、法律や財務についての高度な知識が必要なM&Aの手続きでつまずくことが多いようです。

M&Aの専門家はM&Aについての高い専門性と、多くのM&Aを成功させてきた豊富な経験から、最適な相手探しや難しい手続きを親身になってサポートしてくれます。

M&Aをするべきかどうか、といったところからまずはM&Aの専門家への無料相談からはじめてみることをおすすめします。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
電話で無料相談
0120-401-970
WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

最適なタイミングを逃さない

2つ目の注意点が、準備期間を長く取るという点です。M&Aでの会社売却を希望していたのに、売却できずに廃業を選ばざるをえない会社も多くあります。M&Aでの売却に失敗する原因の多くが、準備期間が短かったことです。

特に、経営者が高齢化して健康問題が深刻化してから売却を検討し始めた場合に、時間切れで売却できずに廃業する例が多くみられます。

M&Aには数年の準備期間を設けるのが理想的です。後継者問題の解決が見通せないようであれば、経営者がまだ元気で判断力もしっかりしているうちに会社売却の準備を始めて、最もいい条件で売却できるタイミングで売却するように注意しましょう。

情報漏洩に注意する

3つ目の注意点は情報漏洩を起こさないという点です。

M&Aの実施を公表していいタイミングは基本的に最終契約書締結後です。その前に、会社売却の噂が流れてしまうと、不安に駆られた従業員の離職や取引先からの取引停止を招く恐れがあります。

情報漏洩は、M&Aについての専門家との会話を従業員に聞かれる、デスクの上に置きっぱなしにした資料を見られる、といったちょっとしたことで起こります。M&Aを進めるときには、情報管理を厳格に行うように注意しましょう。

目的や戦略を明確にする

4つ目の注意点は、目的や戦略の明確化が大切だという点です。

M&Aで会社を売却するときには、どのような目的で売却するのかによって、選択するべきM&Aの手法(スキーム)が変わってきます。

後継者問題の解決のために、会社のすべてを譲渡したい場合には株式譲渡が一般的です。不採算事業だけを売却したい場合には事業譲渡を選択します。

スキームが異なると、M&A後の会社のあり方や税額が大きく変わってしまいます。

目的の明確化やスキームの選び方は、M&Aの経験がない物流会社の経営者には難しいものなので、M&Aの専門家に相談しながら、最初に明確化しておくことをおすすめします。

シナジー効果を創出する

5つ目の注意点はシナジー効果を創出できる売却先を選ぶことです。

M&Aでは、M&A後の買収側が売却側の企業を統合していく過程(PMI)が最も重要で困難だといわれています。それまで全く異なる経営理念や企業文化、経営体質の中で働いてきた売却側の従業員が、買収側のやり方に慣れるまでには時間がかかるでしょう。

そのような中で、売却された会社が買収側にしっかりと利益をもたらして、M&Aが両社の成長に寄与できなければ、売却側の従業員は伸び伸びと働くことができません。

売却後に、従業員が幸せに働き続けられる環境を作るためには、買収側に必要とされる会社であるかどうか、シナジー効果が期待できるかといった点がとても重要です。

【関連】運送(物流)業界の問題解決に事業売却(事業譲渡)が人気!メリットや事例まで

10. 物流業界のM&A・事業譲渡まとめ

物流業界では、人手不足や2024問題への対応など、難しい課題が山積しています。その中で、後継者問題なども重なり、会社の将来に不安を感じている経営者の方も多いことでしょう。

しかし、廃業は従業員の雇用を失い、地域での物流インフラを破壊する可能性があるので、できるだけ避けたいところです。その点、M&Aでの会社売却は、経営者にとっては売却益が望めるなど、メリットも大きな選択肢です。

会社の将来に不安を感じているのであれば、まずはM&Aの専門家にM&Aの可能性について相談してみることをおすすめします。

11. 運送・物流業界の成約事例一覧

12. 運送・物流業界のM&A案件一覧

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