2022年01月16日更新
SES事業会社のM&A動向と案件一案
本記事では、システムエンジニアをクライアント企業へ派遣する「SES事業会社」のM&Aの案件一覧を紹介します。そのほか、SES事業会社の買収・売却・譲渡動向などのポイントもまとめました。
1. SES事業会社とは
SES事業会社は、IT関連企業で働いている方であれば誰もが知っているような会社ですが、他業種の方にとってはそれほどなじみのない会社です。
そこではじめに、SES事業会社の定義について簡単に解説します。
SES業界の定義
SESとは「システム・エンジニアリング・サービス」の略であり、SES会社が雇用するシステムエンジニア(SE)を、SEを必要とするクライアント企業に派遣して働かせる労働形態のことです。
一見すると派遣会社の事業と似ていますが、派遣社員の指揮命令権は派遣先企業にあるのに対して、SESにおける指揮命令権はSES企業側にあるという点に大きな相違が見られます。
このように指揮命令権がSES企業側にあるため、クライアント企業ではSEに対して残業・休日出勤などを求められません。
とはいえSESを利用すれば、クライアント企業では案件ごとに適したスキルを持つSEを確保できます。
SES契約と請負・派遣契約の違い
ここでは、SES契約と、請負契約・派遣契約に見られる違いについて解説します。これらの言葉を区別せずに使っている経営者の方も多いことから、スムーズにM&Aを実施するためにも把握しておくと良いでしょう。
SES契約と請負契約の間にある相違点は、報酬が支払われる対象です。請負契約では特定の仕事の完成に対して報酬が支払われるのに対して、SES契約では特定期間内の労働に対して報酬が支払われます。そのため、SES契約では期間内に仕事が完成しないケースであっても、報酬が支払われる仕組みです。
また、SES契約と派遣契約の間では、明確な雇用期間の有無に相違点が見られます。派遣契約ではクライアント企業が実施するプロジェクトの完成を期限として派遣されるのに対して、SES契約では雇用期間が明確に定められています。
また、先述したように、指揮命令権をクライアントに与えるかどうかという点にも相違が見られます。以上を把握しておくと、自社がM&Aを行いたい業界についてより鮮明に絞り込むことが可能です。
2. SES事業会社のM&A・買収・売却・譲渡動向
ここでは、SES事業会社のM&A・買収・売却・譲渡動向について解説します。SES事業会社の主なM&A動向は、以下の5つです。
- SES事業会社によるIT企業のM&Aが増加傾向にある
- 海外大手資本からのM&Aが増えつつある
- 国内同業種のM&Aも活発である
- 業界内の海外投資も増えている
- 優秀な人材を確保するM&Aも増加している
それぞれの項目を順番に見ていきましょう。
①SES事業会社によるIT企業のM&Aが増加傾向にある
IT業界では、スキルを持つシステムエンジニアが慢性的に不足しています。そのため、SES事業会社がIT企業をM&Aにより買収して、技術者を確保するという事例が増加傾向にある状況です。技術者不足は今後も続く見込みであるため、これに伴いSES事業会社によるM&Aもさらに増加していくものと見られます。
②海外大手資本からのM&Aが増えつつある
最近では、大手海外資本が日本のSES企業をM&Aにより買収する事例も増えつつあります。
もともと海外企業が日本人のシステムエンジニアをゼロから育てようとすると非常に多くの手間がかかりますが、M&Aを実施すればスキルのある人材を即座に確保が可能です。
大手企業のシステム開発は大規模になりやすく費用も莫大であるため、優秀なSEを確保するSES企業を買収し子会社化して、外注よりも費用を抑えたうえで開発を進めたいという意図が見られます。
③国内同業種のM&Aも活発である
SES業界では、SES会社・IT会社・派遣会社といった国内同業種によるM&Aも活発です。SEは慢性的に人材不足であるため、同業種の会社を買収して人材を確保しようとする動きが目立っています。
本来は自社で若手や未経験者を雇ってスキルを身に付けさせるのが正攻法ですが、それほどの費用や時間をかけられない企業が多いのが実情です。
そこで最近では、大手SES会社を中心に、優秀な人材を持つ中小SES会社の買収により、能力の高い技術者をスピーディーに確保しながら業績を伸ばしています。
④業界内の海外投資も増えている
最近では発展途上国への事業展開を目的に、M&Aによる海外投資を積極的に行っているSES会社も多いです。
日本やアメリカなどの先進国とは違い、発展途上国の中には、優秀なSEが育っていなかったりIT化に向けたインフラが整備されていなかったりする国もあります。こうした国に先行投資すると、長期的視点で事業の発展が目指せます。
将来的に海外投資に成功する事例が増えれば、SES会社による海外投資もさらに活発化していく見込みです。
⑤優秀な人材を確保するM&Aも増加している
SES業界では、技術者の高齢化やハードワークのイメージで若い人材が敬遠するといった理由で、慢性的な人材不足に陥っています。そこで、スキルを持った優秀なSEを確保するために、SES会社を買収するという事例が増加傾向にある状況です。
現時点でもシステムエンジニアは人材不足ですが、IT技術者不足は今後さらに深刻化していく見込みです。そのため、高いスキルを持った優秀な人材を求めるM&Aは、今後も活発に行われていくと推測されます。
3. SES事業会社M&A・買収・売却・譲渡案件一覧
最後に、最近のSES事業会社のM&A案件・事例から、いくつかピックアップして紹介します。大規模な会社のM&A案件・事例は技術者確保の目的で実施されるケースが多い一方で、小規模な会社のM&A案件・事例は経営者の個人的な理由で実施されるケースが多いです。
①インフラ技術者SES事業の譲渡
近畿地方のインフラ技術者SES事業の譲渡が公開されています。知人から事業を引き受けたものの専門外であるため、SES事業に興味がある人に譲渡したいという意図です。
所在地エリア | 近畿 |
売上高 | 2,500万円~5,000万円 |
譲渡・売却希望価額 | 1,000万円~3,000万円 |
アピールポイント | 安定的な収益 |
②AI搭載のHRTechシステムを売りたいです。
AIビジネスサービス・ITサービス企業の売却が公開されています。経営自体は順調ですが経営者が商売人気質ではないために、商売人気質の経営者に事業を譲りたいという意図です。
所在地エリア | 東京 |
売上高 | 非公開 |
譲渡・売却希望価額 | 3億円 |
アピールポイント | 今話題のAIを活用したHRTechシステム |
③ナレッジスイートによるビクタスの買収
ここからは、実際に行われたM&A事例を紹介します。
2018年、ナレッジスイートは、SES企業であるビクタスの全株式を取得して完全子会社化しました。本件M&Aにより、ナレッジスイートでは、ビクタスに所属する優秀なSEを確保しています。
所在地エリア | 東京都 |
売上高 | 13億円 |
売却価額 | 3億1,700万円 |
アピールポイント | 優秀なSEが所属 |
④ITbookによるRINETの買収
2018年、ITコンサルティング会社のITbookは、SES会社RINETの株式を取得し子会社化しました。本件M&Aにより、ITbookでは新規事業への拡大が図られた一方で、RINETでは経営基盤の確保が図られています。
所在地エリア | 東京都 |
売上高 | 3億700万円 |
売却価額 | 1億円 |
アピールポイント | 100%自社社員による帰属意識の高さ |
⑤夢真ホールディングスによるネプラスの買収
2018年、夢真ホールディングスは、ネプラスの株式を取得し子会社化しました。ネプラスはSES事業とネットワーク機器の販売・レンタルを手掛ける会社で、50人以上の優秀なシステムエンジニアが在籍しています。
本件M&Aは、若手や未経験者のSEが多い夢真ホールディングスからすると、優秀なSEの確保を狙った事例です。
所在地エリア | 東京 |
売上高 | 12億7,000万円 |
売却価額 | 20億9,000万円 |
アピールポイント | 優秀なSEが所属 |
⑥DELTA Holdingsによるエヌジェイホールディングスの買収
2018年、DELTA Holdingsは、ゲーム開発などを手掛けるトーテックの株式70%を取得し子会社化しました。トーテックは、エヌジェイホールディングスの子会社です。本件M&Aにより、DELTA Holdingsでは、トーテックの優秀な人材の確保が図られています。
所在地エリア | 東京都 |
売上高 | 11億6,700万円 |
売却価額 | 1億2,600万円 |
アピールポイント | 優秀なSEが所属 |
4. まとめ
SES事業は技術者の不足や海外投資の増加などで、今後もM&Aが活発に実施される見込みのある業種です。自社に合った仲介会社を選びながら、納得のいく条件でM&Aを成約させましょう。
【SES事業会社のM&A・買収・売却・譲渡動向】
- SES事業会社によるIT企業のM&Aが増加傾向している
- 海外大手資本からのM&Aが増えつつある
- 国内同業種のM&Aも活発である
- 業界内の海外投資も増えている
- 優秀な人材を確保するM&Aも増加している
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