2023年05月28日更新
ソフトバンクの大型M&Aの歴史!戦略と狙いを成功/失敗事例で振り返る
日本を代表する企業でもあるソフトバンクは、大型M&Aを繰り返して巨大な企業へと成長しました。現在さまざまな事業を手掛けていますが、過去のM&Aの戦略と狙いは成功しているのでしょうか。本記事では、ソフトバンクの大型M&Aの歴史を振り返ります。
1. ソフトバンクの大型M&Aの歴史
M&Aは成長戦略として数多くの企業が活用していますが、そのなかでも特にソフトバンクは大型M&Aを繰り返しています。
2019年の日本企業が関わったM&Aにおいて、ソフトバンク系列がM&A取引金額上位2・3位にランクインしたことでも大きな話題となりました。
ソフトバンクがここまでの巨大企業に成長した背景には、どのようなものがあるのでしょうか。本記事では、ソフトバンクの大型M&A戦略と狙い、過去の成功・失敗事例を振り返ります。
2. 主なソフトバンクの大型M&A戦略と狙い
ソフトバンクが行った大型M&Aのなかで、特に話題に上がることが多いのは2016年のアーム買収です。
アーム買収に要した金額は310億ドル(約3兆3000億円)で、日本企業における過去最大の買収案件となったことから、業界を賑わせる一大ニュースとなりました。
アームは、イギリスの半導体設計会社です。会社自体の知名度はあまりなかったものの、ソフトバンクは、長期的な投資により会社や事業の中長期における成長が見込まれるとしてアーム買収へと至りました。
ソフトバンクは、アーム買収以外にも多数の大型M&Aを繰り返していますが、概ねの戦略と狙いはソフトバンクグループの経営資源を投入することでの成長にあります。
近年は、投資会社としての側面が強くなっており、幅広い事業を手掛けるようになってきています。
3. ソフトバンクが大型M&Aを繰り返す理由
ソフトバンクは大型M&Aを繰り返していますが、どのような理由があるのでしょうか。この章では、孫正義氏の考え方・ビジョンやソフトバンクグループのM&A体制について解説します。
孫正義氏の考え方・ビジョン
孫正義氏はソフトバンクの創業者であり、会長兼社長です。ソフトバンクを巨大企業に育て上げた張本人であり、数多くのM&Aを実行に移してきました。
孫正義氏のM&A哲学に「同志的結合」というものがあり、「同じ志を持つ者同士が一緒になることで互いの強みを最大限に発揮することができる」としています。
ほかの会社を取り込むのではなく共に成長するという考え方が、M&Aひいては後の企業成長を成功に導いていると考えられます。
現に孫正義氏は、一度たりとも攻撃的なM&Aを仕掛けたことはありません。過去のM&A事例も全てM&A先との同意を得た上で行われています。
ソフトバンクグループのM&A体制
ソフトバンクグループのM&Aは、孫正義氏の唱える同志的結合そのものです。同志的結合に同意する同士が集まることで巨大なソフトバンクグループが形成されています。
これら大型M&Aを実現しているソフトバンクグループは、強固なM&A体制を整えていることでも知られており、M&Aのプロフェッショナル集団が在籍していて、グローバル規模のM&Aについても柔軟な対応を可能としています。
通常の企業は、外部のM&Aの専門家に依頼することが一般的ですが、ソフトバンクグループには単独でM&Aを実行することができるだけの体制が整っています。
ソフトバンクグループを支える資金調達方法
ソフトバンクグループの資金調達方法には、ハイブリッド社債の発行や保有株式の一部売却などがみられます。数千億~兆単位の型破りな資金調達は、業界を賑わせる一大イベントにもなっています。
銀行からの融資で資金調達することもありますが、その際も保有するソフトバンクや中国アリババの株式を担保にするなどして、数千億円の融資を受けています。
調達された資金の使いみちはさまざまですが、M&A資金や一般的な事業資金、手元資金の拡充など、ソフトバンクグループを支える資金源となっています。
4. ソフトバンクの大型M&Aの成功/失敗事例
この章では、ソフトバンクの大型M&A事例を紹介します。なかには失敗に終わった事例もありますが、いずれのM&A事例でも孫正義氏の戦略と狙いが垣間見えます。
【ソフトバンクの大型M&Aの成功・失敗事例】
- 【成功】中国アリババ買収
- 【成功】ホークス球団買収
- 【成功】ボーダフォン日本法人買収
- 【成功】ヤフー出資
- 【失敗】スプリント買収
- 【失敗】ウィーワーク出資
1.【成功】中国アリババ買収
2000年、ソフトバンクは中国アリババに対して、2000万ドル(約20億円)を出資しています。
ソフトバンクの大型M&Aの歴史でみると小規模になっていますが、アリババ買収は孫正義氏の最大の成功事例ともいわれています。
戦略と狙い
中国アリババ買収のM&A戦略と狙いは、インターネット関連企業の成長を見越したものです。当時、ソフトバンクは今後の市場拡大が見込まれる中国に目を付けており、中国の投資先企業を探していました。
孫正義氏は2000年に中国に直接赴き、若いインターネット企業の社長と面会を果たしています。
その際、中国アリババのジャック・マー(CEO)とのわずか10分間の面会で、20億円の出資を決断したといいます。
結果
中国アリババ買収のM&Aは大成功に終わり、2015年に中国アリババが米ニューヨーク証券取引所に上場したことで、時価総額は2300億ドル(約25兆円)に成長しています。
当時のソフトバンクの出資比率は32.59%であったため、時価評価は約11兆6000億円となり、約8兆円の含み益を生み出す結果になりました。
アリババ株式は、現在のソフトバンクの時価総額の大半を占めています。資金調達の際もアリババの株式を担保にするなど、ソフトバンクのM&A戦略や事業展開の根幹を支える存在となっています。
2.【成功】ホークス球団買収
2005年、ソフトバンクはプロ野球の福岡ダイエーホークスを200億円で買収しています。内訳は球団50億円、入場券やグッズ販売権利150億円となっています。
戦略と狙い
ホークス球団買収のM&A戦略と狙いは、ソフトバンクの認知度向上です。また、ソフトバンク創業地の福岡であることも、買収にこだわった要因としています。
球団運営は年間数十億円の赤字が出るともいわれており、当時のソフトバンクの取締役会では買収に反対する意見が圧倒的だったといいます。
反対意見が多いなか、孫正義氏が強引に踏み切った理由は、ソフトバンクの認知度向上による赤字補てんです。赤字以上に元がとれるとして、強引に押し切る形でホークス買収へと至りました。
結果
孫正義氏は、ホークス球団買収について大成功事例として振り返っています。ホークス球団買収後は福岡を中心にシェアを拡大しており、ソフトバンクの認知度向上による恩恵は年間400~500億円とも語っています。
「ソフトバンクのマーケットシェア向上」や「球団運営の黒字化」を実現し、球団運営事情を大きく塗り替える結果となりました。
また、選手の待遇が大幅に改善されたことも有名です。現役選手の練習環境の大幅改善や、引退した選手のセカンドキャリアを支援する体制の充実など、既存の球団運営とは一線を画した運営体制が話題となっています。
3.【成功】ボーダフォン日本法人買収
2006年、ソフトバンクは世界最大手の携帯電話事業者Vodafone Group(イギリス)のボーダフォン日本法人を買収しています。97.68%の株式を89億ポンド(約1兆7500億円)で取得しています。
戦略と狙い
ボーダフォン日本法人買収のM&A戦略と狙いは、時間を金で買うというものです。従来より携帯事業への新規参入を検討していたソフトバンクは、素早く事業展開するためにボーダフォン日本法人の買収へと至りました。
また、携帯事業の新規参入において、端末供給に不安があることも大きく影響しています。新規参入はユーザーの絶対数が少ないため、端末を作ってもらうことが難しいことが問題とされています。
ソフトバンクはボーダフォン買収により、スタートからいきなり1500万のユーザーを獲得しています。一定以上の規模を持つことで、各種端末メーカーとの交渉も対等に行えるようになりました。
結果
ボーダフォン日本法人買収のM&A結果は大成功であり、以降は順調に事業拡大を図り、現在は国内携帯事業者は、NTTドコモ・KDDIグループ・ソフトバンクグループの三すくみになっています。
携帯事業はソフトバンクにとって中核事業になっており、「ボーダフォン」から「ソフトバンクモバイル」、さらに「ソフトバンク」と変革し、現在の携帯事業へと落ち着きました。
4.【成功】ヤフー出資
1996年、ソフトバンクは米ヤフーとの合弁でヤフー株式会社を設立しました。同年4月には国内初のポータルサイト「Yahoo!JAPAN」がサービス開始しています。
戦略と狙い
ヤフー出資のM&A戦略と狙いは、インターネット事業の成長を見越した投資です。今後の発展が期待されるインターネット事業に積極的に出資を行うことで、国内の同事業の普及拡大に貢献しようとする狙いがあります。
ソフトバンクは、日本のヤフー設立以前から米ヤフーへの出資を繰り返し行っています。総額は100億円を超えるともいわれており、当時のヤフーへの期待の大きさが伺える規模です。
結果
ヤフー出資のM&A結果は大成功に終わり、ヤフージャパンは順調に事業規模を拡大させ、総額100億円の出資に対して見返りは1兆円を超える含み益になるほどに成長しました。
また、長い間ソフトバンクとヤフーはあくまで協力関係にありましたが、2019年にソフトバンクがヤフーの連結子会社化を果たしています。
両社は顧客共有などのサービス連携を強めることで事業を成長させてきましたが、さらなる連携を深めることを目的として、連結子会社化に至りました。
5.【失敗】スプリント買収
2013年、ソフトバンクは、米携帯電話業界3位(当時)のSprint Nextel(スプリント)を買収しています。70%の株式を約201億ドル(1兆5709億円)で取得しています。
戦略と狙い
スプリント買収のM&A戦略と狙いは、アメリカの携帯電話市場進出です。アメリカ国内で大きなシェアを持つスプリントは大きなブランド力とノウハウを有しており、ソフトバンクの経営資源を投入することで大きく成長することが期待されていました。
また、日本国内携帯事業の競合であるNTTドコモやKDDIグループとのユーザー数も引き合いに出しています。
スプリント買収後のユーザー数は日米合わせて9600万人を超えることとなり、日本3位から世界3位になることを強調しています。
結果
スプリント買収のM&A結果は、近年になって失敗の兆候がみえてきています。大きな成長が期待されていたスプリントですが、買収後は業績が伸び悩んでいる状態です。
買収当時は、米携帯電話業界4位だったTモバイルUSに3位を奪われて4位に陥落するなど、厳しい状況になっています。
ソフトバンクグループの高額の有利子負債を抱えていることでも知られていますが、2017年には有利子負債15兆8049億円のうち、4兆1364億円はスプリントが占めるなど、足を引っ張る存在となってしまいました。
6.【失敗】ウィーワーク出資
2017年、ソフトバンクはシェアオフィス事業を手掛けるウィーワーク(アメリカ)に対して約1兆円の出資を行っています。さらに2019年に約1兆円の追加出資を行い、合計2兆円の出資となりました。
戦略と狙い
ウィーワーク出資のM&A戦略と狙いは、アメリカで注目を集めるシェアオフィス事業の成長です。
グローバル大企業が続々と顧客となっている背景もあり、安定した成長が見込めると期待されていました。
孫正義氏とウィーワークの出会いは、インドのモディ首相が主催したスタートアップと投資家を引き合わせる会合です。
同会合でウィーワークのニューマンCEOとの意気投合したことにより、ウィーワークへの出資を決断しています。
結果
ウィーワークは2019年に米ナスダック上場を予定していましたが、2018年度の損失額2000億円、2019年上半期純損失計上約980億円であったことが明らかにあり、当時5兆円だった時価総額は半分以下の2兆円に暴落しています。
上場は取りやめとなり、資金調達が困難となったウィーワークは一転し、破綻の危機に直面することになります。
ソフトバンクの1兆円の追加出資により急場は凌げましたが、このままウィーワークが再生できない場合、ソフトバンクに与えるダメージも計り知れないものとなりそうです。
5. まとめ
ソフトバンクの大型M&Aの歴史は、アーム買収やアリババ買収など、とにかく規模が大きいことで驚かされるものばかりです。
なかには失敗に終わりそうなM&A事例もありますが、失敗経験を活用することで新たなM&Aに踏み出そうとする前向きな姿勢も伺えます。
今後も、ソフトバンクは日本のビジネスとM&A業界を牽引していく企業となりそうです。
【ソフトバンクの大型M&Aのまとめ】
- ソフトバンクは大型M&Aを積極的に実行している
- ソフトバンクの大型M&Aは成功事例と失敗事例がある
- 戦略と狙いはソフトバンクグループの経営資源を投入することでの成長
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