2024年09月13日更新
岐阜県のM&A・事業承継・会社売却の動向を解説!案件や事例も紹介
現在、国内では後継者不在を理由とした事業承継・M&Aが増加しており、岐阜県でも同様の傾向が見られています。そこで本記事では、岐阜県におけるM&A・事業承継・会社売却の動向や現状、相談先の選び方などを解説します。
目次
1. 岐阜県の産業に見られる特徴
岐阜県の産業は、製造業が最も多くを占めています。製造業の割合が県内総生産額の約4分の1を占めていて、この数字は、全国と比較しても高い数字です。従業者数で見ても、全体の約4分の1が製造業を営む企業に従事しており、岐阜県において製造業は非常に重要な産業です。
岐阜県の主力産業は、製造業のなかでも自動車、航空機などの輸送用機器の製造など輸送機械、電気機械、一般機械が主力産業になっています。東海環状自動車道や東海北陸自動車道ができたことにより、周辺地域において工業団地の設立が相次ぎました。2021年の工場立地件数は全国3位、工場立地面積も全国3位です。
他にも県庁所在地である岐阜市では、 商業、金融・保険、サービス業が多くを占めるのが特徴です。また、刃物、陶磁器、木工などの伝統的な製造業も非常に盛んです。
「モノづくり県」としての特色を伸ばしていくことは、今後の岐阜県の経済を発展させるのに欠かせません。
2. 岐阜県のM&A・事業承継・会社売却動向
帝国データバンクの「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2023年)」によれば、2022年に岐阜県で休廃業・解散が行われた数は958件でした(個人事業主含む)。
また「岐阜県事業承継支援方針」(2018年4月17日一部改定)によると、2012(平成24)年度から2016(平成28)年度の岐阜県内廃業率は3%台前半から4%台前半の間であるとし、この数字は他の地域と同様の推移を示す結果と言及しました。
その中で、廃業を決定した企業および廃業を予定している企業のうち、比較的業績のよい企業もあり、岐阜県は、廃業により企業が培った技術やノウハウの損失、また廃業がもたらす地域産業と経済発展への影響を考えなければいけない状況にあると指摘しています。
やや古いデータにはなりますが、岐阜県産業経済振興センターが2016年に実施した「後継者問題に関する特別調査」を見ると、岐阜県の中小企業のうち、「事業を承継させたい」企業が約9割で、岐阜県内企業の事業承継のニーズがうかがえる結果でした。
この結果を受け岐阜県では、自治体や金融機関が率先して、M&A・事業承継・会社売却のセミナーなどを活発に開催するようになりました。その成果もあり、岐阜県でも徐々にM&A・事業承継・会社売却が取り入れられるようになってきています。
岐阜県で中小企業のM&Aが進まない要因
岐阜県に限らず、日本では中小企業のM&Aがなかなか進んでいないのが現状です。すでに説明したように岐阜県は製造業を営む企業が多いものの、多くの経営者が高齢化しており、それが経営課題として認識され始めています。
岐阜県下の中小企業はすでに事業の承継を経営課題として考え始めていると言えるものの、そのためにどうしたら良いのかわからない経営者も多く、M&Aのような複雑な手続きなどできないと考えているケースも多く、廃業に至るケースも少なくありません。
以下では、なぜM&Aが進まないのか、その要因を考察しましょう。
M&Aの方法がわからない経営者
中小企業において、M&Aが進まないのはそもそも経営者がM&Aの手法を理解していない点にあります。
帝国データバンク「事業承継に関する企業の意識調査(2020年)」のデータでも、23.6%の回答者は、「M&Aへの関わり方がわからない」と回答するなど、中小企業においてM&Aが理解されていないのがわかります。経営者が高齢化している現状も相まって、中小企業ではなかなかM&Aが進まないのです。
情報伝達スピードが速くイメージが気になる
地方では地域コミュニティが狭いため、一般に、情報が広まりやすい環境にあります。地域において、長年企業を経営していると、地域との関係性が深くなります。その結果、その地域でのM&Aのようにあまり行われていないものは敬遠されるようになります。地域の目があるので、その地域の他人からどう見えるかが気になってしまい、M&Aに踏み切れないのです。
親族内の私情やしがらみを優先しがち
地域における企業経営は主にファミリービジネスであるケースがほとんどです。ファミリービジネスとは、日本語では家族経営とも呼ばれ、文字通り、家族全員で経営に携わっています。
企業が大規模化していると、その業務を回すために人手が必要となり、家族外の人材も必要となりますが、中小企業ではその必要性が生まれず、長年ファミリービジネスが継続しているケースが多いです。
その場合、人間関係が極めて重要な意味を持つようになり、企業経営の中に同族間のしがらみが生まれるようになります。その結果、M&Aのように第三者に事業や会社を引き渡すことができなくなってしまうケースがあります。
家族の生活を目的とする事業
小規模事業者では、特に成長を目的としていない企業もあります。家族、あるいは、そこで働く従業員の生活を守れれば良い企業も残念ながら存在しています。そうした企業は将来の成長が見込めません。まして、事業を承継しようなどとは思わないでしょう。したがって、たとえ、魅力的な事業を展開していても、M&Aを行おうとは考えず、廃業に至ってしまうケースも少なくないのです。
3. 岐阜県近郊のM&A案件一覧
ここでは、岐阜を中心とした近郊エリアでのM&Aの案件を紹介します。
整形外科クリニックの事業譲渡
岐阜を中心とした近郊エリアでのM&Aは、整形外科クリニックの事業譲渡です。
業種 | 医療 |
都道府県 | 岐阜県 |
法人形態 | 株式会社 |
譲渡価格 | 3,500万円 |
鉄筋工事・土木業の株式譲渡
岐阜を中心とした近郊エリアでのM&Aは、鉄筋工事・土木業の株式譲渡です。商業施設の基礎工事やバイパス工事、浄化センターの基礎など様々な工事に対応可能としています。
業種 | 住宅・不動産・建設 |
都道府県 | 中部・北陸 |
法人形態 | 株式会社 |
譲渡価格 | 1億円〜2.5億円 |
葬祭用品の卸売業の株式譲渡
岐阜を中心とした近郊エリアでのM&Aは、、葬祭用品の卸売業の株式譲渡です。独自の仕入れルートと500を超える販売先を有するほか、消耗品が8~9割を占めるため、在庫を抱えるリスクが少ない点が魅力です。
業種 | 商社・小売・流通 |
都道府県 | 中部・北陸 |
法人形態 | 株式会社 |
譲渡価格 | 1,000万円〜5,000万円 |
喫茶店、郷土料理、高級食パンの事業も展開する温泉旅館の法人譲渡
岐阜を中心とした近郊エリアでのM&Aは、温泉旅館の株式譲渡です。地元の方、週末は東海エリアの顧客を集客し高い口コミ評価を得ているほか、温泉旅館にとどまらない事業を複数展開しています。
業種 | 商社・小売・流通 |
都道府県 | 中部・北陸 |
法人形態 | 株式会社 |
譲渡価格 | 1,000万円〜5,000万円 |
4. 岐阜県でM&A・事業承継・会社売却を行う手順・流れ
岐阜県でM&A、事業承継、会社売却を行う具体的な手順と流れについてご紹介します。これらのプロセスを理解し、適切に進めることで、スムーズな事業承継や会社売却が実現できます。以下では、岐阜県における各ステップを順を追って説明します。
M&Aの概要と理解
投資会社でもない限り、M&Aは頻繁に繰り返すものではありません。したがって、一般の会社であれば、M&Aの手順や流れを理解している人は少ないでしょう。ここでは、M&Aの手順・流れについて、その概要を説明します。
専門家や仲介企業との相談
まず、M&Aを社内のリソースだけで実行するのは困難です。ほとんどの場合、中小企業においては、M&Aを経験した社長や従業員はいないでしょう。M&Aを実施しようと思ったら、まずは専門家や仲介企業へと相談するようにします。取引銀行に相談するのも良いでしょう。適切なアドバイザーを紹介してくれるはずです。
M&Aの手続きに入る
相談のうえで、実際にM&Aの手続きに入ります。買い手、もしくは売り手を探さなければなりません。近年では、インターネットを通じて、買い手・売り手側を探せる仲介サイトも存在していますので、自分の条件に合った買い手・売り手を探せるようになっています。
条件の確認と交渉
買い手・売り手が見つかったら、対象企業に関する情報のやり取りを社長同士あるいは担当者同士で行います。まずは相手企業と交渉して条件の確認をするのです。仲介会社が間に入っていれば、そのやり取りもスムーズにできるでしょう。M&Aを実施するのが決まったら、基本契約を結び、実際にM&Aのプロセスに入っていきます。
デューデリジェンスと契約
その後は、専門家によるデューデリジェンスが行われ、正式なM&A契約を結びます。デューデリジェンスによって、偶発債務などが発見されるケースもあるので注意が必要です。その後、契約内容に基づいて、クロージング(資金決済)を行って、M&Aが完了となります。
5. 岐阜県のM&A・事業承継・会社売却事例
ここからは、実際に岐阜県岐阜県のM&A・事業承継・会社売却事例について時系列をおいながら紹介します。
河上薬品商事によるアクアラインのM&A
2024年6月、河上薬品商事はアクアラインのミネラルウォーター事業を取得しました。
河上薬品商事は、配置薬事業・水事業を展開している企業でグループ全体として80の営業拠点があります。アクアラインは、水まわり緊急修理サービス事業、メディア事業、ミネラルウォーター事業などを展開しています。
今回のM&Aにより、河上薬品商事は事業取得によりミネラルウォーター販売の事業を強化していきます。
GENDA GiGO EntertainmentによるアメックスのM&A
2024年4月、GENDA GiGO Entertainmentはアメックスの全株式を取得し、子会社化しました。
GENDA GiGO Entertainmentは、GENDAの子会社としてアミューズメント施設や飲食店施設の企画・運営など幅広い事業を展開しています。アメックスは、岐阜県近郊にてアミューズメント施設「ゲームファンタジアン」を運営しています。
今回のM&Aにより、人的資源やDXにかかる知見の共有を行い、アミューズメント施設の店舗網拡大を目指します。
ワイエイシイホールディングスによるJEインターナショナルとGDテックのM&A
2023年4月3日付で、ワイエイシーホールディングスは、AIを活用したFPC・半導体関連検査装置製造・販売のJEインターナショナル(岐阜市)、同社の韓国の実質的子会社であるGDテックの2社を連結子会社としました。
フロンティアによる百々のM&A
2019年12月、フロンティアは、グループホーム(岐阜県、愛知県で6カ所)、訪問介護など高齢者福祉サービスを中心に事業を行っている百々のM&Aに成功しました。百々の株式を100%取得して子会社としています。
フロンティアは、保険調剤薬局の経営、医薬品・医薬部外品・衛生用品等の販売、福祉用具のレンタル・販売、住宅の増改築、建て替えおよびリフォームなどを実施しています。百々以外にも、フロンティアは過去にM&Aを繰り返しており、M&Aによって業容の拡大と売上規模の拡大を図っています。
アクトスによるアプロ―チのM&A
2019年12月、テニス・バドミントン関連を中心とするスポーツ用品を販売する企業で、大阪店以外に販売拠点として京都店(京都府宇治市)、熊谷店(埼玉県熊谷市)を展開するほか、自社サイトを通じて商品を販売しているアプローチを、岐阜県の企業でスポーツクラブを運営しているアクトスが100%子会社としています。
アクトスは、アプローチを子会社化して、物販・情報提供機能を強化し、スポーツクラブとオートテニス・プロショップが融合した新業態の出店を進めるなど、テニス・バドミントン専門店として全国トップを目指しています。
デリカスイトによる蔦茂のM&A
2019年10月、岐阜県で食品製造業を営む企業であるデリカスイトは、創業から107年を迎える料亭「蔦茂(つたも)」から株式の譲渡を受け、完全子会社化しました。デリカスイトの2021年3月期決算では、売上高47億円となっており、これまでもM&Aを繰り返して業容を拡大してきました。今回のM&Aもその一環で、さらなる業容の拡大と売上規模の拡大を目指しています。
スイトトラベルによる新太田タクシー・可児タクシー・多治見タクシーのM&A
2017年5月に、西濃ホールディングスの関連事業グループの企業であるスイトトラベルが、可児タクシーを子会社に持つ新太田タクシーの株式と、多治見タクシーの株式をそれぞれ取得して、その3社を100%子会社化するのに成功しました。同業の企業を買収して業容の拡大と売上規模の拡大、そして、シェアの拡大を目指したM&Aです。
スイトトラベルが取得した3社は、岐阜県美濃加茂市、可児市、多治見市の3市を主要エリアとして事業を展開している企業で、周辺4町(八百津町・坂祝町・富加町・御嵩町)も合わせて、広範囲をカバーするなど、大きな地域シェアを持っていました。
スイトトラベルは、今回の子会社化によって、県下におけるシェアの拡大に成功しました。
伊藤利一商店による千田悦三郎商店のM&A
2009年8月、伊藤利一商店は千田悦三郎商店を買収しています。伊藤利一商店は、農業資材、建築資材、開発資材の販売、給排水衛生設備・空調工事・上下水道工事・内外装工事などの事業を行っている企業です。
伊藤利一商店と資本、業務提携し、伊藤利一商店の社長であった伊藤祐介氏が千田悦三郎商店の社長に就任しています(伊千呂へと社名変更)。
クリップコーポレーションによる螢雪ゼミナールのM&A
2004年9月、愛知県で学習塾の経営を行っているクリップコーポレーションは、岐阜県で同じく学習塾の経営を行っている螢雪ゼミナールとM&Aを行っています。同業者によるM&A事例です。
クリップコーポレーションと螢雪ゼミナールは、同じ学習塾事業を行う企業ではあるものの、その指導スタイルが異なっていました。クリップコーポレーションは、一斉指導の塾とは異なり、全国で小中学生を対象とした個別対応指導の学習塾を展開している企業です。一方で、螢雪ゼミナールは、一斉指導の塾を滋賀県を中心に展開しています。
このM&Aによって、お互いの指導スタイルを取り入れシナジー効果が発揮され、成長につながっています。愛知県と岐阜県におけるシェア拡大に成功しています。
6. 岐阜のM&A・事業承継・会社売却案件を探す手段
岐阜エリアのM&A・会社売却・事業承継案件を探す手段には、主に以下2つの方法があります。
- 公的機関・地元の金融機関などに相談する
- M&A仲介会社・専門家に相談する
①公的機関・地元の金融機関などに相談する
地元密着型の案件を探したいのであれば、公的機関や地元の金融機関に相談するのがおすすめです。公的機関・地元の金融機関は地域に根差したネットワークを持っており、表に出ない独自の案件を保有しているケースもあります。
ネットワークを活かした相手企業・起業家とのマッチングがしやすいのが特徴です。しかし、その際にM&A案件が見つかった場合、公的機関では仲介業務を行っていませんので、民間の専門支援機関への紹介・引継ぎが必要となる点は注意が必要です。
②M&A仲介会社・専門家に相談する
M&A仲介会社や専門家であれば、M&Aの案件を幅広く取り扱っているため、岐阜エリアのM&A・会社売却・事業承継案件を探すには、M&A仲介会社・専門家に相談するのもおすすめです。
M&A仲介会社は全国に広くネットワークを保有しているため、常に多数のM&A案件を抱えているケースが多くあります。その中で相手先を探せば理想的なM&A案件を見つけられる可能性が高くなるでしょう。
また、M&A仲介会社に依頼すると、M&A成約に向けた助言や手続き面についてM&A成約まで一貫してサポートが受けられます。
7. M&A仲介会社を選ぶ5つのポイント
岐阜県で会社売却や事業承継を進めるときに、M&A仲介会社を選ぶポイントには以下の5つが挙げられます。
- 該当する分野の専門的知識・M&A実績を持っている
- 案件規模・地元M&A実績などがある
- M&Aに関する幅広い知識・経験を持っている
- 手数料・相談料・報酬体系がわかりやすい
- 担当スタッフの対応・相性
①該当する分野の専門的知識・M&A実績を持っている
M&A・会社売却・事業承継の仲介会社を選ぶうえで大切なのは、該当する分野において専門知識や実績を持っているかです。
専門知識が希薄であったり実績が少なかったりする場合、M&A・会社売却・事業承継に対する信頼度だけではなく、成功する確率も低下してしまいます。
②案件規模・地元M&A実績などがある
取り扱いがある案件の規模や岐阜でのM&A・会社売却・事業承継の実績も大切になります。その理由は、M&Aには地域による経済状況の差や企業間の関係性を知っているのが重要だからです。
案件規模を間違っていたり、地元に幅広い情報を共有していなかったりするM&A仲介会社であれば、M&Aが成功する確率も低くなります。
③M&Aに関する幅広い知識・経験を持っている
M&A・会社売却・事業承継には、さまざまな手法や手続きがあります。個々の状況に対応できる幅広い知識や経験を持っているのは、M&A仲介会社には必要な要素であるといえるでしょう。
④手数料・相談料・報酬体系がわかりやすい
料金体系が不明である場合、予想以上の手数料が発生するなど、思わぬ出費がかさむ場合もあるため注意が必要です。M&Aの実施にはそれ自体にも当然費用がかかるうえ、M&A後も事業投資としての資金が必要になります。
後のトラブルを防ぐためにも、手数料・相談料・報酬体系がわかりやすいM&A仲介会社を選ぶようにしましょう。
⑤担当スタッフの対応・相性
担当スタッフの対応・相性も、M&Aをスムーズに進めていくための大切な要素です。M&Aでは自社の状況に則した進行が欠かせないため、スタッフの対応がよくなかったり相性が合わなかったりすると、M&Aを円滑に進めるのが難しくなる可能性もあります。
8. 岐阜県のM&A・事業承継・会社売却まとめ
岐阜県では中小企業の後継者不在率が全国的にみると比較的高いため、企業が廃業に陥らないためのM&Aによる事業承継が国や自治体から奨励されています。事業承継においては、M&A仲介会社のサポートが欠かせません。
M&A仲介会社を選定する際には無料相談などを活用して情報収集し、十分に検討したうえでM&A仲介会社を決定しましょう。
9. 岐阜県の成約事例一覧
10. 岐阜県のM&A案件一覧
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