2023年02月22日更新
リストラクチャリングとは?M&Aとの関係やメリットを解説!
リストラクチャリングとは、経営において企業の価値を高めることを目的とし、事業の再構築や企業のイノベーションに取り組むことです。しかし、リストラクチャリングにはメリットがある一方、デメリットも存在するため、理解を深めて実施の検討を行いましょう。
目次
1. リストラクチャリングとは?
リストラクチャリングとは、英語のrestructuringから派生した言葉で、経営において企業の価値を高めることを目的とし、事業の再構築や企業のイノベーションに取り組むことです。
リストラクチャリングは、M&Aを行う際に用いられる用語でもあるため、M&Aを検討している企業や実施中の方は、ぜひ覚えておきましょう。
リストラクチャリングの意味
リストラクチャリングの意味は広義において、経済や政治、社会全体を根本的な部分から再構築するという意味です。
具体的には、各事業の成長性や収益性、安全性を見直して不採算事業を整理し、高収益が見込める事業に経営資源を集中させ、会社全体の収益構造を改革し、再構築していきます。
リストラクチャリングは、自社の経営部門で実施する場合もあれば、外部の専門家を雇って行う場合もあります。
リストラクチャリングとリエンジニアリングの違い
リストラクチャリングと似た言葉で間違われやすい「リエンジニアリング」という用語があります。
リエンジニアリングとは、リストラクチャリング同様に経営の再構築をするための施策の1つですが、ビジネスの過程に目を向けて再構築することです。
たとえば、企業に不採算事業がある場合、その事業自体を整理するのがリストラクチャリングで、不採算になった原因を考え管理する方法や業務を再構築するのがリエンジニアリングです。
リストラクチャリングとリエンジニアリングの違いを理解しておくと、経営を行う際に事業の見直しができるメリットでもあるので、違いを確認しておきましょう。
リストラクチャリングとM&Aの関係
M&Aには、株式譲渡・事業譲渡・資本提携などのさまざまなスキームがあり、リストラクチャリングの手段として活用する企業も少なくありません。
M&Aによるリストラクチャリングの期待できる効果は以下の通りです。
- 本業とシナジー効果
- 新規事業への取り組み
- 事業の多角化
- 事業規模の拡大
M&Aでリストラクチャリングを行うことで、会社に足りていなかった要素を加えられるため、M&Aで有効活用できる可能性が高いです。
自社の力だけでは事業の発展が厳しいと感じる場合は、M&Aでリストラクチャリングしてみてはいかがでしょうか。
2. リストラクチャリングの方法
ここからは、具体的なリストラクチャリングの方法について解説していきます。
会社ごとによって状況は異なり、活用する手法も変わるため各リストラクチャリングの特徴を理解しておくと、状況を見て的確な判断が下せるでしょう。
リストラクチャリングの方法は以下の通りです。
- 財務リストラクチャリング
- 資産リストラクチャリング
- 債務リストラクチャリング
- 増資リストラクチャリング
- 事業リストラクチャリング
- 業務リストラクチャリング
- M&Aによる買収
それぞれによって特徴が異なるため、各リストラクチャリングの方法を理解して、企業を発展させましょう。
財務リストラクチャリング
財務リストラクチャリングとは、企業の活動によって得た収益から支出を差し引いた金額であるキャッシュフローを改善する目的です。
具体的には、財務諸表の1つである貸借対照表で借方に資産、貸方に負債、純資産が記載されているので、各数値を見直します。
財務リストラクチャリングには以下3種類が挙げられます。
- 資産リストラクチャリング
- 負債リストラクチャリング
- 純資産リストラクチャリング
財務リストラクチャリングは、高度な会計や財務の知識が必要不可欠であるため、公認会計士や税理士、財務コンサルタントなどのプロの専門家に依頼するケースが多いです。
資産リストラクチャリング
資産リストラクチャリングとは、不要な不動産や流動性の高い有価証券などを売却し、キャッシュフローを改善する目的です。
企業の売上や事業に関係のない資産を売却すれば、短期間で資金調達できるだけでなく、売却代金を借入金の弁済に当てることも可能です。
債務リストラクチャリング
債務リストラクチャリングとは、債権放棄・リスケ・DES・DDSなどを利用して債務を削減し、現金の支出を減らすことでキャッシュフローを改善する目的です。
DESとは、企業の債権者がその債権を当該会社の株式に戻すことです。
DESによって会社は有利子負債がなくなるため、支出が少なくなるだけでなく資本が増加します。
DDSとは、既存の債権を劣後ローンなど別の内容の債権に変更し、支払いが先延ばしになり、間接的にキャッシュフローを改善する目的です。
増資リストラクチャリング
増資リストラクチャリングとは、純資産の資本を増強することでキャッシュフローを改善する目的です。
具体的には、DESにより負債を資本金に振り替えたり、外部スポンサーからの増資が挙げられます。
現在の事業を事業リストラクチャリングしたくないが、増資をしてもらいたい際に活用する手法ですが、投資をしてもうらうと返済する義務が発生する義務が生じることは忘れずに覚えておきましょう
事業リストラクチャリング
事業リストラクチャリングとは、複数の事業を行っている企業が各事業を見直し、再構築する事業の選択と集中を図り、キャッシュフローを改善する目的です。
具体的には、不採算事業の売却や廃止、高収益や成長が望める事業への経営資源の集中投下が挙げられます。
PPM分析などのフレームワークを活用して、自社の事業の特徴を見える化し、現状を把握するとわかりやすいでしょう。
業務リストラクチャリング
業務リストラクチャリングとは、事業内容をイノベーションし、売上や利益を増加させ、キャッシュフローを改善する目的です。
具体的には、顧客ニーズを踏まえた商品開発や顧客との長期的なマーケティング、経費削減が挙げられます。
経費削減には、人件費の削減も含まれますが、法律的な正当性が求められるため、専門家のアドバイスを受けながら行うのが望ましいです。
M&Aによる買収
M&Aによる買収もリストラクチャリングの手法として挙げられます。
M&Aにおける買収では、企業を買収し、いままで成長が苦しかった事業にあてることでシナジー効果が期待できるでしょう。
一方で、売却する場合も挙げられます。
具体的には、不採算事業を売却し、M&Aによって事業構築の改革を行うだけでなく、売却した資金も調達する方法です。
M&Aリストラクチャリングは、買収と売却のそれぞれを検討することができるので、会社の経営状況に応じて検討しましょう。
3. リストラクチャリングのメリット
リストラクチャリングの理解を深めた後は、メリット・デメリットのそれぞれを把握しておくと、リストラクチャリングの実施にも踏み込みやすいでしょう。
まずはリストラクチャリングのメリットについて解説していきます。
メリットは以下の通りです。
- キャッシュフロー・利益率の改善
- 利益率のよい事業に資金・人材を集中投入できる
キャッシュフロー・利益率の改善
リストラクチャリングのメリットは、事業リストラクチャリングで不採算事業を売却したり、人件費を削減したりすると会社全体の利益率が改善されることです。
利益率が上がれば、事業拡大や負債の早期返済などが見込まれるため、会社の将来的な成長に向けて踏み出せます。
人件費を削減するのは、日本においてマイナスな印象が強く、心理的に抵抗感を感じる方も少なくありませんが、人件費を削減せず会社が倒産することより、優秀な人材を残し会社を存続させた方がメリットは大きいと考えられます。
ただし、リストラによる人件費削減は会社の評判に影響する場合があるので、慎重な判断が必要です。
利益率のよい事業に資金・人材を集中投入できる
事業リストラクチャリングを実施すると、収益率の高い事業に資金や人材を集中投入できます。
また、M&Aリストラクチャリングで得た資金を収益性の高い事業に投資することで、事業の拡大が期待できるでしょう。
また、利益率の事業に資金・人材を寄せることで、事業が成長し黒字化が進むことで、新規事業への投資も検討できるようになります。
ただし、リストラクチャリングの内容によってはリスクもあるため、慎重にリストラクチャリングを実施しましょう。
4. リストラクチャリングのデメリット
続いてはリストラクチャリングのデメリットについて解説していきます。
デメリットは以下の通りです。
- 将来性のあるビジネスへの投資がストップする可能性
- 従業員のモチベーションの低下
それぞれのデメリットについて理解していないと、リストラクチャリング実施後に後悔する可能性も考えられるため、必ず確認しましょう。
将来性のあるビジネスへの投資がストップする可能性
企業は発展のために新規事業を立ち上げることが多いですが、新規事業は収益が安定するまで時間を要します。
収益が安定する前に事業リストラクチャリングを行うと、将来性のある事業をストップする可能性が考えられます。
新規事業を展開し赤字が続く場合は、事業リストラクチャリングを行うのも手法の1つですが、中長期的な戦略を考えた上で実施を検討しましょう。
従業員のモチベーションの低下
日本においてリストラのイメージは悪く浸透しているため、人件費をリストラクチャリングするためにリストラを行うと、会社全体で「私もリストラされるのではないか」と噂が広がり、従業員全体のモチベーションが低下する恐れがあります。
リストラクチャリングによって業績が悪化する場合も考えられるため、人件費をリストラクチャリングする際は慎重に行いましょう。
5. リストラクチャリングの事例
ここでは、実際にリストラクチャリングを行った企業の事例を紹介していきます。
紹介する企業は以下の通りです。
- 日本レーザー
- 東芝
- パナソニック
- ソニー
各企業のリストラクチャリングの例を見ていきましょう。
日本レーザー
日本レーザー株式会社は、1994年に債務超過に陥ったため、リストラクチャリングによって以下施策を実施しました。
- 人件費の削減
- 雇用を守ることによる従業員のモチベーション維持
- MEBOを活用した企業統治形態の変更と従業員の株主化
- 成果主義への評価制度の見直し
- 企業理念を重視した経営
債務超過に陥った時点で親会社である日本電子からの指示で社長に就任した近藤宣之氏は、上記施策を行い1年で日本レーザー株式会社を黒字化に成功させました。
東芝
東芝は、2016年3月期の業績予想で営業損失3,400億円、純損失5,500億円であることを発表し、従業員を約1万人削減するリストラや海外製品の廃止などによって、人件費・事業リストラクチャリングを実施しました。
このリストラクチャリングによって、大きな赤字を回避することに成功しました。
パナソニック
パナソニック株式会社は、2012年、2013年の2年連続で7,500億円以上の赤字を出してしまったことをきっかけに、リストラクチャリングによって以下の施策を実施しました。
- テレビ事業を縮小
- 半導体事業の縮小
- 自動車関連事業への注力
- 住宅関連事業への注力
パナソニック株式会社は、業績が悪い事業を縮小させ、伸びている事業へ投資をする事業リストラクチャリングを行ったことにより、経営状況の改善に成功させました。
ソニー
ソニー株式会社は、スマホ事業のリストラクチャリングを進めています。
人件費の削減、採算の合わない地域からの撤退などを行い、事業規模を縮小してランニングコストを下げました。
ソニー株式会社は、リストラクチャリングによる事業規模縮小によって、赤字を黒字化に成功させました。
6. 経営が苦しいときにはリストラクチャリングで事業の再構築を検討しよう
リストラクチャリングは、経営状況が苦しい際に活用する手法です。
業績が悪い事業をM&Aリストラクチャリングしたり、再構築するための事業リストラクチャリングなど、リストラクチャリングにはさまざまな手法が行われます。
しかし、リストラクチャリングはメリットだけでなく、デメリットもあることを忘れてはいけません。
経営状況を回復させるためのリストラクチャリングは、会社の将来性を期待できる手法ですが、人件費を削減するときや新規事業をリストラクチャリングするときは、リスクもあるため慎重に行いましょう。
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