バイオ業界のM&A動向!売却・買収事例5選とメリットを解説!【2025年最新】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

バイオ業界では、新しい治療薬や新技術を獲得したい大手医薬品メーカーがM&Aで成果を上げている中小やベンチャーのバイオ会社を買収する動きがみられます。この記事では、バイオ業界で実施されたM&Aの事例やM&Aのメリットについて解説します。

目次

  1. バイオ業界の概要と動向
  2. バイオ業界のM&A動向
  3. バイオ事業のM&Aにおけるメリット
  4. バイオ業界のM&Aにおける買収・売却事例5選
  5. バイオ事業のM&Aにおける成功のポイント
  6. バイオ業界のM&A・事業売却まとめ
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1. バイオ業界の概要と動向

バイオ業界では、近年、多くの研究成果が上がっており、近接する業界から熱い視線が注がれています。バイオ業界では、ベンチャー企業が最新の研究を行っていることが多く、大手の製薬会社などからのM&Aによる事業譲渡や会社の買収が活発です。

この記事では、バイオ業界の近年の動向と、M&Aの状況について詳しくみていきましょう。

バイオ業界とは

バイオ業界とは、バイオテクノロジー(生物工学)での研究を基にした産業のことです。具体的には、バイオ業界では発酵、組織培養、細胞融合、遺伝子組換えなどの生物学での研究成果を基礎とした技術を活用した製品や医薬品などの開発、製造を行っています

バイオテクノロジーの中でも、発酵分野は日本では味噌や醤油、酒などの発酵食品の製造でその技術が伝統的に使われてきました。発酵の科学的な仕組みが解明されたのは18世紀に入ってからですが、日本では伝統的なバイオ技術として海外よりも優位性が高いといわれています。

一方、新しいバイオ技術である細胞融合や遺伝子のゲノム編集技術などにおいては、AIなどの最新のIT技術との組み合わせなど、新技術が次々と登場しており、国際的な競争が激化しています。

バイオ業界の市場規模と動向

NIKKEI COMPASSによると、バイオ業界の中でも今後の成長が大きく期待されるバイオ創薬の分野での2022年の世界での総売上は63兆円規模でした。

経済産業省生物化学産業課の資料によると、生物から物質を作り出すバイオエコノミーの世界市場は、2030年から2040年の間に200兆円から400兆円の規模に達すると予測されています。

現在、バイオ業界を主に引っ張っているのは医療とヘルスケア分野ですが、今後は素材やエネルギー、食品などの分野でのバイオ技術の活用が大いに期待されています。

世界的に、バイオ業界での技術革新が起こり、バイオ産業が活発化したのは20世紀後半でした。日本でも、国を挙げてバイオ産業振興策を取り多くのベンチャー企業が誕生しました。

しかし、2014年の医薬品医療機器法が改正されるまで、バイオ業界を牽引してきたバイオ創薬の分野で、新薬や新しい治療法に対する国の承認に7年ほどかかっていた状況から、世界から見ると出遅れ感があります。

しかし、法律改正により承認されるまでの期間が2年から3年程度と大幅に短縮されて、国の支援体制も充実してきたことで、現在は国内のバイオ関連会社が大きく発展する段階に入っています。

参考:NIKKEI COMPASS「バイオ創薬」 経済産業省生物化学産業課「バイオ政策の進展と今後の課題について

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2. バイオ業界のM&A動向

現在、バイオ業界での最新の技術研究は、主に大学の研究室発などのベンチャー企業で実施されています。大学発ベンチャーなどで、今後の創薬などに役立つ成果が出た段階で、大手製薬会社などがM&Aで買収するという動きが活発です。

日本では少子化から今後、多くの産業で市場が縮小していくと予想されていますが、バイオ業界は世界的に大きな成長を期待できる分野であり、大手企業では国内外での新しい研究成果を求めて買収先を探しています。

また、ベンチャー企業としても、長い期間をかけて発見した成果を、さらに商品化するまでには膨大なコストがかかるので、大手企業に買収されることで、今後のコストの調達などがしやすくなるというメリットがあるようです。

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3. バイオ事業のM&Aにおけるメリット

バイオ事業のM&Aではどのようなメリットが有るのか、売却側と買収側のそれぞれみていきましょう。

売却側が得られるメリット

事業や会社を譲渡する売却側のメリットとしては次のような点が考えられます。

  • 後継者問題の解決
  • 従業員の雇用維持
  • 売却益の獲得
  • 事業拡大のチャンスを広げる

現在、バイオ業界だけでなく多くの分野で、後継者問題による会社の将来的な存続が危機的な状況にある会社が増えています。

後継者問題などで会社を廃業すれば、従業員は失業してしまいますが、M&Aで会社売却できれば会社を存続させられます。従業員の雇用も買収側が引き取って維持することが可能です。

廃業すれば、従業員への退職金の支払いや設備の処分費用などのコストがかかりますが、M&Aでの売却なら多額の売却益が手に入ります。従業員も設備も買収側が引き取ってくれるので、廃業のコストもかかりません。

バイオ業界では大学の研究室発のベンチャーが多く、研究成果を実用化させる段階での資金調達や臨床試験の態勢を整えることが難しい場合も多くあります。M&Aで大手の製薬会社などに事業や会社を売却することで、事業拡大のチャンスを広げる可能性が広がるでしょう。

買収側が得られるメリット

M&Aでバイオ事業を買収する側のメリットは次のような点が考えられます。

  • 事業の多角化・新規事業への参入
  • 人材獲得
  • 技術力向上
  • シナジー効果の創出

バイオ事業では、大学や公的な研究機関での新しい発見が次々と起こり、今後の実用化が期待される分野がたくさんあります。

買収側としては、現在展開している事業とのシナジー効果を見込める分野の研究成果をM&Aで買収することで、自社での研究開発の手間を掛けることなく、事業の多角化や新事業への展開を図ることができるでしょう。

また、バイオ分野には優秀な人材が多く、バイオ会社の買収により、バイオ関連の高い技術力を持った優秀な人材を自社に取り込むことも可能です。

【関連】製薬会社・医薬品製造業界の買収・M&Aの現状は?動向や成功事例も紹介!

4. バイオ業界のM&Aにおける買収・売却事例5選

バイオ業界で実際に行われたM&Aの事例を紹介します。

アステラス製薬がバイオ医薬品開発の米国企業をM&Aした事例

2023年11月16日にアステラス製薬株式会社が、アメリカのPropella Therapeutics,Incの株式を取得して子会社化することに合意して、契約を締結したことを発表しました。

アステラス製薬は日本で売上2位の大手製薬5社の1社で、2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して発足しました。

Propella Therapeuticsは、アメリカのノースカロライナ州にある未上場のバイオ医薬品会社で、創薬化学とリンパ系への送達を組み合わせた独自のプラットフォームを通じて新規がん治療薬の創出を目指しています。

Propella Therapeuticsでは、前立腺がんの治療薬として期待される次世代アンドロゲン合成阻害剤PRL-02を開発中で、このM&Aによりアステラス製薬はPRL-02を獲得できます。

今後、このM&AによりPRL-02の開発を加速して、前立腺がん患者への新しい価値を届けられるようになるとのことです。

参考:米国Propella Therapeutics買収に関する契約締結 - 開発中の前立腺がん治療プログラムPRL-02を獲得 - 

味の素が米国フォージ・バイオロジックスをM&Aした事例

2023年11月13日に、味の素株式会社が、アメリカのForge Biologics Holdings社の株式全持分を取得して完全子会社化することを決議し、合併契約を締結したことを発表しました。

味の素は日本を代表する食品会社の1つで、グルタミン酸ナトリウムを主成分とするうま味調味料の製造販売と、うま味調味料の開発から派生したアミノサイエンス事業をスポーツやヘルスケア領域まで展開しています。

Forge Biologics Holdings社は、バイオテック企業の初期臨床向けのGMP生産などを行っている会社で、遺伝子治療薬製造バリュージェーン上の2つの要所であるAAV製造とプラスミドDNA*3の製造能力のある遺伝子治療薬CDMOです。

味の素では、ヘルスケア領域で遺伝子治療薬CDMOを目指しており、このM&Aで遺伝子治療薬製造能力を新たに獲得することができます。今後のヘルスケア領域の成長加速と高収益化を実現できるとのことです。


参考:米国Forge Biologics Holdings社の全持分取得(連結子会社化)に関するお知らせ

協和キリンが英国のバイオ医薬品企業をM&Aした事例

2023年10月5日に、協和キリン株式会社が、イギリスのバイオ医薬品会社Orchard Therapeutics plc社の全株式を取得して、子会社化する手続きを始めたことを発表しました。

協和キリンは、1937年に設立された「協和化学研究所」から始まった会社で、微生物発酵の研究から、酒造、食品添加物製造、化学品の製造販売などを経て、2007年にキリングループに入り、以降は医療用医薬品が主な事業となっています。

Orchard Therapeuticsは、遺伝子治療法開発を行うバイオ会社です。患者自身の造血幹細胞の遺伝子を改変して投与する治療法を開発しており、一度の投与で根本的に治療できる可能性があるとして注目されています。

協和キリンとしては、自社のバイオ医薬品に対する強みと、Orchard Therapeuticsの細胞遺伝子治療研究にシナジー効果があるとしていて、将来的にアンメットメディカルニーズを満たす医薬品の開発など、新しい価値の創出を目指すとのことです。

参考:英国のバイオ医薬品企業Orchard Therapeutics plc社株式取得 (子会社化)に向けた契約の締結に関するお知らせ

ジーエヌアイグループが米国企業からオーソバイオロジクスの受託製造事業をM&Aした事例

2023年9月19日に、株式会社ジーエヌアイグループ(以下、GNI)が、アメリカのElutia Inc.から、オーソバイオロジクス事業の一部を受け入れ、その受け皿とするための子会社をアメリカに設立することを決議したことを発表しました。

なお、このM&Aが成立する条件は、デューデリジェンスの成功です。

GNIは、東京都中央区にある創薬会社です。アメリカのGene Networks, Inc.の日本法人として2001年に設立されて、主に中国拠点での新薬開発から製造、販売まで行っています。

Elutiaは、2015年にカリフォルニア州に設立された会社で、医療機器と患者との適合性を向上させるためのバイオロジクス製品の開発と商品化を行っている会社です。

GNIグループには生体材料事業を行う子会社があり、Elutiaはその子会社の顧客の一つです。今回のM&Aにより、Elutiaのオーソバイオロジクス事業を傘下に納めることで、整体愛料事業の分野のさらなる発展と、既存の製品ラインとの強力な相乗効果が期待できるとのことです。

参考:事業譲受及び新会社設立に関するお知らせ

コスモ・バイオが協和ファーマケミカルとM&Aした事例

2023年8月21日に、コスモ・バイオ株式会社が、協和ファーマケミカル株式会社の研究用試薬の製造販売権を譲り受けるM&Aを発表しました。

コスモ・バイオは、バイオの基礎研究試薬販売事業を目的としたコスモ石油の子会社として1983年に設立されました。バイオ研究用試薬、研究用機器を扱っている商社です。

協和ファーマケミカルは、1946年に富士薬品工業社として設立された医薬品メーカーで、医薬原薬事業、原薬受託製造事業、香粧品事業を行っています。

共和ファーマケミカルで研究用試薬の製造販売を行っており、コスモ・バイオでは長年同社の研究用試薬を扱ってきました。

今回、協和ファーマケミカルが経営資源を集中させるために、研究用試薬の製造販売を終了することになりました。

同社の研究用試薬は国内外の研究者にとって重要な製品であるために、供給を継続するためにコスモ・バイオが同事業を譲り受けることを決定したとのことです。

参考:協和ファーマケミカル株式会社からの 研究⽤試薬製品の製造販売権の譲受に関するお知らせ 

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5. バイオ事業のM&Aにおける成功のポイント

バイオ事業のM&Aを成功させるためのポイントについてみておきましょう。

M&Aの専門家に相談する

バイオ事業やバイオ会社の売却を考え始めたら、最初にM&Aの専門家に相談しましょう。M&Aの専門家は、金融機関が扱わない中小企業のM&Aを専門的に扱っています。

M&Aには、最も相性のいい会社を見つけることや、法律や財務についての高度な知識が必要な手続きを進めることなど、M&Aのみ経験者には難しい点がたくさんあります。

M&Aの専門家の手を借りることで、M&Aが妥当なのかどうかといったところの相談から、相手探し、難しい手続きなどを、親身になってサポートしてもらえます。

まずは、専門家への相談からはじめましょう。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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相手先の選定を入念に行う

会社や事業を譲渡する売却側も、譲渡される買収側も、M&Aの相手選びは慎重に行いましょう。

M&Aは、クロージング後からが本当の勝負だともいわれています。売却側の会社が、買収側の会社の既存の事業にシナジー効果をもたらして、業績アップに貢献しないと、売却側の従業員は居心地が悪くなるでしょう。

買収側としても、多額の費用をかけて買収した会社がシナジー効果をもたらさなければ、既存の事業に対してのお荷物になってしまい、会社全体の業績にも悪い影響を及ぼす可能性があります。

そのような事態を避けるためにも、双方がM&Aの相手としてふさわしいかどうか、しっかりと事前の情報収集で見極めることが大切です。

情報が漏れないよう注意を払う

M&Aの成功は、M&Aの実施を公表できる段階に入るまでに情報漏洩が起きないかどうかにかかっているといってもいいくらい、厳重な情報管理が求められます。

特に、売却側で会社売却の噂が立ってしまうと、従業員や取引先の間に不安が広がり、離職や取引停止を招く恐れがあります。M&Aについて話しをするときには、従業員などに聞かれないように周囲の状況によく気をつけましょう。

買収側は、売却側から開示される機密資料の流出に気をつけましょう。買収側が機密情報を漏洩させたら、相互の信頼関係が崩れてしまいます。

秘密保持契約を締結して、M&A以外の目的で機密資料を使わないように注意しましょう。

M&Aのタイミングを逃さない

売却側は、M&Aのタイミングを逃さないことが大切です。M&Aでの会社売却を希望したのに、希望した金額よりも買い叩かれたり、売却できずに廃業するしかなかったりした例の多くが、短期間で売却しようとしたことが原因です。

特に、後継者問題を抱える会社が、経営者の高齢化による健康問題の悪化で慌てて会社を売却しようとしたときに、想定していたよりも売却金額が安くなってしまったり、時間切れで売却できなかったりしてしまいます。

後継者問題を抱えていて、将来的にM&Aでの会社売却が必要なら、経営者がまだ元気なときから数年をかけて準備を進めて、最もいい条件で売却できるタイミングを見計らって売却してしまうことが大切です。

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6. バイオ業界のM&A・事業売却まとめ

新しい研究成果が次々とM&Aで買収されているバイオ業界ですが、伝統的な発酵分野などの会社では、後継者問題が深刻化しているところも多いようです。

後継者問題や事業の悪化などで会社の将来が不安であるのなら、一度、M&Aの専門家にM&Aでの会社売却の可能性について相談してみることをおすすめします。

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