会計士事務所のM&A・事業承継!流れや相場、メリットや注意点、動向や売却事例も徹底紹介

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

当記事では、会計士事務所のM&A・事業承継をまとめます。会計士事務所のM&A・事業承継の流れや相場、ポイントやメリット、売却事例について具体的に解説しますので、売却・買収を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

目次

  1. 会計事務所業界とは
  2. 会計士事務所のM&A・事業承継のメリット
  3. 会計士事務所のM&A・事業承継を行う際のポイント
  4. 会計士事務所のM&A・事業承継における売却相場
  5. 会計士事務所のM&A・事業承継が増えている背景
  6. 会計士事務所のM&A・事業承継の流れ
  7. 会計士事務所のM&A・事業承継における売却事例
  8. 会計士事務所のM&A・事業承継の流れや相場まとめ
  • 税理士事務所・会計事務所のM&A・事業承継

1. 会計事務所業界とは

会計事務所の定義や税理士事務所・税理士法人との相違点、会計事務所業界を取り巻く現状を説明しましょう。

会計事務所の定義

会計事務所は、税務や会計のサービスを提供する事務所です。具体的には、個人や法人の税務申告や税務相談、申告業務、決算や経理の支援、経営分析、コンサルティングなどを幅広い業務を行っています。

独占業務や会計・税務の専門知識を要している公認会計士・税理士の資格を保有している人が独立・開業しているところが多いです。

会計事務所では中小企業への会計代行業務・経営分析、株式公開支援、企業再編支援など、昨今はコンサルティング業務をメインに行う会計事務所が増加しています。

税理士事務所・税理士法人との相違点

税理士事務所・税理士法人、どちらも税理士に関連するものでありますが、実際どのような違いがあるのでしょうか。この章では、税理士事務所・税理士法人の相違点を詳しく説明します。

税理士事務所との相違点

会計事務所と税理士事務所の主な業務内容に関しては、ほぼ同じ内容となります。両者の違いは、法律で定義されている名称の違いです。税理士業務を行う事務所は税理士事務所です。

一方、会計事務所は法律に明記されてはおらず、会計や税務のサービスを提供する事業所の総称として使用されているものです。

一般的に、税理士業務をメインとして業務を行う場合は、税理士事務所で、税理士業務に加えて会計やコンサルティングサービスを提供している場合は、会計事務所が使用されているケースが多いでしょう。

税理士法人との相違点

税理士法人の相違点は組織形態です。会計事務所や税理士事務所では、主に個人事業主として公認会計士や税理士が事業を行っています。

一方、税理士法人は、その名のとおり法人として税理士業務を行っているのが特徴です。したがって税理士法人の場合は、2名以上の税理士の在籍が必要でしょう。例えばスタッフが数名いても、税理士法人にはなれず税理士が2名以上必要になります。

会計事務所業界を取り巻く現状

会計事務所業界を取り巻く現状は、税理士のデータを確認するのがいいかもしれません。国税庁によると、日本税理士会連合会に登録されている税理士登録者は1990年度で57,073人、2020年度では79,404人と増加傾向です。

しかし、日本税理士連合会が行った「第6回税理士実態調査(平成26年1月)」では、全国にいる税理士のうち過半数が60代以上を占めています。60代が30.1%、70代が13.3%、80代が10.4%です。したがって、会計事務所の業界全体で高齢化が進んでいるといえるでしょう。

昨今は、若手の経営者が増加しているため、若い税理士に対するニーズが増える予想です。しかし、税理士の高齢化および受験・登録者数の減少によって、将来、会計事務所業界の人手不足が生じる可能性があるでしょう。

参照:国税庁「税理士制度」

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2. 会計士事務所のM&A・事業承継のメリット

ここからは、会計士事務所のM&A・事業承継で考えられる「メリット」を解説します。

会計士事務所のM&Aには「譲渡側(会計士事務所を渡す側)」「譲受側(会計士事務所を受け取る側)」が存在するので、譲渡側・譲受側それぞれのメリットを説明しましょう。

譲渡側のメリット

譲渡側(会計士事務所を渡す側)のメリットとしては、以下の5つが挙げられます。

  • 後継者問題を解決できる
  • 大手会計士事務所とグループを形成できる
  • 職員の雇用を守られる
  • 売却利益を獲得できる
  • 所長も税理士として会計事務所に残れる可能性

後継者問題を解決できる

前述しているとおり、昨今は、会計士事務所の「高齢化」「後継者不足」が問題となっています。M&Aアドバイザーを介して、会計士事務所のM&A・事業承継を行うことで、この「後継者問題」を解決できるでしょう。

大手会計事務所とグループを形成できる

会計士事務所のM&Aを行うことで、大手会計事務所とグループを形成できる可能性が高まるでしょう。大手会計事務所とグループを形成できると「ワンストップサービス」を提供できるようになります。

弁護士・司法書士・税理士といった仕業は、それぞれの業務が分かれているため、何か問題が発生しても、「どの士業に相談すれば良いのかわからない」といった問題があります。

しかしワンストップサービスがあれば、複数の仕業が一つの事務所にまとまるため、事務所の窓口に来てもらうだけで、どの士業の相談にも対応できるようになるでしょう。

職員の雇用を守られる

小さな会計士事務所などでは、経営自体が不安定で、職員の雇用を維持するのが難しくなってしまうケースもあります。会計士事務所をM&Aによって事業譲渡できれば、職員の雇用を維持できます。

売却利益を獲得できる

会計事務所のM&Aで譲渡できれば、売却によってまとまった資金を獲得するのが可能です。多額の現金を得ることで、経営者が事務所運営からリタイアした後に、余裕ある生活を送れる可能性が高くなるでしょう。

あるいは、売却利益を元手に新規ビジネスを立ち上げるのも可能となります。

所長も税理士として会計事務所に残れる可能性

会計事務所の業務は、税理士のみが行える業務が多く含まれており、税理士以外の人は行えません。そのため、所長も譲渡後に税理士として会計事務所に残れる可能性が高いでしょう。税理士として事務所に残れば、その後の生活資金を心配せずに済みます。

譲受側のメリット

会計士事務所M&Aにおける「譲受側(会計士事務所を受け渡す側)」のメリットには、主に以下の4つが挙げられます。

  • 資格者やコンサルティング技能者を獲得できる
  • 開業リスクを減らせる
  • 通常とは異なる業務を展開できる
  • 顧問先の確保・他地域への事業展開・業務効率化などを目指せる

資格者やコンサルティング技能者を獲得できる

会計士事務所のM&Aによって、会計士事務所を譲受するので、士業の資格を持った人材や、コンサルティング技能者などを獲得できるでしょう。専門的な知識や経験・実績を持つ人材を獲得できれば、「さらなる顧客の獲得」や「利益の増加」を見込めます

開業リスクを減らせる

これから会計士事務所を開業しようとする場合、強力な競争相手の存在によって、「顧客獲得が難しい」「従業員の確保が難しい」など、スタートダッシュでつまずく可能性があります。

したがって、会計士事務所の譲受によって、このような「開業リスク」を減らせる可能性が高まるでしょう。

通常とは異なる業務を展開できる

譲渡側のメリットでも解説したように、会計士事務所を引継ぐことで、「ワンストップサービス」を提供できるようになります。

新たなノウハウ・顧客・人材を獲得できるので、通常の業務展開では困難な地域に進出するのも可能です。

顧問先の確保・他地域への事業展開・業務効率化などを目指せる

会計事務所同士でM&Aを行えば顧問先の確保・他地域への事業展開・業務効率化など、さまざまなメリットが享受できます。

まず、優良な顧問先を獲得できる可能性も高まるでしょう。他の地域の会計事務所とM&Aを行えば、新たな事業拡大が目指せます。そして業務の効率化が可能となり、利益の出やすい体制となり得るでしょう。

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3. 会計士事務所のM&A・事業承継を行う際のポイント

この章では、会計士事務所のM&A・事業承継で意識しておくべきポイントを解説します。M&A・事業承継は以下のポイントを意識して進めなければ、M&Aが失敗に終わってしまう可能性があります。

  1. 相場を把握する
  2. 適正なM&Aアドバイザーを選ぶ
  3. 適正なスキーム選択
  4. 株式会社でないと株式譲渡は採用できない
  5. 早期のタイミングからM&A・事業承継の準備に取り掛かる
  6. 顧客との契約を打ち切られるおそれ
  7. 税金対策

①相場を把握する

まず大切なことは、会計士事務所を合併したり、後継者に譲渡したりする際の「M&A相場」を把握しておくことです。

会計士事務所のM&A・事業承継の相場は、事務所が位置する地域や、M&A実施の時期によっても異なってきますが、およそ「一年分の顧問収入」をベースに決定されることが多くなります。

ただし、これはあくまでも個人事業の部分の話で、記帳代行やコンサルティングを別会社としている場合であり、通常のM&Aと同様「時価純資産方式」や「DCF方式」といった計算方法で相場が算出されます。

②適正なM&Aアドバイザーを選ぶ

M&Aに関して非常に重要なポイントが、「適正なM&Aアドバイザー」を選ぶことです。M&Aアドバイザーは、M&Aの「売買相手探し」や「交渉の仲介」「契約書の作成」などの仲介業務を行います。

M&Aアドバイザーには、主に以下の業種があります。

  • 銀行
  • 証券会社
  • 税務・会計事務所
  • 法律事務所
  • M&Aアドバイザリー(FA)
  • M&A仲介会社

銀行

各銀行は、「M&Aアドバイザリー業務」を提供しています。すでに融資してもらっているといった関わりのある銀行であれば、自社の情報を詳細に知っているため、仲介業務を任せやすいでしょう。

銀行が持つ膨大なネットワークを利用して、売買相手を見つけてくれる可能性もあるでしょう。しかし、M&Aアドバイザリー業務自体は銀行のメイン事業ではなく、地方銀行などではM&Aアドバイザリー業務自体を行っていないケースもあります。

証券会社

証券会社もM&Aのアドバイザリーサービスを提供しています。証券会社のM&Aアドバイザリーサービスの利用は、「M&Aによって海外進出を考えている」「企業合併・事業売買などによって株式の譲渡・移転が必要になる」といった場面で有効といえるでしょう。

ただし、会計士事務所のM&A・事業承継では、そもそも株式譲渡・移転」などはあまり選ばずに別の方法を主体としているケースが多いため、相談にはあまり向いていません。

税務・会計事務所

税務・会計事務所は、特に「事業承継・後継者に事業を譲渡」するケースでは、M&Aの相談をしやすい相手といえるでしょう。M&A・事業承継に伴う相続税などの税金関係も、安心して相談するのが可能です。

相談する際は、M&Aに関する知識や実績があるかをあらかじめ確認したほうがいいでしょう。

法律事務所

法律事務所には、M&Aの法的側面に詳しい弁護士が在籍しています。そのため、M&Aで法律的なトラブルが発生した際には、安心して相談できるでしょう

ただ、M&Aを本格的に扱っている法律事務所は大手がほとんどで、扱われているM&A案件の規模も大規模なものが多いです。

M&Aアドバイザリー(FA)

「M&Aアドバイザリー」は、別名「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」とも呼ばれています。M&Aアドバイザリー(FA)は、M&Aの専門的な知識を持つ「M&Aの専門家」です。

M&Aアドバイザリーは、企業・会社・事業の「買い手」または「売り手」のどちらか一方を担当し、担当した側の利益を最大化するのを目的として仲介業務を行います。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、文字どおり「M&Aの仲介業務を行う会社」です。M&Aアドバイザリー(FA)とは異なり、M&A仲介会社は「買い手」と「売り手」の間に介入する形でM&Aの仲介を行います。

M&Aの工程全てに携わるため、スムーズにM&A手続きを進められるでしょう。ただし、M&A仲介会社によっては、買い手と売り手をつなげる「マッチングプラットフォーム」を提供するだけの場合もあります。

そのため、利用を検討しているM&A仲介会社の実績や、サービス内容をしっかりと確認して、一からM&A手続きを任せられるM&A仲介会社を精査する必要があります。

③適正なスキーム選択

会計士事務所のM&A・事業承継をうまく進めていくためには、M&Aの「適正なスキーム」を選択する必要があります。スキームとは、M&Aにおける「手法」のことで、大きく以下の3つに分類できます。

買収

M&Aの「買収」は、M&Aの「買い手企業」が「売り手企業」の経営権を買い取ったり事業を譲受したりする方法です。M&Aのスキームである「買収」は、さらに以下の2つにわけられます。
 

  • 株式取得(売却企業の株式を買い取ることで経営権を取得する手法)
  • 事業譲渡(企業・会社が持つ一部の「事業」を譲渡する手法)

合併

M&Aのスキームの一つである「合併」は、複数の会社が一つにまとまることです。「合併」はさらに以下の2つにわけられます。

  • 新設合併(合併に参加した全企業が消滅して、新しい一つの企業に生まれ変わる手法)
  • 吸収合併(合併に参加した企業の一つを残し、残りの企業を消滅させる手法)

分割

M&Aスキーム「分割」は、企業が持つ「事業」に関して有している権利や義務を、新設する企業や後継者相手に承継するものです。「分割」はさらに以下の2つにわけられます。

  • 新設分割(M&A対象企業の両社が、両事業を新設する企業に引継がせる手法)
  • 吸収分割(一方の企業が持つ事業を、もう片方の企業に引継がせる手法)

このように、M&Aのスキームはたくさんあります。M&Aや事業承継のプロに相談し、何が最適かを決めていかなければなりません。

④株式会社でないと株式譲渡は採用できない

会計事務所の場合、一般的には個人事業主である税理士(公認会計士)が運営する事業所をいいます。個人事業主が運営する事務所は法人にはならないため、株式譲渡によるM&Aは実施できません。

したがって個人事業主である会計事務所のM&Aでは、事業譲渡の手法が用いられます。事業譲渡と株式譲渡では、手続きや税金、リスクなどが異なるため注意が必要です。

⑤早期のタイミングからM&A・事業承継の準備に取り掛かる

M&Aを行う際は、早期のタイミングからM&A・事業承継の準備に取り掛かる必要があります。全ての手続きが完了するまでには、多くの費用・時間がかかるでしょう。そのため、早期からM&Aの準備を整えておかなければ、M&Aの目的達成のタイミングを逃す可能性があります。

今後の法改正や業界構造の変化により、会計事務所業界におけるM&Aのニーズが減少するリスクも想定されるでしょう。M&Aの需要が減少傾向になってしまうと、買い手が見つからずにM&Aが実施できなくなる可能性があります。

そのほか、M&Aには専門知識が必要となるため、必要に応じてM&Aの専門家に相談するのがベストです。

⑥顧客との契約を打ち切られるおそれ

会計事務所業界では、税理士(公認会計士)本人に信頼を寄せ、仕事を依頼する顧客が多いといわれています。そのため、M&Aによって税理士や公認会計士が引退してしまった場合、契約を打ち切られる可能性も高くなります。

複数の顧客から契約を打ち切られてしまうと、当初想定されていた売上が達成できずに事業継続が困難となる可能性もあるでしょう。

そのため、代表の税理士や公認会計士にはそのまま残ってもらう、M&Aの際に顧客を説得してもらう、契約の打ち切りの場合は、買収断念や買収価格の変更を行うなどの対策を講じておく必要があるでしょう。

⑦税金対策

M&Aを進めていく上では、「税金対策」も考えていく必要があります。

例えば、会計士事務所を「事業譲渡」した場合、売却代金を受け取る「会計士事務所の売り手」には、法人税がかかるのです。

課税対象となるのは「売却益」で、「売却益」は譲渡する事業資産と負債の差額を超過した売却金額にあたり、法人税率はおよそ30%になります。

事業譲渡の場合、「消費税」もかかるでしょう。消費税額は、売却代金から「消費税対象外の資産(土地など)」を差し引いた額に「消費税率」を掛けた金額になります。

会計士事務所のM&Aで支払う必要が出てくる「税金」について、M&Aアドバイザーに相談をして、できるだけ支払う税金を抑えられるように対策を講じることが大切です。

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4. 会計士事務所のM&A・事業承継における売却相場

会計士事務所のM&A・事業承継で特に気になるのは、相場ではないでしょうか。事前に相場を知っておくことで、安値で売却されたり、相場より高額な価格を提示して交渉が決裂したりするリスクを軽減できるでしょう。

一方、買い手側も、高額な買収価格によってM&Aを行う事態を回避できる可能性が高まります。

大まかな相場は「1年間の顧問報酬」もしくは「2〜3年分の営業利益」

個人で運営する会計事務所の場合、「1年間の顧問報酬」もしくは「2〜3年分の営業利益」の金額をベースに、M&Aの金額を提示するケースが多くあります。

例えば年間顧問報酬が1,000万円のケースであれば、M&Aの金額も1,000万円前後となるのです。あるいは3年分の平均営業利益として、M&Aの金額は1,000万円×3= 3,000万円前後とするケースもあります。

DCF法などで計算した企業価値をもとに価格を決めるケースもある

税理士業務の他に、コンサルティングや経営分析などの業務も行っている会計事務所の場合、時価純資産法やDCF法などで計算した企業価値をもとに価格を決めるケースもあります。

時価純資産法とは、時価換算した純資産をベースに企業価値を算出する方法です。この場合、貸借対照表を用いるため、客観性の高い金額を提示でき、簡単に計算ができるといったメリットがあるでしょう。

ただし、将来的な収益性を加味できないことや帳簿が誤っている可能性もあるため、注意が必要です。一方、DCF法は、将来的に獲得すると予想されるキャッシュフローを基準に、割引率を用いて現在価値に直し、企業価値を算出する方法です。

将来性や収益性が加味できるメリットがある一方で、事業計画の達成の不透明性が加味されるリスクがあります。

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5. 会計士事務所のM&A・事業承継が増えている背景

M&A」という用語を聞くと、大企業が実施するもの・会社を売却したり、合併したりするイメージが浮かびます。しかし、近年では「会計士事務所」が「M&A・事業承継」をするケースが増えています

当記事では、会計士事務所のM&A・事業承継に焦点を当てて解説します。まず、会計士事務所のM&A・事業承継が増えている背景には、以下のような要因が挙げられるでしょう。

  1. 高齢化に伴う事業承継
  2. 開業リスクの回避
  3. 時間短縮
  4. M&A・事業承継の成立案件に多い売上高

①高齢化に伴う事業承継

昨今、税理士・会計士業界は高齢化が進んでいるといわれています。会計士の方の多くが60歳以上となっており、年齢の増加とともに、複雑で専門的な業務ができない方も出てきているのが現状です。

少子化が原因で「後継者不足」も深刻化しています。後継者がいないので、会計士事務所を引継ぎたくても、なかなかできないケースもあります。

この税理士業界の高齢化・後継者不足を背景に、M&Aの実施によって、会計士事務所を若い人材・後継者に引き継ぎ・譲渡して、事業承継しようといった流れが生まれてきているのです。

②開業リスクの回避

これは引継ぐ側の要因です。昨今の会計業界では、税理士法の改正に伴って会計士事務所同士の競争が激化しています。インターネットの普及によって、顧問先の奪い合いも発生しているのが現状です。

それまでの会計業界では、「会計士事務所」を開いているだけで、紹介などによって顧問先が自然と増えていく状態でしたが、近年は開業しても強力なライバルがいるために、顧客を右肩上がりに増やしていくことが難しい背景があります。

このような理由から、一から会計士事務所を作るよりも、すでに顧客を抱えている会計士事務所をM&Aによって引き継ぐことで「開業リスクを減らしたい」と考えている方もいるのです。

③時間短縮

時間短縮も引継ぐ側の要因です。会計士事務所を開業してから、事業が軌道に乗るまで時間がかかることがあります。せっかく開業したのに顧客が全く増えなかったり、職員を複数人雇用したら、会計士事務所自体の経営が苦しくなったりしてしまうでしょう。

しかしM&Aによって、すでに利益が出て軌道に乗っている会計士事務所を売却してもらうことで、会計士事務所の開業から、しっかり利益を出していくまでの過程を短縮するのが可能です。

④M&A・事業承継の成立案件に多い売上高

先述したとおり、経営者の高齢化に伴い、会計事務所をM&A・事業承継したいといったニーズは年々増加傾向にあります。有資格者の獲得や事業拡大、新規ビジネスの参入などで、会計事務所の買収を検討する買い手も多くなっていくでしょう。

会計事務所業界におけるM&A・事業承継の成立案件に多い売上高は、基本的に個人事業主が運営しているため、M&Aの成約金額は公表されていないケースがほとんどです。

通常、1,000万円〜1億円程度の売上高がある会計事務所であれば、M&Aが成立しやすいでしょう。ある程度の売上高を確保している会計事務所であれば、事業拡大を目指す買い手企業からのニーズが高い傾向があります。

会計士事務所のM&A・事業承継なら、M&A総合研究所にご相談ください。M&Aアドバイザーが専任担当につき、会計士事務所のM&A・事業承継をフルサポートいたします。相手先探し・交渉・契約手続き書類の作成などを一貫支援いたしますので、スムーズなM&A進行が可能です。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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6. 会計士事務所のM&A・事業承継の流れ

この章では、会計士事務所のM&A・事業承継の流れを解説します。このプロセスは、基本的に会計士事務所のM&A・事業承継に限ったものではなく、企業・会社のM&Aの際にも当てはまるものなので、しっかり理解しましょう。

会計士事務所のM&A・事業承継の流れは以下のとおりです。

  1. 事前準備
  2. 相談
  3. 仲介業務契約締結
  4. ターゲット選定
  5. 初回交渉
  6. 基本合意書締結
  7. デューデリジェンス
  8. 価格交渉
  9. 代金支払い
  10. 資産の移転・クロージング
  11. PMI

①事前準備

まずは、会計士事務所をM&Aによって後継者に引継ぐための「事前準備」を進めていきましょう。この事前準備の段階では、自分が会計士事務所を売却する目的を明確化していくことが大切です。

M&Aの仲介業務を任せる専門家を選定する必要があり、「M&A仲介会社」や「M&Aアドバイザリー(FA)」「銀行」「証券会社」「税務・会計事務所」「法律事務所」などがあります。

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②相談

会計士事務所を後継者に引継ぐ目的を明確化して、仲介業務を依頼する「M&Aアドバイザー」にある程度めぼしをつけたら、その業者に「会計士事務所のM&A」に関して相談をしましょう。

相談内容としては、「自分が希望する条件でM&Aは成立するか」「会計士事務所の譲渡価格はどのくらいになるのか」といったものが考えられます。

この相談によって、実際に会計士事務所の事業承継を進めていくかを判断するといいでしょう。

③仲介業務契約締結

会計士事務所のM&A・事業承継を進めていくことを決定したら、「M&Aアドバイザー」と「仲介業務契約の締結」をしましょう。この時に結ぶ契約としては、「秘密保持契約」があります。

秘密保持契約は、M&Aの取引や交渉の際に公開されていない情報を手に入れた場合に、その情報を第三者に公表しないことを約束するためのものです。

④ターゲット選定

M&A仲介会社などの「M&Aアドバイザー」と仲介業務の契約を済ませたら、次に自分の会計事務所を譲渡する相手、あるいは後継者となる個人を探します。いわゆる「売却先のターゲット選定」です。

M&A仲介会社に仲介業務を任せている場合には、自分の希望・目的にあった売却相手・後継者を、M&Aの取引候補としてリストアップしてくれます。その候補者の中から、交渉相手(譲渡先)を選びましょう。

⑤初回交渉

会計士事務所の譲渡先・後継者を選定したら、その譲渡相手と「交渉」を行います。

この初回交渉では、自分の会計士事務所の「より詳細な情報」を提示して、譲渡・売却相手との条件をすり合わせていきます。

条件面の交渉をするのも大切ですが、相手の経営者がどのような人なのかを判断するのも大切です。どのような目的で今回の買収を考えているのか・経営理念はどのように考えているのか・今後の事業はどのように展開する予定なのかなど、しっかりとヒアリングをしましょう。

もし、M&Aや事業承継で会計事務所を売却する場合、従業員は相手の経営者の下で仕事を行うようになります。クライアントや取引先にも相手の経営者の方針に合わせなければならないケースも出てくるでしょう。

このように考えた場合、実際に自分の会計事務所や従業員、クライアントを任せられるのかを判断する場でもあるので、しっかりと、相手の考え方・価値観が知れるような質問を行いましょう。

⑥基本合意書締結

交渉の結果、譲渡先・売却先との条件のすり合わせが完了したら、「基本合意書の締結」を行います。

基本合意は、会計士事務所の「売却側(売り手)」と「引継ぎ側・後継者側(買い手)」の認識が共通していることを確認するための契約になります。

そのため、この段階では「法的な拘束力」を持つものではありません。基本合意は、引継ぎ側・後継者側から書面で提出されることが主となっています。

⑦デューデリジェンス

基本合意締結が完了したら、デューデリジェンス(DD)」が実施されます。「デューデリジェンス」とは、「買収監査・資産査定」とも呼ばれます。

デューデリジェンスは、会計士事務所の「引継ぎ側・後継者側」が、売却相手の帳簿などを確認して、書面での交渉ではわからない会計士事務所の状況を把握するのが目的です。

デューデリジェンスは、通常「買い手側(引継ぎ側・後継者側)」の専門スタッフによって、主に以下の3種類が行われます。
 

  • 財務デューデリジェンス
  • 税務デューデリジェンス
  • 事業デューデリジェンス

財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスとは、企業・会社の経営成績や財政状態などを調査して、M&A後の「収益力」などを判断するために行われます。

具体的には、土地や株式といった資産をどのくらい保有しているか、債権はどのくらいあるのか、借入がどのくらいかといったことを調査します。

税務デューデリジェンス

税務デューデリジェンスとは、買収対象会社・譲渡される事業に関して、考えられる「税務リスク」をあらかじめ把握しておくために行われます。

M&Aによって事業承継された後、その事業の後継者は「税務リスク(将来的に追徴課税を受ける可能性)」を引継ぐことになるからです。

もし、しっかり調査しないまま、税務リスクのある会社・事業を引継ぐと、自分には関係のない税金を支払う可能性もあるのです。そのような事態を防ぐために「税務デューデリジェンス」が行われます。

事業デューデリジェンス

事業デューデリジェンスとは、M&A対象会社・事業の「ビジネスモデル」の把握や、「シナジー効果」の分析、「企業合併に伴うリスク」の評価などを行うために実施されます。

この事業デューデリジェンスによって、買収相手の事業の問題点を洗い出したり、価値を割り出したりするのができるでしょう。

⑧価格交渉

デューデリジェンスを行った結果、M&A・事業承継を進めるとする判断がなされた場合、詳細な条件の交渉、特に「売買・譲渡価格の交渉」が行われます。

この最終的な売却価格交渉の際には、相場価格(ここでは会計士事務所M&A・事業承継の相場価格)とかけ離れすぎた価格になっていないか、チェックしなくてはなりません。

⑨代金支払い

価格の交渉や、その他細かな交渉も完了したら、「最終契約」です。最終契約書が取り交わされたら、譲渡相手・後継者からの「代金支払い」が行われます。

⑩資産の移転・クロージング

代金支払いが無事に完了し、譲渡代金の入金を確かめたら、「資産の移転」を行います。つまり、ここではじめて「会計士事務所の完全な譲渡」が行われるのです。

⑪PMI

資産譲渡・クロージングが完了した後、PMIと呼ばれる統合作業が、M&A成功のためにはとても大切になってきます。

PMIとは「Post Merger Integration」の略で、当初想定していたM&A後の「統合効果」を最大化するための「統合プロセス」のことです。

M&Aは、企業・事業の買収・譲渡・合併が完了した後、M&Aによって期待されていた効果が発揮されて初めて「M&Aは成功か失敗か」が決まります。

M&Aによって、会計士事務所が他事務所と合併や後継者に引継がれた後、譲渡側は想定どおりに顧客や利益が増加するように、従業員・システム・ノウハウといった経営資源をしっかり統合していく必要があります。

7. 会計士事務所のM&A・事業承継における売却事例

この章では、会計士事務所の売却事例をご紹介します。

会計士事務所のM&A・事業承継事例①

東京都で「従業員8名」で活動していた会計士事務所では、「従業員の雇用の確保」「顧客へのサービス提供の継続」に不安を抱いていました。

そこで、東京都と千葉県に計4カ所の事業所を持つ「中堅の会計士事務所」への譲渡を検討しました。

結果的にM&Aが成立し、「全従業員の継続雇用」と「顧客へのサービス継続」という目的を実現しています。

会計士事務所のM&A・事業承継事例②

「事業歴およそ30年・従業員5人・年間売上およそ6,000万円」の会計士事務所では、後継者候補とされていた方が独立してしまったことで、事業承継プランが崩れてしまいました。

さらに、事務所の代表はすでに60代後半となっており、後継者を一から探して育てることが難しい状況でした。

そこで、第三者への事業譲渡で、「職員の雇用確保」と「顧客へのサービス継続」を目的に、会計士事務所のM&Aを行いました。

結果として、「事業年数15年・従業員50名」の中堅事務所への事業譲渡で、「従業員の雇用確保」と「顧客へのサービス継続」を実現しています。

8. 会計士事務所のM&A・事業承継の流れや相場まとめ

会計事務所業界では、税理士の高齢化により、今後人材不足が大きな問題となる可能性があるでしょう。このような状況で会計士事務所のM&A・事業承継の事例は、近年増加傾向にあります。

売り手側にとって、後継者不足や経営の安定化を実現できるM&Aは有用な手段です。会計士事務所のM&A・事業承継を行う際は、ポイントを意識して進めることが大切です。

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