2024年06月24日更新
資本提携とは?M&Aや業務提携との違い・メリット・デメリット・注意点を解説!
資本提携とは、2社以上の会社がお互いに資金面や業務面で協力関係を築くことで、M&Aや業務提携とは少し違います。
今回は、資本提携の意味やM&Aや業務提携との違い、メリットやデメリット、注意点について解説します。
1. 資本提携とは
資本提携とは、2社以上の会社が資本面や業務面で協力関係を築くための方法です。
また、資本提携を行う場合、提携を結ぶ企業が相手企業の株式を取得するか、お互いの株式を取得を行います。
資本提携を行うことによって、1社ではできなかったことを実現させることができたり、お互いの関係性を強化させることが可能です。
資本提携の仕組み
資本提携は、出資を受ける企業が出資する企業に対して株式譲渡や株式交換を行うことで、資本提携が成立します。
お互いの企業が株式を持ち合う場合もありますが、ほとんどの場合、一方が出資して株式を持ちます。
上場企業がスタートアップ企業に出資する場合も資本提携に当たります。
また、取得する株式は相手の経営権に影響が出ないように3分の1に抑えるのが一般的です。
資本提携と業務提携の違い
資本提携と業務提携の違いは、資金の移動があるかどうかということです。
資本提携では、株式譲渡や株式交換など資金の移動が行われますが、業務提携は資金の移動が行われず業務面でのみ提携するという違いがあります。
そのため、業務提携は資本提携よりも少ない資金や時間で業務面での協力関係を結ぶことができますが、資本提携ほどの強い関係性を築くことが難しいです。
資本提携とM&Aの違い
資本提携とM&Aの違いは、経営権の移動が行われるかどうかということです。
資本提携では、株式譲渡や株式交換という形式で資金が移動しますが、相手の経営権に影響が出ない範囲での移動なので、会社が吸収されることがありません。
しかし、M&Aでは、相手企業を買収したり合併することで、完全に経営権などが移動し、場合によっては会社が無くなります。
そのため、資本提携とM&Aでは目的や移動するものなどが大きく違います。
2. 資本提携のメリットとデメリット
資本提携を行うことによって、どのようなメリットやデメリットがあるのか気になる方は多いと思います。ここでは資本提携のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
資本提携のメリット
資本提携のメリットは、主に以下の3つがあります。
- 相乗効果を生み出しやすい
- 会社の独立性を保てる
- 経営リスクを軽減できる
ここでは最初に、以上3つのメリットについてそれぞれ解説します。
相乗効果を生み出しやすい
資本提携の1つ目のメリットは、相乗効果を生み出しやすいことです。資本提携を行う企業同士で強い関係性を築きやすくなるので、販路拡大や事業展開などを行う場合、協力して成長させていくことができます。
また、新規事業立ち上げや新商品開発なども協力し合うことができれば、相乗効果を生み出せます。
会社の独立性を保てる
資本提携の2つ目のメリットは、会社の独立性を保てることです。資本提携は、提携関係になっている状態なので、合併や買収などによって経営権が移動することがありません。
また、経営の独立性を保つために譲渡する株式は、全体の約3分1未満に抑えることが一般的です。そのため、資本提携ではお互いがそれぞれの経営判断を下すことができます。
経営リスクを低減できる
資本提携の3つ目のメリットは、経営リスクを軽減できることです。資本提携により出資を受けることで、会社の財務状況が改善され、業務の改善や資本金の増加が可能になります。
さらに、新規事業への投資でもお互いが協力して投資を行えば、投資リスクを減らすことが可能です。そのため、資本提携によって新たな事業や新商品開発などが行いやすくなります。
資本提携のデメリット
資本提携のデメリットは、主に以下の3つがあります。
- 株式購入の資金が必要
- 資本提携を解消した場合高額な株式買取資金が必要
- 経営介入のリスクがある
ここでは、以上3つのデメリットについてそれぞれ解説します。
株式購入の資金が必要
資本提携の1つ目のデメリットは、株式購入の資金が必要なことです。資本提携は、株式譲渡や第三者割当増資などによって行われるため、出資する会社は株式を取得するための資金が必要になります。
また、提携企業の株価が低下してしまった場合には、株式を取得した出資企業が損をしてしまう可能性が高いです。そのため、出資企業はある程度財務状況に余裕がある状態が望ましいです。
資本提携を解消した場合は高額な株式買取資金が必要
資本提携の2つ目のデメリットは、資本提携を解消した場合高額な株式買取資金が必要なことです。資本提携を何かしらの理由によって解消する場合は、提携企業が買い取った株式を買い戻さなければいけないリスクがあります。
また、買い戻す場合は買取価格の交渉などを行うほか、業務に支障をきたさないための対策が必要です。そのため、資本提携を解消する場合は、注意が必要です。
経営介入のリスクがある
資本提携の3つ目のデメリットは、経営介入のリスクがあることです。資本提携では、経営権の独立性を保つために譲渡する株式を全体の約3分1未満に抑えることが一般的ですが、資本が出資されている以上、経営に介入される可能性は十分にあります。
そのため、資本提携を行う場合は、出資比率や事業の戦略などを徹底的に考えておくことが大切です。
3. 資本提携の手法
資本提携を行う場合、主に以下4つの手法で行われる場合が多いです。
- 株式譲渡
- 第三者割当増資
- 株式移転
- 株式交換
ここでは、以上4つの資本提携での株式取得方法について、それぞれ解説します。
①株式譲渡
株式譲渡は、売り手企業がすでに発行されている株式を買い手企業に買い取ってもらうことで株式を移動させる手法です。
この手法は、経営権が移動しない程度の株式を移動させる資本提携以外にも、経営権が移動するM&Aでも用いられることが多いです。
また、株式譲渡には、主に以下3つの方法があります。
- 相対取引
- 公開買付け
- 市場買付け
相対取引
相対取引とは、株式市場で株式の売買ができない中小企業の非公開株式を取得するために行われる方法です。
また、買い手と売り手が直接取引をすることによって株式を取得するので、当事者同士で数量や価格、決済方法が決められます。
公開買付け
公開買付けとは、買い手があらかじめ買付け価格やその株式数を告知した上で、不特定多数の株主から市場を通して株式を買い付ける方法です。
この方法は、上場企業の株式を大量に集めるために利用される方法でもあります。
市場買付け
市場買付けとは、上場している企業の株式を購入することで、株式を取得する方法です。
また、市場で短期的に大量の株式を取得してしまうと株価が高騰してしまう可能性があるので、5%以上の株式を買い取る場合には、公開買付けを行う義務が発生します。
②第三者割当増資
第三者割当増資とは、新たに発行される株式を第三者に引き受けてもらう方法です。
第三者割当増資によって移動した資金は売買ではなく増資なので、提携先の株主ではなく会社に入ります。
また、課税対象にならなかったり、業績が向上する可能性があるというメリットがあります。
しかし、増資されることによって、株主の持株比率が減ってしまうというデメリットもあります。
③株式移転
株式移転とは、すでにある株式会社が発行済株式のすべてを新たに設立する会社に取得させることで、親子会社を形成させるという手法です。
株式移転によって設立される会社を中心に持株会社にする場合に利用される方法でもあります。
④株式交換
株式交換とは、株式譲渡の対価として買い手の株式を付与してもらうことです。
売り手は自社株式の全てを買い手に譲渡するので、完全に親会社と子会社という関係性になるので、経営権は親会社に移動します。
また、株式譲渡によるM&Aととても似ていますが、株式交換では子会社が親会社の株式の1部を付与してもらえるので、株式交換とM&Aには大きな違いがあります。
4. 資本提携の手続き
資本提携は、主に以下の5つの流れで手続きが行われます。
- 資本提携の目的を明確に示す
- 対象の企業を見つける
- 資本提携の詳細を決定する
- 資本提携の条件を相談する
- 契約の締結
ここでは、以上5つの流れについてそれぞれ解説します。
①資本提携の目的を明確に示す
資本提携をする場合、最初に資本提携の目的を明確に示す必要があります。
主に、資本提携で実現させたいことや資本提携の必要性などを明確にすることによって、資本提携を行う相手にアピールするポイントなども明確にできます。
また、資本提携を結ぶのに相応しい会社を見つけるためにも効果的なので、できるだけ明確に示すことが大切です。
②対象の企業を見つける
資本提携を行う理由を明確に示すことができたら、続いて対象の企業を見つけます。
資本提携を行う場合、資本を出資する側と資本を受け取る側の双方が会社の財務状況を把握していることが大切です。
また、資本を出資する側の財務状況が厳しい場合や資本を受け取る側の経営状況が厳しい場合などには、資本提携が成立しない可能性が高いです。
そのため、資本提携を行う対象企業を探す場合は、M&A仲介会社などに依頼する場合も少なくありません。
③資本提携の詳細を決定する
資本提携を行う企業を見つけることができたら、資本提携の詳細を決定します。
資本提携の詳細とは主に、資本の出資比率についての取り決めや提携の範囲やお互いの供出できる経営資源などの取り決めです。
お互いの会社にどのようなメリットやリスクがあるのかをしっかりと話し合い決めていくことで、資本提携が行われる可能性が高くなります。
また、どのような方法で資本提携を行うのかについても、しっかりと話し合うことが大切です。
④資本提携の条件を相談する
資本提携の詳細についてある程度決定したら、資本提携の条件について相談し締結に向けて交渉します。
資本提携ではお互いの求めている条件や理想などが完全に一致するということは稀なので、交渉の中でお互いが譲れない条件や許容できる条件などを主張し合うことが大切です。
完全にお互いの理想が一致しなくても、譲り合いなどによって交渉が成立する可能性があるので、納得がいくまでしっかりと交渉することが効果的です。
⑤契約の締結
契約の締結は、資本提携に関する具体的な内容が記載された資本提携契約書もしくは資本業務提携契約書を作成して、契約を締結します。
契約書には、主に以下の内容が記載されています。
- 契約の目的
- 契約に関する概要(企業の名称・所在地・代表取締役社長の氏名など)
- 業務内容と役割・責任について
- 提携の期間や提携の日程について
- 収益の分配、費用負担に関する条項
- 知的財産権の帰属に関する条項
- 秘密保持の義務について
また、資本提携は会社法などで定められた定義などがないため、どちらか一方が不利になる契約でも成立します。
そのため、契約を締結する場合は、弁護士などの専門家を通して慎重に行う必要があります。
5. 資本提携の注意点
資本提携を行う場合の注意点は、主に以下の3つがあります。
- どちらか一方だけに有利な契約書は作成しない
- 高リスクの場合は契約内容の変更も検討する
- 事前に十分な資金を準備しておく
ここでは、以上3つの注意点をそれぞれ解説します。
どちらか一方だけに有利な契約書は作成しない
資本提携の1つ目の注意点は、どちらか一方だけに有利な契約書は作成しないことです。
資本提携は、会社法などで定められた定義がないので、どちらかが不利になる契約でも成立させることができてしまいます。
しかし、お互いにメリットがあるように契約を締結することが一般的なので、どちらにも十分なメリットがあるような内容の契約書を作成しましょう。
高リスクの場合は契約内容の変更も検討する
資本提携の2つ目の注意点は、高リスクの場合は契約内容の変更も検討することです。
資本提携では、お互いにさまざまなメリットがあるだけではなく、株価の低下や新規事業の失敗などのリスクもあります。
また、それらのリスクを受けることで自社に大きなダメージを受けてしまう場合には、契約内容の変更を検討することが大切です。
事前に十分な資金を準備しておく
資本提携の3つ目の注意点は、事前に十分な資金を準備しておくことです。
資本提携では、株式譲渡や第三者割当増資などで株式を取得するための資金が必要になります。さらに、万が一、資本提携を解消する場合には、譲渡した株式を買い取るための多額の資金が必要になる場合もあります。
そのため、財務状況が厳しい場合には適しておらず、事前に十分な資金を準備しておくことが大切です。
6. 資本提携の事例【2024年最新】
ここでは2024年最新の資本提携の事例を紹介します。
SOMPOホールディングスとRIZAPグループによる資本業務提携
SOMPOホールディングスとRIZAPグループは、2024年6月7日に資本業務提携契約を締結しました。
SOMPOホールディングスは、国内損害保険事業を中心に、海外保険事業、国内生命保険事業、および介護事業を含むウェルビーイング事業など、多岐にわたる事業を展開しています。
RIZAPグループは、中長期経営戦略の立案・遂行、グループ各社の事業戦略実行支援・事業活動の管理を行っており、連結子会社のRIZAP株式会社では、パーソナルトレーニングジム「RIZAP」やコンビニジム「chocoZAP」などの事業を運営しています。
今回の資本業務提携により、SOMPOホールディングスは安心・安全・健康に資する保険商品やサービスを提供し、RIZAPグループはフィットネスや医療連携サービスを通じて健康を増進させるソリューションを提供します。
これにより、両社の顧客が互いのサービスにアクセスしやすい環境を整えます。また、長期的には双方が持つデータを活用し、両社の強みを生かした新商品や新サービスを提供することで、健康寿命の延伸や高齢化社会をポジティブにとらえられる社会の実現を目指し、業務の拡大を図ります。
大成建設と平和不動産による資本業務提携
平和不動産と大成建設は、資本業務提携を行うことを決定し、契約を締結しました。また、平和不動産、大成建設、三菱地所は、この提携契約および平和不動産と三菱地所が2011年2月17日に締結した「資本業務提携契約書」に基づき、3社間で新たな協定を結び、共同関係を構築しました。
大成建設は、国内外で建築・土木の設計・施工、環境、エンジニアリング、原子力、都市開発、不動産など、多岐にわたる事業を展開しています。
平和不動産は、ビルディング事業(証券取引所、オフィス、商業施設、住宅等の開発、賃貸、管理および売却)、アセットマネジメント事業(平和不動産リート投資法人の資産運用および不動産の仲介)を手掛けています。
三菱地所は、オフィスビル、商業施設、ホテル、物流施設などの開発、賃貸、収益用不動産の開発販売、住宅用地・工業用地の開発販売、空港・余暇施設の運営、不動産の仲介・コンサルティング、資産運用事業を行っています。
この資本業務提携により、平和不動産と大成建設は中期的な協働関係を構築し、それぞれの事業基盤とノウハウを生かして以下の3つの分野で企業価値の向上を目指します。
- 再開発事業の拡大と迅速な推進
- 新しい不動産投資事業など新規事業分野での業務提携
- サステナビリティおよびDX(デジタルトランスフォーメーション)分野における業務提携の推進
オリオンビールと近鉄グループHDによる資本業務提携
オリオンビール(沖縄県豊見城市)と近鉄グループホールディングス(以下「近鉄GHD」)は、資本業務提携に合意しました。今後、オリオンビールの不動産の有効活用を支援するほか、ホテル運営での協業や観光・小売業での連携を進めていく予定です。
オリオンビールは、ビールを中心とした酒類・清涼飲料事業に加え、観光・ホテル事業も展開しており、酒類の製造・販売やホテル・不動産の所有・賃貸などを行っています。近鉄GHDは、運輸、不動産、国際物流、流通、ホテル・レジャーなど多岐にわたる事業を展開しています。
オリオンビールは、沖縄との共存共栄を実現するために、地域に根差した観光・ホテル事業の持続可能性を強化することが必要と考え、沖縄で40年以上にわたりホテル経営を通じて地域雇用や消費を生み出してきた近鉄GHDとの資本業務提携を決定しました。
今後、オリオンビールと近鉄GHDの双方の強みを生かし、沖縄にとって有益なシナジー効果を生み出すために、連携を深めていきます。
7. 資本提携でさらなる事業拡大が可能
資本提携を行うことによって、1社では実現することができなかった新規事業や新商品の開発などができるようになり、それによって提携企業同士は高い利益を得ることができます。
また、実際に資本提携によって経営を立て直した企業は数多く存在しており、今後も資本提携を結ぶ企業は多くなっていくことが予想されています。
そのため、これから資本提携を考えている企業は、資本提携のデメリットや注意点などをしっかりと理解・対策して、効果的に事業拡大を目指していきましょう。
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