病院・医療法人のM&A(売買)動向・価格相場【最新事例あり】

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

近年、中小企業を中心にM&A(売買)を行う企業は増加しています。一方で病院・医療法人のM&A(売買)成約件数も増加傾向にあります。なぜ、病院・医療法人のM&A(売買)が増加しているのか、M&A(売買)にはどのようなルールや傾向があるのか詳しく解説していきます。

目次

  1. 病院・医療法人のM&A
  2. 病院・医療法人の現状
  3. 病院・医療法人M&A(売買)と非営利性
  4. 病院・医療法人でM&A(売買)件数が増加している理由
  5. 病院・医療法人M&A(売買)の特徴
  6. 病院・医療法人M&A(売買)のメリット
  7. 病院・医療法人M&A(売買)成功のためのポイント
  8. 病院・医療法人M&A(売買)に掛かる期間
  9. 病院・医療法人の価格相場
  10. 病院・医療法人のM&A(売買)仲介会社おすすめ3選
  11. 病院・医療法人のM&A(売買)事例5選
  12. 病院・医療法人のM&A(売買)動向まとめ
  • 病院・医療法人のM&A・事業承継

1. 病院・医療法人のM&A

病院・医療法人のM&A

病院・医療法人は、非営利法人であり、患者様のために病院・医療法人の経営を行っています。近年は病院・医療法人の経営者の高齢化により経営が困難な状況となっていますが、そのような性質があるため、病院・医療法人は簡単に廃業することができません。これを理由とした病院・医療法人の廃業を回避する方法の1つとしてM&Aがあります。

事業承継を目的とした病院・医療法人のM&A成約件数が近年増加傾向にあります。この記事では、病院・医療法人の業界のM&Aについて紹介します。

  • 病院・医療法人の現状について
  • 病院・医療法人のM&Aが増加している原因について
  • 病院・医療法人のM&Aの特徴について
  • 病院・医療法人のM&Aの事例について

病院・医療法人のM&Aは、一般企業のM&Aとは異なっている点がたくさんあります。病院・医療法人のM&Aについて、少しでも理解できるように解説をしていますので、最後までぜひご覧ください。

2. 病院・医療法人の現状

病院・医療法人の現状

まずは、病院・医療法人の現状について以下の2つの観点から紹介していきます。

  1. 病院・医療法人の基本情報について
  2. 病院・医療法人の市場状況について
病院・医療法人は、人の命を預かっている法人であるため、一般企業のM&Aとは異なる点が多くあります。そのため、病院・医療法人のM&Aについて紹介する前に、病院・医療法人の基本情報について説明します。

病院・医療法人の定義

病院・医療法人は医療法にのっとって設立された法人のことを言います。医療法では「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団 」(39条1項)と定義されています。病院・医療法人における社団法人と財団法人について紹介します。

 

社団法人の病院・医療法人

社団法人は、医師免許など特殊な技能を持った人(社員)を出資の対象とし、出資者全員による社員総会(設立総会)の承認を得て、設立することができる法人の形態です。医療法人の場合は、出資者が医師や名士となります。

病院・医療業界における社団法人には、出資持分ありの社団法人と出資持分なしの社団法人に分類されます。出資持分ありとは、社員(出資者)が退社するときに拠出金が返還されることを言います。社団法人の出資は、医師や名士のように人であるため、病院・医療業界における社団法人のほとんどが出資持分なしです。

財団法人の病院・医療法人

一方で、財団法人は提供された財産をもとに経営する法人の形態です。つまり、財団法人では出資の対象は人ではなく、資金となります。そのため、財団法人における最高決定機関は、一般企業と同様に出資者による総会で決定されます。

業界構造

病院・医療法人は、扱う業務の範囲により4つに分類することができます。

  1. 社会医療法人
  2. 特殊医療法人
  3. その他の医療法人
  4. 基金拠出型医療法人
この記事では、社会医療法人について紹介します。

社会医療法人

公共性の高い医療

社会医療法人とは、公共性の高い医療を受けることができる医療法人のことです。病院・医療業界は、人の命を預かって経営を行う法人であるため、非営利(利益を追求しないこと)であることが前提となっています。

しかし、非営利法人の病院・医療法人でもある程度利益が出ないと経営ができません。そのため、国は患者への医療行為に対して医療報酬点数制度を設けて、利益をコントロールしています。

医療報酬点数制度を設けていても、医療法人の経営者は利益を得るために、労力に見合わない治療を避けたいと考えています。例えば、休日診察・夜間診察を行う救急医療などの公共性の高い医療です。このような採算の合わない公共性の高い医療は、国や自治体が運営する病院で行うことになっていました。

しかし、国や自治体の財政状況が厳しいことから採算の合わない公共性の高い医療を行うことが困難になってきました。そこで、民間の医療法人の経営の知恵を借りることができれば、公共性の高い医療も運営することができるのではないかという考えが出てきました。この考えにのっとって設立させた官民共同の病院法人を社会医療法人といいます。

商流・事業の特性

法人という観点において病院・医療法人は一般に企業とは異なっている点があります。この記事では、以下の2点について解説します。

  1. 法人格の定義の多さについて
  2. 法人の方針を決める機関の違いについて

病院・医療法人の定義の多さについて

一般企業は株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の大きく4種類に分けることができます。これに対して病院・医療法人には、色々な形態が存在しています。先ほど紹介したように社団法人や財団法人もありますし、個人経営の病院や診療所もあります。また、国や自治体が経営している病院、日赤などいろいろな形態の病院が存在しています。

病院・医療法人のM&Aにおいては、医療法人という定義の多さがデメリットとなっています。その理由は手続きが複雑になるからです。

一般企業は大きく分けて4種類しかないので手続きはそれほど複雑ではありません。しかし、病院・医療法人にはたくさんの形態があるため、それぞれの形態に合わせたM&Aの手続きをする必要があります。病院・医療法人のM&Aを行おうと考えている方は、まず、買収先の病院がどのような法人形態をとっており、どのような手続きが必要か確認をする必要があります。

病院・医療法人の方針を決める機関の違いについて

一般企業、特に株式会社では、会社の経営方針決定や業務の執行を行っているのが、株主総会や取締役会です。株主総会は、会社の経営権を持っている株主が集まる会議でかつ、その会社の最高決定機関です。M&Aにおける最終決定は株主総会で決定します。

取締役会は会社の業務の執行を行う機関のことです。これらが一般企業における経営方針を決める機関です。

これに対して、社団法人の病院・医療法人においてM&Aの最終決定をする機関は、社員によって構成される社員総会です。社団法人の出資者は社員(医師や名士)であるため、その人たちが最終的な経営方針の決定を行います。社団法人における社員総会は一般企業でいうところの株主総会に当たります。

なお、社団法人において業務を執行するのは理事であり、一般の会社でいうところの取締役に当たります。一般の会社では取締役は社員よりも立場は上になりますが、社団法人の病院・医療法人では、出資者である社員のほうが理事よりも立場が上になります。この点においては、一般企業と大きく異なっています。

一方、財団法人において理事は、業務を執行するとともに、経営方針の最終決定権を持っています。財団法人で提供されている資金は理事からの出資であるため、理事の権力は社団法人よりも集中しているからです。つまり、財団法人の病院・医療法人がM&Aを行うときには、理事の承認が必要となります。

主要プレーヤー

病院・医療法人において、経営方針などを決める機関は理事会です。しかし、それを最終的に承認する機関は先ほども紹介したように病院・医療法人の形態によって異なっています。社団法人の場合は、社員総会により決定し、財団法人の場合は、理事会で決定します。

病院・医療法人の市場状況

病院・医療法人の市場状況は、少しずつ悪化している状況です。都市部の病院・医療法人では、大きな問題は見られていません。しかし、地方の病院・医療法人では、以下の2つの悪化要因により市場状況が悪化しているのが現状です。

  1. 地方病院における医師の高齢化や病院施設の老朽化
  2. 医師を目指す若者の減少
これら2つの悪化要因について解説します。

地方病院における医師の高齢化や病院施設の老朽化

高齢化社会により病院や診療所での患者数は緩やかに増加しており、法人としての売り上げも増加していると思われます。しかし、特に規模の小さい地方病院を中心に医師の高齢化が顕著になってきており、今後、同じ患者数をその医者が診察を続けることが難しいと考えられます。

また、資金力に乏しい病院では、施設の老朽化が進んでいるにもかかわらず、修繕できていないのが現状です。このような状況から病院・医療法人の市場状況は、悪化しているといえます。

医師を目指す若者の減少

特に地方の病院で働こうと考えている若い医者が減少している状況です。これを改善するために近年の地方大学の医学部では、地域枠を設けています。地域枠では、その地域出身の人でかつ医者を目指している人を対象に設けている枠です。

これにより、地方での医師の数を確保し、地方における医師不足の問題を解決しようとしています。このような観点から病院・医療法人の市場状況は、将来的に見ても苦しい状況であるといえます。

3. 病院・医療法人M&A(売買)と非営利性

病院・医療法人M&Aの非営利性について

病院・医療法人は、非営利性を要求されています。病院・医療現場において、すべての病状に対して治療してもらいたいと患者は願っています。しかし、病院・医療法人が営利を追求してしまうと、高額報酬の治療しか行わない、お金持ちの患者しか治療を行わないなど利益を上げるために不公平な病院経営を行ってしまう可能性があります。

このような理由から病院・医療法人は、非営利性を厳しく要求されています。これは、病院・医療法人のM&A(売買)を行うときにも同様に非営利性を厳しく求められます。病院・医療法人のM&Aにおける非営利性が問題となる代表的な以下の3つの事例を紹介します。

  1. 営利法人が社員(オーナー)となれるのか
  2. 営利法人の役員・職員が理事になれるのか
  3. 利害関係のある営利法人の役員・法人が出資者(社員)となれるのか

営利法人が社員(オーナー)となれるのか

結論から言うと営利法人の関係者が社員(オーナー)になることはできません。つまり、病院・医療法人の出資者になることはできないのですが、営利法人が病院・医療法人に出資することはできます。

しかし、営利法人が病院・医療法人を手放すときに、M&Aの時に出資した資金などは返す必要がないというのが厚生労働省の見解となっています。このことには十分に注意する必要があります。

営利法人の役員・職員が理事になれるのか

営利法人の役員・職員が病院・医療法人の理事になることがはできません。つまり、営利法人がM&Aで病院・医療法人を買収したとしても、営利法人による直接的な経営を行うことができないということです。

利害関係のある営利法人の役員・職員が出資者(社員)となれるのか

これに関しての制限は何もありません。つまり、営利法人の役員・職員が病院・医療法人の社員にはなれるということです。

しかし、医療の非営利性の観点からあまり好まれない形態であるということが専門家の見解です。ここまで病院・医療法人の非営利性が問題となる事例を紹介してきましたが、一般企業が病院・医療法人をM&Aし、直接経営権を掌握することは難しいと思われます

4. 病院・医療法人でM&A(売買)件数が増加している理由

病院・医療法人のM&A件数は増加している

近年、医療業界でM&A(売買)の成約件数が増加しています。その一番の理由は、様々な理由により売却される病院数が増加しているからです。この記事では、M&Aにより病院を売却する理由とその病院を買収する側のメリットについて解説します。

売却される病院の増加要因

地方病院では過疎化が進行しているため、その地域の人口が減少し、患者が減少しています。そのため、病院の売り上げが減少し、経営難に陥っている病院は増加しています。

また、医者を目指す人の減少や若者の都市部への流出により、後継者問題を抱えている病院も増加しています。これらの問題を解決するために病院・医療法人の経営者は売却という選択を行います。このような背景があり、売却される病院の数が増加しているというのが現状です。

病院を買収するメリット

様々な問題を抱えた病院を買収するメリットは数多くあります。事業規模を拡大させることができたり、地方での存在感を強化させたり、施設間での連携をとることができるなどがあります。詳細居ついてはのちほど解説します。

5. 病院・医療法人M&A(売買)の特徴

病院・医療法人のM&Aの特徴

次は病院・医療法人におけるM&A(売買)の特徴について紹介します。

一般企業M&A(売買)との共通点

病院・医療法人におけるM&Aの流れは、一般企業のM&Aと基本的に同じです。M&Aの主なスケジュールは以下のようになります。

  • 事前準備、売買相手の探索・確定
  • トップ面談、基本合意書の契約
  • デューデリジェンス(企業監査)
  • 最終契約、クロージング(M&Aの実行)
これらについて簡単に説明していきます。

事前準備、売買相手の探索・確定

まず、M&Aを行う際に事前準備を行う必要があります。M&Aによって、自社にどのような効果がもたらされるのか、どのような会社を買収するかなどM&Aについての経営戦略を立てます

M&Aについて経営戦略を立てた後は、目的にあった買収相手の探索します。自社だけで買収相手の探索を行うことは困難であるため、一般的にはM&A仲介会社やM&Aアドバイザリーに依頼します。特に病院・医療法人のM&Aを行う場合はM&A仲介会社に必ず依頼します。そして、M&A仲介会社から紹介してもらった買収相手の候補の中からM&Aを行う相手を確定させます

トップ面談、基本合意書の契約

売買相手を確定させた後は、両者ともに秘密保持契約を締結し、M&Aについての提案資料を買収する会社が売却する会社に提示します。その提示資料を用いて両社の経営陣同士によるトップ面談を行います

買収相手の病院・医療法人が国や自治体によって運営されている場合は、役所の担当者がトップ面談に参加する場合があります。そこでM&Aについてルールにのっとっているかなどを確認します。トップ面談で両社互いにM&Aについて納得できた場合は、M&Aの基本合意書を契約します

デューデリジェンス(企業監査)

基本合意書を契約した後は、売却する法人のデューデリジェンス(企業監査)を行います。自社のM&A戦略の目的に合致している企業でも財務状況や法務状況に問題があった場合、M&A後、自社が経営難に陥ったり、コンプライアンス違反を犯す可能性があります。このような状況を回避するためにデューデリジェンスを実施し、売却される法人の問題点や改善すべき点を把握しておきます。

また、M&Aにおける契約金額を決めるための監査という意味合いもあります。なお、デューデリジェンスにより大きな問題が見つかった場合は、M&Aの契約自体が白紙になる場合もあるため、M&Aにおけるデューデリジェンスは非常に重要であるといえます。

最終契約、クロージング(M&Aの実行)

デューデリジェンスを実施し、問題がないと判断した場合、M&Aの最終契約を締結します。最終契約締結後は、クロージング(M&Aを実行)します。クロージングの具体的な内容としては、契約金を引き渡したり、その法人に勤務している人を異動させたりして、法人の統合を図っていきます。

一般的なM&Aのスケジュールについて簡単に紹介してきましたが、以下の記事ではより詳しくM&Aのスケジュールについて解説しています。興味のある方はご覧ください。

【関連】M&Aのスケジュールを解説!【買収までの流れ・手順】

一般企業M&A(売買)との相違点

M&Aにはある程度のお金が必要

ここからは、病院・医療法人のM&Aと一般企業のM&Aとの間で異なっている点について紹介します。病院・医療法人のM&Aでの大きな特徴は、M&Aにおける契約金関係とクロージングに至るまでの期間の2つあります。病院・医療法人のM&Aを行う際には、これから紹介する点に十分気を付けてください。

M&Aにおける契約金について

M&Aは売買契約であるため、売却される法人につけられる金額がM&A契約時に支払われる金額となります。しかし、病院・医療法人のM&Aの場合、契約金以外に資金を用意しておかなければならない場合があります。それは、社員への出資金の払い戻し分です。

先ほども紹介した通り、社団法人の病院・医療法人は社員(医師・名士)が出資者です。その社員の中で、金銭的な出資を行っていた場合、その社員に出資分を返還する必要があります。返還する金額は、出資金の返還を求める人数により変化するため、M&Aの案件により異なります。しかし、少なくともM&Aにかかる費用がその分増えるため準備をしておく必要があります。

クロージングを行うまでの期間について

一般企業間でのM&Aを行う場合、事前準備からクロージングを行うまでに約半年かかります。しかし、病院・医療法人のM&Aを行う場合には、事前準備からクロージングまでに1年以上かかる場合がほとんどです。これほどの時間かかる最大の理由は、行政機関が関与するためです。

詳しくは後ほど解説しますが、簡単に述べると病院・医療法人のM&Aには規定がありません。そのため、行政機関との十分な話し合いをし、M&Aに問題がないか確認しながら手続きを行うことになります。病院・医療法人のM&Aには、時間がかかるため、余裕をもってM&Aを行う必要があります。

6. 病院・医療法人M&A(売買)のメリット

M&Aのメリットについて

病院・医療法人のM&Aは、近年増加しています。この理由は、後継者不足などがあります。そのほかにも病院・医療法人を買収する側、売却する側にそれぞれメリットがあるためM&Aが行われています。それらのメリットについて、それぞれ紹介します。

買収側のメリット

病院・医療法人を買収するメリットはいくつかあります。このうち、この記事では以下の2つを紹介します。

  1. 事業規模を拡大させるため
  2. 地方での存在感の強化のため

事業規模を拡大させるため

買収側のメリット1つ目は、買収により事業規模を拡大させることができるからです。事業拡大により、無駄のない設備を配置することができたり、コストや人件費の削減などのシナジー効果を得ることができます。これにより更なる事業収益を上げることができます。

事業規模拡大の戦略を行った法人の例として医療法人徳洲会があります。医療法人徳洲会は、医療業界におけるM&Aを先駆けて行っていました。その結果、日本最大の医療法人となるまで事業規模の拡大に成功しています。

事業規模拡大の効果により、医療法人徳洲会の事業収益は約1500億円と2位の医療法人の事業収益と約3倍近く差をつけています。

地方での存在感の強化のため

買収側のメリット2つ目は、地方での存在感の強化です。売却される病院の大半は、地方で存在感のある病院1つであることが多いです。そのため、そのような病院を買収することができれば、買収する側の存在感をその地域において強めることができますし、医療法人の名前を広めることができます。

売却のメリット

病院・医療法人を売却するメリットもいくつかあります。特に地方で経営している病院・医療法人では、売却することによりたくさんのメリットを受けることができると考えられます。この記事では、たくさんあるメリットのうち以下の2つについて紹介します。

  1. 事業承継を行い、病院を経営させ続けることができる点について
  2. 医療業務に集中できるという点について

病院の事業承継について

売却側のメリット1つ目は、病院の事業承継を行い、病院を経営させ続けることができる点です。病院・医療法人の経営者の高齢化により、将来の病院運営をどうするべきか考える必要のある病院はたくさんあります。

その解決方法としては主に3つあります。それは、後継者を探す・廃業する・M&Aにより事業承継の一環として法人の売却するの3つです。

病院・医療法人の後継者を探すことは困難であると考えられます。特に地方の病院・医療法人では医師不足が問題となっています。また、勤務している医師の高齢化や医者を目指す若者の減少により後継者問題がさらに困難なものになっています。

また、病院の廃業についてですが、地方ではもともと病院の数が少ないため、問題を抱えている病院がその地域で存在感のある病院の場合があります。このような病院・医療法人は、簡単に廃業することができなません。このような背景があるため、病院の売却することが唯一の手段であるという病院はたくさんあります

医療業務に集中できるという点について

病院・医療法人の理事たちは医者であるため、医療業務を行っています。それに加えて、病院・医療法人としての経営にかかわる部分の業務も執行しています。

しかし、病院・医療法人が経営難である場合、法人の運営はかなり困難であると思われます。このような場合、病院・医療法人の運営業務の負担が大きくなり、医療業務を万全の状態で行えないと考えられます。病院・医療法人を売却することで、運営業務を買収先に任せられるので医療業務に集中することができるというメリットがあります。

7. 病院・医療法人M&A(売買)成功のためのポイント

M&Aに成功するためのポイント

病院・医療法人のM&Aは、一般企業のM&Aに比べて成功する確率が高く、簡単にM&Aができるという記事があります。しかし、それは病院・医療法人におけるM&A成功のポイントを押さえることができたらの話です

ここからは、病院・医療法人のM&Aで成功するためのポイントを3つ紹介します。以下に紹介する3つのポイントに注意して、病院・医療法人のM&Aを行いましょう。

  1. ガバナンスコントロールについて
  2. M&A後の病院・医療法人の経営方法について
  3. M&A仲介業者について

ガバナンスコントロール

ガバナンスコントロールとは、社外の利害関係者による統治・制御のことを言います。M&Aを成功させるには、譲受する側が譲渡する法人の経営権をコントロールする必要があります。

株式会社のM&Aの場合、経営権を取得するためにはその会社の発行済み株式のうち半分以上の株式を取得する必要があります。半分以上取得することで、会社の最高意思決定機関である株主総会での議決権を半分以上取得することができ、会社をコントロールすることができます。

しかし、病院・医療法人の経営権をコントロールするための方法は株式会社と異なっています。病院・医療法人の最高意思決定機関は社員総会です。社員総会の議決権は、株主総会の出資比例方式ではなく、社員1人につき議決権1票と平等に分配されています。つまり、株式会社と同じように経営権をコントロールすることができないことに注意する必要があります

経営へのアプローチ

では、どのようにして病院・医療法人の経営権をコントロールするのでしょうか?コントロールの方法には、直接経営と間接経営の2種類あります。

直接経営

直接経営では、出資増大と社員総会の掌握によってコントロールします。まず、譲渡される病院・医療法人に出資します。その病院・医療法人への全出資のうちの半分以上出資することができれば事実上経営権を取得することができます。

しかし、これだけでは正式に経営権をコントロールしたことになりません。最高意思決定機関である社員総会で承認される必要があります。そのため、次に社員総会を掌握する必要があります。

社員総会を掌握するためには、M&Aに賛成している理事が選出される必要があります。この2つが完了することではじめて譲渡される病院・医療法人の経営権をコントロールしたことになります。この方法をエクイティアプローチといいます。

間接経営

間接経営では、譲渡される病院・医療法人の債権者となることでコントロールします。特に医療報酬債権関連の債権を取得し、譲渡される病院・医療法人の大口債権者となります。

次に、その債権を清算する目的で、病院・医療法人が保有している不動産を引き渡します。その不動産の所有者になることで経営をコントロールすることができます。

最後にMS法人(メディカル・サービス法人)を利用して、譲渡される病院・医療法人を間接的にコントロールします。MS法人とは、医療系サービスを目的とした法人のことです。医療法人とは異なり、営利目的で事業を行うことができます。

間接経営を行う場合、譲渡される病院・医療法人の経営権はMS法人に委託されることになります。そして、そのMS法人の経営権を譲受する会社が取得することで間接的に経営権をコントロールすることができます。この方法をデットアプローチといいます。

売買仲介業者に注意

病院・医療法人のM&Aを行う際には、M&A仲介業者の選定に気を付ける必要があります。特に病院・医療法人のM&Aは、一般企業のM&Aに比べると特殊であるため、信頼できるM&A仲介業者に依頼するようにします。信頼できるM&A仲介業者を見分けるためのポイントを以下、箇条書きで紹介します。

  • 秘密保持契約など契約をきちんと行っているか
  • 自身の紹介をするときに自慢話が多かったり、矛盾する話があったりしないか
  • ネットで検索して見つかるM&A仲介業者であるかどうか
  • 口コミでそのM&A仲介業者の評判が良いか、実績があるかどうか
  • 病院・医療法人とのネットワークが広いかどうか
  • 相談に対してすぐに対応してくれるM&A仲介業者であるかどうか など

このほかに怪しいなと思い当たる点がある場合は、すぐにそのM&A仲介業者への相談をやめるようにしましょう。

8. 病院・医療法人M&A(売買)に掛かる期間

クロージングまでには時間がかかる

一般企業のM&Aは、数か月から半年でクロージング(M&Aの実行)が行われます。これに対して病院・医療法人のM&Aはクロージングまでに約半年から1年と時間がかかります。このように時間がかかる理由には以下の2つがあります。

  1. 目的に合った病院・医療法人の探索に時間がかかるため
  2. 価格交渉などに時間がかかるため
これらについて解説をしていきます。

病院・医療法人の探索

目的に合った病院・医療法人の探索に時間がかかります。その理由は売却される病院・医療法人の数が少ないためです。病院・医療法人の数は、一般企業の数に比べてかなり少ないです。そのため、売却される病院・医療法人の数も一般企業に比べてかなり少なくなります。

この中から目的に合った病院・医療法人を探索することになるので、すぐにマッチングできないということは容易に想像がつくと思います。

M&Aの価格交渉・手続きなど

M&Aの価格交渉や手続きを行う際にも時間がかかります。その理由は、病院・医療法人のM&Aには行政機関が関与するためです。

病院・医療法人は非営利性が保たれる必要があります。非営利性を保つためには、先ほど紹介したようなルールがあり、病院・医療法人を監督している行政機関は、M&Aの手続きにおいてそのルールが守られているか確認する必要があります。

また、病院・医療法人におけるM&Aには規定がありません。そのため、行政機関との十分に話し合いをし、これから行うM&Aに問題はないかなど過去に行われた病院・医療法人のM&Aを参考にしながら確認をしていきます。

このような確認や話し合いは、基本合意書を締結するまでの交渉・面談で行われます。病院・医療法人のM&Aにおいて、このステップを通過するまでにかなりの時間が要します。病院・医療法人のM&Aには、行政機関が大きく関与するため、余裕をもってM&Aを行う必要があります。

9. 病院・医療法人の価格相場

M&Aの価格相場とは?

病院・医療法人の価格は以下の3つの方法で計算されます。

  1. 資産基準+営業権方式
  2. 買収事例比較方式
  3. DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)方式

簡単に説明すると1つ目の方法は純資産の価値に営業権の価値を加算して求めます。中小病院の価格を算定するときに用いられます。2つ目は、今まで行われてきたM&Aの事例を参考にして価格を算出する方法です。最後の計算方法は、これから得られると考えられる利益を現在価値に直し、その利益額をもとに価格を算出する方法です。

いずれの計算方法でも、病院・医療法人の規模や状態によって価格の相場は変わってきます。個人経営している病院の売却の場合、契約金が1000万円以内で収まる場合もあります。一方で、ある程度規模の大きな医療法人のM&Aの場合、価格が10億円以上もする場合もあります

10. 病院・医療法人のM&A(売買)仲介会社おすすめ3選

おすすめのM&A仲介会社

ここからは、おすすめの病院・医療法人向けM&A仲介会社を紹介します。先ほどM&A仲介業者に注意する必要があると紹介しました。しかし、ここで紹介するM&A仲介会社は信頼できてかつ、実績のある会社ばかりです。病院・医療法人のM&Aについて考えている方はぜひこれらのM&A仲介会社にご相談ください。

おすすめの病院・医療法人のM&A(売買)仲介会社①.M&A総合研究所

M&A総合研究所は医療業界を専門にしているM&A仲介会社ではありません。しかし、それぞれの案件にはM&Aエキスパートの会計士が担当することになっています

つまり、財務面や税務面でM&Aの交渉やデューデリジェンス(企業監査)を行うことができます。また、M&A専門の弁護士がパートナーとしているため法務面についても問題はありません。病院・医療法人のM&Aについてご相談のある方は気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。

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おすすめの病院・医療法人のM&A(売買)仲介会社②.日本M&Aセンター

日本M&Aセンターは、国内M&A仲介会社の中で最大手の会社です。中小企業を中心にたくさんの企業がM&Aについての相談をし、登録を行っています。

先ほど、病院・医療法人のM&Aでは、マッチングに時間がかかると紹介しました。しかし、日本M&Aセンターは、登録している企業数がM&A仲介会社の中で最も多いため、すぐに買収相手が見つかる可能性が高いと思われます。また、病院・医療法人のM&Aの実績も豊富にあるため、おすすめすることができます。
 

おすすめの病院・医療法人のM&A(売買)仲介会社③.MEDIVA

MEDIVAは、病院・医療法人を専門としている経営コンサルティング会社です。M&A支援だけでなく、経営・病院運営に関しての相談も行っています。病院・医療法人のM&Aにおいて、トータル的に支援を行うことができるため、MEDIVAはおすすめできるM&A仲介会社の1つといえます。

11. 病院・医療法人のM&A(売買)事例5選

M&A事例の紹介

実際に行われた病院・医療法人のM&Aの事例を5つ紹介していきます。いずれの事例も事業承継を目的としており、医療業界では後継者不足ということを表しています。

病院・医療法人のM&A(売買)事例①.埼玉県の精神病院

譲渡法人である医療法人Aは、埼玉県で30年間にわたって精神病院を経営しています。売り上げは理事長の個人的な人脈や好立地条件などにより約5億円をあげていました。そして、理事長は65歳であり、医療法人Aの引継ぎを考えています。

親族内承継について、理事長には娘が1人おり、医師として働いています。医療法人Aで勤務したこともあるのですが、方針の違いで現在は別の病院で勤務しており、今後も医療法人Aを引き継ぐつもりはないとのことです。

親族外承継ですが、2年前から医療法人Aの後継者として外部から招いて勤務してもらっていました。しかし、後継者とも方針が合わず、夜逃げされる結果となりました。このように事業承継について、いろいろと対策を行いましたがうまくいかず、M&A仲介会社に相談することになりました。

医療法人Aを引き継いだ医療法人Bは売り上げ15億円の精神病院を愛知県で経営しています。理事長の年齢は47歳と若手であり、関東に進出したいという思いや事業規模を拡大したいという思いがありました。このことからこのM&Aの事例はかなり素早く話が進み、事業承継に成功しました。

病院・医療法人のM&A(売買)事例②.埼玉県の慢性期病院

譲渡法人である医療法人Cは、埼玉県で30年間にわたって慢性期病院を経営しています。売り上げについてですが、理事長自身のネットワークの広さやカリスマ的なコミュニケーション能力により約15億円をあげていました。そして、理事長は75歳と高齢であるため、医療法人Cの引継ぎを考えています。

親族内承継について、理事長の長男は医師であるのですが、精神的な病気を患っており、満足に働ける状態ではありませんでした。親族外承継については、医療法人Cで勤務している常勤の医師たちに話を持ち掛けたのですが、大きな責務を引き継いでまで承継するつもりはないとの回答でした。

事業承継について、別の対策が必要であると感じていた時に、M&A仲介会社主催のセミナーに参加をきっかけにそのM&A仲介会社に相談をしたという状況です。

一方、譲受法人となる医療法人Dは売り上げ約150億円と比較的規模の大きく、北海道で病院・介護施設を経営していました。医療法人Dはグループ会社に属しており、グループ会社内の別の医療法人は東京で訪問医療を行うクリニックを複数経営していました。

これらの医療法人間のシナジー効果を期待して、医療法人Dは医療法人Cを買収することになり、M&Aに成功しています。

病院・医療法人のM&A(売買)事例③.東京都の訪問医療を行うクリニック

譲渡法人である医療法人Eは、東京都内の2か所でクリニックを経営しています。入院施設はないものの、訪問医療を特徴としており、売り上げは約4億円をあげていました。

現在の理事長の弟が初代理事長だったのですが、初代理事長は2年前に急逝してしまい、急遽医師ではない兄が理事長を務めることになりました。現在の理事長は医師でないことや72歳と高齢であることから、できるだけ早い引継ぎを考えていました。

しかし、理事長の一族には医師が1人もいないため、親族内承継を行うことはできません。また、親族外承継について、医療法人Eで勤務している常勤の医師たちに話を持ち掛けたり、外部から後継の意思のある医者を招いたりしましたが、うまくいきませんでした。このような背景があり、M&A仲介会社に相談することになりました。

一方、譲受法人となる医療法人Fは全国で訪問歯科医療を行っている広域医療法人です。医療法人Fが属しているグループ会社は事業規模を拡大するためにM&Aを積極的に行っていました。医療法人Fは、訪問歯科医療と訪問医療とのシナジー効果を期待して医療法人Eを買収することにしました。

病院・医療法人のM&A(売買)事例④.東海地方の地域密着型病院

譲渡法人である医療法人Gは、東海地方で地域密着型の病院として経営しています。手厚いサービスが受けられると地元では評判であったため、売り上げは約15億円をあげていました。

しかし、医療法人Gは後継者問題を抱えており、後継者不在であるため中継ぎとして某ファンドが経営を行っていました。某ファンドからの投資を開始してから4年が経過し、契約が切れる時期に差し掛かっていましたが、医療法人Gの後継者は見つからないことからM&A仲介会社に相談することになりました。

一方、譲受法人となる医療法人Hは売り上げ100億円以上をあげる規模の大きな総合医療グループです。医療法人Hは事業規模を拡大するために積極的なM&Aを行おうと考えていました。今回のM&Aは2回目の検討であり、タイミングよく買収相手が見つかったという経緯があります。そのため、医療法人Hは医療法人Gの買収を決め、M&Aを行いました。

病院・医療法人のM&A(売買)事例⑤.個人規模での病院M&A

売り手である病院Iは事業規模が小さいながらも地元の人に愛されており、経営は安定していました。しかし、医院長は早期リタイアを検討しており、事業承継を行うことができる相手を探していました。

一方で、買い手である大学病院勤務のJさんは、独立を考えていました。しかし、手続きが面倒であることや医療器具などをすべてそろえるために多額の資金が必要になることから、なかなか独立をすることができませんでした。

このような独立を考えているときにJさんに病院Iの事業承継の話が来ました。病院の年間の利益が約700万円あげていること、医療設備などがそのまま使えることなどから契約金は約1500万円でM&Aを行うことができました。

12. 病院・医療法人のM&A(売買)動向まとめ

M&Aは慎重に行いましょう

病院・医療法人のM&Aについて紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?この記事をまとめると以下のようになります。

  • 病院・医療法人の現状について
  • 病院・医療法人のM&A件数が増加している原因について
  • 病院・医療法人のM&Aの特徴について
  • 病院・医療法人のM&Aの事例について

病院・医療法人のM&Aは一般企業のM&Aと異なっている点がたくさんあります。そのため、病院・医療法人のM&Aを行う際には、詳細を知っているM&Aアドバイザーに相談したり、ゆとりを持ったスケジュール調整をするなど対策を行う必要があります。このことに十分注意して病院・医療法人のM&Aを検討するようにしましょう。最後までご覧いただきありがとうございました。

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