2020年10月21日更新
人材派遣会社はM&Aが多い!大手企業に対抗して生き残るには?

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
人材派遣会社は大企業のM&Aによる業界再編も多く、特に中小企業には厳しい現状です。人材派遣会社が生き残るためには、積極的にM&Aを検討していくのがポイントとなっています。買い手のつきやすい昨今、より自社を発展させる売却を行いましょう。
目次
1. 人材派遣会社にM&Aが多い理由は3つ!
人材派遣会社のM&Aがよく行われている理由は、以下の3つが挙げられます。
- 業界再編する大手人材派遣会社に対抗するため
- 後継者がいないが廃業はしたくない経営者が多いため
- 専門分野に特化した人材派遣会社の人気が出てきたため
人材派遣会社では、以上のような理由でM&Aが選択されるケースが増えています。
まずはどのような理由でM&Aが増えているのかを確認し、自社も実施するのかを検討しましょう。それぞれの理由について、順番に見ていきます。
①業界再編する大手人材派遣会社に対抗するため
1つ目の理由が、業界再編としてM&Aを行っている大手人材派遣会社に対抗するためです。
大手人材派遣会社は中小規模の人材派遣会社を中心に積極的に買収し、業界再編を行っています。大手人材派遣会社とは、例えば以下のような会社です。
- リクルートホールディングス
- パーソルホールディングス
- パソナグループ
- アウトソーシング
- ワールドホールディングス
- テクノプロ・ホールディングス
これらの人材派遣会社を知っている方は多いのではないでしょうか。人材派遣会社を売却するなら、上記に挙げたような大手企業が買い手になれば高額売却が狙えます。
また、このような大手の人材派遣会社に自社を売却できれば、事業は今まで以上に発展を続ける可能性も高いです。
人材派遣業界の市場では、リクルートホールディングスやパーソルホールディングス、パソナグループが多くのシェアを確保しています。したがって、中小規模の人材派遣会社は、残りのシェアを争うことになり、企業間の競争が激しい状況です。
人材派遣会社の今後の生き残りのためには、M&Aが非常に有効な手段として考えられています。
②後継者がいないが廃業はしたくない経営者が多いため
2つ目の理由が、後継者がいないが廃業はしたくない経営者が多いためです。
人材派遣会社に限らず、中小企業の廃業数は増えています。その理由のほとんどが後継者不足や将来の経営への不安です。
中小規模の人材派遣会社も、経営者の高齢化や後継者不足が影響して、廃業を余儀なくされているケースが珍しくありません。この状況を打破するために、M&Aによる事業承継が増えています。
後継者がいなくてもM&Aで会社は存続させられます。それによって、既存顧客に対してのサービスの継続や、従業員の雇用確保も可能となるのです。
M&A後に会社が大きく発展する場合もあり、特に人材派遣業界においては、買い手側がM&Aをしてから人材育成の方針を変えたことで売上が伸びるケースもよくあります。
③専門分野に特化した人材派遣会社の人気が出てきたため
最後にご紹介する3つ目の理由は、専門分野に特化した人材派遣会社の人気が出てきたためです。
近年、人材派遣会社の業界内の競争は非常に激しくなっています。その中で経営者たちが生き残りのために有効と捉えているのが、事業の専門性を高めることです。
例えば、IT分野に強い優秀な派遣社員や、それを理解できる社員を多く抱えていれば、派遣先となる会社からは非常に重宝されます。
しかし、簡単に優秀な人材を手に入れることは難しいです。そこで効率良く人材を確保するために、M&Aが活用されています。
したがって、小規模ではあるものの優秀な人材を多く雇用している人材派遣会社が大手の人材派遣会社に求められるのが増えたのです。人材派遣会社の人材の専門性が高ければ、M&A市場では人気となって買い手も見つかりやすいはずです。
以上、人材派遣会社のM&Aが増加している3つの理由を見てきました。
まだハッキリとしたM&Aのイメージが湧かず、自社が行うかを検討しにくい方もいるでしょう。そこでここからは、自社の売却を成功させるために、人材派遣会社がM&Aを行った事例を見ていきましょう。
2. 人材派遣会社のM&A成功事例
人材派遣会社がM&Aを成功させるために役立つ事例には、以下のようなものがあります。
- サポート・システムがUTグループに株式を譲渡した事例
- JapanWorkがエンジャパンに株式を譲渡した事例
- u&uがウィルグループに株式を譲渡した事例
- ブレイブがマイナビに株式を譲渡した事例
- クリエアナブキがライクに事業を譲渡した事例
これらの事例を確認して、自社がM&Aを行う際に役立ててください。それぞれの事例について、順番に見ていきます。
①サポート・システムがUTグループに株式を譲渡した事例
1つ目にご紹介するのは、2020年1月にサポート・システムがUTグループに株式を譲渡した事例です。
UTグループは、サポート・システムの自己株式を除いた全ての株式を取得し、子会社化しました。
UTグループは、技術者の派遣事業などの人材サービスを通して、スキルアップやキャリア形成の機会を提供しています。国内大手製造業をはじめとして多くの顧客基盤を有しているため、高条件で就業可能な企業を確保しています。
サポート・システムは、主に関西地区を基盤として製造業などの人材派遣事業を行っています。ISO9001(品質保証)やISO22000(食品安全)も取得しており、食品加工業界からの厚い信頼を得ている企業です。
今回のM&Aにより、自社グループの採用と人材育成の基盤を活かし、顧客に質の高いサービスの提供を図り、さらに企業価値の向上を目指します。
売り手企業 | サポート・システム |
URL | https://www.support-sys.co.jp/ |
買い手企業 | UTグループ |
URL | https://www.ut-g.co.jp/ |
②JapanWorkがエンジャパンに株式を譲渡した事例
2つ目にご紹介するのは、2019年7月にJapanWorkがエンジャパンに株式を譲渡した事例です。
エンジャパンはJapanWorkの発行済株式の51%を取得し、子会社化しました。そして2022年までに株式交換の手法によって、残りの株式を取得する見込みです。
JapanWorkは、外国人向け求人一括サイトの「JapanWork」を運営し、外国人向けに、AIによる仕事の情報提供や、チャットを利用し相談できる「チャットコンシェルジュサービス」を提供している会社です。
エンジャパンは求職サービスサイトの運営や人材紹介事業を行っています。今回のM&Aは、今後外国人労働者市場がより活発化すると見込んだうえで、外国人労働者事業を通じて、さらなる企業価値の向上を目指します。
売り手企業 | JapanWork |
URL | https://corporate.japan-work.com/ |
買い手企業 | エンジャパン |
URL | https://corp.en-japan.com/ |
③u&uがウィルグループに株式を譲渡した事例
3つ目にご紹介するのは、u&uがウィルグループに株式を譲渡した2019年4月の事例です。
人材派遣会社大手のウィルグループは、シンガポールの連結子会社であるWILL GROUP Asia Pacific Pte.Ltd.によって、オーストラリアのu&u Holdings Pty Ltdの株式60%を取得しました。また、u&uの連結子会社u&u NSW Pty Ltdの株式も19%取得するようにしたのです。
株式を取得した価格はおおよそu&uの株式が16億円、u&u NSWの株式は9,000万円程度と見られています。
今回ウィルグループがオーストラリアのu&uの株式を買った目的は、海外事業の強化のためです。特にオセアニア地域の人材派遣事業を強くするために、今回のM&Aを行いました。
u&uは大手企業や政府の機関にも人材派遣をしているので、そのノウハウを手に入れることも狙いでしょう。
売り手企業 | u&u Holdings Pty Ltd |
URL | https://www.uandu.com |
買い手企業 | ウィルグループ |
URL | https://willgroup.co.jp |
このように、人材派遣業界では国内企業だけではなく、国外企業もM&Aの相手となり得ます。中小規模の人材派遣会社であれば国内企業が買い手候補となるケースがほとんどですが、幅広い視野で買い手探しを行うことを忘れないでください。
会社の実績やノウハウを生かしてくれる買い手に譲渡すれば、お互いに納得できるM&Aができるでしょう。
④ブレイブがマイナビに株式を譲渡した事例
4つ目にご紹介するのは、2019年2月にブレイブがマイナビに株式を譲渡した事例です。
ブレイブは、介護士や看護師、保育士の人材派遣業を全国に展開している会社で、介護・医療・保育業界における人手不足の解決に向けて2011年に設立されました。
このような市場背景の中、マイナビへ株式を譲渡し、マイナビグループとなることで、今後さらなる成長を続ける介護派遣市場に参入し、また採用力の強化および拠点拡大などで事業拡大を目指します。
売り手企業 | ブレイブ |
URL | https://www.braves.co.jp/ |
買い手企業 | マイナビ |
URL | https://www.mynavi.jp/ |
⑤クリエアナブキがライクに事業を譲渡した事例
5つ目にご紹介するのは、クリエアナブキがライクに事業を譲渡した2018年1月の事例です。
ライクはクリエアナブキの一部の人材派遣事業を譲り受けました。事業譲渡の価格は1,500万円とされています。
ライクは、人材派遣会社として携帯電話やスマートフォン販売のための派遣を主に行っていました。クリエアナブキは四国エリアを中心に事業を行う人材派遣会社でした。
今回譲渡されたのは、クリエアナブキ大阪支店に関する人材派遣事業です。この事業譲渡によって、ライクは近畿エリアでもさらに事業を拡大していきます。それによって、派遣労働者と派遣先会社のマッチング能力をより一層強くしていく狙いです。
売り手企業 | クリエアナブキ |
URL | https://www.crie.co.jp |
買い手企業 | ライク |
URL | https://www.like-gr.co.jp |
この事例のように、人材派遣会社がさらなる事業エリア拡大を狙ってM&Aで会社を買うケースは多いです。大手の人材派遣会社から中小の人材派遣会社まで、さまざまな会社が事業エリア拡大を狙っています。
事業エリアが広がれば派遣社員の人数や派遣先が増え、より会社が発展していくためです。地域に密着した人材派遣事業を行っているなら、買い手がつく可能性は非常に高いといえます。
以上が、人材派遣会社のM&A成功事例でした。事例を見て自社がM&Aを行うイメージが湧いてきた方も多いはずです。
M&Aを行う場合、自社に有益な結果を手に入れたいと考えているでしょう。ここでは、M&Aによって得られるメリットを知り、自社がどのようなM&Aを行うべきかを考えていきましょう。
3. 人材派遣会社がM&Aで自社の売却を行う利点
人材派遣会社の売却で得られる利点には、以下のようなものが挙げられます。
- 他社との協力で生き残りを狙える
- 後継者不足を解消できる
- 派遣労働者の就業場所の選択肢を増やせる
このようなメリットが得られるように、M&Aの戦略を立てていくのが良いです。それぞれのメリットについて、順番に確認していきましょう。
①他社との協力で生き残りを狙える
他社との協力によって、業界内で生き残りを狙えるのはM&Aの大きな利点です。
人材派遣会社がM&Aを行って会社を手に入れれば、売り手企業のノウハウや取引先を自社に取り込めます。逆に、売却側の企業も買収側の経営資源を活用できるようになり、今まで以上に事業が行いやすくなるはずです。
大手の人材派遣会社が買い手につけば、グループ傘下に入って安定した経営が可能になるでしょう。人材派遣業界は大手企業のシェアが大きいので、嬉しいメリットといえます。大手人材派遣会社が持つ豊富な経営資源を活用して、自社の売り上げ増加を図れるのです。
自社がまだ持っていないノウハウや優秀な人材といった経営資源を新たに手に入れる場合、多くの時間や資金が必要になります。M&Aを行えば、効率良くノウハウや人材を獲得可能です。さらに、買い手と売り手のノウハウが組み合わされることで、シナジー効果(相乗効果)が期待できます。
②後継者不足を解消できる
M&Aで会社や事業を売ることによって、後継者不足を解消できる点もメリットです。
中小規模の人材派遣会社の経営者は高齢化しているケースが少なくありません。それにもかかわらず、事業を引き継いでくれる後継者不足の問題があります。
M&Aによって、他社に事業を引き継げれば、これまで成長させてきた大切な会社を廃業させずに存続できます。そうすれば、廃業にかかる事務所の原状回復費用や事務用品の廃棄費用もかかりません。
人材派遣業界は、新規参入してくる企業も増加しています。M&Aを活用して人材派遣業界に新規参入を果たす企業も多いので、後継者がいなくて困っている人材派遣会社の需要は高い状態です。
「自社の需要が高い今のうちに売ってしまって引き継いでもらったほうが良い」との考えから、早めにM&Aを実施してリタイアする経営者もいます。後継者がいない場合でも会社の存続を諦めずに、M&Aを検討するのが良いでしょう。
③派遣労働者の就業場所の選択肢を増やせる
M&Aを行えば買い手と協力して今後の事業が行えるので、派遣労働者の就業場所の選択肢を増やすこともできます。
人材派遣会社であれば、大手企業の傘下に入ることで派遣先の数が一気に増えるはずです。また、登録している派遣労働者の数も増えることになるでしょう。
人材派遣会社の持っている派遣先の数や利用者数は、そのまま収益につながります。人材派遣会社の経営に不安があるなら、大手企業へのM&Aによる売却も検討してみてください。
もちろん、中小規模の同業者に売却しても、派遣社員の就業場所は増やせます。自社の派遣先と重なっていない派遣先を多く持つ人材派遣会社を買い手に選べば、今までよりも派遣労働者の満足度を高められるでしょう。
以上、M&Aで売却を選んだ際に得られる利点を見てきました。メリットを具体的に確認し、「自分の人材派遣会社もM&Aをしたい」とお考えになったのではないでしょうか。
それでは、実際に会社がM&Aで会社売却を行うときの流れを見ていきます。
4. 人材派遣会社がM&Aを行う際の流れ
人材派遣会社がM&Aを行う際の流れは、会社譲渡の場合は以下のようになっています。
- 人材派遣業界に強いM&A仲介会社を選定する
- 買い手を探す
- 買い手と条件について話し合う
- 基本合意契約を結ぶ
- 買い手からデューデリジェンスを受ける
- 取締役会か株主総会で譲渡の承認を受ける
- 株式譲渡契約を結んで株主名義を書き換える
事業の一部のみを売却する事業譲渡はやや手続きが異なりますが、まずは業界内でもよく使われる会社譲渡の流れを見ておくのが良いでしょう。
事業譲渡の場合も最初の手続きであるM&A仲介会社に相談するところから始まるので、専門家のサポートを受けながら実施すれば問題ありません。
それでは、それぞれの手続きについて順番に見ていきます。
①人材派遣業界に強いM&A仲介会社を選定する
まずは人材派遣業界に強いM&A仲介会社を選定しましょう。
M&Aについて自力ですべて行うのは非常に難しいです。M&A仲介会社に依頼すれば、買い手探しや条件交渉、契約書の作成といった多くのことを手伝ってもらえます。
中小規模の人材派遣会社なら、社内にM&A経験者がいないのも珍しくありません。そのようなときでもM&A仲介会社のサポートがあれば問題なくM&Aを成約まで進められます。
M&A仲介会社を選ぶポイントは、人材派遣業界に関する知識や経験が豊富かどうかと、報酬体系が明快かどうかです。M&A仲介会社によっては、人材派遣業界のM&Aの経験がない場合もあるので、事前に過去の実績を確認しておいたほうが良いでしょう。
また、報酬体系については完全成功報酬制のM&A仲介会社なら、報酬体系も成約時の成功報酬のみのため、安心して依頼できます。完全成功報酬制以外のところに依頼するなら、事前に詳細な見積もりを出してもらったほうが良いでしょう。
M&A仲介会社にご相談の際は、M&A総合研究所がおすすめです。M&A総合研究所は着手金無料の完全成功報酬制で、人材派遣業界でのM&Aについても経験豊富なM&Aアドバイザーがクロージングまでフルサポートいたします。
さらに、M&A総合研究所はスピーディーなサポートを実践しており、最短3カ月で成約を実現した実績がございます。
M&Aを徹底的にサポートいたしますので、まずは無料相談にお問い合わせください。
②買い手を探す
M&A仲介会社を選定したら、買い手探しの手続きに移ります。
買い手候補が複数出てくることも多いので、どの買い手を選ぶのかを慎重に検討しなければなりません。まずは買い手をうまく選ぶために、自社にとってどのような条件の買い手ならM&A後も事業が発展していくのかを考えましょう。
人材派遣業界のM&Aは、同業他社が買い手候補となる事例がよくあります。同業他社なら、事業内容や事業規模、事業エリア、強み・弱みを冷静に分析し、自社の成長に役立つかを考えるのが良いです。
一方で異業種の買い手候補の場合は、人材派遣業界と組み合わせて収益性が高まるかを考えてみるのが良いといえます。M&Aが成約したからといって、必ずしも自社の関係者が喜ぶ結末を迎えられるとは限りません。M&A仲介会社の意見も聞きながら、自社に最も良い買い手を選びましょう。
③買い手と条件について話し合う
自社と合いそうな買い手が見つかったら、M&Aの具体的な条件を決めていきます。
売却価格や成約日のめど、従業員の今後の処遇など、さまざまな観点から条件を決めていかなければなりません。買い手も売り手も自社のことを考えて条件を決めようとするあまり、もめてしまって破談になることもあります。
できるだけ冷静に話し合いを進めていくために、M&A仲介会社に同席してもらうのがおすすめです。第三者の客観的なアドバイスを参考に話し合えば、お互いにちょうど良い落としどころが見つかりやすくなります。
単に高く売ろうとだけ考えるのではなく、従業員や取引先などの関係者も笑顔になれる条件を決めるように心がけておきましょう。
④基本合意契約を結ぶ
条件について決定後、基本合意契約を結びます。
基本合意契約は、M&Aを行うにあたっての条件について現段階で決まっている内容を明確にした仮契約です。基本合意契約はM&Aにおいて必ずしなければならない手続きではありません。また、基本合意契約をしてからも、会社譲渡が不成立となるケースはゼロではないです。
しかし、基本合意契約で買い手と話し合った条件を書面に残して明確にすると、買い手も売り手もM&Aに対して積極的な気持ちになれます。条件の勘違いやお互いの姿勢のすれ違いを防ぐためにも、基本合意契約を結んだほうが良いでしょう。
ただし、基本合意契約で書面に残した条件は、今後の手続き次第で変更になる可能性がある点だけは覚えておいてください。
⑤買い手からデューデリジェンスを受ける
基本合意契約の締結後は、買い手にデューデリジェンスを行ってもらいます。
デューデリジェンスは売り手側企業を調査する方法です。M&A成立後に買い手側が予想外のリスクを抱えてしまわないように、事前にリスクを洗い出します。
このとき、経営状況や法的リスクの有無、会計処理、従業員の人数、派遣労働者の人数、事務所の賃貸契約の状況など詳細にチェックされるはずです。
「デューデリジェンスは買い手が頑張るもの」と、他人事にしておくのは良くありません。なぜなら、デューデリジェンスで自社の状況を把握してもらわなければ、後に大きなトラブルに発展する可能性もあります。場合によっては損害賠償を請求されるケースもあります。
したがって、買い手のデューデリジェンスには積極的に協力したほうが良いでしょう。もしもデューデリジェンスで問題点が発見されたら、条件の変更を視野に入れて買い手と対応について丁寧に話し合ってください。
⑥取締役会か株主総会で譲渡の承認を受ける
M&Aで会社を譲るためには、取締役会か株主総会において承認を受ける必要があります。
経営者1人の判断で会社を売ってしまうと、関係者の不利益になるかもしれないためです。取締役会があるのなら取締役会で、取締役会が設置されていないのなら株主総会で会社譲渡によるM&Aを承認してもらいます。
承認を受けたら、会社譲渡の最終契約に向けて最後の話し合いを買い手と行っておきましょう。もしも会社譲渡の前に気になる件が出てきた場合、必ずM&A仲介会社に相談してください。
⑦株式譲渡契約を結んで株主名義を書き換える
最後に、会社譲渡を成立させるために株式譲渡契約である最終契約を行います。
契約を結ぶ際には、内容を細部まで確認して不安をゼロにしておきましょう。少しでも不安があれば、買い手やM&A仲介会社に相談したほうが後悔しません。
株式譲渡契約を結んだら、買い手から代金を受け取って売り手は株券を渡します。その際に、株式名簿も書き換えてください。株主名簿の書き換え方は定款に書かれているのがほとんどです。
株主名簿の書き換えを行ったらM&Aは完了です。会社のホームページで第三者に向けて発表しておきましょう。
以上、人材派遣会社の譲渡に必要な手続きを見てきました。
会社譲渡の手続きは、M&A仲介会社がサポートしてくれるので、あまり心配する必要はありません。わからないことは積極的に質問し、指示されたことは迅速に行う姿勢が大切です。
それでは人材派遣会社のM&Aの手続きがわかったところで、最後にM&Aを成功させるためのコツを見ておきましょう。
5. 人材派遣会社がM&Aの手を成功させる5つのコツ
人材派遣会社がM&Aを成功させるには、以下のような5つのコツがあります。
- 経営状況を確認し磨き上げておく
- 専門分野に強いなら積極的にアピールする
- 派遣労働者の教育体制を整えておく
- 社会保険の加入状況をチェックしておく
- 人材派遣業界の現状に詳しい専門家のサポートを受ける
これらのコツを知っておけば、M&Aの成功確率は一気に高まります。それぞれのコツについて、順番に見ていきましょう。
①経営状況を確認し磨き上げておく
M&Aを行う前に、経営状況を確認して磨き上げておくことは重要です。
すぐに解決できる経営課題があるなら、解決してから買い手を探したほうが良い条件でM&Aができます。このときのポイントは、自社の取引先や各売上比率をしっかりと調査しておきましょう。
取引先の企業に関する情報や安定した受注がされているかについて、しっかりと確認しておきましょう。それによって、買い手に自社の魅力をアピールしやすくなります。人材派遣会社は派遣先となる取引先の数が非常に重視されるので、増やせるなら増やしておくと良いです。
また、事前に営業費や施設管理費の改善ができていれば、より一層買い手からの需要は高まるはずです。
②専門分野に強いなら積極的にアピールする
人材派遣会社をM&Aで売却するなら、専門性の高さを積極的にアピールするのが良いです。
例えば、医療系の派遣やIT系の派遣といった専門分野における実績があるなら、買い手探しの際にはアピールしておきましょう。
近年、大手の人材派遣会社は業界再編のために専門分野に強い会社の買収に前向きです。自社の内部だけで事業の専門分野を高めるのは時間や費用のコストがかかるので、M&Aで効率良く手に入れようとする経営者が多くいます。
レベルの高い派遣労働者が数多く登録しているだけでも買い手には魅力的に映るはずです。自社に専門性の高い分野がないのかを、M&A前にはチェックしてみてください。
③派遣労働者の教育体制を整えておく
派遣労働者の教育体制をより良いものに整えておくことも成功のためには有効となっています。なぜなら教育体制が整っていなければ、取引先の満足度は低下しやすく安定した受注が見込めないためです。
買い手側は、将来の取引状況に不安が大きい人材派遣会社を買収するのはできるだけ避けたいと考えています。そのため、教育体制についてあまり考えていなかったなら、派遣労働者の教育マニュアルを作って実施を徹底するなどの対策を行いましょう。
④社会保険の加入状況をチェックしておく
人材派遣業界では、社会保険の加入状況も重要なポイントです。
2カ月を超える雇用契約を結ぶなら、派遣労働者も通常の労働者と同じように社会保険に加入しなければなりません。M&Aを進める前に、あらためて社会保険の加入状況を確認しておいたほうが良いでしょう。
もしも社会保険に加入しなければならないのに未加入のままの派遣労働者がいたら、M&A成立後に買い手が労働者とトラブルになるかもしれません。そうなると、買い手から責任を追及されることにもなり得ます。
また、労働者派遣法も改正され、社会保険未加入の派遣労働者を派遣する場合には、派遣先に理由を伝えなければならなくなりました。そのような手間がかかる人材派遣会社を積極的に買収したがる買い手は少ないので、M&Aの前に対応してください。
⑤人材派遣業界の現状に詳しい専門家のサポートを受ける
M&A仲介会社選びも、M&Aを成功させるためには非常に大切なポイントです。
M&Aの手続きのところでもお伝えしたように、M&A仲介会社はさまざまな手続きをサポートしてくれます。
M&Aは行えば必ず成功するわけではありません。失敗するリスクを減らして安心して手続きを進めていくためにも、人材派遣業界の現状に詳しいM&A仲介会社を選びましょう。
どのM&A仲介会社に相談するのかお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。
6. 人材派遣会社のM&Aについてはご相談ください!
人材派遣会社のM&Aを検討している経営者の方は、M&A総合研究所にご相談ください。
人材派遣会社のM&Aを成功させるには、法的な知識や業界事情を知っておく必要があります。M&A総合研究所は、中堅・中小企業向けの案件を取り扱う仲介会社で、人材派遣会社の案件も取り扱っています。
もちろん、「まだM&Aをするかどうか悩んでいる」とした状況でも、ご相談は可能です。まずは人材派遣会社の価値を算出し、M&Aを行うべきかを一緒に考えていきましょう。
料金体系には完全成功報酬型(レーマン方式)を採用し、着手金・中間金・月額費用は無料です。さらに、M&A総合研究所はスピーディーなサポートを実践しており、最短3カ月で成約を実現した実績もございます。
無料相談は随時お受けしていますので、M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
人材派遣会社は業界再編も多く、M&Aも盛んです。経営を安定させるためのM&Aや、事業承継目的のM&Aは頻繁に行われています。
人材派遣会社の経営に不安がある場合には、M&Aを検討しましょう。
人材派遣会社のM&Aに詳しい専門家に相談すれば、悩みも解決できることでしょう。もしも専門家に心当たりがなければ、まずはM&A総合研究所にお問い合わせください。
人材派遣業界に精通しているM&Aアドバイザーが、培ったノウハウを生かしM&Aをサポートいたします。無料相談は随時お受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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