2022年06月06日更新
医薬品卸業界のM&A動向!売却・買収の事例・ニュース、相場、成功ポイントを解説
医薬品卸業界はM&Aが盛んに実施されており、過去に数多くの売却・買収が行われ業界再編が進行してきました。医薬品卸業界のこれまでのM&A動向について、事例を踏まえながら売却(譲渡)・買収の実態を分析し、内容を確認します。
目次
1. 医薬品卸とは
医薬品卸会社のM&Aを考察するにあたって、まずは医薬品卸業界の定義や動向を確認します。
医薬品卸業界の定義
医薬品卸業界とは、メーカー(製薬会社)から医薬品を仕入れて、ドラッグストア・調剤薬局・病院などに卸す業務を生業とする業界です。
医薬品は、「医療用薬品」と呼ばれる病院や薬局で取り扱う医薬品と、「一般用医薬品」と呼ばれるドラッグストアなどで店舗販売される一般的な医薬品に区分されます。
医薬品卸業界の現状
医薬品卸業界の特徴としては、以下の3点があります。
- 仕入れから販売まで厳しい法規制がある事業
- 上位4社のシェアが90%を占める
- 売上げが横ばい~減少を続ける業界
仕入れから販売まで厳しい法規制がある事業
医薬品は、規則によりさまざまな制約や厳守すべき事柄などが存在します。仕入れから販売まで厳しい法規制にさらされているのが実情です。
上位4社のシェアが90%を占める
メディパルホールディングス・アルフレッサホールディングス・スズケン・東邦ホールディングスの4社が、国内シェアのほとんどに近い、90%を占めている状態です。
売上げが横ばい~減少を続ける業界
医薬品卸企業間の価格競争の激化により、横ばいまたは売上が年々減少している業界です。しかし、将来にわたり社会的使命を失わない業界でもあります。
医薬品卸業界の大手4社
医薬品卸業界の大手企業といえば、以下の4社です。
- メディパルHD
- アルフレッサHD
- スズケン
- 東邦HD
以下では、それぞれの企業の概要を説明します。
メディパルHD
メディパルホールディングスは、子会社27社と関連会社18社で構成された企業で、医薬品・化粧品・日用品・動物用医薬品などの販売やサービスを提供しています。全国各地に拠点を置いて、地域密着型の事業展開を行っている企業です。売上高は業界第1位を誇ります。
2005年に、医薬品卸に強いメディセオと日用雑貨卸に強いパルタックが経営統合して誕生しました。
メディパルホールディングスは、5,000社を超えるメーカーから仕入れた医薬品などを、病院・診療所・調剤薬局はもちろん、コンビニエンスストアやスーパーマーケット・動物病院・畜産農場などを含めた24万件もの取引先に展開する企業です。
特に「医療と健康、美」のフィールドで卸売事業を展開しており、主要な事業セグメントのひとつである医療用医薬品等卸売事業で、医薬品・医療機器・再生医療等製品の開発促進に貢献するために、開発の初期段階から発売後の流通までベンチャー企業をサポートする独自の取組みを進めるなど、積極的な投資を行って業界の再編を狙っています。
アルフレッサHD
医薬品卸で国内第2位の売上高を誇っている企業が、アルフレッサホールディングスです。アルフレッサホールディングスでは、医療用医薬品等卸売事業・セルフメディケーション卸売事業・医薬品等製造事業・医療関連事業を展開しています。医薬品購入はもちろん、在庫管理から経営支援におけるまで幅広く薬局経営をサポートしているのがアルフレッサホールディングスの特徴です。
医療と健康に関するさまざまな事業を展開して「ヘルスケアコンソーシアムの実現」を目指し、人々の健康に貢献している企業です。
スズケン
医薬品卸業界で売上高第3位を誇る独立系企業が、スズケンです。1946年に設立された鈴謙洋行を源流に持つ医薬品卸会社です。
スズケンは、これまでM&Aなどを通じて全国47都道府県に営業所を設置して成長してきました。
卸売業者から商品を購入し、最終消費者に売る小売業に販売するビジネスを展開するナショナルホールセラーとしては、日本で唯一の医薬品卸企業です。医薬品卸売事業としては唯一、医薬品メーカーから卸、卸から医療機関・保険薬局までの物流機能である医療流通プラットフォームを有し、メーカー・医療機関・保険薬局・患者の視点で、多様化・高度化する医療流通ニーズにワンストップで対応できる強みを持っています。
老舗ならではの歴史の中で築いてきた、強固なグループネットワークを生かしたサービスが強みです。国内外の多くの医薬品メーカーや医療機器メーカーなどから医療用医薬品・診断薬・医療機器・医療材料・医療食品を仕入れてきた実績があり、スペシャリティ医薬品に定評がある企業です。
東邦HD
医薬品卸業界で売上規模第4位の企業が、東邦ホールディングスです。製薬会社などから医薬品および医療関連商品を仕入れ、病院・診療所・調剤薬局などに販売しています。
子会社69社および関連会社10社により構成された持株企業です。東邦ホールディングスでは、医薬品の卸販売と、病院などの医療現場の業務を支援する事業の2本柱で成長してきました。国内外1,000社を超えるメーカーから20万種類以上の製品を仕入れ、全国11万件を超えるお取引先に供給しています。
現在は医薬品・検査薬・医療機器・OTCなどの卸売事業を中心に、業務効率化に貢献する顧客支援システム・開業支援や経営コンサルティング・医療機関への薬剤師派遣や管理栄養士の出向などの医療トータルサポート・人材支援事業など、医薬品卸業界で必要となるニーズを先取りした事業に力を注いでいます。
医薬品卸業界の市場規模
製薬企業から薬を仕入れて、病院などの医療機関や薬局・ドラッグストアに販売するのが、医薬品卸業界で事業を展開する企業の基本的なビジネスモデルです。
扱う製品は処方薬だけでなく、包帯・ガーゼから注射器・注射針など医療用材料、さらに湿布薬・風邪薬・頭痛薬など一般用医薬品(大衆薬)を扱うなど、幅広い製品を取扱います。現在、大手4社を中心に、業界の再編が進んでいます。
実際に医薬品卸業界は、直近20年間の業界再編により、本社数・従業員数ともに激減しました。その結果、現在は「メディパルHD」「アルフレッサ」「スズケン」「東邦HD」の4グループで市場の8割強を占有しています。
医薬品卸業界の課題と展望
医薬品卸業界では、事業再編によって市場環境が大きく変化しています。薬価引き下げなど医薬品卸業界を取り巻く環境が激しく変化する中で、大手各社は医療をベースとした事業の多角化を進めている最中です。実際に、ITを活用した物流網の構築が最大の課題となっています。
堅調に成長してきた医薬品卸業界ですが、少子高齢化や医療費の抑制に伴う薬価引き下げの影響により、今後は国内市場の縮小が懸念されています。
そこで、医薬品卸業界に属する企業では、薬局事業・介護事業・医薬品メーカーを対象とした物流受託など、事業の幅を広げて収益拡大を図っている状況です。各地域に流通拠点を各企業が設けるなど、効率化が進んでおり、DXの推進が進んでいる業界であるといえます。
2. 医薬品卸のM&A動向
業績面では頭打ち状態にある医薬品卸業界ではあるものの、人の健康にかかわる業種であるため、将来的に使命が尽きません。ここでは、医薬品卸業界のM&Aに見られる動向に関して、以下の3点を取り上げます。
- 業務・流通などを一本化するM&Aが行われた
- 異業種へのM&Aが見られる
- 今後、さらなるM&Aが増加していくのが予測される
業務・流通などを一本化するM&Aが行われた
医薬品卸業界では、各種業務や流通などを一気通貫で行うためのM&Aが積極的に行われてきた動向が見られます。
異業種へのM&Aが見られる
すでに示したとおり、収益が横ばいまたは減少傾向である現状を踏まえ、医薬品卸だけではなく異業種へ活路を見いだしている企業も少なくありません。
今後、さらなるM&Aが増加していくのが予測される
超高齢社会が懸念され、医薬品卸へのニーズは高まっている動向があるものの、医薬品の単価が下がっているため、今後も経営の効率化や異業種進出へのM&Aが増加することが予測されます。
3. 医薬品卸のM&A・売却・買収・譲渡の相場
医薬品卸業界は、業界内だけではなく異業種にわたりM&Aを展開している業界です。売却・買収・譲渡の相場は、一般的には把握するのが難しいといえます。
基本的には同業種であれば、知的財産・設備・人員の価値などがM&Aの価格に反映されるといわれていますが、価格を算出するために採用される方法はケースバイケースであり、指標となるような相場価格は確立されていません。
4. 医薬品卸のM&A・売却・買収・譲渡のメリット
医薬品卸業界のM&Aで期待されるメリットを解説します。
売却側
M&Aによるメリットのうち、売却側で得られる主なメリットは、以下の5項目です。
- 従業員の雇用確保
- 後継者問題の解決
- 売却・譲渡益の獲得
- 大手グループ入りで安定した経営
- 個人保証・債務・担保などの解消
従業員の雇用確保
経営不振などにより、会社を廃業せざるを得ない場合もあります。その場合、従業員は職を失い路頭に迷う結果を招かざるを得ません。しかし、M&Aによって会社を売却し、大手企業のもとで財務などが安定すれば、従業員の雇用が守られます。
後継者問題の解決
事業を続けていくうえで、後継者問題は必要不可欠です。身近に後継者にふさわしい人物が存在しない場合は、M&Aにより会社の外部に後継者を求められます。
売却・譲渡益の獲得
M&Aの取引では、売却・譲渡益を得られます。老後資金や新たな事業資金など、まとまった金銭を取得できるでしょう。
大手グループ入りで安定した経営
M&Aの売却先が大手企業の場合、経営の先行きが見えなかった状態から抜け出せる可能性が高いです。
個人保証・債務・担保などの解消
経営者にとって、個人保証などの問題は大きな悩みの種です。こういった問題から開放されるのも、M&Aのメリットといえます。
買収側
一方で、買収側のメリットはいかなる要素があるのか、以下の5項目を解説します。
- 従業員の確保
- 低コストで新事業・関連事業を獲得
- 新規事業へ低コストで参入
- 顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
- 事業規模やエリアの拡大
従業員の確保
医薬品卸業界各社にとって、従業員などの人材は非常に大切な要素です。こうした人材を確保できるのは、M&Aによる買収の大きなメリットといえます。
低コストで新事業・関連事業を獲得
医薬品卸会社の中には、自社で医薬品を開発し販売を考える場合があります。そのような新規事業を考えるとき、医薬品の特許権や設備などのコストは大きいです。
費用だけでなく膨大な時間も要しますが、M&Aでの買収であれば、即座に獲得できるメリットがあります。
新規事業へ低コストで参入
医薬品卸業界へ新規事業として参入する場合も、M&Aは有益です。設備や特許権のコストを抑えられるだけではなく、事業を安定的に継続するまでの投資や人材育成のコストも節約できるためです。
顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
従来では得られない顧客・取引先・自社では開発できないノウハウなどは、買収によって取得できる大きなメリットだといえます。
事業規模・エリアの拡大
事業やエリアの拡大には、コストと時間が求められます。こうしたコストと時間を大幅にカットできる点も、M&A特有のメリットです。
5. 医薬品卸のM&A・売却・買収・譲渡の成功ポイント
医薬品卸業界でM&Aを成功させるうえで、把握しておくべき重要なポイントが数点あります。ここでは、売却側および買収側のそれぞれの成功ポイントを確認します。
売却側
売却側からの立場から見たM&Aの成功ポイントは、以下の3要素が重要です。
- アピールポイントや強みのある企業である点
- 権利や特許、ノウハウや技術などを持っている点
- M&Aの専門家に相談できる点
アピールポイントや強みのある企業である点
大きな卸市場を構えていたり、強固なコネクションを持っていたりするなど、アピールポイントがあれば、成功への強みとなります。
権利や特許、ノウハウや技術などを持っている点
医薬品卸会社にとっても、権利・特許・ノウハウ・技術といったものは非常に大きな財産です。これらの財産は、M&Aにおける相手側に対する大きなアピールポイントとなります。
M&Aの専門家に相談できる点
M&Aを行うにあたっては、リスクやトラブルといった課題があります。さまざまなM&A案件を手掛けてきた専門家のサポートは大切です。リスクやトラブルを回避するためにも、専門家を最大限に活用しましょう。
買収側
M&Aを成功させるポイントは買収側にも存在します。ここでは、3点にしぼりました。
- 自社に足りない部分をピンポイントで補強する
- デューデリジェンスを徹底する
- M&Aの専門家に相談する
自社に足りない部分をピンポイントで補強する
弱い分野であったり、社員教育が行き渡らない部分であったりした箇所について、M&Aで補強する方法があります。自社に足りない部分を見極めて、検討する力が必要です。
デューデリジェンスを徹底する
買収目的である企業について、デューデリジェンス(企業調査・監査)の実施は非常に重要です。M&Aでは、現在進行中のトラブルはもちろん、買収後のトラブル回避も考えて、徹底したデューデリジェンスを行いましょう。
M&Aの専門家に相談する
M&Aにおける買収には、大きなリスクが存在します。自社で考えている以上のリスクは、必ずといってよいほど伴うものです。
しかし、M&Aの専門家を活用すれば、見えないリスクも含めてマネジメントできます。リスクを減らし円滑なM&Aを目指すのであれば、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
6. 医薬品卸のM&A・売却・買収・譲渡におすすめの仲介会社
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7. 医薬品卸のM&A・売却・買収・譲渡まとめ
この記事では、医薬品卸のM&A・売却・買収・譲渡に関する情報を提供しました。医薬品卸業界では、厳しい状況が続いています。そうした状況から、M&Aによるメリットを求める企業は少なくない状況です。
ただし、M&Aを成功させるには、専門的に高度な知識・豊富な経験が求められるため、実施を検討する際は専門家のサポートを受けることをおすすめします。
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