事業譲渡とは?メリット、手続きの方法・流れ、株式譲渡との違いを解説

企業情報第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

事業譲渡は会社譲渡とは異なり、特定の事業売買を行う方法です。事業売買を検討している際は、事業譲渡の基本や手続きの流れをあらかじめ把握しておくと計画的に進められます。本記事では、会社譲渡と事業譲渡の違い、必要な手続きなど事業譲渡の基本をまとめました。

目次

  1. 事業譲渡とは?概要・定義を紹介
  2. 事業譲渡を選ぶメリット
  3. 事業譲渡を選ぶデメリット
  4. 事業譲渡と株式譲渡、会社分割の違い
  5. 事業譲渡の手続きを行う方法・流れ
  6. 事業譲渡の成功事例6選【2022年最新】
  7. 事業譲渡の費用・税金
  8. 事業譲渡における会計処理
  9. 事業譲渡の契約書作成に関する注意点
  10. 事業譲渡に関するおすすめの相談先
  11. 事業譲渡のまとめ
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1. 事業譲渡とは?概要・定義を紹介

事業譲渡とは、企業が運営している事業を対象に、関連する資産や権利義務などの範囲を指定して売買するM&A手法です。株式譲渡とは違い企業を丸ごと売買するわけではありません。したがって、売却側の経営権は保有したままとなります。

また、事業譲渡の対価は現金ですが、受け取るのは経営者ではなく会社です。

事業譲渡を行う際の注意ポイント

事業譲渡は資産や負債、雇用などの移転をするために、1つずつ手続きを行います。そのため、手続きが複雑になり、コストが大きくなりやすいです。

従業員との雇用契約を改めて結び直します。債務を継続させる場合は、債務者からの個別の承諾が必要になったりします。不動産が含まれる場合は、登記手続きも必要になるため注意しましょう。

事業譲渡を行う手法・種類

事業譲渡の手法は、以下の2種類です。

  • 全部譲渡
  • 一部譲渡

全部譲渡の場合は、売り手側の事業を全て譲渡します。その一方で一部譲渡は、売り手側の事業の一部を譲渡する手法です。事業譲渡では売り出したい特定の事業だけを、売り手側が選択できます(買い手との合意は必要)。

したがって事業改革の一環として、事業の絞り込みをする場合にも有効です。事業だけを譲渡するため、会社組織は経営者の手元に残ります。

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2. 事業譲渡を選ぶメリット

事業譲渡を選ぶメリットについて、売り手側と買い手側のそれぞれの立場から検証します。

売り手側のメリット

ここからは、事業譲渡の売り手側(譲渡側)のメリットを説明します。

後継者問題を解決できる

事業譲渡では、後継者問題を解決できます。事業譲渡をすれば事業の持ち主が変わるのみで、事業を存続させられるからです。仮に社長の引退で会社を清算する場合、これまで雇っていた従業員や商品を販売していた顧客・取引先などに迷惑がかかります。

「将来性のある事業は継続させたい」といったときに、事業譲渡は適した手法です。

法人格を継続して使える

事業譲渡をした場合、法人格を継続して使えます。そのため、「A事業は売却したいけどB事業は同名の法人格として継続させたい」といった場合に適した手法です。また、既存の事業を全て売却したうえで、同名の法人格で新しい事業を始められます。

現在保有する会社の法人格を継続して使いたいときには、事業譲渡を選びましょう。

会社経営における選択と集中ができる

事業譲渡を行うことで、会社経営における事業の選択と集中ができます。事業譲渡は株式譲渡と異なり、事業を切り出して売却できるためです。事業譲渡で得た利益を会社の資金として、残した事業に注力もできます。

不採算事業やメインでない事業を切り離し、採算のある事業に経営資源を集中する体制を構築できるのです。

負債があっても譲渡先が見つかりやすい

会社全体を譲渡する場合は、負債まで引き継ぐことになります。しかし、買い手としてはできるだけ負債を引き継ぎたくはありません。事業譲渡では、売りたい事業だけを譲渡し、残したい資産や事業は手元に残せます。

会社全体で見たら負債を抱えている場合でも、譲渡先の見つけやすい事業だけを選別して譲渡が可能です。

買い手側のメリット

事業を譲り受ける買い手側(譲受側)にもメリットはあります。事業を譲り受けたときの買い手側のメリットは、主に以下の3つです。

取得したい資産を選べる

買い手にとって最大のメリットは、取得したい資産を選べることです。事業譲渡の場合、契約時に買い手と売り手で何を承継するのか選別できます。そのため、会社にとって必要な資産だけを承継できるのです。

負債・債務の承継リスクがない

必要な資産だけを選べるということは、事業譲渡の実行時点では予見できない偶発債務などの簿外債務の承継も回避できます。承継したくない資産や負債があれば、売り手との協議で承継しないようにしましょう。

節税効果がある

買い手は、事業譲渡を選択することで節税効果が期待できます。譲受した償却資産やのれんを償却することで、資金流出のない損失が計上されるため、他の手法と比べると節税効果があるのです。

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3. 事業譲渡を選ぶデメリット

事業譲渡にはデメリットもあります。デメリットについて、売り手側と買い手側のそれぞれの立場から見てみましょう。

売り手側のデメリット

ここではまず、事業譲渡における売り手側(譲渡側)のデメリットを説明します。メリットだけでなく、デメリットも理解できれば、事業譲渡の効果をより高められるはずです。

手続きが複雑になる

事業譲渡の手続きは、複雑かつ手間がかかります。事業をそのまま承継させるわけではないため、買い手からすると取引先や従業員との契約も1つずつ契約し直さなければなりません。たとえば、事業譲渡をすると従業員の雇用契約は全て白紙です。

そのため、買い手企業は改めて雇用契約を結ぶ必要があります。一方の売り手からすると、債権者保護手続きは不要ですが、個別で債権者の同意が必要です。このように、一つひとつ契約を巻き直す必要があるため、手続きが複雑になります。

譲渡範囲の決定が難しい

事業譲渡では、譲渡範囲の決定が困難とされています。理由は「何を承継させて、何を承継させないか」細かく決める必要があるためです。売り手は負債も承継してほしいと考えます。しかし、買い手側は、負債や不要な資産は承継したくないと考えるのが当然です。

このように、双方の意見が食い違う可能性が高いため、譲渡範囲の決定が難しくなります。

競業避止義務を負う

事業譲渡した会社は、会社法の規定により、20年間にわたって同一の区市町村や隣接する区市町村において、譲渡事業と同一の事業を行うことが禁止されています。そのため、事業譲渡後も同じ事業を行う予定がある会社は、注意が必要です。

譲渡利益に法人税が課される

事業譲渡で譲渡代金を受け取ると、売り手の企業には法人税や住民税などの税金が課されます。ただし課税対象は、事業譲渡により発生した利益と会社の他の損益を通算した金額です。

したがって、売り手に多額の繰越欠損金がある場合や、役員の退職金を損金計上する場合と同じ年度に行った事業譲渡では、節税も可能になります。

買い手側のデメリット

事業譲渡における買い手側(譲受側)のデメリットを説明します。事業を引き受ける譲受側には、特に3つのデメリットを認識する必要があります。

譲受完了までの手間が大きい

事業譲渡では、譲受対象となる資産・負債について、それぞれの契約を結び直さなければなりません。譲渡側の企業が所有する資産に抵当権が付されていたり、担保になっていたりするようなケースでは、特に契約の結び直しに時間が必要です。

したがって、事業譲渡が完了するまでに大きな手間がかかります。

譲渡対価の支払いに消費税が課される

事業譲渡される資産の中に消費税課税資産が含まれている場合、消費税が課されます。主な消費税課税資産は、以下のとおりです。

  • 建物
  • 設備・機械類
  • 商標
  • 特許権
  • ソフトウェア
  • 原材料
  • 在庫商品
  • のれん代

また、主な消費税非課税資産は以下のとおりです。
  • 土地
  • 株式
  • 小切手
  • 売掛金
  • 貸付金

なお、消費税は買い手が負担し、税務署への納付は売り手が行います。

資金調達する必要がある

事業譲渡の買い手は、事業を買うために資金を調達する必要があります。事業譲渡の買収資金だけでなくその後の運用資金も要するため、先を見据えた資金調達が必要になるでしょう。

事業譲渡の実施後には、人件費や運営費など継続した資金調達が必要となる可能性もあるため、計画的な事業譲渡の実施が重要です。

【関連】事業譲渡をする際の会社法上の注意点は?定義・手続きから特別決議・競業避止義務も解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

4. 事業譲渡と株式譲渡、会社分割の違い

事業譲渡には似たような言葉として、株式譲渡や会社分割があります。しかしいずれも事業譲渡とは異なる性質を持つ手法です。事業譲渡は、会社法上の組織再編行為に該当しません。

合併や会社分割などの他の組織再編行為と比較して債権者保護手続きが不要となるケースや、資産・負債を個別の契約によって移転させるので、簿外債務について買い手は承継する義務を負わないなどの特徴があります。

ここでは、事業譲渡とその他の手法の違いや、事業譲渡を選ぶべきケースを確認しましょう。

事業譲渡と株式譲渡の違い

株式譲渡とは、会社を売買する際に使われるM&A手法です。事業譲渡とよく混同されるケースが多いものの、事業譲渡と株式譲渡では譲渡先に譲渡する対象が全く異なります。株式譲渡は会社の経営権を譲渡しますが、事業譲渡は会社が保有する個別の財産の譲渡です。

事業譲渡では、会社が展開している事業を切り離して譲渡先に売却します。そのため、事業を構成している財産について、個別の契約を譲渡先と結ばなければなりません。その結果、譲渡のための手続きが煩雑になり、コストがかかりやすいデメリットがあります。

事業譲渡はその分、譲渡側の業績が悪い場合でも、譲渡が成立しやすいのが最大のメリットです。一方、株式譲渡は会社全体を売買します。株式の移転が基本となる手続きであるため、事業譲渡に比べると簡単かつコストがかかりません。

しかし、会社の経営権を移譲しているので、株式譲渡手続き完了後は基本的に会社のオーナーが変わります。一般的に株式譲渡での売買が難しい場合に、事業譲渡を用いることが多いです。

事例で見る事業譲渡が選ばれやすい場合

事業譲渡は会社法上の組織再編行為に当たりません。したがって、会社法で規定されている債権者保護手続きを行わずにすみます。この意味で、事業譲渡は会社法上、簡易的な手続きで事業を譲渡できるのです。

経営破たん寸前の企業や負債超過状態となった企業ほど、事業譲渡を選ぶ傾向があります。つまり、経営状態が悪い会社ほど機動的な資金確保のために事業譲渡を選択するのです。

事例で見る株式譲渡が選ばれやすい場合

譲渡先がプライベート・エクイティファンドといったファンドである場合、その会社の過半数の株式を取得し、会社の意思決定機関である株主総会における経営権を獲得します。その後、会社を成長させて上場を目指したり、株価の向上を目指したりするわけです。

したがってこのような場合には、会社全体の経営権を取得すべく株式譲渡という形態のM&Aが行われます

事業譲渡と会社分割の違い

会社分割とは、会社内の事業を整理したり事業を独立させたりするために使われる手法です。事業譲渡と性質は似ていますが、会社分割は自社のみでも行えます。

会社分割は、自社の事業の全部あるいは一部を他社へ吸収させる吸収分割と、新設の会社に承継させる新設分割の2種類です。事業譲渡は、譲渡対象の契約に対して承継には個別の同意が必要です。会社分割の場合は契約も全て引き継がれるため、個別の同意は必要ありません。

事業譲渡と営業譲渡の違い

営業譲渡は、旧会社法の元で使用されていた言葉です。現在は会社法の改正によって呼称が事業譲渡に改められたため、営業譲渡と事業譲渡は本質的に同義といえます。

基本的には営業譲渡ではなく事業譲渡という言葉を用いますが、商法が適用されるケースでは現在でも営業譲渡と呼称することもあるでしょう。

事業譲渡と事業承継の違い

事業承継も事業譲渡と類似する言葉ですが、両者の意味は大きく異なります。事業承継は後継者を見つけて新たな経営者に据える行為です。その一方で事業譲渡は、会社が営む事業の一部または全部を売り渡します。そもそも、事業承継はM&Aの手法名ではありません。

事業譲渡をするならM&A総合研究所へ!

事業譲渡を検討している場合は、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、アドバイザーが事業譲渡をフルサポートするM&A仲介会社です。専門家による手厚いコンサルタントが受けられるため、安心してお任せいただけます。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)

会社売却・事業譲渡に関して、随時、無料相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。

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事業譲渡を選ぶべきケース

事業譲渡と株式譲渡、会社分割の違いを説明してきました。しかし、どのようなときに事業譲渡を選ぶ必要があるかわからないかもしれません。以下のケースでは、事業譲渡を選ぶとメリットが大きくなるため検討の参考にしてください。

  • 売り手企業が法人を継続したいとき
  • 会社の全ての資産・債務を譲渡したくないとき

上記2つに当てはまる場合には、事業譲渡を選ぶことで解決します。他のM&Aの手法では、上記のような希望はかなわないため注意しましょう。

【関連】事業譲渡のメリット・デメリット30選!手続きの流れ・方法、税務リスクも解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

5. 事業譲渡の手続きを行う方法・流れ

ここでは、実際に事業譲渡するときの流れを確認しましょう。事業譲渡をする手続きは、大きく10のステップに分けられます。

  1. M&Aアドバイザーとの契約
  2. 買い手企業探し
  3. 意向表明・基本合意
  4. デューデリジェンス
  5. 事業譲渡契約の締結
  6. 臨時報告書の提出
  7. 公正取引委員会への届出
  8. 株主への通知・公告と株主総会の特別決議
  9. 監督官庁による許認可
  10. 名義変更の手続き

①M&Aアドバイザーとの契約

まずは、M&Aアドバイザーとアドバイザリー契約を結びましょう。M&Aアドバイザーは、総合的にサポート・アドバイスを担当してくれるコンサルタントです。複雑な手続きを請け負うほか、事業譲渡のリスクまで調べてくれます。

したがって、安全に事業譲渡を進めるためにも依頼しておきましょう。M&Aアドバイザーは具体的な戦略・スケジュールを策定してくれるので、情報漏えいによるトラブルの防止も可能です。

②買い手企業探し

買い手企業探しは、M&Aアドバイザーが行います。M&Aを検討している場合、明確な目的が定まっているはずです。買い手となる企業として、自社の目的を達成できる会社を選ぶ必要があるため、アドバイザーに対して意見を伝えましょう。

最適な相手が見つかれば、必要な書類を作成して打診します。打診はアドバイザーが主軸となって動くため、手続きは難しくはありません。売買相手候補から前向きに検討したい旨の意思が届いたら、重要な情報のやり取りも含めた交渉に進みます。

機密情報をやり取りするため、秘密保持契約を締結して外部へ情報が漏えいしないようにしましょう

③意向表明・基本合意

秘密保持契約を締結したら、情報を開示して詳細に話し合いをします。譲受側から意向表明書が提出されることもありますが、これは絶対的なプロセスではありません。意向表明書とは、現段階において譲受側が考えている事業譲渡の条件面の意思表示です。

条件面の交渉はM&Aアドバイザーが行うので、その点は任せておけます。交渉の過程で必ず行われるのがトップ面談です。両社の経営トップが直接会って話します。お互いの経営方針や事業譲渡の目的、企業風土などを話しつつ、相手の人物像などを見極めましょう。

大筋で条件合意ができたら基本合意書を締結します。基本合意書は現段階における合意内容の確認書という位置付けのものなので、法的拘束力を持ちません。したがって、まだ事業譲渡が成約したわけではないことを理解しておきましょう。

④デューデリジェンス

基本合意書締結後、デューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスとは、買い手側が売り手側に対して行う精密監査です。財務・税務・法務・労務・IT・事業などの各分野に対し、士業などの専門家を起用して細かく調査が行われます。

売り手側としては資料提出や情報提供などの求めに応じて対応が必要です。デューデリジェンスの内容を踏まえて最終交渉が行われ、合意に至れば事業譲渡契約締結へと進みます。

⑤事業譲渡契約の締結

それぞれの会社の取締役会決議で事業譲渡の承認が下りた後は、事業譲渡契約を締結します。事業譲渡契約書には以下の内容が必要です。

  • 効力発生日(事業譲渡する日)
  • 買い手企業が売り手企業に支払う対価
  • 対価の算出方法

その他、新役員の選任や株主総会の日時など、双方において必要と判断される内容を盛り込むこともあります。

⑥臨時報告書の提出

有価証券報告書を提出している企業の場合、臨時報告書の提出が必要となる場合があります。以下の条件に当てはまる場合は、臨時報告書の作成と提出が必要であるため注意しましょう。

  • 事業譲渡によって純資産額が30%以上増減する場合 
  • 事業譲渡によって売上高が前年比で10%以上増減することが予想される場合

いずれかの条件に当てはまる場合は、臨時報告書を国に提出してください。

⑦公正取引委員会への届出

国内売上高の合計額が200億円を超えている買い手企業は、公正取引委員会への届出が必要となる場合があります。以下の条件に当てはまる場合、公正取引委員会への届出が必要です。

  • 国内での売上が30億円を超えている企業の全事業の買収
  • 売り手事業の重要な部分を含み、上記の売上に該当する事業の買収
  • 固定資産の全て・売り手事業の重要な部分を含み、固定資産による売上が30億円を超える事業の買収

届出の受理後30日間は事業譲渡を行ってはいけない決まりがあります。ただし、公正取引委員会が認めた場合に限り禁止期間を短縮可能です。

⑧株主への通知・公告と株主総会の特別決議

株主に対しては、事業譲渡に関する通知・公告をする必要があります。通知・公告は、事業譲渡をする20日前までに必要です。事業譲渡に反対する株主に対しては、株主買取請求を行う機会を与えるために通知・公告を行います。

売り手企業および買い手企業双方の株主総会で、事業譲渡契約の承認プロセスが必要です。株主総会による承認は、事業譲渡をする前日までに受けます。この承認では、議決権の3分の2以上の確保が必要です。

反対した株主から株式の買取請求があったときには応じなくてはなりません。

⑨監督官庁による許認可

事業内容によっては監督官庁の許認可がなければ、買い手企業が営業できない事業もあります。許認可が必要な事業を譲り受ける場合、買い手企業が許認可を再度取得する必要があるため、状況に応じてサポートしましょう。

⑩名義変更の手続き

最後に、財産・債務・権利・契約などを移転するための名義変更手続きを行います。登記が必要な財産や従業員の雇用契約手続きは買い手企業が行いますが、売り手企業でも必要な情報の開示や資料作成が必要です。

できるだけスムーズに承継できるよう、準備を進めておきましょう。

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6. 事業譲渡の成功事例6選【2022年最新】

ここでは、実際に行われたまたは発表された事業譲渡の事例を紹介します。

  1. アロイ金属工業によるアロイテクノロジーへの事業譲渡
  2. エスエスディーによるタカショーデジテックへの事業譲渡
  3. Backpackers Productionによる絆家への事業譲渡
  4. 宮崎交通による宮崎トヨタ自動車への事業譲渡
  5. M&Aファーストによるauc-oneへの事業譲渡
  6. peekabooによるアイラッシュガレージへの事業譲渡

①アロイ金属工業によるアロイテクノロジーへの事業譲渡

2022(令和4)年3月、アロイ金属工業からアロイテクノロジーへの事業譲渡が、アロイテクノロジーの親会社である鶴見製作所から発表されました。譲渡された事業は、各種ポンプ部材を主としたステンレス鋼・高クロム鋳鉄の製造・販売事業です。譲渡価額は公表されていません。

アロイ金属工業は、各種ポンプ部品など・各種ステンレス鋼・高クロム鋳鉄製品の製造(加工)・販売を行っています。アロイテクノロジー各種ポンプ部品など・各種ステンレス鋼・高クロム鋳鉄製品の製造(鋳造・加工)・販売を行っている企業です。

鶴見製作所としては、グループとして同業他社との差別化を図り競争力を上げるため、アロイテクノロジーに事業譲受させました。

②エスエスディーによるタカショーデジテックへの事業譲渡

2022年3月、エスエスディーはイルミネーション関連事業をタカショーデジテックへ譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。

エスエスディーは、中古自動車の買取・販売、新車販売、レンタカー事業、イルミネーション製造・販売、イベント企画・提案、食品原材料販売、食品包装資材販売、健康食品の企画提案・依受託、各種安全性試験の受託などを行っています。

タカショーデジテックは、LED製品・各種照明の開発・企画・製造・販売、 寝装品・インテリア商品のデザイン・販売などを行っている企業です。事業規模や取引先の拡大など大きなシナジー効果が見込めると判断して事業譲受を決めています。

③Backpackers Productionによる絆家への事業譲渡

2022年3月、Backpackers Productionは多拠点生活プラットフォームサービス「Backpackers Home」事業を絆家へ譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。

絆家は、東京・大阪を中心に全11棟350人の体験型コンセプトシェアハウス「絆家」を運営しています。絆家としては沖縄・福岡・広島・大阪・京都・長野・東京・北海道などの9拠点を得て、さらなる事業展開を進める考えです。

④宮崎交通による宮崎トヨタ自動車への事業譲渡

2021(令和3)年7月、宮崎交通はオーシャンブルースマートと共同で運営するシェアサイクル「PiPPA」の事業を宮崎トヨタ自動車に譲渡しました。宮崎交通はコア事業に経営資源を集中させる事業改革に取り組んでおり、その改革の1つが「PiPPA」事業の売却です。

宮崎トヨタ自動車がすでにカーシェア事業を行っていることや、MaaS実証実験で宮崎交通と連携していたことなどを理由に譲渡を決めています。

⑤M&Aファーストによるauc-oneへの事業譲渡

2021年2月、M&AファーストはVODメディア「バラエティ&ドラマ見逃し動画辞典」事業をauc-oneに譲渡しました。買収の経緯は、新型コロナウイルスの流行による外出自粛の長期化から、今後動画配信需要が増えるとauc-oneが見越したためです。

⑥peekabooによるアイラッシュガレージへの事業譲渡

2021年1月、peekabooがアイラッシュ専門メディア「Beaute(ボーテ)」事業をアイラッシュガレージに譲渡しました。アイラッシュガレージは、「Beaute」の専門性はそのままに、自社や親会社のビューティガレージの顧客基盤を生かした相乗効果を期待して買収しています。

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7. 事業譲渡の費用・税金

ここでは、事業譲渡の対価の計算方法と発生する税金を説明します。

譲渡金額の算出方法

事業譲渡の譲渡金額を算定する際には、一般的に「譲渡資産時価+営業権」という計算式が用いられます。この計算式で導き出される金額は「事業譲渡における適正価格」と考えられるのです。

譲渡する事業の「時価純資産」に、その事業の収益力を反映する「営業権(のれん代)」を加算します。これにより「コストアプローチからなるバリュエーション」と「インカムアプローチからなるバリュエーション」をうまく合わせて算出できるのです。

営業権は、事業が生み出す正常利益2~3年分の金額を用いるのが一般的となっています。ただし、対象事業の業界・買い手のニーズ・事業規模・事業の安定性などにより、営業権の算定方式が異なる(事業利益の年数が上下する)ので注意が必要です。

具体例を挙げると、競争環境が厳しく市場が不安定とされる外食業界・建設業界では1.5年分で計算されるケースが多く、参入障壁が高い病院・クリニックや最先端技術を扱える人材を持ったソフトウエア業界では5年分で評価されるケースが多くあります。

売り手側の税金

売り手側に発生する税金は法人税です。また、買い手側の対価支払い時に消費税が発生する場合には、売り手側がそれを預かり、税務署への納付は売り手が行わなければなりません。したがって、対価請求時には消費税分も算出・合算して請求する必要があります。

法人税

事業譲渡で売り手側が支払う税金は法人税です。事業譲渡を行って得た利益額に課税されます。事業譲渡の譲渡利益の計算式は以下のとおりです。

  • 事業譲渡の譲渡益=売却金額−譲渡資産の簿価

ただし、法人税は事業譲渡益に個別に課されるものではありません。事業譲渡を行った会計年度における会社のその他の損益全てと通算され、その利益額に対して実効税率約31%(2022年3月現在)の法人税が課されます

したがって、事業譲渡を行った同一年度内に事業譲渡益やその他の利益額を上回る、何らかの損金が発生していて決算が赤字の場合、法人税の課税を受けません。

買い手側の税金

買い手側が支払う可能性のある税金は、消費税・不動産取得税・登録免許税です。

消費税

事業譲渡では、譲渡される事業に関連した多くの資産も譲渡されるのが常です。税法上、資産には消費税対象資産があり、事業譲渡において消費税対象資産が含まれていれば、消費税が発生します。

ただし、消費税は買い手が直接納付するのではなく、一般商品と同じように消費税額分を加算した金額を売り手に支払い、消費税を預かった売り手が税務署に納付する仕組みです。したがって、買い手は事業譲渡対価支払い時に消費税分の資金も必要になります。

不動産取得税・登録免許税

不動産取得税は、不動産を手に入れたときに支払う税金です。不動産とは、土地や建物を意味します。不動産取得税では、取得した不動産の固定資産税評価額の4%の部分が税金が課税対象です。また、不動産を取得した場合、所有権を登記する必要があります。

登録免許税とは、登記手続きを行うときに支払う税金です。事業譲渡によって不動産を取得した場合には、不動産取得税の登録免許税の両方が発生することになります。

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8. 事業譲渡における会計処理

事業譲渡をした場合、譲渡した事業は資産として扱うため、会計処理も適切に行う必要があります。売り手企業と買い手企業に分けて会計処理を確認しましょう。

売り手企業の会計処理

まず、売り手企業の会計処理方法を確認しましょう。事業の株主資本相当額と実際の売却対価との間で差額が発生した場合には、移転損益として扱います。つまり、譲渡益=移転損益となるのです。

事業譲渡によって支出が発生した場合、その事業年度の費用で処理します。ここからは、具体的な仕訳の例を確認しましょう。以下の金額を前提条件とします。

  • 譲渡資産の帳簿価格:500万円
  • 譲渡負債の帳簿価格:200万円
  • 付随費用:50万円
  • 譲渡価格:400万円
 
借方 貸方
譲渡資産 500万円 譲渡負債 200万円
移転損益 100万円 現預金 400万円
現預金 50万円 付随費用 50万円

上記のように、譲渡益は移転損益として会計処理をします。

買い手企業の会計処理

買い手企業の会計処理では、のれんの加味が必要です。買い手企業の個別財務諸表に、買収した事業の純資産(資産・負債)を時価で入れたうえで、のれんを計上する必要があります。

のれんとは、買収した事業の純資産の時価と取得原価の差額です。基本的に買収した事業の資産と負債の時価よりも、取得原価の方が高い価格となります。

なぜなら、買収した事業のブランド力・ノウハウ・従業員の能力・特許などは純資産に反映されておらず、その分を上乗せして取得原価を決めているためです。のれんは、無形固定資産として計上します。ここからは、以下の前提条件で具体的な仕訳の例を確認しましょう。

  • 譲受資産の時価:400万円
  • 譲受負債の時価:100万円
  • 取得原価:500万円 
 
借方 貸方
譲受資産 400万円 譲受負債 100万円
のれん 200万円 取得原価 500万円

このように、譲受資産から譲受負債・取得原価の差額をのれん代として会計処理します。

事業譲渡のご相談ならM&A総合研究所にお任せください

事業譲渡を検討しているのであれば、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーが事業譲渡をフルサポートしているM&A仲介会社です。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」となっています。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)

会社譲渡・事業譲渡に関して無料相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。

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9. 事業譲渡の契約書作成に関する注意点

事業譲渡契約書の作成では、後日トラブルに発展するかもしれない注意点があります。

  1. 譲渡範囲
  2. 従業員の転籍
  3. 免責登記

①譲渡範囲

事業譲渡契約書にサインする前に、譲渡範囲が明確であるか確認しましょう。譲渡するのかしないのか不明確な資産・負債があるとトラブルになりかねません。事業譲渡をする場合、対象となる財産には資産・債権・債務が挙げられます。

事業譲渡契約書には、買い手企業に承継する資産・債権・債務を特定する目録を作成することが一般的です。たとえば、不動産であれば住所地まで特定します。第三者が見ても「あの不動産のことだ」とわかるような目録を作りましょう。

取引先との契約は、原則として事業譲渡では引き継がれません。引き継ぐためには、取引先の同意が必要ですので合わせて注意しましょう。

②従業員の転籍

売り手側の従業員をどのように扱うのか、事業譲渡契約書で明示しましょう。譲渡する事業で働く従業員との雇用契約は、従業員の同意がない限り承継させられません。そのため、従業員の処遇は以下の2つのパターンが取られます。

  • 一人ひとりから同意を得て、買い手企業へ転籍させる
  • 転籍させずに、違う事業部で継続して雇用する

基本的には、事業を運営するためにも買い手企業へ転籍させるケースが多いでしょう。その場合には、転籍後の処遇をしっかりと定める必要があります。

③免責登記

事業譲渡では、商号継続時の免責登記をするのかしないのかも明確にしましょう。商号継続時の免責登記は、売り手企業の持つ未払い債務の責任を免除するときに必要です。

原則として買い手企業が商号や屋号を承継する場合、事業譲渡前の未払い債務の責任を負うことが会社法上で定められています。なぜなら、事業譲渡がされたことで、取引先に不利益が被らないようにするためです。

したがって、買い手企業には、事業譲渡前に発生した債務の弁済責任が発生します。しかし、商号続用時に免責登記をすれば、買い手企業は事業譲渡前に発生した債務の弁済責任は必要ありません。事業譲渡契約に免責登記が記載されている場合、しっかりと検討しましょう。

【関連】事業譲渡による社員・従業員への影響まとめ!処遇、退職金や給与はどうなる?| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

10. 事業譲渡に関するおすすめの相談先

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11. 事業譲渡のまとめ

事業譲渡とは、会社全体ではなく特定の事業のみを売買する行為です。事業全てを移譲する必要はなく、目的に合わせて事業の全てや事業の一部を売買する行為を、事業譲渡と呼んでいます。

メリットや手続きの流れ、注意点を把握したうえで、事業譲渡する必要があるか十分に検討しましょう。事業譲渡すると決断した場合、M&Aアドバイザーに相談してください。うまくM&Aアドバイザーを頼りながら、自社の成長に向けて事業譲渡を成功させましょう。

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