婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収動向!事例、価格相場も解説

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

結婚式場やブライダルサービスなどの婚礼・ウエディング業界のM&Aについて分析しました。婚礼・ウエディング業界におけるM&Aでの売却・買収について、その動向や最新事例、売却・買収価格相場、成功させるポイントなどを解説します。

目次

  1. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収
  2. 婚礼・ウエディング業界の現状
  3. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収動向
  4. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収事例
  5. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却理由
  6. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収価格相場
  7. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させるポイント
  8. 婚礼・ウエディング業界のM&A・買収に積極的な企業
  9. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却時におすすめの相談先
  10. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収動向まとめ
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1. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収

人々が幸せを感じる場に立ち会い、華やかなイメージに彩られているのが婚礼・ウエディング業界です。婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収動向や事例、価格相場を解説する前に、まずは婚礼・ウエディング業界の定義やM&Aについて概要を紹介します。

婚礼・ウエディング業界とは

婚礼・ウエディング業界とは、結婚式場をはじめ挙式や披露宴などを行う施設や周辺サービスを提供する業界を指し、「ブライダル業界」とも呼ばれます。

90年代の結婚式はホテルで行うことが主流でしたが、近年では、ゲストハウス・レストラン・リゾートなど結婚式場の多様化が進み、顧客のニーズに対応できるよう結婚式場も多様化されてきました。

一方で、少子化や晩婚化によって婚礼件数は減少傾向にあり、市場の縮小に伴い生存競争は激しいでしょう。

婚礼・ウエディング業界の特徴

婚礼・ウエディング業界特有の特徴は2つあります。第1の特徴は、基本的に顧客にリピーターがいないことです。利用客による口コミ効果は期待できますが、再利用はないことから、絶えず新規の顧客獲得活動をする必要があり、広告宣伝費にウエイトがかかります。

第2の特徴は、忙しい曜日や時期の片寄りです。結婚式・披露宴のほとんどは土日祝日に開催されます。季節としては夏と冬を避けることが多いです。婚礼・ウエディング業界では、従業員の雇用の仕方などを工夫する必要があります。

地方では、その地域特有の慣習や仕来たりに沿って行事が実施されることも多く、婚礼・ウエディング業界としては、地域ごとの風習に合わせた営業スタイルも取らなければなりません。

M&A・売却・買収とは

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、2つ以上の異なる企業が1つになる「合併(Mergers)」、他の企業を譲り受ける「買収(Acquisitions)」など、資本移動を伴う企業の組織再編行為の総称です。

以前は、M&Aといえば大企業が行うイメージが強かったですが、近年は、中小企業の経営者が、事業承継や成長戦略の選択肢として活用するケースも増えてきました。

婚礼・ウエディング業界では、収益や営業エリアの拡大を目指した同業の買収に加えて、婚礼用ドレスやジュエリーのレンタル・販売などの周辺事業を行う企業を買収する例も多く見られます。

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2. 婚礼・ウエディング業界の現状

婚礼・ウエディング業界は、新型コロナウィルス感染拡大問題により、ダメージを受けた業種の1つとされています。その実態について確認しておきましょう。

市場規模の推移

矢野経済研究所から発表された「ブライダル市場に関する調査(2023年)」によると、婚礼・ウエディング業界の市場は2015(平成27)年の2兆5,480億円から毎年微減し、2018(平成30)年は2兆3,870億円でした。

2019年は2兆4,171億円と微増に転じたものの、2020年はコロナ禍の影響で1兆2,672億円と2兆円の大台を大きく割り込みました。

2021年には主力の挙式披露宴の施行が回復が見られ、2022年のブライダル関連市場規模は、前年比118.5%の1兆7,577億円の見通しとしており、2023年は前年比114.9%の2兆190億円と予測しています。

出典:出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3245

抱える課題と今後の展望

婚礼・ウエディング業界では、もともと少子化による婚礼数の減少という課題がありました。昨今は、それに加えて、晩婚化により従来のような披露宴を行わない、あるいは簡略化するケースも増え、婚礼・ウエディング業界には逆風ともいえる状況です。

そのうえ、コロナ禍が直撃し、経営がひっ迫する婚礼・ウエディング会社も少なくありません。ウィズコロナ、アフターコロナの時代に、今後、婚礼・ウエディング業界がどのように立て直しを図るのか、オンラインの活用など各社の戦略が注目されます。

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3. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収動向

ここでは、婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収動向を、その背景とともに解説します。

  1. 少子化・晩婚化に伴い案件数の減少が経営に影響
  2. 結婚式場を使用したブライダル離れによる収益減
  3. 収益の拡大・事業の変化をもたらすためのM&Aが増加

①少子化・晩婚化に伴い案件数の減少が経営に影響

内閣府「少子化社会対策白書」によれば、国内の婚姻件数は1972(昭和47)年の109万9,984組をピークに減少を続け、その45年後である2017(平成29)年には過去最低となる60万6,866組となりました。

これは、少子高齢化により国内人口の減少が進んでいることが主な要因として挙げられます。同時に、晩婚化が進んだことによって、挙式・披露宴は行うものという従来の価値観にも変化が見られるようになりました。

案件数の減少は、婚礼・ウエディング業界の企業経営にダイレクトに影響を与えるため、M&Aによる売却・買収を通じて企業の存続を図る経営者が増えています。

②結婚式場を使用したブライダル離れによる収益減

婚礼・ウエディング業界では、利用者の価値観の変化により、結婚式場を使用したブライダル離れも深刻な問題です。

自社で結婚式場を所有しブライダルサービスを提供する企業は、結婚式場の建設費・維持費・人件費などの莫大な投資を、長期間をかけて回収していくビジネスモデルです。

しかし、近年は、ゲストハウスやレストランを会場にして、身近な人々だけを招待する挙式スタイルへとトレンドが変化しました。それが、結婚式場を運営する企業の収益を大きく悪化させています。

③収益の拡大・事業の変化をもたらすためのM&Aが増加

上述した背景から、婚礼・ウエディング業界では、収益の拡大・事業の変化をもたらすためのM&Aが増加しています。

M&Aを通じて、所有する結婚式場の増加やエリア拡大を図る戦略をはじめ、ドレスやジュエリーのレンタル・販売企業や、写真や動画撮影サービスを提供する企業とのM&Aも増加中です。このように、業界の厳しい先行きを見据えた経営戦略の1つとして、M&Aが活用されています。

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4. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収事例

ここでは、婚礼・ウエディング業界におけるM&A・譲渡・売却事例を紹介します。

2020年以降のM&A最新事例10選

まずは、2020年以降に実施された婚礼・ウエディング業界におけるM&A・譲渡・売却事例を紹介します。

  1. ビューティ花壇による子会社のOne FlowerとクレアのM&A
  2. ブラスによるアロウブライトのM&A
  3. 松屋による連結子会社の合併
  4. ケン不動産リースによるテイクアンドギヴ・ニーズ子会社のM&A
  5. aedamによるラビアンローゼとウィンクルのM&A
  6. 長沼によるタキオンのM&A
  7. パートナーエージェントによるMクリエイティブワークスのM&A
  8. ゼットンによるエルフラットのM&A
  9. こころネットによるベトナムの墓石加工販売会社のM&A
  10. 平安レイサービスによるさがみライフサービスとシンエイ・クリエート・サービスのM&A

①ビューティ花壇による子会社のOne FlowerとクレアのM&A

2023年8月、ビューティ花壇は、完全子会社であるOne FlowerとクレアM&Aを行いました。M&Aの手法は吸収合併です。

ビューティ花壇は、生花祭壇や供花等の葬儀における主要商品の設営までを含めた総合フラワービジネスを行っている企業です。One Flowerは、生花祭壇、ブライダル装花事業を行う会社で、同様にクレアも生花祭壇事業を行っていました。

吸収合併の目的は、グループ内の連携や経営責任の明確化、経営人材の育成などを強化する必要性があるとしており実施しました。

ビューティ花壇は、今回の吸収合併によりさらなる業容拡大と企業価値向上を目指します。吸収合併による新会社の社名は「株式会社ビューティ花壇西日本」です。

②ブラスによるアロウブライトのM&A

2022年9月、ブラスは、アロウブライトの全ての株式を取得し、連結子会社化しました。ブラスは、東海地方中心として貸切型ゲストハウスによるハウスウエディング事業を行っています。

一方、対象会社のアロウブライトは静岡県浜松市に拠点を置くフォトウエディングスタジオです。特徴として、静岡県最大規模の撮影セットを完備しています。今回のM&Aにより、ブラスはブライダル領域のさらなる拡大を目指します。

③松屋による連結子会社の合併

2021年4月、松屋は、連結子会社4社を合併させました。対象となったのは、アターブル松屋ホールディングス、アターブル松屋、アターブル松屋フードサービス、アターブルイーピーエヌです。

4社は、ホールディングスカンパニー体制を取り、婚礼宴会事業などを行っていましたが、コロナ禍により業績が悪化したため、効率化を進めて業績改善することを目的に4社の事業を1社に統合することになりました。

アターブル松屋ホールディングスを存続会社とする吸収合併後、社名はアターブル松屋に変更されています。なお、合併に際して30名程度の規模で希望退職者募集も行われました。

④ケン不動産リースによるテイクアンドギヴ・ニーズ子会社のM&A

2020年9月、ケン不動産リースは、テイクアンドギヴ・ニーズが保有する同社の子会社グッドラック・コーポレーションの全株式(全体の91.8%)を取得し、グッドラック・コーポレーションを子会社化しました。取得価額は公表されていません。

ケン・コーポレーショングループのケン不動産リースは、不動産事業とホテル事業を行っています。グッドラック・コーポレーションは、婚礼・ウエディング事業を行っているテイクアンドギヴ・ニーズの子会社として、海外・リゾートウエディング事業を行ってきました。

ケン不動産リースとしては、テイクアンドギヴ・ニーズからの提案を受け、事業拡張策としてM&Aを実施した模様です。

⑤aedamによるラビアンローゼとウィンクルのM&A

2020年8月、aedamは、ラビアンローゼとウィンクルから事業譲渡を受けました、譲渡価額は公表されていません。aedamは、愛知県で婚礼衣裳などの貸衣装事業とフォトスタジオ事業を行っています。

譲受した事業は、ラビアンローゼのホテルアークリッシュ豊橋衣装室事業と、ウィンクルの結婚式場スウィートローゼスクラブ岡崎運営事業です。aedamとしては、事業拡大と関連事業への進出を同時に行ったことになります。

⑥長沼によるタキオンのM&A

2020年4月、長沼は子会社のダイヤモンド・ノットを通じて、タキオンから事業譲渡を受けました。譲渡価額は公表されていません。長沼は、長沼静きもの学院の運営、エステティック事業、美容室運営、きもの販売及びきものレンタル事業などを行っています。

タキオンから譲渡されたのは、婚礼式場「乃木會館」運営事業です。長沼としては、グループの拡大と周辺新規事業への進出を果たしました。

⑦パートナーエージェントによるMクリエイティブワークスのM&A

2020年3月、婚活事業、カジュアルウエディング事業、結婚式2次会事業などを行うパートナーエージェントは、フォトウエディングサービス事業などを行うMクリエイティブワークスの株式85.1%分を追加取得して、完全子会社化しました。

取得費用は、取得価額は2億1,400万円と発表されています。パートナーエージェントは、これまで提供してきた婚礼・ウエディングサービスの中にフォトウエディングはなかったため、これを補完し大きなシナジー効果が得られると判断した模様です。

⑧ゼットンによるエルフラットのM&A

2020年3月、ゼットンは、エルフラットから事業譲渡を受けました。譲渡価額は公表されていません。ゼットンは、飲食店等の経営、開発およびコンサルティングなどを行っており、東京を中心に日本各地とハワイや韓国でも飲食店を開いています。

エルフラットから譲渡された事業は、三重県四日市市の結婚式場「YOKKAICHI HARBOR尾上別荘」です。ゼットンは、レストランブライダルの企画・運営事業も行っており、同社のコンセプトに合致し、事業拡大が図れると判断しました。

⑨こころネットによるベトナムの墓石加工販売会社のM&A

2020年2月、こころネットが、ベトナムの墓石加工販売会社KANNO VIETNAM TRADING COMPANY LIMITEDを子会社化しました。こころネットは、冠婚葬祭事業を幅広く手掛けています。

今回の買収は、婚礼・ウエディング事業と直接のかかわりはありませんが、社内の各事業底上げ策の一環として、ベトナムでの低コストの墓石加工によるコスト削減効果を見込むものです。

⑩平安レイサービスによるさがみライフサービスとシンエイ・クリエート・サービスのM&A

2020年1月、平安レイサービスは、シンエイ・エンタープライズの子会社である、さがみライフサービスとシンエイ・クリエート・サービス、それぞれの全株式を同時に取得し、どちらも完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。


平安レイサービスは、冠婚葬祭事業を行っている企業です。神奈川県小田原市のさがみライフサービスは葬祭事業、同県同市のシンエイ・クリエート・サービスはホテルを経営しています。平安レイサービスとしては、同エリアにおける冠婚葬祭事業のシェア拡大が狙いです。

2019年以前のM&A事例9選

ここからは、2019年以前に実施された婚礼・ウエディング業界におけるM&A・譲渡・売却事例です。

  1. くふうカンパニーによるフルスロットルズ、アールキューブのM&A
  2. パートナーエージェントによるメイションのM&A
  3. こころネットによる北関東互助センターのM&A
  4. カヤックによるサンネットのM&A
  5. テイクアンドギヴ・ニーズがマリーゴールドのドレスショップ事業を譲受
  6. ブラスがビーラインのブライダル事業を譲受
  7. ポラリス・キャピタル・グループによるノバレーゼの株式公開買い付け
  8. IBJによるウインドアンドサンのM&A
  9. エスクリによるフジ・メディア・ホールディングス子会社ストーリアのM&A

①くふうカンパニーによるフルスロットルズ、アールキューブのM&A

2019年6月、くふうカンパニーは、ウェディングドレス販売や結婚式のプロデュースを事業とするフルスロットルズの株式を取得し、孫会社化しました。くふうカンパニーは、2018年11月には、結婚式のプロデュース事業を手がけるアールキューブを傘下におさめています。

今回のM&Aにより、「みんなのウエディング」などのブライダル情報サイト運営から結婚式当日のサービスまで、トータルに手がけられる体制づくりを目指すとのことです。

②パートナーエージェントによるメイションのM&A

2019(平成31)年2月、パートナーエージェントは格安婚サービス「スマ婚」を提供するメイションの全株式を取得し、完全子会社としました。

パートナーエージェントは、婚活支援とブライダル領域は相乗効果が高く、婚活から成婚後まで一気通貫したサービスを提供することで顧客利益の最大化が図れることなどを、株式取得の主な理由としています。

③こころネットによる北関東互助センターのM&A

2018年12月、福島県を拠点として冠婚葬祭事業を行うこころネットは、栃木県の北関東互助センターの全株式を取得し子会社化しました。近年、こころネットグループはM&Aを成長戦略の1つと位置付け、グループの規模拡大を積極的に進めています。

こころネットは、およそ半世紀にわたって栃木で冠婚葬祭事業を手がける北関東互助センターを買収することによって、営業エリアの拡大とシナジー創出を図る目論見です。

④カヤックによるサンネットのM&A

2018年2月、Web制作会社のカヤックは、ブライダル事業を行う子会社プラコレを通じて、ブライダルメディアを運営するサンネットの株式を取得し、グループ会社化しました。

サンネットは、沖縄を拠点にブライダルメディアやマッチングメディアの運営を行う企業であり、近年の沖縄観光市場の拡大に伴い「沖縄リゾートウェディング」が注目を集めています。

カヤックは、サンネットのグループ会社化を沖縄進出の足がかりにするとともに、グループ全体としての企業価値向上と、持続的な組織力の強化を目指すのが目的です。

⑤テイクアンドギヴ・ニーズがマリーゴールドのドレスショップ事業を譲受

2017年11月、ハウスウェディングのパイオニアとして知られるテイクアンドギヴ・ニーズは、ドレスショップや結婚式場を運営するマリーゴールドの一部ドレスショップ事業を、約1億5,000万円で買収しました。

譲渡の対象は、マリーゴールドが運営する神戸・姫路・京都・大阪のドレスショップ4店舗です。テイクアンドギヴ・ニーズは、外部に委託していたドレスショップ事業の内製化によって、収益力の向上を図るとしています。

⑥ブラスがビーラインのブライダル事業を譲受

2017年7月、東海地方でブライダル事業を展開するブラスは、静岡県でブライダルおよびレストラン事業を手がけるビーラインより、ブライダル事業「ヴィラエッフェ」を譲り受けました。「ヴィラエッフェ」は、静岡県沼津市に位置するチャペルを備えたレストランです。

ブラスは、静岡県における営業基盤の強化につながるものとして、完全貸切のハウスウエディング会場にリニューアルし、さらなる事業の成長発展を図るとしています。

⑦ポラリス・キャピタル・グループによるノバレーゼの株式公開買い付け

2016(平成28)年9月、PEファンドのポラリス・キャピタル・グループは、当時、東証一部上場企業であった結婚式場運営のノバレーゼを、株式公開買い付け(TOB)によって買収すると発表しました。

同年10月にTOBは完了し、ポラリス・キャピタル・グループは93.28%の株式を取得、12月に株式売渡請求を実施し完全子会社化しています。

ノバレーゼは、2003(平成15)年より外資系高級ホテルを思わせる結婚式場を次々に展開し、2006(平成18)年には東証マザーズに上場しました。2010(平成22)年には東証一部に市場変更を実施するなど、婚礼・ウエディング業界の有力企業として知られています。

その一方で、近年は結婚式場の建設費高騰や、レストラン事業の不振が事業拡大の足かせとなっており、ポラリス・キャピタル・グループの経営参画を通じて、新規出店の加速による事業成長や効率化およびコスト削減を行う算段です。

⑧IBJによるウインドアンドサンのM&A

2016年6月、婚活・結婚支援サービスを事業とするIBJは、ウエディング事業への参入を企図して、「ウェディングnavi」を運営するウインドアンドサンを子会社化しました。

このM&Aによって、IBJのサービスにおける成婚カップルを「ウェディングnavi」にスムーズに送客することが可能となり、さらなる収益拡大が見込まれています。

なお、ウインドアンドサンは2019年1月に「IBJウエディング」に社名を変更しており、従来のブライダル事業にIBJの婚活事業を組み入れた、新たなビジネスモデルを構築中です。

⑨エスクリによるフジ・メディア・ホールディングス子会社ストーリアのM&A

2015(平成27)年12月、エスクリは、フジ・メディア・ホールディングスから、婚礼プロデュースを手がけるストーリアの全株式を取得し、子会社化しました。

エスクリは、東京・名古屋・大阪を中心に17の結婚式場を運営しており、ストーリアが運営する「南青山サンタキアラ教会」、「パラッツォ ドゥカーレ麻布」の2つを譲受することで、ブライダル事業のシェア拡大を図ります。

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5. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却理由

婚礼・ウエディング業界のM&A・売却理由には、主に以下の6つが挙げられます。それぞれの理由について、くわしく見ていきましょう。

  1. 後継者問題の解決
  2. 従業員の雇用先の確保
  3. 大手グループの傘下に入り経営を安定
  4. 個人保証・担保の解消
  5. 譲渡・売却益の獲得
  6. 結婚式場・ブライダル会場の廃業費用の支払いを回避できる

①後継者問題の解決

他の業界と同様、婚礼・ウエディング業界でも事業承継問題の解決は課題となっており、子供がいない・業界の先行きを案じて継がせたくない経営者も少なくありません。そのようなケースでは、M&Aを通じて第三者に会社を譲る選択は非常に有効です。

譲渡後は、ブライダル事業の運営ノウハウを有する人物が経営に参画するので、安心して会社を託せます。

②従業員の雇用先の確保

結婚式場の運営を行う企業には、サービスに関わる数多くの従業員が勤務しています。業界の先行きが不安視される中で、従業員が働く環境をいかに維持していくかを考えるのも経営者の役目です。

M&Aでは、基本的に譲渡側の希望が優先されるため、従業員の雇用・待遇の維持を条件とすることで、従業員が勝手に解雇されたり、望まない形で待遇が変わったりすることは、まずありません

③大手グループの傘下に入り経営を安定

一般的に、中小のブライダル企業は、業績が不安定気味といえます。しかし、大手グループの傘下に入れれば、経営基盤が安定して、より積極的な事業戦略を立てられるでしょう。

大手のブランドを生かして人材採用がスムーズに行えるようになったり、事業運営にかかるコストを削減できたりと、さまざまなグループメリットも享受できます。

④個人保証・担保の解消

婚礼・ウエディング業界では、金融機関などから融資を受けて結婚式場を建設するのが一般的であり、経営者は個人保証や担保を差し入れています。

したがって、万が一、業績不振によって事業を廃業しようとした場合は、手数料や負債などは経営者が負担する必要があり、莫大な借金に個人で対応しなければなりません。

しかし、M&Aによる会社の譲渡に成功すれば、事業に係る負債を譲受企業が引き継がれるので、経営者の個人保証や担保が解消されます。

⑤譲渡・売却益の獲得

株式譲渡では、株主である経営者に対価が支払われるため、売却・譲渡益を得られます。譲渡価額は、保有する資産や収益力、事業の将来性によって変わりますが、会社を譲渡・売却することで、老後の生活資金の確保や新事業の資金などを得られるのです。

⑥結婚式場・ブライダル会場の廃業費用の支払いを回避できる

仮に、婚礼・ウエディング会社が廃業する場合、さまざまな廃業費用が発生します。婚礼・ウエディング会社の場合は、結婚式場を取り壊さなければなりません。相当額の出費となるでしょう。

しかし、M&Aで会社を売却できれば、結婚式場を取り壊す必要もなく、その他の廃業費用の出費もありません

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6. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収価格相場

この章では、婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収の相場や、企業価値評価を算定する方法を解説します。

企業価値評価を算定する方法

婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収価格は、保有する結婚式場の規模や立地、収益力や将来性、市場動向によって大きく変動するため、一概に「相場価格はこのくらい」と断言するのは困難です。

しかし、企業価値算定によって自社の企業価値を把握することで、実際にM&Aを行った際にどのくらいの価値がつくかの判断はできます。

婚礼・ウエディング業界において、特に結婚式場などの施設を保有している企業の場合、その企業価値評価はDCF(Discounted Cash Flow)法をベースに、さまざまな算定方法を組み合わせて算出するのが一般的です。

DCF法とは、その事業が将来得られる利益の3〜5年分を予測し、起こる可能性のあるリスク分を差し引いて企業価値を算出する方法になります。

企業価値評価の算定はプロに任せるほうが良い理由

上記のように、ある程度の企業価値評価を算出することは可能ですが、婚礼・ウエディング業界は時代とともにサービスの幅も広がっており、簡単に算出できるわけではありません。

婚礼・ウエディング業界は他の業界に比べて、特にトレンドの移り変わりが激しく、将来の予測が立てづらい面もあり、正確な企業価値評価の算定は、業界に精通した専門家に任せるのが現実的といえるでしょう。

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7. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させるポイント

ここでは、婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させるに、どのような点を意識して行えばよいのか解説します。婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させる主なポイントは、以下の5つです。

  1. 計画的に準備を行う
  2. M&Aの目的を明確にする
  3. M&Aの際に譲れない条件を決める
  4. 立地や収益性などの強みをアピールする
  5. M&Aの専門家に相談する

①計画的に準備を行う

婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させる1つ目のポイントは、計画的に準備を行うことです。計画的に準備を行わないと、譲渡までの期間が長くなったり、市場の変化によってM&Aの機会を逃したり、理想の形でM&Aの売却が難しくなる可能性があります。

M&Aの目的を明確にしたうえで、自社の強みや市場における立ち位置を確認し、譲渡先の候補となる企業探しから成約に至るまで、しっかりとした道筋をつけるようにしましょう。

②M&Aの目的を明確にする

2つ目に紹介する婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させるポイントは、目的を明確にすることです。M&Aは、売り手側の目的に応じて、理想の買い手となる企業は異なります。

したがって、目的が明確でないままでは、相手探しも交渉もうまくいかず、たとえ会社の譲渡がかなったとしても、後悔する結果になるかもしれません。目的を明確にすることが、M&Aを成功させる大前提といえます。

③M&Aの際に譲れない条件を決める

婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させる3つ目のポイントは、M&Aの際に譲れない条件を決めることです。M&Aは、双方の合意があってはじめて成立します。

しかし、売り手があまりに多くの条件を挙げてしまうと、大半の買い手は敬遠しマッチングの機会を逸してしまうでしょう。「これだけは絶対に譲れない」という条件を絞り込むことで、交渉の際にも心の余地が生まれ、話し合いもスムーズに進めることが可能です。

④立地や収益性などの強みをアピールする

婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させる4つ目のポイントは、立地や収益性などの強みをアピールすることです。所有する結婚式場のアクセスの良さ・規模・稼働率・優秀なウェディングプランナーの存在などは、買い手側がチェックするポイントになります。

加えて、現在の収益力がM&Aによってどれほど成長する余地があるのかという点は、譲渡価格にも直接、関わってくる要素です。したがって、自社の強みをしっかりとアピールしつつ、企業価値を高めるためのビジネスの磨き上げも必要になります。

⑤M&Aの専門家に相談する

最後に紹介する婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させるポイントは、M&Aの専門家に相談することです。M&Aを進めるうえでは、財務・税務・法務など広範な知識と経験が必要になります。

買い手企業はすでに複数の買収を経験していることも多いため、交渉ではどうしても売り手側が不利になってしまい、理想的なM&Aを実現しづらいかもしれません。

M&A仲介会社の役割は、売り手・買い手双方の利害を調整し、お互いにとって良い条件となるよう、M&Aの仲立ちをすることです。専門家に相談してサポートを受けることで、理想とするM&Aでの売却を実現する可能性が大きく高まります。

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8. 婚礼・ウエディング業界のM&A・買収に積極的な企業

ここでは、婚礼・ウエディング業界において、特にM&A・買収に積極的な企業3社を紹介します。

こころネット

こころネットは、2005(平成17)年11月に、アイトゥアイ・グループとカンノ・グループの経営統合によって誕生しました。アイトゥアイ・グループは1892(明治25)年創業の冠婚葬祭会社、カンノ・グループは1929(昭和4)年創業の石材会社です。

その後、2009(平成21)年の東洋石材センターの吸収合併を皮切りに、株式譲渡、事業譲渡、第三者割当増資、経営統合などの手法で、2021年11月現在、14社にもおよぶM&Aを実施しています。

アスカネット

アスカネットは、1995(平成7)年7月、飛鳥写真館の事業部が独立して設立されました。フォトブック(婚礼用などの個人向け写真集)事業、葬儀用の遺影写真や演出サービスをするフューネラル事業、空中結像技術を用いた空中ディスプレイ事業などを行っています。

アスカネットのM&A戦略は、広義のM&Aとされる資本業務提携を用いるものです。2017年2月以降、3社と資本業務提携を結び、事業の拡張に生かしています。

エスクリ

エスクリは、2003(平成15)年6月に設立されました。挙式・披露宴の企画・運営を行う婚礼・ウエディング事業を行っています。エスクリのM&A戦略は、売り手の会社を買収するのではなく、必要な事業のみを買収する事業譲渡によって行われてきました。

しかし、2020年からのコロナ禍で事業が打撃を受けた対策として、同年7月にティーケーピーと資本業務提携、同年8月にSBIホールディングスと資本業務提携を結んでいます。

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9. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却時におすすめの相談先

婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を検討される際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、中堅・中小企業の案件を取り扱うM&A仲介会社です。

中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所では、案件ごとにM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となり、フルサポートいたします。通常は半年~1年以上かかるとされるM&Aを、最短3カ月での成約実績も有しており、機動力も特徴です。

M&A総合研究所の料金体系は、完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)で、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。随時、無料相談も受けつけておりますので、婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を検討される際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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10. 婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収動向まとめ

婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収を成功させるためには、業界の動向や市場環境をきちんと見極め、ポイントを押さえて進めていくことが大切です。交渉をスムーズに行うには、専門家のサポートが欠かせません。

専門知識と豊富な経験・実績を有するM&A仲介会社に相談することで、婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収が成功する確率を高められます。本記事の概要は以下のとおりです。

・婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収動向
→少子化・晩婚化に伴い案件数の減少が経営に影響
→結婚式場を使用したブライダル離れによる収益源
→収益の拡大・事業の変化をもたらすためのM&Aが増加

・婚礼・ウエディング業界のM&A・売却理由
→後継者問題の解決
→従業員の雇用先の確保
→大手グループの傘下に入り経営を安定
→個人保証・担保の解消
→譲渡・売却益の獲得

・婚礼・ウエディング業界のM&A・売却を成功させるポイント
→計画的に準備を行う
→M&Aの目的を明確にする
→M&Aの際に譲れない条件を決める
→立地や収益性などの強みをアピールする
→M&Aの専門家に相談する

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