2025年09月08日公開
データ入力業界のM&A動向!売却・買収事例3選とメリットを解説!【2025年最新】
データ入力の仕事は許認可や資格が必要なく、パソコンとインターネットさえあれば参入しやすいことから、現在過当競争状況にあり、M&Aでの生き残りを図る動きがみられます。この記事では、データ入力業界でのM&Aについて解説します。
目次
1. データ入力業界の概要と動向
企業のDX化が推進されている現在、今まで紙で扱ってきた書類のデータ化が急がれています。
ペーパーレス化の流れもあり、これから新規で作成する書類や伝票のデジタル化だけでなく、社内に紙で保存している書類のデータ化の必要性を急いでいる会社も増加しているようです。
そのような中で、注目を集めているのがデータ入力を代行するデータ入力会社です。データ入力業界でもM&Aが行われているようですが、実際にどのようなメリットや事例があるのでしょうか。この記事では、データ入力業界でのM&Aについて詳しくみていきましょう。
データ入力業界とは
データ入力業界とは、企業からの依頼を受けて、パソコンへのデータ入力を代行する業界のことです。伝票、申込書、アンケート、原稿、カタログなどの紙の書類をパソコンに入力する作業を代行して行います。
データ入力の種類としては主に次のようなものがあります。
- 文字入力
- レイアウト作成・校正
- 設計図のCADデータ化
- 図・イラストなどのデータ化
- テープやビデオのデータ化
- 音声ファイルのデータ化
データ入力会社は、中小企業がデータ入力を専門で行っている場合と、中堅から大手のIT企業が、サービスの一環としてデータ入力サービスも提供している場合があります。
データ入力業界への参入は、許認可やオペレーターの資格もいりません。インターネット環境とパソコンを用意するだけで始めることができるので、参入障壁がとても低く、競合が多く厳しい競争にさらされている会社も少なくないようです。
さらに、他社との差別化も難しいことから、価格競争に陥りやすく安定した売上の確保が課題になっている会社も多いようです。
また、近年、人工知能(AI)の発達により、人力でのデータ入力作業の必要性も低下する可能性もあります。
現在のところ、AIでの文字の読み取りはエラー率が0.1%から1%程度で、プロのデータ入力オペレーターによる手入力のエラー率は0.0001%から0.001%と人力での手入力のほうが圧倒的に正確で信頼できます。
今後、技術の発達により、AI入力の正確性が手入力の正確性に追いつき上回ることがあれば、データ入力業界のあり方は大きく変わってくるでしょう。しかし、現在のところは、AIによる自動入力はまだまだ人力による手入力をおびやかすほどには至っていません。
データ入力業界の市場規模と動向
データ入力の代行業務は、IT系アウトソーシングの一つの分野に分類されます。データ入力業界のみの市場規模のデータがないので、IT系アウトソーシングの市場規模でみていきましょう。
矢野経済研究所の分析によると、IT系アウトソーシングの市場規模は2021年度が2兆6,888億円、2022年度が2兆7,829億円、2023年度が2兆9,360億円と年々増加していて、2024年度には3兆円を超えると予測されています。
多くの民間企業や官公庁での人手不足を背景として、データ入力を含むIT系人材の確保が課題となる中で、外部委託できる分野を委託する動きが加速化しており、市場規模は年々拡大している模様です。
一方、データ入力の分野だけに限ってみると、今後も需要の増加は見込まれますが、参入障壁が低いことから競合が多く、安定した売上は難しいといわれています。
また、英数字のみのデータ入力など言葉の壁が必要ない仕事は人件費の安い海外へ発注する動きもみられ、データ入力業務だけでの今後の成長は難しいという見方もあるようです。
参考:矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2023年)」
2. データ入力業界のM&A動向
データ入力業界では、事業規模の拡大や人材確保を目的としたM&Aが活発化しています。
データ入力会社の顧客には、顧客情報の入力を依頼する大手企業や、住民情報の入力を依頼する官公庁などが多く、高いセキュリティと正確性が求められる仕事です。
大手企業や官公庁が求めるセキュリティレベルは年々高まっており、対応できるデータ入力会社が絞られつつある現状があります。
そのような中で、すでに盤石な顧客基盤を持つデータ入力会社をM&Aで買収して事業規模を拡大させたり、高い正確性とセキュリティ意識を持つオペレーターを有するデータ入力会社を傘下に入れようとする動きがあるようです。
3. データ入力会社をM&Aで売却するメリット
データ入力会社をM&Aで売却するメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。
後継者不在、事業承継問題の解決
データ入力会社で早期に設立された会社は1980年代から1990年代に創業したところが多く、創業者が高齢化して代替わりの時期に入っている会社も出てきました。
しかし、データ入力会社に限らず、日本の多くの会社で経営者の後継者が社内や身内にいない後継者問題が深刻化しています。
経営者の後を継ぐ人がいないと、現在の経営者が経営を続けられなくなってしまったときに、事業が好調でも廃業するしかなくなってしまう可能性があります。
近年、業界を問わず後継者問題を解決できずに廃業する会社が増加していますが、M&Aはその一つの解決策です。
社内や身内ではなく、他社に事業承継してもらうことで、後継者不在で事業承継問題を抱えている会社の存続を図ることが可能になります。
従業員の雇用確保
後継者問題や事業の悪化などを理由に会社を廃業することになると、長年会社を支え続けてくれた従業員は全員解雇するしかありません。
会社が雇用保険を掛けていれば、廃業による解雇なら会社都合の失業として失業保険がすぐに給付開始されます。しかし、失業保険はいつまで給付されるものではないので、再就職先を探す必要があるでしょう。
人によってはすぐに再就職先が見つかる人もいるでしょうが、なかなか次の仕事が見つからなくて困る人も出てくるかもしれません。
もしも、M&Aで会社を売却できれば、多くの場合、従業員の雇用も買収側が引き取ってくれるので、従業員の生活を守る事ができます。
会社を廃業したら路頭に迷わせてしまったかもしれない従業員の雇用を、M&Aでの会社売却なら継続することができるのです。
売却による収益獲得
M&Aで会社を売却できれば、経営者は多額の売却益を獲得できます。
もしも、M&Aによる会社売却ではなく廃業を選んだ場合には、解雇する従業員への退職金の支払いや、設備や建物の処分費用などのコストがかかってしまうでしょう。
しかし、M&Aでの会社売却なら従業員の雇用も会社の設備はすべて買収側が引き取ってくるので、このようなコストを売却側の経営者が負う必要は一切ありません。
その上、多額の売却益を手にできます。売却金から税金とM&Aの手数料を支払った売却益は経営者が自由に使えます。引退後の生活費や、新規事業の資金に充てることも可能です。
個人保証・債務の解消
中小企業の場合には、経営者が会社の連帯保証人となって、自宅を担保に設定していることがよくあります。
もしも、廃業時に債務が残ってしまうと、自宅の差し押さえや、引退後も返済が続く可能性があり、余裕のある生活を送ることが難しくなってしまう人もいるようです。
しかし、M&Aで会社を売却することができれば、経営者の個人保証を外した上で、会社の債務も買収側が引き取ってくれるので、経営者は個人保証や債務の負担から解放されます。
多額の売却益を手に入れて、余裕のあるリタイア生活を送ることができるでしょう。
技術、ノウハウの継承
データ入力会社では、会社の機密情報である顧客情報や、官公庁の年金番号や住民情報などの個人情報を扱うことが多く、高いセキュリティレベルが求められます。また、データを入力する際の正確性や、納期を厳守する迅速性も必要です。
実績のあるデータ入力会社には、多くの入力オペレーターを抱えていながら、情報流出を起こさないセキュリティシステムや、入力オペレーターの技能にかかわらず、正確性や迅速性を一定レベルに保つための多くの工夫がされています。
もしも、データ入力会社を廃業してしまったら、これらのセキュリティ技術や正確性などを一定レベルに保つためのノウハウは失われてしまうでしょう。
M&Aによって会社を存続させることができれば、大手企業や官公庁から高い信頼を寄せられているデータ入力会社の、このような技術やノウハウを後世に継承することも可能です。
4. データ入力会社のM&A・買収・売却事例3選
データ入力業界でのM&Aの事例にはどのようなものがあるのか、3つのM&Aによる会社売却、買収の事例を紹介します。
メディアドゥホールディングスが徳島データサービスをテック情報に譲渡した事例
2019年10月24日に、株式会社メディアドゥホールディングスから、株式会社徳島データサービスの全株式をテック情報株式会社へ譲渡するM&Aに合意したことが発表されました。
メディアドゥホールディングスは、東京都千代田区に本社のある電子書籍の取次大手で、著作物のデジタル流通を担っています。
徳島データサービスは、テック情報からデータ入力部門を分離して設立された会社で、データ入力で特に重要とされる情報セキュリティ対策、正確性、迅速性の3つを保証するプロ集団として長年実績を積み重ねてきました。
2018年12月にメディアドゥホールディングスによって子会社化されましたが、同じ徳島県に拠点のあるテック情報社の子会社として事業を展開するほうが、徳島データサービスの経営効率化などのメリットがあると判断してのM&Aだとのことです。
参考:子会社株式の譲渡に関するお知ら
fonfunがe-エントリーを譲渡した事例
平成30(2018)年2月13日に、株式会社fonfunが、同社の連結子会社である株式会社e-エントリーの全株式を清水昌也氏に譲渡することを発表しました。
fonfunは、東京都渋谷区にある1997年に創業したIT会社です。iモード端末から自宅でPCメールを閲覧できるリモートメールを他社に先駆けて開発、提供した実績があります。その他にも携帯電話向けのモバイルコンテンツも提供しています。
e-エントリーは、紙の書類をデータ化するデータエントリー事業と、企業向けシステムを構築、運用するシステムソリューション事業を営んでいる会社で、平成26年にM&Aでfonfunの子会社になりました。
fonfun傘下でe-エントリーは一定の成果を上げていましたが、清水氏からM&Aの打診がありました。
fonfunとしては主力事業であるリモートメール事業とSMS事業の関連事業に集中することが企業価値向上につながると判断して、株式譲渡により売却することになったとのことです。
参考:データエントリー事業子会社の株式の譲渡に関するお知らせ
リスモン・マッスル・データが日本アウトソースを子会社化した事例
平成23(2011)年1月7日に、リスクモンスター株式会社から、同社の連結子会社であるリスモン・マッスル・データ株式会社が、日本アウトソース株式会社の全株式を取得しての子会社化(リスクモンスターにとっては孫会社化)を決議したことが発表されました。
リスクモンスターは、企業の与信管理業務のアウトソーシング事業を行う会社として2005年に設立された会社です。現在は、与信管理業務の他にビジネスポータルサイト運営、教育関連事業などを展開しています。
その子会社のリスモン・マッスル・データは、アナログデータのデータ化サービスやマーケティング業務などを行ってる会社です。
日本アウトソースは、プライバシーマーク認証基準に準拠した厳重なセキュリティ管理の下で、データエントリーサービスから封入、発送までのバックオフィス業務のアウトソーシングサービスを提供しています。
このM&Aにより、リスクモンスターとしては日本アウトソースの高い精度を誇るデータ入力ノウハウと、リスクモンスターが蓄積してきた企業データを組み合わせた高品質で付加価値の高いサービスを提供して、グループ全体の成長を一層加速できるとしています。
参考:孫会社の異動(株式取得)に関するお知らせ
5. データ入力会社のM&Aにおける成功のポイント
日本では、M&Aによる会社売却を希望しても、4割以下の成功率しかないといわれています。会社を売却したくても、6割以上の会社は廃業を選択するしかないのが現実です。
データ入力会社をM&Aしたいと考えたときに、確実に成功させるためには、いくつか成功のためのポイントがあります。M&Aを成功させるためのポイントについてみていきましょう。
M&Aの専門家に相談をする
データ入力会社をM&Aで売却したいと考え始めたら、まずはM&Aの専門家に相談しましょう。
近年は、M&A情報サイトなども充実してきたので、自分で売却先を探すこともできそうです。しかし、M&Aの経験がない人が専門家に頼らずに自分で進めても、ほとんどの場合どこかの段階でつまずいてしまいます。
M&Aを成功させるためには、相性や条件などが合う最適な相手探しや、法律や財務についての専門的な知識が必要な手続きをスムーズに進めることが大切です。
M&Aの専門家は、多くのM&Aの仲介やアドバイスの経験があり、最も適切な相手探しや、高い専門性から手続きなどのサポートを親身になってしてくれます。
会社の状況を聞いた上で、M&Aをするべきかどうか、といったところからの相談にも乗ってくれるので、会社の将来に不安を感じるのであれば、まずはM&Aの専門家への相談から始めましょう。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。
M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
情報漏洩に気をつける
M&Aが成功するかどうかは、M&Aを公表できる段階に入るまでに、情報漏洩が起きないかどうかにかかっているといってもいいくらい、厳密な情報管理が求められます。
M&Aでの情報漏洩の危険性は2つあります。1つ目は、買収側に渡した売却側の機密情報が漏洩することです。2つ目は、売却側に会社売却の噂が流れてしまうことです。
1つ目の機密情報の漏洩は、買収側が買収の是非の判断や買収額を査定するために、売却側に提出を求める財務やノウハウなどの機密情報が、M&A以外の目的に利用されてしまうことです。
こちらは、罰則付きの秘密保持契約を機密情報の開示前に締結することで予防します。
2つ目の会社売却の噂が流れてしまうのは、経営陣のM&Aについての会話を従業員に聞かれてしまうなどの、不用意なミスから起きてしまうことが多いようです。
会社売却の噂が流れると、不安になった従業員の退職や取引先からの取引停止を招くおそれがあるので、M&Aについての会話や資料の置き場所などはよく気をつけましょう。
目的を明確にする
M&Aでは、目的を明確化することがとても大切です。目的を明確化しないでM&Aを進めてしまうと、会社を売買することだけが目的化してしまい、お互いにシナジー効果を生み出して業績をアップさせることができない相手を選んでしまう可能性が高まります。
そのようなことにならないようにするためにも、最初の目的の明確化はとても大切です。
売却側としては、会社を売却する目的によって選ぶべきM&Aのスキームが変わってきます。後継者問題などが理由で、経営者が一線から退いて会社を丸ごと譲渡したい場合には株式譲渡を選ぶことが一般的です。
不採算事業など、複数ある事業の一部だけを売却したいときには事業譲渡を選びます。
スキームの選び方を間違えると、税額やM&A後の会社のあり方が大きく変わってしまうので、最初の目的の明確化はM&Aの専門家の力を借りて、確実に行っておきましょう。
相乗効果が得られる相手先選定
M&Aで会社を売買するときには、相乗効果を得られる相手かどうかをしっかりと見極めることが大切です。
相乗効果とは、M&Aで2つの会社が合併したことにより、お互いの業績が足し算だけでなく掛け算で3倍にも4倍にも膨れ上がっていくような効果を得られるということを意味します。
相乗効果を得られない相手を選んでしまうと、売却側の会社が買収側の会社のもともとの事業の足を引っ張ることにもなりかねません。M&Aでの他社買収が業績悪化のきっかけになってしまうこともままあるのが現実です。
そうなると、買収側に引き取ってもらった従業員も肩身の狭い思いをすることになり、思う存分自分の能力を発揮して働くことは難しくなるでしょう。
売却側の経営者は、従業員が伸び伸びと働き続けられる環境を作るためにも、現在の事業と相乗効果を得られる相手を選ぶようにしてください。
最適なタイミングを逃さない
M&Aでは、想定していた金額よりも安い金額でしか売却できなかった、会社を売却したかったのに売却できずに廃業するしかなかった、といった失敗談もたくさんあります。
M&Aでの会社売却に失敗する大きな原因の一つが、短期間で売却しようとしたことです。
特に、後継者問題を抱えている会社が、経営者の高齢化による健康問題が生じてから慌てて売却しようとすると、安く買い叩かれてしまったり、時間切れで売却できなかったりする事が多く起こります。
後継者問題などで、将来的に会社売却を検討しなければいけない状況であれば、M&Aの準備は早めに始めましょう。
できれば、経営者がまだ元気で判断力がしっかりとしているうちから準備を始めて、最適なタイミングで売却できれば、理想的な会社売却といえるでしょう。
6. データ入力業界のM&A・事業譲渡まとめ
データ入力会社では、厳しい過当競争への生き残りや、後継者問題などで、会社の将来的な継続が難しいと考えている会社も出てきているようです。
しかし、もしも廃業してしまうと、従業員の解雇や債務の問題などがあるので、M&Aで売却できれば会社売却の方がメリットが大きいでしょう。
会社の将来に不安を感じている経営者の方は、ぜひ一度、M&Aの専門家に、会社の将来や会社売却の可能性について相談してみることをおすすめします。多くの会社の事業承継のお手伝いをしてきた専門家なら、必ず最適なアドバイスをしてくれるでしょう。
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