2024年07月26日更新
SaaS業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイント・事例13選を徹底解説【2024年最新】
ソフトウェアをダウンロード不要でオンライン上で使えるSaaSは、年間平均15%成長している注目の業界です。SaaS業界の動向やM&A・売却・買収について、最新のM&A・売却(譲渡)・買収事例やカオスマップも交えて解説します。
目次
1. SaaSの概要
SaaSとは
SaaS(サース)とは、パソコンやスマホにダウンロードせず、インターネット上で使うソフトウェアです。「Software as a Service」の頭文字をとった用語で、日本語にすと「サービスとしてのソフトウェア」になります。
SaaSはセキュリティ対策を行なっていることが一般的なため、ユーザー自身がセキュリティ対策へのコストや手間をかける必要がありません。また、Webの環境が整っていればデバイスに関係なく使用できる点が特徴です。
具体的なサービスにはSalesforceのような顧客管理やfreeeのような会計ソフト、Money Forward クラウドのような経理や人事管理、コミュニケーションツールとしてSlackやChatworkなどがあります。
IaaSとは
IaaSとは、サーバーやネットワークといったコンピューターを利用する土台をインターネット上で提供するサービスです。
IaaSは「Infrastructure as a Service」の頭文字をとったもので、日本語に訳すと「サービスとしてのインフラストラクチャー」になります。IaaSの読み方は統一されていませんが「イアース」、「アイアース」と読まれる場合が多いです。
例えば、GoogleやAmazonが、それぞれ「Google Compute Engine」、「Amazon Elastic Compute Cloud」といったサービスを提供しています。
PaaSとは
PaaS(パース)とは、ソフトウェアやアプリを動かす土台をインターネット上で提供するサービスです。「Platform as a Service」の頭文字をとった略称で、「サービスとしてのプラットフォーム」を意味します。
コンピューターにおける最も根本的な部分を提供するのがIaaSであり、その逆がSaaSであると考えると、開発環境を提供するPaaSはその中間のような存在といえるでしょう。
2. SaaSの業界動向
SaaSは比較的新しい分野であり、業界動向も変化が激しいのが特徴です。
したがって、SaaS業界のM&A・売却・買収・譲渡を行う際は、現在の業界動向をしっかりと把握しておくのが重要になります。日本と海外のSaaS業界動向について確認しましょう。
日本でのSaaSの業界動向
富士キメラ総研の調査によると、企業向けソフトウェアの国内市場は2024年度に1兆9,889億円が見込まれています。企業向けソフトウェアの国内市場は堅調に推移しているほか、2024年度のSaaS比率も拡大傾向にあり2024年度予測が56.2%が見込まれている状況です。
以前は独自にカスタマイズしたパッケージソフトを導入することが一般的でしたが、2015年度頃から、導入コストを抑え、システム管理者の負担を軽減できるSaaS(サービスとしてのソフトウェア)の利用が急増しています。今後も、運用・保守にかかる人手を減らすため、働き方改革による業務効率化の推進、およびリモートワークの増加により、SaaSの利用がさらに拡大すると予想されています。
参考:富士キメラ総研「『ソフトウェアビジネス新市場 2020年版』まとまる(2020/11/12発表 第20118号)」
アメリカ・世界でのSaaSの業界動向
令和5年版情報通信白書では世界のSaaSの市場規模は、1399億ドルとなっています。ユーザー継続的な利用を見込めることから、順調に成長する予想値が出ています。
競争の激化
事業の領域拡大により市場拡大しているSaaS業界ですが、スタートアップなど新規参入の企業により市場のシェア獲得は激化しています。
競合優位性を獲得することが難しい中でどのように戦っていくかの戦略が必要です。
人材不足
高い技術力を求められるSaaS業界ではエンジニアなど専門性の高い人材不足が顕著です。人材不足によって企業の成長が止まってしまうため、人材確保が鍵となっています。
3. SaaS業界のM&A動向
SaaS業界のM&A動向に関して解説します。
将来性があるアイデア・事業のM&A
SaaSには、今までにない革新的なサービスを提供している企業が多く、将来性の高いアイデアや事業が多いです。
新しい事業に参入したい目的や、将来性のあるアイデアを取り入れてシナジー効果を獲得したい目的で、SaaS企業をM&A・買収する事例がよく見られます。
EXITをM&Aに設定しているスタートアップ企業
SaaSでは、短期間での市場開拓やイノベーションを目指すスタートアップ企業が多く、M&Aによるイグジット(EXIT)を目指す企業が多いです。
日本では、イグジットはIPO(株式公開)によって実現するイメージが強いです。しかし、アメリカなどの海外では、以前からM&Aによるイグジットが行われています。
関連する事業とのシナジー効果を期待
SaaSはソフトウェアを提供するので、IT企業などの関連事業にとってはシナジー効果を得やすい分野といえます。
自社製品にSaaS企業が提供するサービスを融合して、今までの製品の欠点を補い、新しい価値を付加して販売層を拡大可能です。
活況の市場に参入したい
不況や超高齢化などで市場規模が縮小する業種が多い中、SaaSのように成長している業種は希少でしょう。今後も大きな成長が見込めるSaaSにチャンスを求めて、既存のSaaS企業をM&Aで買収して新規参入する事例も多く見られます。
4. SaaS会社のM&Aメリット
売り手側のメリット
サービスの拡大
大手企業の傘下に入ることで、資本の投入を期待することができます。それにより既存サービスの拡大や新規サービスの開発を行うことがとができます。
個人保証の解消
業種を問わず中小規模の事業者が金融機関から借り入れを行う際、経営者が個人保証を負ったりするケースは少なくありません。個人保証や担保の存在は経営者にとって大きなストレスであり、引退や親族への事業承継時に足かせとなる場合もあります。
M&Aにより経営者の個人保証などが解消されるだけでなく売却益の獲得ができ、新たな事業資金など自由に使うことができるのは大きなメリットです。
後継者不在の解消
国内では後継者不足は社会問題となっており、廃業の危機にある中小企業も少なくありません。後継者がいない場合でもM&Aの活用により事業承継が可能です。
エンジニアの育成・待遇の改善
トレンドや技術の更新が早いこの業界で、最先端の技術を確保するには費用や時間がかかります。同業とのM&Aによってエンジニア同士の交流により技術を共有や、待遇の向上、知名度の向上により優秀なエンジニアの獲得や、離職率の低下につながることもあります。
買い手側のメリット
新規事業への参入
新規事業へ参入する際は時間とコストがかかるうえ、必ずしも成功する保証はありません。M&Aによって新規事業への参入をスムーズにし、リスクを軽減できる有用な手段です。
人材獲得
エンジニア不足は社会問題になっており、募集によって不足を補うことができないこともあります。M&Aによって、サービスだけでなくエンジニアの獲得を行うこともできます。
シナジー効果
M&Aによりシナジー効果が生み出されることが期待できます。しかし、どのようなシナジーがどれほど生まれるかは簡単に予測することは難しいため、相手企業の強みや得意とする分野は取引先や実績などの情報をしっかり集めることが重要です。
5. M&A・売却・買収・譲渡対象として人気のあるSaaSタイプ
SaaSはインターネット上でソフトウェアを提供するサービス一般をさし、ソフトウェアの種類は多岐に渡ります。
ここでは、その中でもM&A・売却・買収・譲渡対象として、特に人気のあるSaaSタイプを見てみましょう。
マーケティング
マーケティング・ソフトウェア市場は年平均10%以上で成長しており、ソフトウェア事業の中でも特に成長が著しい分野です。
SaaSによるマーケティング・ソフトウェアの提供も積極的に行われており、M&A・売却・買収・譲渡対象として非常に人気があります。
データ解析
近年は、ビッグデータを扱う機会が増えた事情もあり、データ解析ソフトウェアの需要はますます高まっています。
SaaSでもデータ解析ソフトが多数提供されており、M&A・売却・買収・譲渡対象としても高い人気です。
文章・プロセス管理
文書を適切に処理して管理するソフトウェアや、業務の流れやプロセスを文書化して管理・共有するソフトウェアは、ビジネスにおいて欠かせません。
時間や場所にとらわれない働き方を推進する現代では、離れた場所にいる人同士がプロジェクトを共有します。文書・プロセス管理の重要性はますます高まるでしょう。
Eコマース
ショッピングやオークションなどのいわゆるEコマースも、SaaSのM&A・売却・買収・譲渡対象として人気のあるジャンルです。
Eコマースはすでに大きな市場規模を持つ分野ですが、今後も成長していく可能性があります。
ストレージ・システム管理
パソコンやスマホのデータを保存するには、ハードディスクなど本体内部に搭載された記憶装置や、SDカードなど外部から接続して使う記憶装置を使います。
しかし近年では、オンライン上でデータを保存するクラウドストレージであるSaaS型の記憶装置が普及してきました。
システム管理ツールも多くのSaaS型サービスが提供されており、M&A・売却・買収・譲渡対象として高い人気があります。
請求書作成
請求書・見積書・納品書などは、専用ソフトを使うと短時間で簡単に作成できます。メール送信だけでなく、ワンクリックで郵送できたり、確定申告ソフトと連携できたりなど、個人事業主にも人気が高いジャンルです。
SaaS型の請求書作成ツールは安定した需要があるため、M&A・売却・買収・譲渡対象として人気があります。
セキュリティ
セキュリティソフトもSaaS型が非常に人気です。セキュリティソフトは、ウイルスの定義が常に最新でなければなりません。常時最新状態に更新できるSaaS型は適した形態です。
今後も安定した需要が見込まれるSaaS型のセキュリティサービスも、M&A・売却・買収・譲渡対象として人気があります。
その他
SaaSはインターネット上で提供できるソフトウェア一般をさすので、サービスの種類は多岐に渡ります。先に挙げたジャンル以外にも、M&A・売却・買収・譲渡対象として人気のあるSaaSタイプは豊富です。
一例としては、大企業で社内のコミュニケーションを円滑に進めるための社内SNS、タイムカードが不要になる勤怠管理システムなどがあります。
6. SaaSのM&A・売却・買収・譲渡を行う企業タイプ
SaaSのM&A・売却・買収・譲渡を行う企業タイプは、主に以下の3種類です。
非上場企業
非上場企業とは、自社の株式を証券取引所に上場していない企業です。非上場企業は必ずしも中小企業だけではなく、5大新聞社やサントリーなどのような大企業も存在します。
SaaS企業では、まず非上場企業としてスタートし、その後、IPOによるイグジットを目指す事例が多く見られるのが現状です。
上場企業
上場企業とは、自社の株式を証券取引所に上場している企業をさします。上場企業の株式は、市場を通して不特定多数の人が入手でき、株式を保有している株主は、株主総会で会社の意思決定に参加できます。
投資ファンド・PE
近年アメリカなどでは、投資ファンドやPE(プライベート・エクイティ)によるSaaS企業への投資が活発化しています。ここでいうPEとは、未公開株への投資および投資ファンドです。
SaaSは成長市場であるうえリターンが比較的予想しやすいのが特徴であり、今後は日本でも活発になってくる可能性があります。
7. SaaS業界のカオスマップ
カオスマップとは、特定の業界の企業をジャンル別にまとめたものです。
「Horizontal SaaS カオスマップ」と書いてありますが、Horizontal SaaSとは業界を問わずに使えるSaaSで、経理やマーケティング・データ解析などが該当します。対して、特定の業種のニーズに特化したSaaSが「Vertical SaaS」です。
8. SaaS業界のM&A事例
SaaS業界のM&A・売却・買収・譲渡の中から、大企業による有名な事例を13例ピックアップして紹介します。
NTTデータグループによるProvenTech社のM&A
NTT DATA, Inc.(東京都江東区)は、100%子会社であるNTT DATA Business Solutions AG(ドイツ・ビーレフェルト、以下「NDBS社」)を通じて、インド・ハイデラバードに拠点を持つProvenTech Consulting Private Limited社(以下「ProvenTech社」)を買収することで最終合意に達しました。
NTT DATA, Inc.は、NTT DATAのグローバル事業におけるガバナンス、戦略策定、施策推進などを担当し、世界50ヵ国以上でITサービスを提供しています。
ProvenTech社は、インドで製薬・ライフサイエンス企業向けにコンサルティング、システム導入、マネージドサービス、および自社SaaSソリューションを提供しています。
今回の買収により、NTT DATA, Inc.はProvenTech社の専門知識と資産を獲得し、さらにFortune 500企業の顧客基盤を手に入れています。グループ全体のグローバルプレゼンスとSAPケイパビリティを活用し、顧客のさらなる成長とイノベーションを支援していきます。
TWOSTONE&SonsのM&A
2024年1月、TWOSTONE&SonsはMapleSystemsの全株式を取得し、子会社化することを発表しました。
を行っています。エンジニアにはキャリア開発と安心して働ける環境を提供し、企業にはエンジニアのリソースを様々な形で提供することで、国内の IT エンジニア不足を解決している企業です。
MapleSystems は、IT エンジニアを企業とマッチングするビジネスを行っており、案件管理や顧客獲得に独自のノウハウを持っています。
今回の M&A により、MapleSystems と TWOSTONE&Sons は顧客基盤とエンジニアデータベースを統合し、クロスセルを実現して両社の成長を目指します。特に若手・WEB 系エンジニアのシェア拡大とプレゼンス向上が期待されます。
参考: MapleSystems の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
fonfunによるM&A
2024年3月、fonfunはゼロワンのSaaS事業を譲受することを発表しました。
fonfunはテックカンパニーとして基盤の強化を重点に置いている企業です。
ゼロワンのノーコード業務アプリ開発は顧客のDX推進においてシステム開発の生産性を向上させることができる事業です。
今回のM&AによりSaaS型サービスの提供や業務コンサルティング、インテグレーションを組み合わせ顧客の業務課題解決支援を行うことができるとしています。
参考:https://www.fonfun.co.jp/ir/ir-news/17270/ノーコード業務アプリ開発SaaS事業の譲受
日立製作所のM&A
2020(令和2)年4月、日立製作所はマレーシアのFusionex International Plcと事業承継に関する契約を締結し、Fusionex International PlcのSaaS事業を分割し承継した新会社を、日立製作所の完全子会社として取得したのを発表しました。取得価額は公表されていません。
Fusionex International Plcが行ってきたSaaS事業は、アジア方面におけるAIおよびデータアナリティクス系のサービスになります。
日立製作所としては、今回のM&Aに獲得した新たなノウハウと人材を現在の自社のサービスに取り入れ、ワールドワードでワンランク上の事業展開を目指すものです。
SAPによるQualtricsのM&A
2019(令和元年)年11月、ドイツに本社を置くヨーロッパ最大のソフトウェア会社SAPがQualtricsを約80億ドルで買収しました。Qualtricsはアンケートやリサーチによるデータ分析ソフトを提供している企業です。
これによりSAPは、QualtricsのエクスペリエンスデータとSAPの業務データが融合した、今までにない業務管理システムの提供を目指します。
AdobeによるMarketoのM&A
2018(平成30)年9月に、AdobeがMarketoを47億5,000万ドルで買収しました。Adobeはアメリカのソフトウェア会社で、Marketoは企業向けのマーケティングプラットフォームを提供している会社です。
Adobeは、提供しているエクスペリエンスクラウド「Adobe Experience Cloud」に、Marketoの技術やマネジメント力を統合し、より進化したサービスの提供を目指しています。
ARMによるトレジャーデータのM&A
2018年7月にARMがトレジャーデータを約6億ドルで買収しました。ARMはソフトバンク傘下の持株会社で、携帯電話のプロセッサなどで世界的に有名な企業です。
一方のトレジャーデータは、データプラットフォーム「Treasure Data Platform」などを運営している会社になります。
この買収により、ARMは「Arm Pelion IoT Platform」を立ち上げるなどしてIoTプラットフォームの整備を進める方針です。
MicrosoftによるGitHubのM&A
2018年6月にMicrosoftがGitHubを約75億ドルで買収しました。GitHubは、ソースコードの共有プラットフォーム「GitHub」を運営しています。
GitHubは、約2,600万人のユーザーを誇る世界最大級のソフトウェア開発プラットフォームです。
この買収により、Microsoftはオープンソース分野での事業拡大を目指し、自社が運営するクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」との連携も視野に入れています。
WorkdayによるAdaptive InsightsのM&A
2018年6月にWorkdayは、Adaptive Insightsを約15億5,000万ドルで買収しました。Workdayは財務・人事管理のクラウドソリューションを提供する企業で、Adaptive Insightsは企業業績管理などのクラウドコンピューティングサービスを提供する企業です。
この買収により、WorkdayはAdaptive Insightsの製品を自社製品に組み込むなどして、お互いの製品を生かした新しいサービスの提供を目指します。
LINEによるファイブのM&A
2017(平成29)年12月にLINEがファイブを資本業務提携により完全子会社化とするのを発表しました。
LINEは2017年時点では韓国最大のIT企業「ネイバー」の子会社で、SNS「LINE」の運営会社として知られており、ファイブは動画広告プラットフォームを運営する会社です。
このM&Aにより、LINE関連での動画広告サービスの充実など、お互いのプラットフォームを生かしたシナジー効果の獲得を目指します。
DMMによるBANKのM&A
2017年10月に、合同会社DMM.comがBANKを70億円で買収しました。DMMはECサイト「DMM.com」を運営している会社で、BANKは現金化アプリ「CASH」、旅行アプリ「TRAVEL Now」を運営する会社です。
この買収は事業拡大を目指したものでしたが、翌2018年に5億円でBANKを売却しなければならなくなり、DMM側として買収は失敗に終わっています。
KDDIによるソラコムのM&A
2017年8月、KDDIはソラコムの全株式を株式譲渡により取得し、完全子会社化しました。買収額は200億円と一部報道で報じられましたが、公式には非公表です。
KDDIはプロバイダーや携帯電話サービスなどを営む会社で、ソラコムはIoT向けワイヤレス通信を提供する会社です。
この買収は、KDDIがソラコムの経営資源を生かしたシナジー効果の獲得を目的として実施しました。
SAPによるコンカーのM&A
2014(平成26)年9月に、SAPがアメリカのSaaS会社であるコンカー(Concur Technologies)を買収し、子会社化しました。買収額は約83億ドルと発表されています。
コンカーは、企業向けに出張費や経費を管理するソフトウェアを運営しており、世界的企業であるSAPグループに入って大幅な販路拡大を実現しています。
DellによるEverdreamのM&A
2007(平成19)年12月に、アメリカの総合IT企業DELLが、同じくアメリカのSaaS企業であるEverdreamを買収し子会社化しました。買収価格などは非公表です。
この買収により、DELLはSaaS市場へ新規参入しリモート管理事業の拡大を果たしました。Everdream側は、同社の製品をDELLの販売網を利用して販売し、DELL製品の基礎部分にEverdream製品を採用して販路を拡大しています。
9. SaaS業界のM&Aにおける積極買収企業
ここからは、SaaS業界のM&Aにおける積極買収事例を紹介します。
クラウドサーカス
クラウドサーカスは、東証一部上場企業である「スターティアホールディングス」のグループ会社として、デジタルマーケティング事業を担っている会社です。クラウドサーカスブランドのもとで、8つのプロダクトを展開しており、中小規模の企業を中心として約16,000件の企業がクラウドサーカスのプロダクトを導入しています。
2021年1月にも、Brocante株式会社よりチャットボット事業を譲受けるなど、M&Aに積極的な会社です。そのようなクラウドサーカスは現在、クラウドサーカスの各プロダクトと親和性の高い機能を持つSaaS企業の積極的買収案を打ち出しています。M&Aによって、さらなる事業の拡大を目指しています。
識学
識学は2015年に設立した東証マザーズ上場企業で、独自の組織運営理論である「識学」に基づき、その導入を通じてさまざまな業種に渡る企業を支援しています。
組織コンサルティング事業、スポーツエンタテインメント事業、ハンズオン支援ファンドといった事業を展開しており、今後、東証プライム市場の市場変更基準を満たす時価総額、業績、ガバナンス体制を目指すでしょう。識学は、これまでも3社のM&Aに成功しており、事業の成長を実現しています。
そのような識学は現在、事業領域の拡大を目指しており、その一環として、業務効率化や生産性向上に寄与するSaaSなどを提供している企業のM&Aを検討しています。
サーバーワークス
サーバーワークスは、AWS(アマゾン ウェブ サービス)専業のソリューションプロバイダーとして、AWS導入支援、AWS運用サービス、AWS自動化ツールなどの各種ソリューションを提供している企業です。アマゾンウェブサービスのパートナーとして、最上位のプレミアコンサルティングパートナーとして2014年から継続して認定されるなど、AWSソリューションプロバイダーとして実績を持っています。
そのようなサーバーワークスでも今後、AWS導入実績を拡大するためにパートナーとなるSaaS企業を探しています。
ジーニー
2010年に創業されたジーニーは、最先端の広告テクノロジーで顧客の収益を最大化するサポートをしている企業です。これまでも市場ニーズに即したさまざまなサービスを提供してきました。
そのようなジーニーは、アジアトップのマーケティングテクノロジー企業になるのを目指しており、事業領域の拡大とサービス導入企業の拡大を図っています。その一環として、ジーニーはM&Aによって、SaaS事業全般の獲得を目指しています。
クラウドワークス
2012年に創業されたクラウドワークスは、2021年現在、443万人のクラウドワーカーが登録する日本最大級のクラウドソーシングプラットフォームを運営する企業です。
クラウドワークスは、これまでも積極的にM&Aを進めており、すでにお互いの事業の成功によってシナジー効果が現れているケースもあります。2017年には、gravieeを子会社化したのち、吸収合併するなどの実績もある企業です。
そのようなクラウドワークスは、既存の事業領域の強化のために、SaaSプロダクトを持つ企業のM&Aを検討しています。
グッドパッチ
グッドパッチは、プロダクト開発、新規事業立ち上げ、ブランド構築、組織支援など、サービスの利用先となる企業のさまざまなビジネス課題を「デザインの力」で解決している企業です。2011年に創業されました。
グッドパッチは、ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる経営理念を掲げ、デザインの力を証明するためにUI/UXデザインを強みとした新規事業の立ち上げや、企業のデザイン戦略立案、デザイン組織構築支援などを得意とする企業です。
デザインパートナー事業とデザインプラットフォーム事業を展開しており、さらなる事業拡大を目指して新しいパートナーを探しています。M&A先となるSaaS企業を検討しているのです。
このM&Aによって、これまであまりリーチできていなかった大企業クラスのクライアントを増やし、プロジェクトの単価を上げていくのを目指しています。
ヤプリ
ヤプリは、ネイティブアプリの開発・運用・分析をノーコードで実現できSaaS型のアプリプラットフォーム「Yappli(ヤプリ)」を提供している会社です。
ヤプリはスクラッチ開発に見劣りしない50以上の充実した機能を実装しており、簡単にアプリ開発できます。したがって、あらゆる企業がアプリを運営できるようになりました。ノーコード・モバイル開発プラットフォーム分野で、さまざまな実績があります。
昨今は、アプリをリリースするだけで始められるノーコードの顧客管理ソフトウェア「Yappli CRM」などもスタートし、アプリをとおして企業と顧客をつなげるサービスを展開しているのです。
ヤプリは600社以上と多くの企業で導入され、開発したアプリの累計ダウンロード数は1億ダウンロードを突破。店舗やEコマースなどのマーケティング支援、バックオフィスや学校法人の支援まで幅広く活用されています。
Faber Company
Faber Company(ファベルカンパニー)は、デジタルマーケティングのROI向上を支援するソフトウェアを開発・販売を行っています。優れたマーケターが持つ才能をソフトウェア化し、再現性ある施策をコンセプトとしているのが特徴です。
- MIERUCA(ミエルカ)
- ミエルカヒートマップ
- ローカルミエルカ
- ミエルカコネクト
テモナ
テモナは、主にサブスクリプションビジネスの運営支援サービスを行っています。販売・顧客・入金・在庫などの管理機能、販売促進などワンストップで提供する「サブスクストア」であるクラウド型システムを展開している会社です。
消耗品のEC事業者を中心に1,400社以上の取引実績があります。2017年には東証マザーズ上場、2019年4月に東証一部へ上場しました。
2019年からはBtoB領域への進出を図るため、「サブスクストアB2B」をリリースしました。従来のBtoC向けサービスもリニューアルを行い、事業領域・規模の両面で導入拡大を図っていく体制を整えています。
Chatwork
Chatworkは、2011年よりビジネスチャットツール「Chatwork」事業を展開している会社です。業務やコミュニケーションの効率化を目指したビジネスチャットのパイオニアツールといえるでしょう。
Chatworkはわかりやすいインターフェースを実現しており、社内外のやり取りを1つのアカウントで利用できるオープンプラットフォームです。国内での導入企業数は約28万社(2020年8月末日時点)と、中小企業を中心にあらゆる業種で浸透しています。
バックオフィス業務が可能な「Chatwork アシスタント」、電話の内容をチャットで書き起こす「Chatwork 電話代行」、助成金の選定から受給が可能な「Chatwork 助成金診断」、売掛債権を資金化できる「Chatwork 早期入金」などのサービスも展開しています。
10. SaaS業界のM&A・売却・買収まとめ
SaaSはこれからも大きく成長していく見込みがある業界で、今後もM&A・売却・買収・譲渡の活況は続いていくと考えられます。イグジットを目指すスタートアップ企業としても、ファンドやPEによる投資対象としても、魅力的な業界といえるでしょう。
SaaS業界のM&A・売却・買収・譲渡をスムーズに進めるためには、M&Aに関する幅広い知識や見解が必要になるため、専門家のサポート下で行うのをおすすめします。
11. SaaS事業業界の成約事例一覧
12. SaaS事業業界のM&A案件一覧
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。