工場業界のM&A動向!売却・買収事例5選とメリットを解説!【2025年最新】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

工場業界では後継者不足や人手不足などからM&Aを検討した方がいい企業が増加しています。この記事では、会社を売却、買収するメリットやM&Aにおける注意点、工場業界で実施されたM&Aの事例などについて詳しく解説します。

目次

  1. 工場業界の概要と動向
  2. 工場業界のM&A動向
  3. 工場事業のM&Aにおけるメリット
  4. 工場業界のM&Aにおける売却・買収事例5選
  5. 工場事業のM&Aにおける成功のポイント
  6. 工場業界のM&A・事業売却まとめ
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1. 工場業界の概要と動向

工場は日本の経済を支える製造業においてとても重要な位置を占める施設であり、日本経済の要といってもいいでしょう。

日本の工場には、数人の従業員で回している小規模なものから、数百人、数千人規模の従業員が働く大規模なものまでいろいろとあり、それぞれの工場が社会の需要に応じたモノづくりをしています。

しかし、近年、特に中小零細規模の工場で、時代の流れについていけなかったり、後継者問題を解決できなかったりして、事業承継が難しい事例が増えていて、工場が培ってきた多くの技術が失われる可能性が増加しているようです。

工場が培ってきた技術を未来に繋いでいくための手段として、M&Aというものがあります。この記事では、工場の近年の動向と、M&Aについて詳しくみていきましょう。

工場業界とは

工場とは、製造業で実際に製品の製造、生産を行ったり、出来上がった機械の点検、整備、保守といったメンテナンスを行うための施設のことです。工場業界とは、その工場を運営して製品を製造したり、工場のメンテナンスなどを行っている業界です。

日本では、工場で働く人の数で分類しています。従業員300人以上の工場を「大工場」、300人未満の工場を「中小工場」、29人以下の工場を「小工場」と呼びます。

大工場は重化学工業分野の工場が多く、自動車や化学製品、電化製品などを製造しています。中小工場では、部品や食品、繊維、日用品などの製品の製造が多いのが特徴です。

中小零細の工場は、大企業の下請けであることが多く、独立した運営を行っていないことから、関連工場と呼ばれることもあります。

工場業界の市場規模と動向

工場業界といっても、重化学工業から食品、繊維といった軽工業まで幅広い分野をカバーしています。工場業界の近年の市場動向について、重化学工業の代表格の自動車製造、軽工業を代表して食品産業、産業の米ともいわれる半導体産業の動向についてみていきましょう。

2021年から2022年の自動車業界の業界規模は63.9兆円でした。日本の製造業を牽引する重要な産業であることが、この業界規模からもよくわかります。

しかし、近年の推移をみてみると、2018年まで右肩上がりで市場規模が増加していたのが、コロナ禍前の2019年には減少に転じ、2020年にはコロナ禍の影響で一気に落ち込んでいます。

2021年以降は経済の回復とともに増加に転じていますが、2018年レベルまでは戻っていません。

人々の健康を守る食品業界の2021年から2022年の業界規模は21.1兆円でした。こちらも、国内の主要な産業であることは間違いありません。2019年までは順調に成長を続けていましたが、2020年には外食の減少により若干減少しています。しかし、自動車産業ほどの極端な落ち込みではなく、2022年以降は順調に2019年レベルに向けて回復が見込まれるでしょう。

半導体業界の2022年から2023年にかけての業界規模は6.4兆円です。新型コロナ禍前後で世界的な半導体不足が問題になっており、業界規模の推移も2019年まで減少傾向にありました。しかし、2020年には若干の増加に転じ、2021年から2022年には大幅に増加しています。

参考:業界動向サーチ「自動車業界の動向や現状、ランキングなど」「食品業界の動向や現状、今後などを分析」「半導体業界の動向や現状、ランキング&シェアなど

【関連】製造業(メーカー)の事業譲渡/売却の流れや注意点をわかりやすく解説

2. 工場業界のM&A動向

工場業界でのM&Aには、主に次のような動向がみられます。

  • 後継者問題から売却を希望する中小零細工場が増加
  • 大手企業が中小零細の工場を買収する事例が増加
  • 業務のDX化や本業を発展させるための異業種とのM&Aが増加

工場業界に限らず、近年、多くの企業で経営を引き継ぐ後継者が身内や社内にいない後継者問題が深刻化しています。後継者問題で廃業するよりもM&Aのほうがメリットが大きいことから、売却を希望する工場が増えています

後継者問題などで売却に出される工場は、多くの場合大手企業に買収されています。大手企業では、同業他社の中小零細の工場を傘下に入れて生産力を高める狙いがあります。

また、近年必要性が増している業務のDX化や事業の多角化を図るために、異業種をM&Aで買収する事例も増えています。特に買収側として人気が高いのがIT関連です。IT人材確保を目的とした、ITベンチャーの買収事例がみられます。

【関連】自動車整備業のM&A・事業承継の動向は?事例や買収・売却事例も紹介!

3. 工場事業のM&Aにおけるメリット

工場でのM&Aにはどのようなメリットがあるのでしょうか。売却側と買収側のそれぞれのメリットを解説します。

売却側が得られるメリット

工場を売却する側のM&Aでのメリットは次のとおりです。

  • 後継者問題を解決できる
  • 廃業コストがかからない
  • 売却益を得られる

工場の廃業や売却を検討する理由で最も多いのが後継者問題です。M&Aで会社とは全く関係ない第三者へ売却することは、後継者問題の解決策として、近年注目されています。

M&Aで工場を売却せずに廃業することになると、従業員への退職金の支払いや設備の処分費用などのコストが発生します。廃業時に債務が残っていると、担保である自宅を差し押さえられたり、廃業後も返済が続く可能性もあるでしょう。

M&Aで売却できれば、従業員も設備も債務も、買収側が全て引き取ってくれることが多いので、経営者は廃業コストを負担することなく、経営から身を引くことができます。

また、M&Aは会社の売買なので、売却側の経営者には売却益が入ってきます。税金やM&Aの手数料を差し引いた残金は自由に使えるので、引退後の生活費などに充てることも可能です。

買収側が得られるメリット

買収側がM&Aでの工場買収によって得られるメリットは次のとおりです。

  • 技術と人材の確保
  • 販売先や調達ルートの拡大
  • 事業の内製化の実現

近年、工場の買収目的で多いのが人材確保です。M&Aでは、売却側の人材を買収側が引き受けることが一般的なので、人材を確保する目的でM&Aでの買収を行うこともよくあります

また、売却側の企業が特許や自社にはない技術を持っていた場合、それらを自社に取り込むことも可能です。売却側が持つ顧客や仕入れルートも自社で引き継ぐことが可能です。

それまで外注するしかなかった工程の技術を持つ工場を買収した場合、その部分の内製化も可能で、意思決定を早めることが可能になり、製造の効率化にもつながります。

【関連】2025年問題とは?事業承継できずに廃業する中小企業の特徴や事例・企業が取るべき対策を解説

4. 工場業界のM&Aにおける売却・買収事例5選

工場業界で実施されたM&Aでの会社の売却、買収の事例を紹介します。

ネクスグループが工場向け資材事業を手がけるケーエスピーをM&Aした事例

2024年2月22日に、株式会社ネクスグループが、株式会社ケーエスピーを株式交換で完全子会社化することを発表しました。ネクスグループが株式交換完全親会社に、ケーエスピーが株式交換完全子会社となります。

ネクスグループは岩手県花巻市と東京都港区に本社を置く通信機器メーカーで、現在はメタバースやデジタルコンテンツ事業、IoTソリューション事業などを展開しています。

ケーエスピーは、外食業界やコスメティック業界などに向けて、消耗品や備品、パッケージ、厨房備品など、企業からの要望に幅広く応えてきた総合商社です。

ネクスグループでは、慢性的な赤字営業からの脱却を目指して、IoT事業の他にデジタルコンテンツ暗号資産分野などを開拓してきました。しかし、IoT事業と暗号資産で売上高が減少しています。

ケーエスピーは高い収益性が見込める会社であり、このM&Aで傘下に納めることにより、早期の収益力改善が見込まれるとのことです。

参考:簡易株式交換による株式会社ケーエスピーの完全子会社化に関するお知らせ

ライフドリンクカンパニーがソース製品製造拠点の茨城工場をM&Aした事例

2023年1月13日に、株式会社ライフドリンクカンパニーが、同社のソース製品の製造拠点である茨城工場を、大象(デサン)ジャパン株式会社(以下、デサンジャパン)が新しく設立する会社に譲渡するための、事業譲渡契約を締結したことを発表しました。

ライフドリンクカンパニーは大阪府大阪市にある、清涼飲料水の製造販売を行う会社です。デサンジャパンは韓国の総合食品メーカー大象株式会社の日本法人で、日本国内での韓国食品の販売などを手掛けています。

このM&Aは、デサンジャパンから事業譲渡の打診を受けて、デサンジャパン傘下に入ったほうがソース事業のさらなる成長が見込めるとのことで決定したとのことです。

なお、ライフドリンクカンパニーでは、以前は、調味料や菓子類、麺類などの製造販売も行っていましたが、このM&Aにより清涼飲料水以外の食品製造事業から完全に撤退しています。

参考:事業譲渡に関するお知らせ

ベルテクスコーポレーションがコンクリート二次製品事業の一部をM&Aした事例

2022年12月1日に、株式会社ベルテクスコーポレーションが、同社の連結子会社であるベルテクス株式会社のコンクリート事業の一部である滋賀工場を、松阪興産株式会社へ事業譲渡することを発表しました。

ベルテクスコーポレーションは、コンクリート二次製品製造などを行う、東日本を基盤にしていたゼニス羽田ホールディングスと、西日本を基盤にしていたホクコンの共同株式移転によって設立された持ち株会社で、コンクリート事業やパイル事業などを行っています。

松阪興産は三重県松阪市で、砕石や砂、コンクリート二次製品などの製造販売を行っている骨材事業メーカーです。

ベルテクスコーポレーションとしては、主力事業の成長と推進を図り、最適生産体制を再構築する観点から、滋賀工場の能力を最大限に引き出す事ができる松阪興産への事業譲渡を決定したとのことです。

参考:連結子会社の一部事業譲渡に関するお知らせ

サワイグループホールディングスが小林化工から全工場をM&Aした事例

2021年12月3日に、サワイグループホールディングス株式会社が、小林化工株式会社の生産活動に係る資産及び関連部門人員を譲り受ける譲渡契約を締結したことを発表しました。

サワイグループホールディングスは、ジェネリック医薬品の製造メーカーである沢井製薬株式会社を中核会社とする持株会社です。

小林化工株式会社は、1946年に福井県あわら市で創業したジェネリック医薬品の製造販売メーカーでした。2020年に起きた、経口抗真菌薬への睡眠薬混入での健康被害により、業務停止命令を受けて、2023年4月に医薬品製造販売業許可を廃止しています。

ジェネリック医薬品はシェアの拡大が続いていますが、小林化工の誤混入の他にも製造メーカーに重大な問題が相次ぎ、業務停止となった工場が多く、安定した供給力の確保が大きな課題となっていました。

サワイグループとしては、このM&Aにより製造体制を引き継ぐことで、工場の稼働を可能にし、ジェネリック医薬品の安定供給への貢献を図ることができると判断しての事業譲受だとのことです。

参考:【サワイGHD】小林化工株式会社との譲渡契約締結についてオリックス株式会社と合意

アイカ工業がDSM Coating Resins Ltd. の大園工場と付随事業をM&Aした事例

2021年1月29日に、アイカ工業株式会社が、同社の台湾にある連結子会社のEvermore Chemical Industry Co., Ltd.が、DSM Coating Resins Ltd.の大園工場およびそれに付随するオーバープリントワニス用UV硬化型コーティング剤事業を譲り受けすることを発表しました。

アイカ工業は、建築材料や接着剤などを製造販売しているメーカーで、キッチンパネル市場では国内シェア1位を誇ります。

アイカ工業では2000年代以降、海外展開を積極的に進めており、機能材料事業での海外への投資を行っています。

DSM Coating Resins Ltd.は、台湾のオーバープリントワニス用UV硬化型コーティング剤事業の大手メーカーの一つで、このM&Aによりアイカ工業としては台湾でのこの製品の高いシェアの獲得が可能になるとのことです。

参考:DSM Coating Resins Ltd. の大園工場およびそれに付随するオーバープリントワニス用 UV硬化型コーティング剤事業の譲受に関するお知らせ 

【関連】繊維・衣服・装飾品製造業界のM&A・売却・買収・事業承継の現状は?事例から相場まで解説!

5. 工場事業のM&Aにおける成功のポイント

工場をM&Aするときに成功させるための注意点を解説します。

M&Aの専門家に相談する

1つ目の注意点は、最初にM&Aの専門家に相談することです。M&Aの専門家は、最適な売却先探しや、法律や財務についての高度な知識が必要な手続きのサポートを丁寧に行ってくれます

M&Aの情報サイトをみて自分だけで進めようとしても、途中で必ずつまずきます。最初からM&Aの専門家のサポートを受けるようにしましょう。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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情報収集の徹底と相手先の選定

2つ目の注意点は相手先の選び方です。

M&Aを行う上でもっとも重要なポイントは、相性が良くてお互いにシナジー効果を最大限に発揮できる会社を選ぶことです。

売却側は、M&A後も従業員が気持ちよく働き続けるためには、買収側の企業の業績向上に貢献できることが大切です。そのためには、自社の工場が相手側に利益をもたらすことが大切です。

買収側も多額の費用を掛けて工場を買収する目的は自社の業績向上です。最初に徹底的に情報を集めて、相手側の事業内容やリスクを調べて、最適な相手を選ぶように注意しましょう。

情報の流出に注意を払う

3つ目の注意点は、情報流出が起きないように注意することです。

特に売却側はM&Aの実施を公表できる段階になる前に情報流出が起きてしまうと、従業員や取引先の間に不安が広がり、退職や取引停止に繋がる可能性があります。

M&Aについての情報流出は、M&Aの専門家や相手側との電話での会話の断片を聞かれるなど、ちょっとしたことで起きやすいので、周囲の状況に気をつけるなど、情報流出しないように注意しましょう。

早めに検討し適切なタイミングを掴む

4つ目の注意点は、早めに準備を始めることです。

M&Aを実施するためには、最低でも1年程度の時間が必要です。できれば、数年単位で準備を進めて、最適な条件で売却できるタイミングを逃さないようにできれば理想的でしょう。

よくあるM&Aの失敗は、経営者の高齢化による健康状態の悪化から売却を検討し始めて、時間切れで売却できなかったり、売り急いで不当に安く買い叩かれてしまうことです。

時間的に余裕を持って準備を始めれば、そのようなことは防げるので、早めの準備が大切です。

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6. 工場業界のM&A・事業売却まとめ

工場には、その工場ならではの製造技術や熟練の職人の存在があり、もしも廃業することになると技術や職人の技は失われてしまいます。

M&Aであれば、後継者問題を抱える会社でも、事業承継することが可能です。会社の将来に不安があるのなら、まずはM&Aの可能性について、M&Aの専門家に相談してみることをおすすめします。

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