ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収・事業承継!M&A事例や動向、価格相場を解説

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

当記事では、ガラス製造・土石製品製造におけるM&A・売却・買収・事業承継の業界動向や価格相場について、事例を交えて解説します。ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収のスキーム、M&Aのメリットや成功するポイントも紹介します。

目次

  1. ガラス製造・土石製品製造業界の動向
  2. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収・事業承継の動向
  3. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収・事業承継の事例4選
  4. ガラス製造・土石製品製造におすすめのスキーム
  5. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収価格相場
  6. ガラス製造・土石製品製造のM&A・事業承継によるメリット
  7. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収・事業承継を成功させるポイント
  8. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収・事業承継まとめ
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1. ガラス製造・土石製品製造業界の動向

ガラス製造・土石製品製造業におけるM&A・事業承継について解説する前に、まず、業界の特徴や今後の展望について説明していきます。

ガラス製造・土石製品製造とは

ガラス製造・土石製品製造とは、ガラス・セメント・陶磁器・建築用における粘土・炭素・黒鉛などの製品を造る事業者のことです。

ガラス製造を行う事業者は、製造物の種類によって板ガラス製造、加工・ガラス容器製造、理化・医療用ガラス器具製造、卓上・厨房用ガラス製造、ガラス繊維製造などに分けられます。

土石製品の製造を行う事業者は、セメント・生コンクリート製造、瓦やレンガの建設用粘土製品製造、食卓・厨房用の陶磁器製造、便器・浴槽などの衛生陶器製造、陶器の置物を造る陶磁器製置物製造などです。

そのほかにも、電気用セラミック製品などを造る電気用陶磁器製造や陶磁器製タイル製造、耐火れんが製造、炭素・黒鉛製品製造などが含まれます。

ガラス製造業では、板ガラスの製造が中心で、製造品は電機メーカーやスマホメーカー、建設業者、自動車メーカーなどへ卸されます。

これに対して、土石製品製造業では、売上高の上位を占める生コンクリート・陶磁器製造・電気用陶磁器製造を営む事業者が業界をけん引しているのが現状です。

ガラス製造・土石製品製造業界の特徴

ガラス製造・土石製品製造業界は、不動産や住宅、土木業界の影響を受けやすく、経済動向に左右されがちです。土石製品であるセメントは、ほとんどが建設用コンクリート製品に加工されており、約70%が生コンクリートとなります。

セメントの製造は大きなプラントを必要とするため、大企業でなければ製造が難しいですが、セメントを材料とするコンクリート製品は大規模プラントがいらないために中小企業が多いです。これに対して、家庭用の陶磁器製品は中小零細企業が多く、産業用は大手メーカーの取り扱いが多い特徴が見られます。

ガラス製造・土石製品製造業界の市場規模

総務省による平成30年経済センサス基礎調査を見ると、窯業・土石製品製造業の市場規模は16兆7,641億円です。このうち、ガラス製品製造業の市場規模は約3兆4,875億円です。 

ガラス製造・土石製品製造業界の課題と展望

ガラス・土石製品業界では、経済情勢に左右されやすい業界の体質改善が課題として挙げられています。近年、2020年の東京オリンピック開催決定により公共工事が増えてガラス・土石製品の需要が増加したため、市場は好調でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行などで、現在の経済は不安定な状況です。

経済動向に左右されやすいガラス・土石製品業界では、今後も市場が不安定になる可能性が高いです。ガラス製造・土石製品製造業界では、世界・日本の経済情勢に左右されにくい経営体質を構築するよう改善しなければなりません。

2. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収・事業承継の動向

ガラス製造・土石製品製造業では、どのような背景・事情により、会社や事業の譲渡・承継が行われているのでしょうか。ここでは、ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収動向を紹介します。

  1. 国内需要の低迷によりアジア圏への進出が増加
  2. 国内では業界再編の動きが活況
  3. 2022年以降は市場環境が悪化する
  4. 経営者の高齢化によるM&Aも増加

①国内需要の低迷によりアジア圏への進出が増加

ガラス製造・土石製品製造におけるM&A・売却・買収動向の1つ目は、国内需要の低迷によるアジア圏への進出増加です。ガラス製造・土石製品製造業の市場は、成熟から衰退期へと移行したために、大幅な成長は期待できません。

そこで、M&A・買収を経て成長が見込まれるアジア圏などの海外市場へ進出し、事業の拡大・企業価値の向上などを図っています

②国内では業界再編の動きが活況

ガラス製造・土石製品製造におけるM&A・売却・買収動向の2つ目は、国内で活況を迎える業界再編の動きです。

2015年に経済産業省が公表した報告書および板ガラス協会の「板ガラスの出荷実績推移表」によると、国内におけるガラスの出荷額は、ピークを迎えた1990年度から減少に傾き、2014年度にはピーク時から約4割も減って、2019年までは横ばいに推移しています。

ガラス製造業界では、需要が見込める新興国などの企業に目を向けたM&Aに注力するほか、国内では高機能・高付加価値を付けたガラス製造品を供給する企業を買収して、必要な技術・人材の確保を図っている状況です。

参考:板硝子協会「板ガラス・加工ガラスの生産実績」

③市場環境の悪化による海外進出の増加

ガラス製造・土石製品製造におけるM&A・売却・買収動向の3つ目は、2022年以降に考えられる市場環境の悪化です。土石製品製造業界では、人口の減少・労働者の不足・建築工法の変更などの要因により、国内における需要が減っています。

東京オリンピック・パラリンピックによる建設需要、災害対策や老朽化による道路・橋などの補修工事によって2021年度まで需要の回復が起こったものの、これは一時的な復調でした。

2022年を境に需要が減少し、市場環境が徐々に悪化しているので、各社はアジアやオセアニアなど海外への進出を図り、需要の確保に取り組んでいる状況です。

④経営者の高齢化によるM&Aも増加

ガラス製造・土石製品製造におけるM&A・売却・買収動向の4つ目は、経営者の高齢化によるM&Aの増加です。生コン・コンクリート製品製造業者の多くは中小企業であるため、経営者の高齢化問題に直面している企業も少なくありません。

このような現状から、高齢化の問題を抱える企業は、自社や事業のM&A(事業承継を含む)を行うケースが増加しています。

3. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収・事業承継の事例4選

ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収では、どのような企業・事業が譲渡の対象なのでしょうか。ここでは、ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収事例を紹介します。

  1. 石塚硝子によるヒサ・コーポレーションへの久金属工業の全株式譲渡
  2. 日邦産業による室町ケミカルとの資本業務提携
  3. AGCによる北米建築用ガラス事業の譲渡
  4. AGCによるAstraZeneca社の買収

①石塚硝子によるヒサ・コーポレーションへの久金属工業の全株式譲渡

石塚硝子は、久金属工業の酒類用金属キャップおよび医薬品用フリップオフキャップの製造・販売を行う連結子会社の全株式を、ヒサ・コーポレーションに売却することを決定しました。この決定は、両社の企業価値向上を目指したものです。

今回の株式譲渡は、石塚硝子が2022年にガラス瓶の生産拠点である姫路工場の操業を停止し、販売体制を変更した流れを受けたものです。久金属工業の代表取締役である久義裕氏が代表社員を務めるヒサ・コーポレーションへの譲渡が最善と判断されました。

②日邦産業による室町ケミカルとの資本業務提携

日邦産業と室町ケミカルは、資本業務提携に関する合意書を締結しました。

日邦産業は、工業部品や産業資材を取り扱う専門商社で、メーカー機能も持っています。室町ケミカルは、医薬品や健康食品の企画・製造・販売、イオン交換樹脂の販売・処理、給排水処理装置の設計・販売、尿素水(AdBlue®)や機能性接着剤の製造・販売を行っています。

今回の提携により、日邦産業の高機能エポキシ系接着剤の試作・開発能力と、室町ケミカルの機能材料の受託生産能力を組み合わせることが可能になります。

さらに、日邦産業の組立て・量産技術と室町ケミカルの水精製技術を融合させ、水精製ユニットの共同開発を進めます。これにより、両社は事業シナジーを創出し、企業価値の向上を目指します。

室町ケミカル株式会社との資本業務提携に関する合意書締結のお知らせ

③AGCによる北米建築用ガラス事業の譲渡

2021年6月、AGCは、北米建築用ガラス事業を、カーディナルに譲渡すると発表しました。本件M&Aの取引価額は4億5,000万ドル(約495億円)です。

売却側は、1907年に創立された世界最大級のガラスメーカーです。建築材料や自動車向けなどのガラスを中心に、電子部材やその他の化学関連素材を製造・販売しています。対する買収側は、アメリカ・ミネソタ州を拠点とする住宅向け窓・ドア用ガラスメーカーです。

本件M&Aにより、売却側では資産効率の改善を図っています。売却側では、1988年より北米における建築用ガラス事業に参入していましたが、近年は収益力の立て直しが課題です。

④AGCによるAstraZeneca社の買収

2020年6月、AGCは、アメリカにあるバイオ医薬品原薬製造工場をAstraZeneca社から買収することを決定しました。

AGCは、新しい受託案件の増加や既存受託案件の治験から商用段階への移行が多く見込まれるため、この買収により、バイオ医薬品の生産能力を大幅に強化することを狙っています。

【関連】コンクリート製造業界のM&Aのメリットとは?成功ポイント・注意点も解説

4. ガラス製造・土石製品製造におすすめのスキーム

ガラス製造・土石製品製造の会社や事業を他社へ譲り渡す場合、どのようなスキームを選択すればよいのでしょうか。ここでは、ガラス製造・土石製品製造の譲渡におすすめのスキームを3つ取り上げ、それぞれの特徴を解説します。

事業譲渡の特徴

事業譲渡図解

事業譲渡では、自社におけるガラス製造・土石製品製造事業の一部や全部を他社に譲渡します。譲渡の対象は、資産や負債・特許権・営業権・契約などです。譲渡対象を選べるため、ガラス製造・土石製品製造事業のみを譲渡したり、展開する事業のすべてを譲渡したりする選択が行えます。

事業譲渡によるM&Aでは会社に譲渡益が入るため、ガラス製造・土石製品製造事業から撤退する・別事業を始める・経営負担の少ない事業に徹するなど、自社の法人格を残し別事業に注力・専念する場合に有効です。

しかし、事業譲渡では原則として競業避止義務を負う(会社法21条)ことから、定められた期間・エリアでガラス製造・土石製品製造事業の営業が禁止されるため、事業譲渡の後も同事業を行う場合は不向きといえます。

したがって、事業譲渡を選択する場合、譲渡後の事業展開を考慮することも重要です。

【関連】事業譲渡とは?メリットや手続きの流れと注意点を徹底解説!その他スキームとの違いは?

株式譲渡の特徴

株式譲渡図解

株式譲渡では、自社株式の譲渡によって会社の経営権を引き渡すことが可能です。会社のオーナーが変わるだけで会社の営業事態に変化はないため、会社が保有する資産・負債・営業権・契約などはそのまま引き継がれます。譲渡にかかる手間が少なく、譲渡益はオーナーが得られるため引退後の生活費・新会社の立ち上げ費用など、必要な資金の一部に充てられます。

しかし、会社そのものを譲り渡すため、ガラス製造・土石製品製造事業のみの譲渡はできません。簿外債務や偶発債務があっても買い手は引き継ぐことになります。株式譲渡を選択する場合、譲渡後の事業展開・計上漏れの有無を確認することが重要です。

【関連】株式譲渡とは?事業譲渡との違い・適切な活用方法・目的からケースに合わせた対応方法まで解説

事業承継の特徴

事業承継とは、後継者に自社の経営を引き継ぐことをいい、親族や従業員だけでなく第三者にガラス製造・土石製品製造事業そのものを引き継ぐことも可能です。

廃業・倒産せずに事業承継を行えば、取引・雇用契約を維持でき、第三者への承継(M&A)も選択できるため、親族や従業員に会社を任せられる人物がいない場合にも有効なスキームといえます。

ただし、事業譲渡とは異なり事業のすべてが引き継がれるため、負債の承継・旧経営者の遺族が主張する遺留分に見合った金額の支払い・贈与税支払いなどのリスクを後継者に負わせる可能性があります。ガラス製造・土石製品製造で事業承継を選択する場合、後継者が負うリスクを考慮したうえでスキームを決定しましょう。

5. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収価格相場

ガラス製造・土石製品製造会社・事業をM&A・売却・買収する場合、譲渡価格の基準を知るには、どのような手段が用意されているのでしょうか。ここでは、ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収における相場価格を知る方法を解説します。

自社の譲渡価格が相場に近いかを知る方法

買い手から提示された譲渡価格が相場に見合っているか調べる場合、以下の算出法のいずれかを用いて求めるのが一般的です。

  • 時価純資産法
  • DCF法
  • 類似会社比較法

時価純資産法

時価純資産法は、コストアプローチと呼ばれる手法で、時価に置き換えた資産と負債から企業の価値を評価する手法です。保有している資産から負債を引いて、評価額を算出します。

【時価純資産法】

  • 資産の時価-負債の時価

なお、非上場企業は上場企業と会計処理の基準が異なるため、評価の対象となる資産・負債を時価に置き換えていないことがあります。

自社が非上場企業の場合、時価を反映させた時価純資産法を選択して相場を算出しましょう。

DCF法

DCF法は、インカムアプローチと呼ばれる手法であり、将来に得られるキャッシュフローを現在の価格に割り引いて企業価値を算出する手法です。

ガラス製造・土石製品製造事業で獲得するフリーキャッシュフローを加重平均コストで割り引き、現在の価格を導き出します。

【DCF法】

  • フリーキャッシュフロー/(1+割引率)+フリーキャッシュフロー/(1+割引率)²+フリーキャッシュフロー/(1+割引率)³……

DCF法では営業権などを反映させることから、将来の利益を含めた評価が可能です。しかし、自社が作成する事業計画によって企業価値が上下するため、事業計画に高い信ぴょう性と客観性が求められます。

類似会社比較法

類似会社比較法はマーケットアプローチと呼ばれる手法であり、業種・規模が似ている上場企業の指標を用いて自社の価値を算出する方法です。類似する企業の数は、5社程度が目安です。

類似会社比較法の利用では市場の動きを自社の評価に反映させられるため、非上場会社で広く利用されています。

【類似会社比較法】

  • 類似企業の株式時価総額÷類似企業の指標(売上高・営業利益など)=係数
  • 対象企業の指標(類似企業と同じ指標)×係数=企業価値

企業評価価値の算出は専門家に任せた方が良い?

企業評価価値は算出する方法によって異なり、自社にM&Aの専門家がいなかったりM&Aの知識が乏しかったりする場合、相場の価格を正確に計算できないケースもあります。自社のみでM&Aを進めれば譲渡額に正確な企業価値が反映されず、不満を残したまま譲渡が完了するトラブルにもつながりかねません。

ガラス製造・土石製品製造会社や事業のM&A・売却・買収で損を被らないためには、M&Aの専門家に協力を依頼することをおすすめします。

6. ガラス製造・土石製品製造のM&A・事業承継によるメリット

ガラス製造・土石製品製造のM&Aでは、どのようなメリットを得られるのでしょうか。ガラス製造・土石製品製造におけるM&Aのメリットは、主に以下6点が挙げられます。

  1. 後継者問題の解決
  2. 自社・事業の経営を継続できる
  3. 大手企業の傘下に入り安定経営
  4. 従業員の雇用先を確保する
  5. 単独では難しい海外進出もできる
  6. 譲渡・売却益の獲得

①後継者問題の解決

1つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aによるメリットは、後継者問題が解決できることです。

他社へのM&A(事業承継を含む)を選択すれば親族・社内から後継者を探す必要がなく、株式譲渡や事業譲渡などのスキームを用いることで会社・事業の譲渡が可能です。

親族・従業員の中に後継者となる人物がいない場合や事情によりすぐに経営を引き継ぎたい場合でも、第三者を後継者に据えられるため後継者問題を解決できます。

中小規模の企業が多いガラス製造・土石製品製造会社は、個人保証や担保が後継者問題を解決できない要因となるケースも少なくありません。M&Aによって会社を譲渡すれば、個人保証や担保も引継いでもらえる可能性があります。

②自社・事業の経営を継続できる

2つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aによるメリットは、自社・事業の経営を継続できる点です。

同業者や関連業者へガラス製造・土石製品製造会社または事業を譲渡すれば、これまで手掛けてきた会社・事業を後世に残せるため、会社・事業に思い入れのある経営者にとって、メリットがあります。

③大手企業の傘下に入り安定経営

3つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aによるメリットは、大手の傘下入りによる経営の安定化です。ガラス製造・土石製品製造業では、市場の縮小に伴い限られた需要を取り合うことが予想されます。

自社の力だけでは市場での競争を勝ち抜けない場合、大手企業へ自社・事業を譲渡して、経営の安定化を図ることが可能です。大手企業の経営資源を共有できれば自社の付加価値を高められるため、市場での競争力を強化できます。限られた需要を確保できるため、ガラス製造・土石製品製造会社または事業をM&Aで譲渡すれば、安定した経営につなげられるのです。

④従業員の雇用先を確保する

4つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aによるメリットは、従業員の雇用先を確保できる点です。廃業や事業からの撤退を選ぶと従業員を解雇しなければなりませんが、M&Aによる譲渡を選択すれば買い手に従業員の雇用を引き継いでもらえます。

株式譲渡のスキームでは雇用契約がそのまま承継され、事業譲渡の場合は従業員の同意を得て買い手側が再契約を結べば、雇用の引き継ぎが可能です。

⑤単独では難しい海外進出もできる

5つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aによるメリットは、単独では困難といえる海外進出を可能とする点です。

ガラス製造・土石製品製造業では、国内市場の縮小から海外に目を向ける企業も少なくありません。とはいえ、海外に進出するにはコスト・時間・経験などを必要とするため、自社のみで行うと失敗に終わる可能性もあります。

M&Aで海外企業を買収すればゼロの状態から事業を立ち上げる必要がなく、対象企業や事業が保有する営業基盤・販路・人材・技術・ノウハウも獲得できるため、スムーズな海外進出が可能です。

⑥譲渡・売却益の獲得

6つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aによるメリットは、譲渡・売却益の獲得です。ガラス製造・土石製品製造事業の廃業・撤退を選ぶと、後処理のために費用を支払う必要があります。

しかし、第三者へのM&Aを活用すれば譲渡した会社・事業の対価として、譲渡・売却益を獲得できるのです。

会社やオーナー(株主)に譲渡・売却益が入り、借入金返済や既存事業への注力・新会社立ち上げの費用・老後の生活費など必要な資金の一部を得られるため、買い手が見つかればまとまった資金を確保できるメリットがあります。

7. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収・事業承継を成功させるポイント

ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収では、どのような点を押さえればよいのでしょうか。ここでは、ガラス製造・土石製品製造におけるM&A・売却・買収を行う際のポイントを、売却側・買収側それぞれの立場から解説します。

売却側のポイント

ガラス製造・土石製品製造のM&Aで、売却側が押さえるべきポイントは、主に以下の5点が挙げられます。

  • 計画的に準備を行う
  • 売却するうえでの希望条件を伝える
  • M&Aの目的を明確にする
  • 人材や収益性などの強みをまとめる
  • M&Aの専門家に相談する

計画的に準備を行う

1つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aで売却側が押さえる成功のポイントは、計画的に準備を行うことです。

M&Aでは、スキームや対象企業の選定・交渉や面談・デューデリジェンスの対応・契約手続きなどの過程を経なければなりません。スムーズにM&Aを進めるには、計画的な準備が必要です。

リスクの洗い出しや財務状況の改善、在庫・株主の整理などを事前に行い、会社・事業を譲渡する体制を整えておけば自社が望む期間での売却が可能になり、売却の機会を逃すリスクも軽減できます。

売却するうえでの希望条件を伝える

2つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aで売却側が押さえておく成功のポイントは、売却の希望条件を伝えることです。

希望する条件は会社ごとに異なるため、交渉・面談ではっきりと買い手候補に伝えることが重要です。譲渡価格・取引や雇用契約継続などの希望条件を事前に洗い出しましょう。

希望条件を伝えにくい場合、M&A仲介会社などの専門家をとおして条件を伝えるのもよいでしょう。

M&Aの目的を明確にする

3つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aで売却側が押さえる成功のポイントは、M&Aの目的を明確にすることです。

M&Aを進める場合、目的によって選択するスキームや交渉の仕方などが異なります。M&Aの目的を曖昧にすると、誤ったスキームを選んでしまった・交渉先が見つからない・交渉が長期間に渡るなど、望んだM&Aに至らない事態も想定されます。

後継者問題の解消、会社・事業の継続、取引・雇用契約の継続、他事業への集中など、自社の目的を明らかにしてからM&Aを進めるのが望ましいです。

人材や収益性などの強みをまとめる

4つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aで売却側が押さえておく成功のポイントは、自社の強みをまとめることです。

買い手の目に留まり交渉の場へと進めるためには、同業者よりも秀でている点をアピールすることが必要です。自社の価値を見直して保有する人材や技術・ノウハウ・販路・事業エリアなどの特徴を洗い出し、自社の収益・取引数・在庫などのデータをまとめましょう。

データを提示することで買い手は承継後の経営計画を立てやすくなるため、交渉がスムーズに進みやすくなります。

M&Aの専門家に相談する

5つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aで売却側が押さえておく成功のポイントは、M&Aの専門家に相談することです。

M&Aを成功させるためには、業界やM&Aに関する知識だけでなく高い交渉力も必要になります。自社のみで進めると、交渉先が見つからない・交渉が決裂した・不当な条件をのんでしまったなど、希望のM&Aからかけ離れてしまう可能性もあるでしょう。

M&Aの専門家に相談すれば、各専門家が持つネットワークから交渉先を探し、ふさわしい譲渡額・スキームのアドバイスや交渉・契約手続きなどのサポートを受けられます

相談先にはM&A仲介会社・地元の士業・金融機関・公的機関などがあるため、自社に合った機関にサポートを依頼するとよいでしょう。

買収側のポイント

ガラス製造・土石製品製造のM&Aで、買収側は以下の3つのポイントを意識して行うことが大切です。

  • デューデリジェンスをきちんと行う
  • 買収先の従業員が離職しないようにする
  • M&Aの専門家に相談する

デューデリジェンスをきちんと行う

1つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aで買収側が押さえておくポイントは、デューデリジェンスの徹底です。デューデリジェンスでは、売却側企業における財務などの状態を調査します。

調査を怠ると、簿外債務や偶発債務を抱えるなどのリスクも考えられるため、専門家に依頼し十分に調査することが重要です。デューデリジェンスには財務・法務・税務・ITなどの調査があるため、必要なものを選んで調査するのが一般的です。

買収先の従業員が離職しないようにする

2つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aで買収側が押さえておくポイントは、買収先の従業員が離職する事態を避けることです。

買収後に従業員が会社を離れてしまうと、承継した事業の運営に支障をきたし、新たに人材を確保するとなればそれなりの時間を要します。従業員の離職を避けるためには、待遇を改善したり労働環境を整えたりするなど、対策を講じることも必要です。

M&Aの専門家に相談する

3つ目に挙げるガラス製造・土石製品製造のM&Aで買収側が押さえておくポイントは、M&Aの専門家に相談することです。自社にM&Aの専門家を置いていない・M&Aの経験がない場合は、M&Aの専門家に協力を仰ぎましょう。

専門家へ依頼すれば、交渉先の探索・スキームの選定・買収価格の提示・交渉や契約手続き、デューデリジェンス・PMIの実施といった専門性の高い行程でサポートが受けられます

8. ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収・事業承継まとめ

ガラス製造・土石製品製造のM&A・売却・買収に関して、事業の概要や業界の動向、売却・買収の事例などを紹介しました。ガラス製造・土石製品製造業は、国内需要の減少や業界の再編、東京オリンピック・パラリンピック以降に生じた市場環境の悪化などで、国内外の企業に対してM&Aを実施する企業が増えています。

ガラス製造・土石製品製造のM&Aを検討されている場合は、市場環境が変化する前に売却・買収を実施するとよいでしょう。

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