社会福祉法人のM&A動向!売却・買収事例2選とメリットを解説!【2025年最新】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

社会福祉法人でも、後継者問題などでM&Aを検討する場合がありますが、社会福祉法人のM&Aは一般企業のM&Aとは手続きなどが異なる点があるので注意が必要です。この記事では、社会福祉法人でのM&Aについてメリットや事例を解説します。

目次

  1. 社会福祉法人の概要と動向
  2. 社会福祉法人のM&A動向
  3. 社会福祉法人がM&Aを行うメリット
  4. 社会福祉法人のM&Aにおける売却・買収事例2選
  5. 社会福祉法人のM&Aにおける成功のポイント
  6. 社会福祉法人のM&A・事業売却まとめ
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1. 社会福祉法人の概要と動向

子供や母子、障害者、高齢者など、社会生活を送る上でハンディキャップのある人を支えるのが社会福祉で、社会福祉法人とは法律の定めに従って社会福祉事業を行う事業所のことです。

利潤を追い求める企業では対応が難しい社会的弱者をサポートするために社会福祉法人は世の中に欠かせないものです。しかし、近年は後継者問題や経営の悪化などにより、法人の将来が難しいと感じている経営者も少なくありません。

社会福祉法人でも一般的な企業と同じようにM&Aでの事業承継が可能です。この記事では、社会福祉法人のM&Aについて詳しくみていきましょう。

社会福祉法人とは

社会福祉法人とは、社会福祉事業を実施することを目的として設立された公益法人です。社会福祉法人は、社会福祉法によって定義されており、一般の会社などと比べると事業内容に制限があり、設立も通常の企業よりも高いハードルが設けられています。

社会福祉法で定められている社会福祉事業には、第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業があります。

第一種社会福祉事業とは、乳児院や児童養護施設、障害者施設、特別養護老人ホームなどが該当します。第二種社会福祉事業では、保育所や訪問介護、デイサービス、ショートステイなどが該当します。

社会福祉法人でも、収益事業を行うことはできますが、利益を追求することは認められていません。また、得られた利益の使い方も社会福祉法に沿った使い道だけです。

社会福祉法人には、社会福祉や地域福祉を守るという高い公益性や公共性が求められるために、原則非課税であり、多くの補助金が得られるというメリットもあります。

社会福祉法人におけるM&A

社会福祉法人でM&Aを行う目的は主に次の通りです。

  •  ニーズの変化に対応するため
  •  運営体制を見直すため
  •  現在の体制では対応が難しい課題が出てきたため

近年では、少子高齢化が進んだことにより、高齢者福祉へのニーズが高まっていることや、人口減少による人材不足への対応などが求められており、こうした社会の変化に対応するためのM&Aが、社会福祉法人では頻繁に実施されるようになっています。

社会福祉法人をM&Aする上での注意点は、スキームが限られる点です。一般的な企業でよく用いられるのは株式譲渡ですが、社会福祉法人では株式を発行していないので、株式譲渡を利用できません。

社会福祉法人のM&Aで利用できるスキームは、原則として事業譲渡と合併のみです。この点はよく理解しておくことが重要です。

社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン

2020年9月に、厚生労働省から「社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン」が発表されました。

今後ますます少子高齢化が進み、介護が必要な人の数が増加し、介護を担う若い人が減少する日本において、地域社会のニーズの変化に対応した社会福祉法人がさらに求められていきます。

このガイドラインでは、法人の事業を今後展開していくにあたり、社会福祉法人の合併や事業譲渡などの手続きや留意点などを整理しています

社会福祉法人のM&Aを検討している人は必読なので、必ず目を通しておくようにしましょう。

合併・事業譲渡等マニュアル

「社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン」が発表されたのと同じ日に、「合併・事業譲渡等マニュアル」も公表されました。

このマニュアルには、社会福祉法人をM&Aする時の手続きの流れや、法令で留意するべきポイントなどについてまとめています

一般的な企業のM&Aとは異なり、社会福祉法人のM&Aでは、社会福祉法に定められた手続きなどが必要なので、このマニュアルにはそのような点について詳しく書かれています。

社会福祉法人でM&Aに携わる人や、社会福祉法人を監督指導する行政の担当者などは、必ず目を通しておくべきでしょう。

社会福祉法人の市場規模と動向

社会福祉法人が行う業務の中で利用者が多い介護と保育の市場規模と動向をみていきましょう。

まず、介護業界の2021年から2022年にかけての業界規模は約1.1兆円でした。介護保険が利用された総費用を見てみると、2010年には約7.5兆円だったのが、2021年には約11兆円と、3割以上も増加しています。

今後も、高齢者が増加することを考えると、介護の市場規模は増加していくことが予想されるでしょう。

保育業界では、2022年から2023年にかけての業界規模が約1,000億円でした。少子化が大きな社会問題となっていますが、保育業界は成長率が8%と大きく伸びています。

その背景には、待機児童問題の解決があります。2016年には約2万6,000人いた待機児童数が、2023年には約2,600人と、10分の1にまで減少しました。共働き世帯が増えたことで、保育を利用する家庭は増加しているので、今後もしばらくは保育に対する高い需要は続きそうです。

参考:業界動向サーチ「介護業界の動向や現状、課題などを研究」「保育業界の動向や現状、ランキング等を解説

【関連】障害者福祉サービスのM&A・事業譲渡の現状は?手法や流れから注意点まで紹介!

2. 社会福祉法人のM&A動向

社会構造が大きく変化する中で、地域社会からの社会福祉法人に対するニーズは年々高まり続けています。そのために、介護施設や保育施設、障害者施設などが増加していますが、その一方で2019年にはこれらの施設の倒産件数も過去最高となりました。

倒産した理由は、事業計画が甘く、当初の想定通りに利用者を集めたり、施設で製造した商品を販売できなかったり、設備投資を課題にしてしまったりといったことが多いようです。

しかし、社会福祉法人には社会的弱者に対する福祉サービスを提供するという使命があることから、経営状態が危機的な社会福祉法人を再生する目的でのM&Aが見られます。

また、社会福祉法人に対するニーズが変化したり複雑化していることから、社会ニーズの変化に対応するためのサービスの多様化を図るためのM&Aも行われています。

【関連】グループホームの廃業/倒産が多い?理由は報酬改定?生き延びる方法とは

3. 社会福祉法人がM&Aを行うメリット

社会福祉法人がM&Aを実施することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。主な3つのメリットについて解説します。

地域に求められる質の高いサービス提供

社会福祉法人には、それぞれノウハウや設備、専門的なスキルを持つ人材などがいます。M&Aで異なるノウハウや設備を持つ社会福祉法人同士が合併することで、お互いのノウハウをそれぞれが活用できるようになり、サービス提供できるようになるでしょう。

また、今まで提供してきたサービスとは異なる種別の社会福祉法人とM&Aをした場合には、提供できるサービスの幅が広がります。

今までではなかったノウハウを持つ人材がM&Aで入ってくることで、他のスタッフのスキルを向上して、人材育成にもつなげることができるでしょう。

事業の効率化や経営の安定が見込める

経営の悪化で社会福祉法人の廃業を考えざるを得ないような場合には、経営基盤が安定している社会福祉法人とM&Aで合併することで、経営の安定化を図ることができます

また、事務作業のDX化などのノウハウを持つ社会福祉法人と合併すれば、業務効率化も可能でしょう。

M&Aで経営の安定化と業務効率化を果たすことができれば、設備投資を行うことができるようになりさらなるサービスの充実につなげることが可能になります。

従業員の雇用維持や事業の継続が可能

経営の悪化などで社会福祉法人を廃業することになった場合には、従業員は全員解雇することになります。福祉関連は人手不足が深刻化しているので、多くの人はすぐに次の仕事が見つかるでしょうが、高齢な職員など、再就職できない人も出るかもしれません。

また、社会福祉法人で設置していた介護施設や保育施設、障害者施設を利用していた利用者の人たちは、その施設の利用を続けることができなくなってしまいます。

その社会福祉法人にしかない特別なリハビリプログラムなどのサービスを利用している場合には、次の受け皿を見つけるのが難しい可能性もあります。

M&Aで事業を譲渡することができれば、従業員の雇用や事業を継続することが可能になります。従業員は生活の不安なく働き続けることができて、利用者へのサービス提供も継続して地域社会の福祉ニーズへ貢献し続けることができるでしょう。

【関連】障害者施設・就労継続支援施設A型・B型のM&Aは可能?事例も紹介!

4. 社会福祉法人のM&Aにおける売却・買収事例2選

社会福祉法人でのM&Aの事例をみていきましょう。

グローバルキッズCOMPANYが小規模保育施設をM&Aした事例

2023年9月8日に、株式会社グローバルキッズCOMPANYから、同社の連結子会社である株式会社グローバルキッズが埼玉県上尾市で運営する小規模保育施設1施設を、社会福祉法人すくすくどろんこの会へ譲渡することをが発表されました。

グローバルキッズCOMPANYは2006年に小さな認証保育所を開所したことから始まったグループで、現在は主に東京都を中心とした首都圏などで、170を超える保育所や学童保育を運営して、1万人以上の子供を預かっています。

すくすくどろんこの会は、「生きる力」を掲げて、関東地方と大阪で認可保育園や認定こども園などを運営している社会福祉法人です。

グローバルキッズCOMPANYとしては、今後の収支やエリアごとの保育需要の見込みなどを検討した結果、首都圏を中心とした中長期的な収支を見込める保育所などに経営資源を集中することで、経営効率化できると判断しての事業の譲渡だとのことです。

参考:連結子会社における事業譲渡(上尾市小規模保育施設)に関するお知らせ

グローバルキッズCOMPANYが保育所5施設をM&Aした事例

2023年7月18日に、株式会社グローバルキッズCOMPAから、同社の連結子会社である株式会社グローバルキッズが運営する大阪の認可保育所5施設を、社会福祉法人すくすくどろんこの会へ譲渡することが発表されました。

グローバルキッズグループとしては、エリア特性や今後の収支などを検討した結果、首都圏の中長期的な収支を見込める保育所などに経営資源を集中して、経営効率化を図りたいと判断しての事業の譲渡だとのことです。

参考:連結子会社における事業譲渡(大阪市認可保育所)に関するお知らせ

【関連】福祉用具レンタル会社のM&A・事業承継の動向!事例や費用相場も解説

5. 社会福祉法人のM&Aにおける成功のポイント

社会福祉法人のM&Aを成功させるための注意点についてみておきましょう。

M&Aの専門家に相談する

M&Aを成功させるための注意点の1つ目は、最初にM&Aの専門家に相談することです。M&Aを行うためには、最適な売却先探しや、法律や財務についての専門的な知識が必要な手続きをスムーズに進める必要があります。

買収側とのマッチングや手続きを社会福祉法人の経営者や役員だけで進めようとしても、なかなかうまくいかずに、途中で進められなくなってしまうことがよくあるようです。

M&Aの専門家なら、社会福祉法人の将来を考えて、M&Aでの売却が最適な方法なのか、といったところから親身になって相談に乗ってくれます。社会福祉法人のM&Aでの売却を検討し始めたら、まずは専門家への相談から始めましょう。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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合併の認可を受けることを考慮に入れる

2つ目の注意点は認可についてです。

一般的な企業のM&Aでは行政の認可は必要ありませんが、社会福祉法人は社会福祉法の適用を受けて設置された特別法人なので、M&Aによる事業譲渡や合併の場合は所轄庁の認可が必要になります。

認可を受けるための申請の方法や流れは「合併・事業譲渡等マニュアル」にもまとめられていますが、M&Aのスキームによって必要な申請が異なります。

どのような手続きが必要になるのかは、事前に所轄庁と相談して協議することが必要です。

従業員や利用者へ十分な説明を行う

3つ目の注意点は、M&Aの実施についての説明を従業員や利用者に対して尽くすことです。

M&Aによって経営母体が変わることに対して、従業員や利用者は大きな不安を抱きます。場合によっては、退職や施設の利用を辞めてしまうことにつながる可能性もあるでしょう。

M&Aを実施する前に、M&Aの必要性や経営母体が変わった後の雇用やサービスの提供についてしっかりと説明を行い、不安を払拭することが重要です。

なお、合併の場合には、雇用と契約内容は内容が大きく変更されるのでなければそのまま引き継がれるのが原則です。大きな変更がある場合には、雇用契約と利用契約を再度結び直す必要が出てくる可能性があります。

事業譲渡では、職員や契約内容は自動的に引き継がれることはありません。個別の再契約が必要になります。

国庫補助を受けた財産や寄附財産は税務署へ相談する

4つ目の注意点は、国庫補助と寄附の財産の取り扱いです。

社会福祉法人は多額の国庫補助や寄附で運営されている場合も多いのですが、M&Aで事業承継する場合には、国庫補助と寄附での財産の取り扱いに注意が必要です。

国庫補助は法人外流出となる場合には返還義務が生じます。無償譲渡なら返還義務が生じない可能性もあるので、M&Aを実施する前に所轄庁へ相談しましょう。

寄附財産は課税対象外ですが、M&Aで事業承継するときに、課税対象になってしまう可能性もあります。寄附財産の取り扱いについては、事前に税務署に相談しましょう。

適切なM&Aのタイミングを見極める

5つ目の注意点はM&Aの準備を始めるタイミングです。

M&Aをする目的が後継者問題であるのなら、経営者が引退するべき時期まで時間的余裕をもって準備を進めるようにしましょう。

M&Aに失敗する事例の多くが、後継者問題を抱える会社で、経営者の高齢化による健康問題が生じてから買収してくれる会社を探し始めて、買い叩かれてしまったり、時間切れで売却できなかったりすることです。

M&Aには、準備を始めてから経営権を完全に引き渡すまで1年以上かかることもよくあります。できれば、経営者が引退する時期の数年前から準備を始めて、最もいい条件で買収してくれる相手が見つかったタイミングで売却することが理想的です。

【関連】デイサービスのM&A・売却相場と動向|成功へ導く手続きの流れ・ポイントを専門家が解説

6. 社会福祉法人のM&A・事業売却まとめ

社会福祉法人には、地域社会の福祉を支えるという使命があります。もしも、経営の悪化や後継者問題で廃業することになってしまったら、その法人が運営している福祉施設の利用者だけでなく、地域住民からの期待も裏切ることになるでしょう。

後継者問題などで法人の将来がないと感じていても、M&Aで第三者に譲渡することで事業を継続できる可能性があります。まずは、M&Aでの事業の譲渡や他の法人との合併の可能性について、M&Aの専門家に相談することから始めてください。

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