2023年03月20日更新
訪問介護・デイサービスのM&A・売却・事業譲渡の完全マニュアル!【動画あり】M&Aの流れ・相場・成功事例・案件の探し方を紹介
訪問介護・デイサービス事業のM&A・売却・事業譲渡を詳しく紹介します。訪問介護・デイサービス業界の概要と現状、M&A・売却・事業譲渡の動向・相場・事例・手順・メリット・案件の探し方などを解説しますので参考にしましょう。
目次
1. 訪問介護・デイサービスとは
まずは、訪問介護・デイサービスの定義やサービス内容、種類などを解説します。
訪問介護とは
訪問介護とは、訪問介護員が利用者の自宅を訪問し、介護を行うサービスです。具体的には以下のサービスがあります。
- 身体介護:食事、更衣、入浴、排せつ、服薬介助など利用者の身体に直接触れて行う介助、準備、後片付けなど
- 生活援助:訪問介護スタッフが食事、掃除、洗濯、買い物など利用者の日常生活の介護を行う
- 通院等乗降介助:訪問介護員の運転する車両への乗車・降車の介助、通院先・外出先での受診手続き・移動の介助
訪問介護を行う訪問介護員は、介護福祉士の国家資格を有している、あるいは「その他政令で定める者」であることが要件です。厚生労働省の「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、訪問介護員は、全国で50万1,666人います。
生活援助サービスは、生活援助従事者研修を修了さえすれば、従事することが可能です。
デイサービスとは
デイサービスとは、通所介護のことです。通所介護では、要介護状態の高齢者がデイーサービスセンターに日帰りで通い、入浴・排せつ・食事などの介護を受けながら各種機能訓練が行えるサービスを提供します。介護保険は適用されませんが、施設に宿泊できる「お泊りデイサービス」も利用可能です。
デイサービスでは、基本的に送迎もデイサービス職員が行い、単なる訓練以外にも書道や陶芸など、趣味的活動で楽しく過ごせるプログラムが用意されています。厚生労働省の「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、デイサービス関連の職員数は以下のとおりです。
- デイサービス介護職員: 22万2,157人
- 介護老人福祉施設介護職員:29万2,875人、
- 介護老人保健施設介護職員:12万9,219 人
デイサービスの種類・事業者数
デイサービスは介護保険制度で統制されていますが、施設の管轄は、都道府県・政令指定都市・中核市と市区町村に大別されており、設備要件も複数の種類があります。都道府県・政令指定都市・中核市が管轄のデイサービスの種類は以下のとおりです。
- 通所介護・通常規模型:月間延べ利用者数300人超~750人
- 通所介護・大規模型Ⅰ:月間延べ利用者数700人超~900人以内
- 通所介護・大規模型Ⅱ:月間延べ利用者数900人超
一方、市区町村が管轄のデイサービスの種類は以下のようになっています。
- 地域密着型通所介護:利用定員18人以下
- 認知症対応型通所介護:単独型
- 認知症対応型通所介護:併設型(特別養護老人ホーム・病院などに併設)
- 認知症対応型通所介護:共用型(認知症対応型共同生活介護事業所などの食堂・共同生活室を使用)
2. 訪問介護・デイサービス業界の現状
訪問介護・デイサービスを含めた介護業界では、さまざまな問題を抱えている状況です。ここでは、訪問介護・デイサービスの事業譲渡、売却などのM&Aに触れる前に、訪問介護・デイサービス業界が抱えている以下の課題を解説します。
- 介護が必要な高齢者の増加
- 介護サービスの基本報酬
- 介護事業における競争
- 介護人材・ヘルパーの不足
- 介護事業の譲渡・売却・M&Aの増加
①介護が必要な高齢者の増加
総務省の「統計トピックスNo.129統計からみた我が国の高齢者-『敬老の日』にちなんで-」によると、日本の65歳以上の高齢者人口は3,640万人(2021(令和3)年9月15日現在)で過去最高でした。総人口1億2,522万人の29.1%を占めています。
総人口は前年から51万人減少したのに比べ、高齢者人口は22万人の増加です。今後、2040(令和22)年には、高齢者数が3,921万人で全体の35.3%を占める予測も添えられていました。
一方、厚生労働省の「令和元年度 介護保険事業状況報告(年報)」によると、2020(令和2)年3月末時点の要介護(要支援)認定者数は669万人(前年比10万人増)です。これは、2000(平成12)年の256万人の約2.6倍に該当します。
今後も高齢者の人口増に比例して、要介護(要支援)認定者数が増えるのは必至です。
②介護サービスの基本報酬
基本的に訪問介護・デイサービスなどの介護サービスにかかる報酬は、それほど高額とはいえない傾向があります。2018(平成30)年度には介護報酬改定が行われたものの、報酬が大幅に増えたわけではありません。
訪問介護・デイサービスなどの従業員における報酬の額が、要介護者の負担額に反映されてしまうため、事業者間競争により報酬が低い場合もあります。
③介護事業における競争
高齢者が増えるにあたり、訪問介護・デイサービスなどの介護施設数は増加中です。その一方で、介護事業者の倒産件数も増加しています。訪問介護・デイサービスなどの介護事業は、超高齢社会を背景とした成長産業です。資本力のある他業種からの参入も増えてきており、介護業界では競争が激化しています。
業界内の競争は、訪問介護・デイサービスなどの介護事業のサービス向上など、業界の活性化にはつながるものの、多くのサービスを提供できる事業でもないのが実情です。そうしたなか、資本力に乏しい中小の事業主が淘汰されてしまう傾向にあります。
④介護人材・ヘルパーの不足
介護の現場は、肉体的にも精神的にも非常にひっ迫している状況であるにもかかわらず、介護業界の報酬は他業種に比べると低い傾向にあります。そうした状況から、退職者が出てしまっているのが現実です。
一方で、業界の需要が上がっていることにより、人材不足という問題もあります。人材やヘルパーを採用しても、より給与の高い同業他社に転職してしまうでしょう。
⑤介護事業の譲渡・売却・M&Aの増加
多くの課題を抱えている訪問介護・デイサービス事業者は、数多く存在します。資本がそれほど大きくない介護事業者は、設備への投資や人材の確保などで、どうしても不利を被ってしまうでしょう。
そうした事業者が継続的に経営を続けるために、M&Aが多く取り入れられています。資本力があり人材確保に優れた大手の傘下に入ることで、課題の多くを解消できるからです。
3. 訪問介護・デイサービスのM&A・売却・事業譲渡の動向
訪問介護・デイサービスの事業譲渡や売却などM&A動向を紹介します。訪問介護・デイサービス事業所を運営する際は、管理者、サービス提供責任者、介護職員を含めて、常勤換算数で2.5人の少人数でスタートできるため、新規開設する事業所が増えているのが現状です。
厚生労働省の「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、2020(令和2)年10月時点で訪問介護35,075事業所、訪問看護ステーション12,393事業所、デイサービス24,087事業所です。
一方で、東京商工リサーチの調査結果によると、2021年の「老人福祉・介護事業」倒産は81件でした。業種別では、「訪問介護事業」が47件を占め、人手不足や介護人材の高齢化などの課題も多く、経営の難しさが明らかです。訪問介護・デイサービス事業は、事業者間の競争が激化しています。
人材不足や介護報酬の引き下げなどを理由に、小規模な訪問介護・デイサービス事業者はM&Aで売却を行うでしょう。なお、年商1億円以上が見込める訪問介護・デイサービスの事業者は、M&Aによる買収をより進めています。
売買市場の動向が活発な状況であるため、現在の訪問介護・デイサービスのM&A動向は売りどきといえます。
4. 訪問介護・デイサービスのM&A・売却・事業譲渡の取引相場
訪問介護・デイサービスの事業譲渡、売却など、M&Aにおける売買相場を解説します。M&Aでは、買収される介護事業の規模や経営状況に相場は左右されます。時代背景などでも相場は変わるものです。
現在の訪問介護・デイサービスなどの介護業界は、需要が高まっているため相場もそれほど下がりません。地域に密着していたり、自治体との連携などがあったりすると、相場より高値で取引される傾向があります。
訪問介護のM&A売り案件の例は、以下のとおりです。
売上高 | 譲渡希望額 | 譲渡希望額÷売上高 | |
案件A | 1,000万円~3,000万円 | 300万円~500万円 | 0.1~0.5 |
案件B | 5,000万円~1億円 | 7,500万円~1億円 | 0.75~2 |
案件C | 6,000万円 | 2,000万円~ | 0.33~ |
案件D | 6,500万円 | 1,000万円~ | 0.15~ |
案件E | 1,200万円 | 300万円~ | 0.25~ |
企業価値の評価方法
M&Aの現場で最終的な売買価額は、売却側と買収側の交渉で決まります。その交渉で金額のたたき台となるのが、売却側の企業価値評価です。M&Aの現場で簡易的に用いられる企業価値評価方法として、以下の計算式があります。
- 売却側企業の時価純資産額+直近3年間の営業利益の平均額×3~5年
時価純資産額とは、貸借対照表にある資産と負債をそれぞれ時価に換算し、資産額から負債額を引いた金額です。営業利益に掛ける年数が変数となっているのは、売却企業の特性(業績の度合い、企業の希少性、買収側の評価など)に応じた分を勘案する意図がありますが、通常は「3」年が用いられます。
5. 訪問介護・デイサービス業界のM&A・売却・事業譲渡の成功事例
ここでは、訪問介護・デイサービス事業のM&A事例を紹介します。
- 土屋
- ケア21
- ツクイホールディングス
- ニチイ学館
- ソラスト
- ココカラファイン
- ワイグッドホールディングス
- 小規模訪問介護の株式譲渡
- 訪問介護の株式譲渡
①土屋
2022年10月、土屋は東京・愛知の2団体の事業譲渡・子会社化を実施しました。
土屋は、岡山県井原市に拠点を置き、全国約43都道府県で24時間体制の訪問介護事業を行っています。今回経営権を取得したのは、ヒカリエンタープライズが行うデイサービス事業の事業譲渡と、訪問介護事業・デイサービス事業展開するコスモスの譲受です。
今回のM&Aにより、訪問介護事業だけでなく、福祉の総合商社化に向けた幅広い体制強化を目指します。
②ケア21
2022(令和4)年4月、ケア21は買収によりシィノンの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。ケア21は、訪問介護・デイサービスをはじめとするさまざまな介護事業と保育サービス事業、生活支援事業、ダイニング事業、不動産事業、障がい者雇用事業などを行っている企業です。
シィノンは、大阪府豊中市にて地域密着で訪問介護事業を行っています。ケア21としては、同一エリアでのシェア拡大、事業の効率化などのシナジー効果により、事業展開が強化できると判断しました。
③ツクイホールディングス
2022年4月、ツクイホールディングスは買収によりアカリエの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。ツクイホールディングスは、介護事業、福祉機器リース事業、IT事業、人材事業などを行うグループの持株会社です。
アカリエは、神奈川県横浜市における介護事業、IT事業人財関連事業などを行っています。ツクイホールディングスとしては、アカリエのグループ入りにより、介護事業におけるICTの利用促進、IT基盤の強化、神奈川県における介護サービスの拡充などが図れると判断しました。
④ニチイ学館
2022年3月、ニチイ学館は買収によりプラティアの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。ニチイ学館は、医療関連事業、介護事業、保育事業、ヘルスケア事業、教育(語学)事業、セラピー事業などを行っています。
プラティアは、子会社2社とともに大阪を中心に東京、神奈川、千葉、山梨、岐阜で介護付有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス、訪問介護サービス、居宅介護支援サービスなどを行っている企業です。
プラティアの子会社化によりニチイ学館は、一挙にグループホーム20施設、有料老人ホーム3施設、訪問介護2拠点、通所介護1拠点、居宅介護支援2拠点を傘下に加えました。
⑤ソラスト
2020年8月、訪問介護なども手掛けるソラストは日本エルダリーケアサービスを買収しています。これによりソラストグループの事業所数は600を超え、481だった事業所数が大幅に増えました。
⑥ココカラファイン
2017(平成29)年6月、ココカラファインは株式譲渡によりシニアコスモスを買収しました。東京都で訪問介護などを手掛けていたシニアコスモスを獲得したことにより、介護事業のシェアを拡大しています。
⑦ワイグッドホールディングス
2017年2月、ワイグッドホールディングスは株式譲渡により川商アドバンスを買収しました。これによりワイグッドホールディングスは、関東圏でのシェアを拡大しています。
⑧小規模訪問介護の株式譲渡
小規模訪問介護事業者の株式譲渡によるM&Aの事例です。訪問介護事業者のオーナーが、本業に専念するために株式譲渡を決断しました。訪問介護事業者の規模は、従業員が10名ほどで月に約220万円の売上高です。
訪問介護事業者は不動産付きで地域にも密着しているうえ、歯科衛生士の指導もありました。こうした付加価値から、この訪問介護事業者の売買価額は7,000万円となっています。
⑨訪問介護の株式譲渡
東京で事業を展開していた、社員数40人の訪問介護事業者の事例です。この介護施設は、2億円弱で売買が成立しました。要因としては、売上高が年間8,000万円あり、地域密着で自治体からの紹介もあるなどのメリットがあったほか、無借金での経営が評価されています。
6. 訪問介護・デイサービスのM&A・売却・事業譲渡の流れ・手順
訪問介護・デイサービスの事業譲渡や売却など、専門家を介してM&Aをする際には一般的に以下の手続きが必要となります。
- 相談
- 秘密保持契約締結
- 企業価値の算定・仲介契約の締結
- 買収候補への打診・基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終交渉・最終契約書の締結
- 統合作業
①相談
まずはM&Aの相談を行います。売却を相談された専門家が行うのは、豊富な知識をもとにして、相談相手にマッチしたM&A手法の検討です。このときに、会社の強み、財務状況などのヒアリングを行います。会社の売却相手先などの希望も聞かれるでしょう。
質問を想定し、情報を資料にまとめたり、相手先の方向性を決めたりしておくのが大切です。具体的には、以下を社内でまとめておきましょう。
- 譲渡・売却する資産や負債の範囲
- 譲渡・売却したい事業の売上や利益・財務状況
- 譲渡・売却したい事業の将来
- 買い手企業の理想の企業像(業種・規模・エリアなど)
- 希望譲渡価額
- 希望譲渡時期
これらを事前にまとめておくことで、M&A仲介会社との相談もスムーズに運びます。M&Aの相談先をどこにするかお困りなら、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、訪問介護・デイサービスの事業譲渡・売却・M&Aに精通したアドバイザーが専任となり、M&Aをフルサポートします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を行っていますので、訪問介護・デイサービス業界のM&Aをご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
②秘密保持契約締結
秘密保持契約を締結した後に事業主の会社資産などの会社資料を提示し、今後の計画なども併せて具体的な打合せを進めていきます。秘密保持契約とは、「外部に情報を漏えいしません」旨を宣言する約束なので、忘れずに締結しましょう。この締結があれば、勝手に買い手候補の企業に会社の情報を話されたりしません。
③企業価値の算定・仲介契約の締結
提示された会社資料をもとに専門家が、介護事業の動向や売却希望会社の実績なども含めて、相場に見合った売却価額の推定を算出し提示します。算出された売却見込み価額などを了承した後、売却先となる企業を選定するために締結するのが仲介契約です。
売却先の候補は1社だけでなく3~5社程度、比較しましょう。「紹介する企業がない」といわれた場合は、他のM&A専門家へ相談するのも視野に入れてください。多くの選択肢の中から最適な売却先を選ぶことは、M&Aを成功させるために重要です。
④買収候補への打診・基本合意書の締結
買収企業の候補がみつかった場合は、相手企業に打診を行います。相手企業が興味を持ってくれたら、相手企業と秘密保持契約の締結です。この段階では、M&A成立に至らない可能性も十分にあり得るため、詳細な情報を開示する前に両社間で秘密保持契約を締結する必要があります。
秘密保持契約の締結後、社名や財務情報、事業内容の詳細などを相手企業に公開し交渉開始です。その後、経営者同士の面談を交えて交渉を繰り返し、条件が大筋で合意できた場合に基本合意書を締結します。基本合意書は、合意内容の確認書という位置付けであるため、法的拘束力はありません。
しかし、この合意書を作ることで認識のずれを減らせます。基本的にはこの内容で契約が成立するものと考えておきましょう。第三者が見てもわかるよう、細かく条件を明記しておく必要があります。
⑤デューデリジェンスの実施
基本合意書の締結後は、買い手企業によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスとは、買い手企業による売り手企業の経営状況や人事などに対する調査のことです。具体的には、以下のような内容を調査されます。
- 企業の沿革
- 直近の収益状況
- 取引先
- 役員・従業員の人数・年齢・スキル・給与
- 労働時間
- 残業手当の支給状況
- M&A後に削減できるコスト
- 事業上のトラブル
- PMI(Post Merger lntegration=経営統合)計画策定のために必要な情報収集
売り手企業は、デューデリジェンスへの協力をしなければなりません。求められた資料を提出したり、工場や店舗などの現地調査の立ち会いを行ったりします。デューデリジェンスで問題が発覚すると、基本合意時よりも譲渡価額を下げられる可能性が高いです。
⑥最終交渉・最終契約書の締結
デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終交渉を行います。何らかの問題が発覚していなければ、基本合意書の内容どおりに最終契約書が締結されます。これで、M&Aが成立です。その後、クロージング(契約内容の履行)として、売り手は具体的な譲渡手続きを行い、買い手は対価を支払います。
⑦統合作業
クロージング後、買い手側では経営統合(PMI)作業に移行します。社内システムや人事評価を買い手企業に合わせるため、売り手企業の従業員は戸惑いや不安も多いです。
新体制に早く従業員がなじめるよう、売り手企業経営者に買い手企業から協力が求められることが多いので、その場合には一定期間、会社にとどまる必要があります。
7. 訪問介護・デイサービスのM&A・売却・事業譲渡のメリット【立場別】
ここでは、訪問介護・デイサービスのM&Aで期待されるメリットを、売却した会社・買収した会社・従業員・サービス利用者の立場に分けて簡単に解説します。
訪問介護・デイサービス業界で売却した会社のメリット
訪問介護・デイサービス事業を売却した会社のメリットは、主に以下のようなものが考えられます。
- 後継者問題の解決
- 売却時の利益
- 従業員の不安解消
- 別事業への投資・開拓
後継者問題の解決
経営者に見合う人材がいないなど後継者が不在の場合は、訪問介護・デイサービス事業所を廃業する方法しか残されていません。そうした問題に対して、M&Aによる譲渡や売買で解決できます。
売却時の利益
M&Aを活用して訪問介護・デイサービス会社などを売却すれば、対価として現金を受け取れます。仮に廃業した場合、このような資金を得ることは不可能です。
従業員の不安解消
訪問介護・デイサービス会社の経営が不振である場合、そこで働いている従業員は不安でモチベーションが上がりません。モチベーションの低下は、訪問介護・デイサービス事業におけるサービス低下・事業悪化の悪循環を招きかねません。そうした状況を抜け出す方法として、M&Aは有効な手段です。
別事業への投資・開拓
訪問介護・デイサービス会社の事業をM&Aで譲渡した対価として、現金や株式を得られます。M&Aで訪問介護・デイサービス会社を売却して得た現金で、新たな事業を展開することも可能です。
訪問介護・デイサービス事業を行っていたとき、資金繰りに苦しんでいたために新たな事業への投資ができなかった状況でも、M&Aでの訪問介護・デイサービス事業売却により、新たな一歩を踏み出せます。
訪問介護・デイサービス業界の会社を買収した会社のメリット
訪問介護・デイサービス会社や事業を買収した側の主なメリットは、以下のようなものです。
- 介護事業をスムーズに開始
- 介護サービスの展開・拡大
- ブランド力による人材確保
- 立ち上げに伴う赤字期間の回避
介護事業をスムーズに開始
他業種から訪問介護・デイサービス事業に参入する場合、ノウハウを持っていないことが不安材料です。M&Aであれば、買収によってノウハウも取得できるので、スムーズに参入できます。
訪問介護・デイサービス事業の同業者間のM&Aであったとしても、自社で保有していない介護技術などを獲得できる可能性もあります。
介護サービスの展開・拡大
すでに訪問介護・デイサービスを行っている事業者がM&Aを行った場合は、介護サービスの提供エリアや顧客エリアの拡大を図れます。地域に根付いている介護施設であれば、M&Aの効果がさらに見込めるでしょう。
ブランド力による人材確保
M&Aにより買収した訪問介護・デイサービス会社の人材が不足していたとしても、自社のブランド力による人材確保が可能です。自社に訪問介護・デイサービス会社に対する人材が不足していても、買収した会社のネームバリューを利用して募集をかけられます。
立ち上げに伴う赤字期間の回避
訪問介護・デイサービス会社を立ち上げるためには、土地や建物の他に多くの設備投資が必要です。そうした設備などの投資も、M&Aによって確保できます。訪問介護・デイサービス会社をM&Aで買い取る場合、売上・利益を出している会社を選べば、赤字を回避して運営することも可能です。
訪問介護・デイサービス業界で働く従業員のメリット
訪問介護・デイサービス会社に勤めている従業員のM&Aによるメリットは、主に以下があります。
- 将来的な不安解消
- 資格取得などのサポート
- キャリアアップの可能性
将来的な不安解消
M&Aでの買収では、多くの場合、今までの訪問介護・デイサービス会社より大きな事業主に買収されます。M&Aで会社が買収されると、従業員の雇用や待遇が継続できるため、将来的な不安が解消される可能性が高いです。
資格取得などのサポート
今までの事業主のもとでは導入されなかった、資格取得などへのサポート制度もM&Aによる買収で機会が得られる可能性があります。こうしたメリットは、訪問介護・デイサービスの日々の業務でも、モチベーション向上や自身の技術向上につながります。
キャリアアップの可能性
M&Aで会社が買収される場合、これまで以上の資本を持っている事業主が買い取ります。その結果、今までの環境では望みが薄かったキャリアアップが見込めるでしょう。キャリアップの見込みがあれば業務に対してのモチベーション向上につながります。
このようにM&Aによる買収は、訪問介護・デイサービスの現場に多くのメリットをもたらすものです。そして、M&Aによるメリットは、訪問介護・デイサービスの現場のサービス向上に大きく貢献します。
訪問介護・デイサービス業界のサービス利用者のメリット
訪問介護・デイサービス会社のM&Aによる譲渡や買収は、訪問介護のサービス利用者にもメリットが発生します。
- 安定した介護サービスの継続
- より充実した介護サービス
安定した介護サービスの継続
経営不振であった訪問介護・デイサービス会社は、M&Aによる売却で経営が安定化するケースが多く、不安なく継続して介護サービスを受けられるようになります。これは訪問介護・デイサービス施設利用者にとって、大きなメリットです。
より充実した介護サービス
M&Aでの買収側は、売却側よりも資本規模が大きい会社であることがほとんどです。売却側の訪問介護・デイサービスの利用者は、M&A後、以前よりも充実した介護サービスを受けられるようになる可能性が大いにあります。
8. 訪問介護・デイサービスのM&A・売却・事業譲渡の成功ポイント
本章では、訪問介護・デイサービスのM&A・売却・事業譲渡を成功させるためのポイントとして、3つをピックアップし順番に解説します。
資産価値・経営状況のチェック
M&Aの取引価格には、対象企業・事業の純資産額が大きな影響を与えます。経営状態の良し悪しも、M&Aの成否に影響を与える大きな要素です。訪問介護・デイサービス事業者の経営状況を事前にチェックしておき、これに見合ったM&A戦略を構築することが大切です。
社員流出・顧客離れを防ぐ
訪問介護・デイサービス事業は人材不足が深刻化しており、買収側は人材確保を図ってM&Aを実施しているケースが多いです。売却側としては、従業員の流出を防ぐことが、M&Aの成功率アップにつながります。
M&Aの買収側は、売却側の顧客を獲得したいと考えているケースも少なくありません。売却側としては、顧客離れを防ぐことで、買収側にとって魅力的なM&A候補になれる可能性が高まります。
M&Aの専門家に相談する
専門家に相談し、サポートを受けながら進めることで、M&Aをスムーズに進められるうえに、成功確立をアップさせることにもつながります。
9. 訪問介護・デイサービスのM&A・売却案件の探し方
訪問介護・デイサービスのM&A・売却案件の探し方・相談先は、主に以下のとおりです。
- M&Aの専門家
- 士業事務所
- 金融機関
- 公的機関
- M&Aマッチングサイト
①M&Aの専門家
最も一般的な訪問介護・デイサービスの売却案件を探す方法は、M&Aの専門家への相談です。M&Aの専門家であれば取り扱っている案件情報も多く、相談後そのまま仲介業務の依頼もできます。具体的なM&Aの専門家としては、M&A仲介会社、経営コンサルタント、FA(ファイナンシャルアドバイザー)などです。
②士業事務所
昨今では、M&Aの仲介業務を行う税理士、公認会計士、弁護士などの士業事務所もあります。そのような士業事務所に、訪問介護・デイサービスの売却案件の相談をするのも有効でしょう。ただし、すべての士業事務所がM&Aの仲介業務を行っているわけではないので注意が必要です。
③金融機関
各地域の金融機関は、取引企業からの経営相談も受ける立場です。M&Aの専門家とは違った、売却希望を持つ訪問介護・デイサービス会社の情報を持っているかもしれません。最近ではM&Aの仲介部門を設けている金融機関もありますので、相談先として有望です。
ただし、M&Aの専門家ほどの実績はないことが多いので、仲介業務を依頼するかどうかは検討が必要です。
④公的機関
中小企業の経営や事業承継をサポートするための公的機関が、各都道府県に設置されています。公的機関は無料相談ができるため、独自の訪問介護・デイサービス会社の売却案件情報が寄せられているかもしれません。代表的な公的機関としては、事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点などがあります。商工会・商工会議所も有力な相談先です。
⑤M&Aマッチングサイト
現在、数多くのM&Aマッチングサイトが運営されています。一般的に無料会員登録で情報の閲覧ができるため、訪問介護・デイサービスの売却案件情報の収集が可能です。気になる案件情報があれば交渉を申し込めますが、どの時点でどのように手数料が発生するかは各サイトでルールが異なります。
交渉は当事者同士で行うのが基本です。しかし、別途、手数料を支払えばM&Aアドバイザーに業務依頼できるシステムのサイトがほとんどです。
10. 訪問介護・デイサービスのM&A・売却・事業譲渡まとめ
訪問介護・デイサービス業界でのM&Aは、さまざまな理由から増加傾向にあります。人材の入れ替わりが激しい中、需要が増え続ける業界なので、競争の激化に対応していくためには企業力が必要です。そのためには、M&Aも有力な手段となるでしょう。
訪問介護・デイサービス業界のM&A実施を検討される場合には、メリット・デメリットをよく把握するためにも、M&A仲介会社など専門家への相談をおすすめします。
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