2023年05月30日公開
海外M&Aについて分かりやすく解説!メリットや注意点なども紹介!
海外M&Aについて興味はあるけど、実際の海外M&Aの事例や詳細についてわからないといったこともあるかと思います。
本記事では、海外M&Aとはどういったものなのか、そのメリットや流れ、注意点について紹介します。
海外M&Aはここ数年増加傾向にあります。
海外M&Aについて興味はあるけど、実際の海外M&Aの事例や詳細についてわからないといったこともあるかと思います。
本記事では、海外M&Aとはどういったものなのか、そのメリットや流れ、注意点について紹介します。
1. 海外M&Aとは
海外M&Aとは、譲受企業か譲渡企業いずれか一方の企業が海外の企業であるM&Aのことを指します。
いずれか一方なので、日本企業と海外企業のM&Aだけでなく、海外企業同士のM&A案件についても海外M&Aに含まれます。
また、国境を越えた海外の企業とM&Aを実行することから、クロスボーダーM&Aと呼ばれることもあります。
日本国内企業同士のM&Aと比較して、海外M&Aは大規模な案件となることが多いです。
これは、海外展開を見据えて海外M&Aを実行する日本の大手企業が多いことが挙げられます。
近年、グローバル化が進む中で、日本企業は対外直接投資にかける額が増えています。
そのため、日本国内企業同士のM&Aが増加傾向にあるのと同様に、海外M&Aも全体推移は増加傾向です。
海外M&Aの目的
日本企業が海外企業とM&Aを行う目的は、主に以下の3つの目的が挙げられます。
新製品開発
1つ目の目的は、新製品開発です。
海外M&Aを行うことにより、自社にはないノウハウや技術を得ることができるだけでなく、日本ではまだ広まっていない商品や技術といったものを手に入れられる可能性があります。
こういったノウハウや研究開発、技術やブランドといった無形資産を獲得・転用することにより、譲受企業は新商品開発に期待が持てるため、その点を目的として海外M&Aを実行するのです。
グローバルマーケット開拓
2つ目の目的は、グローバルマーケットの開拓です。
海外M&Aを行うことにより、海外マーケットに自社の商品やサービスを展開することができます。
少子高齢化の影響による消費者の減少や物価の高騰による商品やサービスの価格上昇で、日本国内の市場は縮小傾向にあります。
海外へマーケットを開拓できることを目的として、海外M&Aを実施する企業も多いです。
また、自社で海外マーケットの調査や販路の開拓を行うよりも、元々展開している海外企業をM&Aにより買収した方が少ないコストで海外進出できるため、それを目的のひとつとすることもあります。
経費やコスト削減
3つ目の目的は、経費やコストの削減です。
海外の安価な製品や食品が日本に多く輸入されるようになり、価格競争は激しくなっている傾向です。
また、日本では高度経済成長以後大幅に増加した人件費も、企業の大きな負担となっています。
海外企業をM&Aによって買収し、生産拠点を人件費や原材料費などが安い国に移すことで、同性能の商品をより安価に作り出すことができます。
また、法人税をはじめとした税率が日本よりも低い国もあり、税負担を軽減することによるコスト削減を目的として海外M&Aを行う企業も増加しています。
海外M&Aの種類
海外M&Aの種類は、譲受企業と譲渡企業が国内企業か海外企業かによって主に以下の3つの種類に分けられます。
簡単に各種類の特徴を紹介します。
OUT-IN型
1つ目の種類が、OUT-IN型です。
この種類は、譲受企業が海外企業で譲渡企業が国内企業の海外M&Aを指します。
OUT-IN型の海外M&Aの種類は、インバウンドM&Aと呼ばれることもあります。
M&A関連の法規制緩和によって、海外企業が日本国内に設立した子会社が、日本国内の企業を買収することによって孫会社化するといった手法が多く見られます。
IN-OUT型
2つ目の種類が、IN-OUT型です。
この種類は、譲受企業が国内企業で譲渡企業が海外企業の海外M&Aを指します。
少子高齢化の影響による消費者の減少に伴って縮小した国内市場の状況に対応するために、アジアや米国、欧州を中心とした新規市場へ参入する際に実行されることが多いです。
また、日銀の異次元緩和政策による円安の影響で、IN-OUT型の海外M&Aの種類が増えている傾向があります。
欧米企業が譲渡企業の場合はM&Aにかかる資金が莫大になる傾向があるため、子会社が買収を行なったことによって親会社の経営にマイナスの影響を与える事例も多く見られます。
OUT-OUT型
3つ目の種類が、OUT-OUT型です。
この種類は、譲受企業も譲渡企業も共に海外企業同士のM&Aを指します。
海外企業同士のM&Aと言われると、国内企業とは関わりがないように感じられます。
しかし、OUT-OUT型は国内企業の海外の子会社が、海外企業をM&Aによって買収する時に用いられる用語です。
多くの国内企業が、海外に子会社を持つことで海外進出を果たしています。
そのため、日本国内にある企業が海外企業の買収を行うより、現地にある子会社を使って現地の海外企業の買収を行う方がコストや手続きといった面でメリットがあります。
こういった場合に日本企業の海外子会社がOUT-OUT型のM&Aを行うのです。
2. 海外M&Aの手法
海外M&Aで行われる買収の手法は、国内企業同士で行われるM&Aと同様に、譲渡企業の自社株を譲受企業が買い取ることによって経営権を獲得する株式譲渡によるものが一般的です。
また、海外M&Aでは「LBO(レバレッジドバイアウト)」や「三角合併」が使われることもあります。
以下では、その2つの手法について紹介します。
LBO(レバレッジドバイアウト)
LBO(レバレッジドバイアウト)とは、譲渡企業の資産や将来的に期待されるキャッシュフローを担保にすることで、譲受企業が金融機関などから資金調達を行うことにより買収を実行する手法です。
LBOは、譲受企業に買収を実行する十分な資金のない状態でもM&Aが実行できるメリットがあります。
ただし、LBOによってM&Aを行ったのち、譲渡企業の業績悪化によって借入金の返済ができなくなってしまうと巨額の負債だけが残る結果となるリスクがあります。
三角合併
三角合併とは、合併により存続する親会社が消滅する子会社から自社株を受け取る対価に、親会社から現金や株式を子会社へ交付することで子会社の経営権を手に入れる手法です。
会社法上では、親会社が子会社へ交付できるものの種類に制限はないため、株式を対価とする手法を取ることができます。
そのため、株式譲渡の際に十分な資金が用意できていない場合の代替手段として自社株を子会社の株主に交付することでM&Aを行います。
3. 海外M&Aの流れ
一般的に、海外M&Aの流れも国内企業同士のM&Aの流れも、流れに大きな差はありません。
M&Aの基本的な流れについて紹介します。
①買い手側と売り手側のマッチング
まず初めの流れは、買い手側企業(譲受企業)と売り手側企業(譲渡企業)のマッチングを行います。
あらかじめ、M&Aを実施する目的や方向性といった条件を明確に決めておくことにより、条件のすり合わせが容易になります。
②秘密保守契約締結
買い手側と売り手側の合致が行われたら、次の流れとして秘密保持契約の締結を行います。
M&A交渉をさらに進めていく流れの中で、一般に公開されている情報の内容やノンネームシートといった、具体的かつ詳細な情報が必要です。
しかし、M&Aの検討や交渉を行っていることが外部に漏洩してしまうと、自社にデメリットをもたらすこともあります。
そのため、内部情報の交換の際は秘密保持契約を締結して行うこととなります。
③基本合意
ある程度、双方の企業の間で条件に関するすり合わせが完了し、M&Aを実行する方針で固まったら、次の流れは基本合意です。
基本合意では、M&Aスキームや条件、取引価格、独占交渉権、デューデリジェンスへの協力といった内容の確認をします。
書面でのやり取りで実施されることが多く、基本合意書により締結されます。
ただし、基本合意書にはほとんど法的拘束力がないため、この後の流れで行われるデューデリジェンスにより取引価格決定やM&A実行の判断がされます。
④デューデリジェンスを行う
デューデリジェンスとは、譲受企業による企業監査のことを指します。
譲受企業は、譲渡企業を買収して問題が発生しないかどうかの確認を法務や税務、財務といった各方面から調査します。
デューデリジェンスによる調査は、各分野の専門家に依頼して実行されるプロセスです。
⑤最終契約締結
これまでの交渉や基本合意の内容をもとに最終契約締結を行います。
基本合意書は法的拘束力がほとんどありませんが、最終契約書は法的拘束力を持ちます。
締結後に契約内容の変更は行えないため、最終条件交渉は慎重に実施しましょう。
万が一、希望とかけ離れているような内容の時は、M&A交渉を白紙に戻すこともひとつの方法です。
⑥クロージング
最終契約で締結された内容をもとにヒトやモノといった資源を移動させる段階がクロージングです。
クロージングが完了することにより、手続き上ではM&Aが完了となります。
4. 海外M&Aのメリット
海外M&Aを行うメリットとはどういったものでしょうか。
主なメリットについて3つ紹介します。
資金調達が可能
譲渡企業が自社の場合のメリットは、M&Aによる譲渡の対価として譲受企業から株式や現金を得られるため、資金調達が可能な点です。
M&Aにより資金調達をすることができれば、会社を立て直すための資金や新規事業の資金に充てることができます。
海外展開の時間や手間が省ける
国内企業が海外企業をM&Aによって買収した場合、買収した企業の元々の販売販路を利用することができるため、事業拡大の時間や手間が省けることもメリットとして挙げられます。
自社で海外マーケットの調査や販路の開拓を行うよりも、元々展開している海外企業をM&Aにより買収した方が少ないコストや時間で海外進出が可能です。
人件費の削減
日本では高度経済成長以後、大幅に人件費が増大し、企業の大きな負担となっています。
海外企業をM&Aによって買収し、生産拠点を人件費や原材料費などが安い国に移すことで、同性能の商品をより安価に作り出すことがメリットとして挙げられます。
5. 海外M&Aの注意点
ここまで、海外M&Aのメリットや流れを紹介してきました。
海外M&Aの場合、言語や文化の違いや物理的な距離の問題などから国内企業とのM&Aとは異なる注意点もあります。
以下では海外M&Aの注意点について、事前に確認しておくべき主な4つの注意点を紹介します。
現地の情報収集を念入りに行う
1つ目の注意点は、現地の情報収集を念入りに行うことです。
M&Aを海外企業と行うことが決定した段階で、事業所の具体的な所在地やM&Aを行う相手企業はどういった企業なのかといった情報をすぐに集めましょう。
ただ、わざわざ現地まで行き情報収集を行うのは時間やコストの面から難しいです。
M&A仲介業者の中には、国内にいながら海外M&Aについての相談に乗ってくれる業者もあるため、活用することによって時間やコストの節約につながるでしょう。
海外の税制や法制度を事前に理解しておく
2つ目の注意点は、海外の税制や法制度を事前に理解しておくことです。
海外M&Aでは、税制や法制度の違いなどから国内企業とのM&Aとは異なる複雑な手続きが必要となります。
それだけでなく、デューディリジェンスの内容や範囲も幅広いため、その手続きにも時間がかかることもあります。
1つ目の注意点でも紹介したように、海外M&Aでは事前に現地の情報収集を念入りに行うことが大切です。
PMIが困難な可能性がある
3つ目の注意点は、PMIが困難な可能性がある点です。
PMIとは、M&Aが成立した後の統合プロセスのことで、「業務統合」「経営統合」「意識統合」の3項目から構成されています。
PMIが適切に行われることにより、M&A実行による十分なシナジー効果を得ることができます。
しかし、海外M&Aにおいては言語や文化の違いのため、なるべく早い段階でPMIを見据えて体制を整えることが重要です。
PMIが適切に行われるかどうかは、M&A成功の重要な要素の一つなので気をつけましょう。
M&A仲介業者に相談する
こちらは注意点というよりは、海外企業をM&Aする経験の浅い企業が海外M&Aを行う場合のおすすめの手段の一つです。
国内M&Aと異なり、言語や文化はもちろん、法律の違いや物理的な距離の問題による現地情報の入手難易度の高さなど、海外M&Aはさまざまな乗り越えるべき項目があります。
もちろん、海外M&Aによるメリットも多くありますが、上記のようなことがリスクにつながることも多くあります。
そういったリスクを回避するためには正確な情報や知識を持っていることが大切です。
これらを自社で賄えることができれば良いですが、難しい場合はM&A仲介業者に相談することで、適切なフォローを行なってくれるでしょう。
6. 海外M&Aの事例
実際に行われた海外M&Aの事例について紹介します。
ソフトバンク
ソフトバンクは、2016年にイギリスの半導体設計会社であるアームを海外M&Aにより買収しました。
アームの買収に320億ドル(約3.3兆円)の金額を要し、日本企業における過去最大額の買収案件となりました。
クックパッド
クックパッドは、2013年にスペインでレシピサービスを展開するITYIS SIGLO XXIを海外M&Aにより約11.5億円で買収しました。
また、同年にアラビア語のレシピサービス展開を行なっている会社を約13億円で買収しました。
これらの影響により、クックパッドは世界約70カ国でレシピサービスを展開する企業となっています。
セブン&アイホールディングス
セブン&アイホールディングスは、2018年にアメリカに本社を持つコンビニストア事業ブランドのスピードウェイを海外M&Aにより約2.3兆円で買収しました。
このM&Aは、日本国内で飽和状態にあるコンビニ市場を、買収により北米市場を中心に展開することを目的として実行されました。
上記以外にも買収金額の大きいM&A事例について下記で紹介しておりますので、是非ご覧ください。
7. 海外M&Aに可能性を見出そう!
理由は様々ですが、縮小傾向にある国内市場ではなく新規に海外市場へ展開することを目的として海外M&Aを検討する企業は増えています。
それは、大企業だけでなく、中小企業でも増えてきています。
今回紹介したように海外M&Aには国内M&Aにはない注意点もあります。
専門の仲介業者に相談しつつ海外M&Aを検討してみると良いでしょう。
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