窯業のM&A・事業承継・売却!成功事例、業界動向、買収相場を解説【2022年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

中小企業にとって人手不足や事業承継は大きな経営課題であり、M&Aによる買収や売却・譲渡は、その有効な解決手段です。本記事では、窯業におけるM&A・売却・譲渡・事業承継について、窯業の買収相場など最新の情報を織り交ぜながら解説します。

目次

  1. 窯業のM&A・事業承継・売却・譲渡
  2. 窯業のM&A・事業承継・売却事例
  3. 窯業界のM&A・事業承継・売却動向
  4. 窯業のM&A・事業承継・売却が行われる背景
  5. 窯業のM&A買収相場
  6. 窯業のM&A・事業承継・売却・譲渡を成功させるポイント
  7. 窯業のM&A・事業承継・売却の際におすすめの相談先
  8. 窯業のM&A・事業承継・売却まとめ
  • 今すぐ買収ニーズを登録する
  • 経験豊富なM&AアドバイザーがM&Aをフルサポート まずは無料相談

1. 窯業のM&A・事業承継・売却・譲渡

現在、後継者問題の解決や事業拡大を目的として、さまざまな業界でM&Aが行われています。窯業も例外ではありません。この記事では、窯業のM&A・事業承継・売却・譲渡を解説します。まずは窯業の定義やM&A基本用語の意味を確認しましょう。

窯業とは

窯業(ようぎょう)とは、粘土などの鉱物質原料に高熱処理を加え製品化する工業のことです。窯(かま)を使うことから、窯業と呼ばれます。
 
陶磁器・セメント・ガラスなどの伝統的なセラミックスの製造と、より高純度に精製した天然原料や人口原料から作られるニューセラミックスの製造が窯業です。最近は、窯業系サイディングという建築材料が拡大し、戸建ての外壁などに使用されています。

M&Aとは

M&Aとは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略称であり、複数の企業の組織再編成や、事業・会社そのものの売買取引を行うことの総称です。買収の主な手法には、株式譲渡事業譲渡などがあります。

経営権は移動しないものの資本の移動を伴う資本提携は、広い意味でM&Aに含まれるものです。M&Aを行うことで、優秀な人材の確保や創業者利潤の獲得などのメリットがある一方、費用がかかることや想定以上にM&A成約までの時間がかかることがデメリットとして挙げられます。
 
窯業でも、人材不足や高齢化の影響で、自助努力だけでは事業承継に不安を抱える企業が少なくありません。その解決方法として、M&Aに着目している企業が増えています。

売却・譲渡とは

売却・譲渡は、基本的に同義であり、M&Aでは会社や事業を買い手に売ることです。ただし、M&Aスキーム(手法)名は、「株式譲渡」「事業譲渡」のように、「譲渡」が採用されています。

窯業は中小企業が多いため、経営者が引退する際、かつては廃業する、あるいは親族に事業を引き継いでもらうといった方法が一般的でした。しかし、今は会社や事業を第三者へ売却・譲渡するケースも増えています。

株式譲渡とは

株式譲渡とは、中小企業の場合、経営者が保有している会社の発行株式を売却先に譲渡し、経営権を渡すM&Aスキーム(手法)です。買収側企業は、売却される企業の持つ株式の過半数を取得すれば経営権の掌握が可能となります。全株式を取得すれば完全子会社化できるでしょう。

株式譲渡は、基本的に株主が代わるだけであり、社員や取引先との契約などが変わることはありません。外部に対する影響も抑えられます。他のM&A手法と比較して手続きが簡単なため、中小企業のM&Aでによく見られる手法です。

ただし、買い手側は債権債務を全て引き受けることになるため、偶発債務などの簿外債務のリスクを見過ごす場合もあり注意が必要になります。このリスクを回避するためには、コストや時間がかかったとしても、事前のデューデリジェンス(買収監査)をしっかり行うことが肝要です。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、会社の事業を第三者に譲渡することです。譲渡されるものは、設備やノウハウ・ブランドなどの権利だけではなく、人材や資産なども含まれます。事業に関するものであれば、有形・無形は問いません。会社組織は、返事あの経営者のまま存続します。

事業譲渡では、売り手にとって負担の大きな事業や、主要ではない部門を切り離すための譲渡が可能です。ただし、会社法の規定により、売却した事業を20年間、同一地区および隣接地区で行えない競業避止義務を負います。

取引先との契約や従業員との労働契約は全て個別に締結し直す必要があるため、手続きは非常に煩雑です。

事業承継とは

事業承継とは、経営者が後継者に会社の経営を引き継ぐことです。かつては、経営者の子どもなど親族を後継者にする親族内承継が主流でした。しかし現在は、子どもがおらず後継者が見つからない、子どもがいても大手企業などに就職して会社を継ぎたがらない、といった状況が増えています。

自社の役員・従業員を後継者とする社内承継の場合は、後継者による株式取得のための資金問題があり、承継が難しいケースも少なくありません。このような事情により、近年はM&Aによる第三者への事業承継を選択する中小企業が増えています。

【関連】M&Aの競業避止義務とは?該当事例と注意点を解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2. 窯業のM&A・事業承継・売却事例

現在、窯業におけるM&Aは積極的に行われており、この章では、実際の窯業のM&A・事業承継・売却事例を紹介します。

  • 東海カーボンによるTokai Carbon Koreaの株式追加取得
  • ヨータイによる柴田窯業原料の事業譲受
  • セントラル硝子によるガラス製造子会社の全株式譲渡
  • アサヒ衛陶による友琪貿易の子会社化
  • 三井化学と日本エム・ディ・エムの資本業務提携
  • AGC Biologics社によるNovartis社の遺伝子治療薬工場の買収
  • AGCによる米国Cardinal Glass Industriesへの事業譲渡
  • 日本ルツボによる日本ピーシーエスの子会社化
  • 日本コンクリート工業による東北ポールの子会社化
  • 太平洋セメントによるインドネシア企業との資本業務提携
  • 美濃窯業による美州興産の子会社化
  • 日本コンクリート工業によるフリー工業の子会社化
  • 花王による美濃窯業へのセラミックス事業譲渡
  • 旭硝子による子会社のTQMPglass Manufacturing Corporationへの株式譲渡

東海カーボンによるTokai Carbon Koreaの株式追加取得

2022(令和4)年5月、東海カーボンは連結子会社であるTokai Carbon Koreaの株式追加取得を発表しました。現在の持株比率44.4%を47.4%まで買い増します。取得先は第2位株主であるKC Co., Ltd.、取得価額は48億円です。

東海カーボンは、黒鉛電極・カーボンブラック・ファインカーボン・スメルティング&ライニング・工業炉および関連製品・摩擦材・負極材の製造・販売を行っています。Tokai Carbon Koreaは、炭素黒鉛製品・CVD-SiCコーティング製品の製造・販売を行っている企業です。

東海カーボンは、Tokai Carbon Koreaの経営安定化と自社グループの企業価値向上のため、株式追加取得を決定しました。

ヨータイによる柴田窯業原料の事業譲受

2022年4月、ヨータイは柴田窯業原料から耐火物原料の製造事業とそれに付随する事業の譲受決定を発表しました。譲受予定時期は同年10月、譲受価額は公表されていません。ヨータイは、耐火物・ニューセラミックスの製造・販売とその関連エンジニアリング事業を行っています。

ヨータイとしては、原料の内製化を実現することで収益力の維持・競争力強化が図れると判断しました。

セントラル硝子によるガラス製造子会社の全株式譲渡

2022年4月、セントラル硝子は連結子会社でアメリカのCarlex Glass America, LLCと欧州のCarlex Glass Luxembourg S.A.のそれぞれの全株式を、アメリカのAtlas Holdings LLCが保有する投資ファンドが設立した特別目的会社への譲渡を発表しました。譲渡時期は未定、譲渡価額は公表されていません。

セントラル硝子は、ガラス製品・化学製品・ガラス繊維製品。フッ素樹脂、その他合成樹脂製品・土木建築材料。電子部品とその材料・医療器具とその材料・土壌改良資材・ 農業用機材などの製造・加工・販売などを行っている企業です。

Carlex Glass America, LLCとCarlex Glass Luxembourg S.A.は、自動車用ガラスの製造・販売を行っています。セントラル硝子としては、ガラス事業の見直しをした結果、海外のガラス事業からは撤退することを決定しました。

アサヒ衛陶による友琪貿易の子会社化

2022年4月、アサヒ衛陶は友琪貿易の株式59.2%を取得し子会社化しました。取得価額は公表されていません。アサヒ衛陶は、衛陶業として衛生機器・洗面機器の製造・仕入れ・販売を行っている企業です。

友琪貿易は、古物商として紙・古紙・ガラス・廃ガラス・プラスチック・廃プラスチック・非鉄金属・非鉄金属屑・日用品雑貨・化粧品・衣料用繊維製品のリサイクル・売買・輸出入貿易、インターネットを介した通信販売業などを行っています。

アサヒ衛陶としては、今後、友琪貿易において日用品・雑貨類・陶器類などのライフスタイル事業製品の販売業を行う考えです。

三井化学と日本エム・ディ・エムの資本業務提携

2022年1月、三井化学と日本エム・ディ・エムは資本業務提携を締結し、三井化学が日本エム・ディ・エムの株式30.00%を取得しました。取得価額は公表されていません。日本エム・ディ・エムは、医療機器の輸入販売・開発製造、全国主要病院・医師への医療商品紹介などを行っている企業です。

三井化学は、ライフ&ヘルスケアソリューション事業、モビリティソリューション事業、ICTソリューション事業、ベーシック&グリーン・マテリアルズ事業の各分野においてさまざま製品の製造・販売を行っています。

業務提携の内容は、 三井化学グループのヘルスケア分野における開発・製造機能の活用、日本エム・ディ・エムグループの医療機器分野における薬事・開発・販売ネットワークの活用、協業による事業開発、海外事業の促進です。

AGC BiologicsによるNovartisの遺伝子治療薬工場の買収

2021年7月、アメリカのAGC BiologicsはNovartisが保有する遺伝子治療薬工場を買収する契約を締結しました。AGC Biologicsは、ガラス・化学品・セラミックスなどの開発・販売等の事業を展開している会社です。

このM&Aにより、AGC Biologicsは、この工場をネットワークに取り込んで、さらなるサービスの拡張を図ります。

AGCによる米国Cardinal Glass Industriesへの事業譲渡

2021年6月、AGCは北米建築用ガラス事業を、アメリカのCardinal Glass Industriesに事業譲渡しました。譲渡価額は、4億5,000万USドルです。Cardinal Glass Industriesは、住宅向けの窓・ドア用ガラスの開発・製造・販売を行っています。このM&Aにより、さらなる事業の発展につながることが目的です。

日本ルツボによる日本ピーシーエスの子会社化

2021年4月、日本ルツボは塗料循環装置等の製造・販売を行っている日本ピーシーエスの全株式を取得し完全子会社化しました。日本ルツボは、耐火物事業・エンジニアリング事業・不動産事業などを行っている会社です。

このM&Aにより、両社のシナジー効果創出を目指し、グループ企業の価値向上・持続的な成長を図ります。

日本コンクリート工業による東北ポールの子会社化

2021年2月、日本コンクリート工業は東北電力の子会社である東北ポールの株式を取得し、子会社化するための譲渡契約を締結しました。持株比率は64.3%です。日本コンクリート工業は、ポール・パイル・土木製品等の製造・販売と、これに伴う製品の輸送・工事請負事業を展開しています。

東北ポールは、コンクリートポールやパイルなどを製造・販売し、土木・建築工事の設計と施工を行う会社です。このM&Aにより、日本コンクリート工業は、グループの成長と製品供給の一層の安定化を推進させ、安心・安全で豊かな社会づくりに貢献することを目指します。

太平洋セメントによるインドネシア企業との資本業務提携

2021年1月、太平洋セメントはインドネシアでセメント事業や資源・環境事業を展開するPT Semen Indonesia(Persero)Tbkグループと資本提携契約を締結しました。資本提携で出資する額は、約2億2,000万USドルです。

このM&Aにより、太平洋セメントは、インドネシアのセメント市場の拡充を図るとともに、国内外においてさらなる事業領域の拡充、企業価値向上、持続的な発展を目指します。

美濃窯業による美州興産の子会社化

2018(平成30)年11月、美濃窯業は連結子会社である美州興産を、株式交換で完全子会社化することを決定しました。美州興産は、建築床材料と特殊舗装材料の製造や施工事業などを手掛けています。美濃窯業としては、効果的で効率的な事業展開、両社における収益力・競争力の向上が目的です。

日本コンクリート工業によるフリー工業の子会社化

2018年1月、日本コンクリート工業は土木工事会社のフリー工業の株式を64.5%取得し子会社化しました。取得価額は非公開です。日本コンクリート工業は、フリー工業の持つ工事に関する高い技術力と、自社の製品開発力を合わせることで、高いシナジー効果が得られるとして株式取得に至っています。

花王による美濃窯業へのセラミックス事業譲渡

2017(平成29)年8月、花王は高機能セラミックスの製造販売事業を、美濃窯業に譲渡することを決定しました。譲渡価額は公表されていません。美濃窯業は、ニューセラミックスや耐火物の製造販売をしている会社です。このM&Aによって、美濃窯業はこの分野での事業をさらに強固にすることを目指しています。

旭硝子による子会社のTQMPglass Manufacturing Corporationへの株式譲渡

2017年6月、旭硝子はフィリピンで行っていた建築用ガラス事業から撤退することを発表しました。旭硝子は、連結子会社であるAGCフラットガラス・フィリピンの株式持分全てを、TQMPglass Manufacturing Corporationに売却することを決定しています。売却額は非公開です。

フィリピンは、旭硝子のガラス事業のグローバル拠点の1つでしたが、事業内容の選択と集中の面からM&Aが行われています。

【関連】M&A成功事例50選!【2021年最新版】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

3. 窯業界のM&A・事業承継・売却動向

窯業界のM&A・事業承継・売却動向はどうなっているのでしょうか。ここでは、以下3つの特徴を解説します。

  1. 出荷量が減少し市場縮小が進んでいる
  2. 資源価格の高騰により経営難に陥る企業が多い
  3. 同業種·異業種によるM&Aが増加

①出荷量が減少し市場縮小が進んでいる

窯業では、年々出荷量が減少しています。特に住居用のタイルやキッチン用品などを扱う陶磁器産業は近年、売上の落ち込みが顕著です。今後、窯業業界はますます厳しさを増していくことでしょう。窯業は中小企業によって支えられています。

しかし、国内需要の減少と中国製品に代表される手頃な価格の輸入品の増加の影響や、ブランドの発信力の弱さなどが原因で、窯業市場は縮小の一途をたどっている状況です。

②資源価格の高騰により経営難に陥る企業が多い

現在、窯業は原料不足と資源価格の高騰が頭痛の種です。国内では、資源の枯渇による原料生産が減少しています。中国をはじめとする世界の資源需要の高まりによって、天然資源の価格上昇が経営状況を圧迫し、廃業に追い込まれるケースも見られるようになりました。

窯業業界は中小企業が多いため、価格上昇などのグローバルな変化への対応がスムーズにいかないことも多々あります。個々の企業体力では持ちこたえられないのが現状です。

③同業種・異業種によるM&Aが増加

近年は、窯業でもM&Aに強い関心を向けている経営者が増えています。実際にM&Aが行われるケースも増加傾向です。同業種でM&Aを行うメリットには、生産能力の上昇が挙げられます。窯業は同業であれば設備や資源など似ていることが多くあるのが特徴です。

お互いに保有している技術を統合することで、よりよいサービスを提供できます。買収した企業が持っている独自の販売経路も引き継げるため、窯業業界でのシェア拡大にもつなげられるでしょう。

一方、異業種によるM&Aでは、資本・技術・人材などを一から確保することなくコストカットできます。速やかに事業をスタートできるでしょう。

【関連】製造業(メーカー)のM&A・売却・買収!最新動向や成功事例、価格相場、注意点を解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

4. 窯業のM&A・事業承継・売却が行われる背景

窯業で、M&A・事業承継・売却が活発に行われています。なぜ、それほどM&Aが行われるのでしょうか。この章では、その背景に見られる3つの特徴を解説します。

  1. 後継者問題を抱えている
  2. グローバル化を希望するも自社のみでは厳しい
  3. 将来性に不安を感じている

①後継者問題を抱えている

窯業は中小企業の経営が多く、親族での事業承継がうまくいかない場合、後継者を確保することが難しくなります。特に窯業の経営者は高齢化が進んでいるため、早急に後継者を探さなければなりません。しかし、事業承継にふさわしい人材が見つからないときは、廃業に追い込まれることもあります。

その点、M&Aによって外部からの後継者を受け入れれば、事業承継がスムーズに進み、後継者問題を解決できるでしょう。

②グローバル化を希望するも自社のみでは厳しい

窯業でも、国内消費の落ち込みをカバーするためには、海外へ向けた発信·輸出が不可欠です。しかし、実際に海外へ進出するためには、情報の入手・現地のビジネスパートナーとのコンタクト・情報発信方法の確立など、さまざまなコストがかかります。

個々の中小企業では対応するのが難しいと言わざるを得ません。M&Aにより海外事業に強い企業と手を結べば、資本面の問題がクリアできます。世界への活路を見いだすことも可能でしょう。

③将来性に不安を感じている

現在、窯業は慢性的な人手不足や天然資源の価格上昇により、経営が圧迫されている企業も少なくありません。自社や業界の将来性に不安を感じている経営者も多く見受けられます。その結果として、M&Aによる売却や事業承継を選択するケースが増えているでしょう。

【関連】製造業(メーカー)の事業承継マニュアル!流れや相談先、中小製造業の成功事例も解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

5. 窯業のM&A買収相場

実際に自社の売却・買収を検討する場合、買収・売却相場や価格の算出方法を理解しておくと、おおよその目安を把握できるでしょう。ここでは、窯業のM&Aにおける買収・売却価格の算出方法を解説します。

自社の買収価格を算出する方法

一般的に、売り手側は自社の売却価格を高く予想し、逆に買い手側は買収価格を低くする傾向にあります。特に窯業は中小企業が多く、企業同士の結びつきが強いことも多々あるため、あからさまな値引きや安価での契約を進めると、その後、事業を行う際に影響が出るでしょう。

M&Aを行ううえでは、正しく企業価値を判断して進めることがなによりも大切です。企業価値の算出方法には以下の3つの系統があります。

  • コストアプローチ
  • インカムアプローチ
  • マーケット・アプローチ

コストアプローチ

コストアプローチは、企業の純資産の時価評価額などを基にして、企業価値を算出する方法の総称です。コストアプローチの代表的な算出方法として、簿価純資産法と時価純資産法があります。

簿価純資産法

簿価純資産法は、企業のある時点での貸借対照表の純資産額を企業価値と考える方法です。株式や債券などの発行や売買が頻繁でない中小企業にとってはわかりやすい手法ですが、もともと簿価が適正な資産・負債であるとは言い難いため、簿価純資産法がM&Aで使用されることはありません。

時価純資産法

時価純資産法は、企業の資産や負債を全て時価に置き換えてから、純資産額を算出する方法です。企業のそのときの状況がわかるため、客観的に企業価値を判断できます。ただし、企業が将来、生み出すであろうキャッシュフローの評価が入っていないため、注意が必要です。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、将来生み出すであろうキャッシュフロー・利益・配当などを、現在価値に割り引いて、企業の価値評価を行う方法の総称です。代表的な算出方法には、DCF法と収益還元法があります。

DCF法

DCF(Discounted Cash Flow)法は、予想されるキャッシュフローを適切な割引率で割り引いて、現在価値で算出する手法です。将来的な事業計画や収益、M&Aによる効果などを盛り込めます。

ただし、将来的な収益の算出には時間やコストがかかることや、キャッシュフローの見積もりに不確定な要因が入るため客観性に疑問があることなどがデメリットです。

収益還元法

収益還元法は、企業の収益を資本還元率で除し、1株当たりの株価に反映させて企業価値を算出する方法です。DCF法による判定には3年から5年の事業計画が必要ですが、収益還元法は1年分の事業計画を基にして評価できるので、簡単に低コストで行えます。

ただし、一定の収益が上がる見込みで評価するため、大きな収益の変動が予想される場合には適していません。

マーケット・アプローチ

マーケット・アプローチは、市場価格を基にして、企業価値を算出する方法の総称です。対象企業と似ている上場企業の株式市場価格を比較することで、間接的に企業を評価できます。

トレンドを反映しやすいメリットがある一方、類似の上場企業がない場合や、ビジネスモデルが異なるために個々の企業の実業を反映しにくい面がデメリットです。代表的な算出方法には、市場株価平均法・類似会社比準法・類似取引比較法があります。

市場株価平均法

市場株価平均法は、企業の株価を基にして企業価値を判断する手法です。主に上場企業の売却のときに使われます。過去の取引価格も1~6カ月程度取り入れて平均株価を算出するので、客観性を保てるでしょう。ただし、不自然な株価の変動が多くあるような場合は、その時期を省いて評価します。

類似会社比準法

類似会社比準法は、売却側企業と類似した事業展開をしている上場企業を複数選び、それらの平均株価を基にして売却企業の評価を行う手法です。財務諸表から配当・利益・純資産を調整し、算出した株価を使います。手早く価値算出を行いたいときや、将来的に上場を目指している企業で使われることが多いです。

類似取引比較法

類似取引比較法は、類似しているM&Aで成立した売買価格をもとに、企業価値を評価する手法です。類似会社比準法と比べると、買収プレミアムがつくことが多く、評価価格は高くなる傾向があります。

【関連】M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?算定方法の種類、メリット・デメリットを解説【事例・図解あり】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

6. 窯業のM&A・事業承継・売却・譲渡を成功させるポイント

窯業のM&Aで、事業承継・売却・譲渡を成功させるポイントを解説します。次の5つがポイントです。それぞれの内容をしっかり確認して、理想的な形でのM&Aを目指しましょう。

  1. 計画的に準備を行う
  2. M&A・事業承継・売却の目的を明確にする
  3. M&A・事業承継・売却先を選定する
  4. 譲れない条件を決める
  5. M&A・事業承継・売却の専門家に相談する

①計画的に準備を行う

窯業でM&A・事業承継・売却・譲渡を成功させるためには、計画的に準備をしておくことが重要です。M&Aが成立するためには、短くても3カ月程度、長い場合は1年以上かかります。

M&Aを進めている期間中の通常業務に、支障をきたすことなく効率的に交渉していくためには、まずは計画書を策定しておくとよいでしょう。M&A·事業承継·売却·譲渡を進める前に、問題点の洗い出しを行い、改善できるものは改善しておくと効果的です。

②M&A・事業承継・売却の目的を明確にする

窯業でのM&Aの目的は、事業承継や経営難による譲渡などさまざまです。この目的をはっきりさせておくことが重要です。M&Aを進めるうえでは、多くの場面で意思決定をしなければなりません。自社が何を目的としてM&Aを行うのかを明確にしておかなければ、判断を見誤る可能性もあります。

判断を見誤ってしまえば、自社が希望する条件でM&Aを成立させるのは難しくなるでしょう。経営者自身が、明確な目的を見失わないことが重要です。

③M&A・事業承継・売却先を選定する

M&A・事業承継・売却先を選定するうえでは、どのような効果が得られるか、互いに利益があるかなどを総合的に判断することが重要です。自社のみでも相手先を探したり選定したりできますが、的確な判断をするためには専門的な見解が必要になる場合もあります。

より多くのM&Aのメリットを享受するためには、M&A仲介会社など専門家に相談しながら相手先を選定することが得策です。

④譲れない条件を決める

M&Aの交渉に臨む前には、経営者が売却先に望むことを決めておきましょう。たとえば、資金調達・従業員の継続雇用・取引価格の下限価格・譲渡時期などを順位づけし譲れない条件も決めておきます。優先順位をつけることで、双方が納得できるM&Aが成立する確率も高くなるでしょう。

⑤M&A・事業承継・売却の専門家に相談する

窯業のM&A・事業承継・売却・譲渡を行う際、交渉や手続きなど専門的な知識と経験が必要となるプロセスばかりです。効率的に窯業のM&A・事業承継・売却・譲渡を進め、希望条件で成立させるためには、M&A仲介会社など専門家のサポートは欠かせません。

M&A仲介会社に依頼すれば、計画・戦略の策定や最適なスキームの選択など、一括したサポートが受けられます。早い段階から相談しておくと、効率よく窯業のM&A・事業承継・売却・譲渡を行えるでしょう。

【関連】コンクリート製造業界のM&Aのメリットとは?成功ポイント・注意点も解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

7. 窯業のM&A・事業承継・売却の際におすすめの相談先

窯業業界でのM&Aや事業承継を成功させるためには、自社に合ったスキームの選択・戦略策定などの知識が必要になります。そのための専門家をお探しでしたら、M&A総合研究所にご連絡ください。

M&A総合研究所では、M&Aや事業承継の専門的な知識と経験豊かなM&Aアドバイザーが専任となり、相談時からクロージングまでM&Aを徹底サポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかりますが、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です)。随時、無料相談を受け付けていますので、窯業のM&Aや事業承継をご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
電話で無料相談
0120-401-970
WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

8. 窯業のM&A・事業承継・売却まとめ

窯業業界は、市場自体が縮小傾向です。窯業自体に将来的な不安を抱える経営者も多く、企業をどのように維持・発展させていくかが勝負となります。そこで、窯業業界でのM&Aや事業承継という選択肢は大きな意味を持つでしょう。本記事の概要は以下のようになります。

・窯業界のM&A・事業承継・売却動向
→後継者問題を抱えている
→グローバル化を希望するも自社のみでは厳しい
→将来性に不安を感じている

・窯業のM&A・事業承継・売却・譲渡を成功させるポイント
→計画的に準備を行う
→M&A・事業承継・売却の目的を明確にする
→M&A・事業承継・売却先を選定する
→譲れない条件を決める
→M&A・事業承継・売却の専門家に相談する

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 譲渡企業様完全成功報酬!
  2. 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
  3. 上場の信頼感と豊富な実績
  4. 譲受企業専門部署による強いマッチング力
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。

>>完全成功報酬制のM&A仲介サービスはこちら(※譲渡企業様のみ)

関連する記事

新着一覧

最近公開された記事