栃木県のM&A・事業承継の現状は？案件一覧や事例・公的支援も紹介

栃木県では、1960年代以降の工業化政策により、第1次産業から第2次産業への転換が進み、県内総生産や県民所得が増加しました。2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響で景気は一時低迷しましたが、その後回復傾向にあり、2017年度の県内総生産は9兆1,513億円で全国15位、1人当たり県民所得は341万円で全国3位となりました。

全国的に第3次産業の割合が増える中、栃木県は第2次産業、特に製造業の割合が全国平均より高く、2017年度の県内総生産に占める第2次産業の割合は47.1％と全国2位でした。また、2018年度の輸出額は7,394億円に達し、2019年度の外国人宿泊数は過去最高の24万7千人を記録するなど、国内需要の減少を補うための海外市場への展開が進んでいます。

参考：栃木県「本県産業の特徴と課題」

栃木県のM&A・事業承継の現状を3つの観点から解説します。

全国的に見て第二次産業の割合が比較的高い栃木県では、建設業をはじめ第二次産業の企業によるM&Aが盛んに実施されています。近年における第二次産業の企業が携わった代表的なM&A事例は以下のとおりです。

• ミライト・ワン、顧客や社会の課題解決、地域の活性化を目的に光陽ホールディングスを子会社化（2024年3月）
• 四電工、収益基盤の拡充を目的に横山工業を子会社化（2021年4月）
• ワキタ、既存拠点とのシナジー効果を目的に日東レンタルを子会社化（2024年9月）

栃木県内の企業における後継者不在率は55.1％（3440社中1896社）であり、2011年の65.2％から徐々に低下し、2019年に初めて6割を下回りました。その後も減少が続き、今回の調査では3年連続で過去最低を更新しました。

全国平均の後継者不在率は52.1％であり、栃木県は全国より3.0ポイント高く、後継者選定の進捗がやや遅れていることが分かります。全国の後継者不在率も年々減少しており、2018年の66.4％から今回の52.1％まで低下しました。

参考：帝国データバンク「後継者不在に関する栃木県内企業の実態調査（2024 年） 」

2023年に栃木県内で休業・廃業、解散した企業は807社に上り、前年より53社増加し、過去5年で最多となりました。企業総数に対する休廃業・解散率は3.76％で、前年を0.26ポイント上回りました。

業種別では、建設業が130社で最も多く、次いでサービス業82社、小売業70社、製造業63社、卸売業41社が続きます。地域別では宇都宮市が226社と最多で、小山市、足利市、栃木市、佐野市がそれに続きました。地域別の休廃業・解散率では、那須郡が4.98％と最も高く、芳賀郡、小山市、佐野市が続いています。

また、休廃業・解散企業のうち、直前の決算が黒字だった企業は54.8％を占めました。帝国データバンク宇都宮支店は、原材料価格の高騰による資金繰りの悪化や将来への不安から、「あきらめ廃業」が増加していると分析しています。

参考：NHK「栃木県内 去年 休業・廃業・解散した企業 過去５年で最多に」

栃木県など関東・甲信越エリアで、実際に公開されている譲渡希望案件を紹介します。

約10社の海外インテリアメーカーとの日本総代理店契約を保有し、誰もが知る外資ホテル、テーマパーク、外資ブティックなどの主要顧客を持っています。インテリア商社・内装工事を手掛ける企業です。
 

元請企業からの一次請けの立場で、多数の外注先を抱えている会社です。業歴数十年以上の実績から、元請企業からのインバウンド案件が100％です。マンション、オフィスビルにおいて幅広い実績があります。進行期業績からV字回復、今後も継続する見込みです。
 

地元での高い知名度があり、高い継続率・リピート率を誇ります。東大、京大など最難関大学へ、毎年合格者を輩出しています。EBITDA5,000万円を安定して計上しています。キーマンも複数おり、現場の自走が可能です。
 

原価高騰の影響を受けやすい通常の豆腐製品に依存しない売上構成です。がんもどき、風味豆腐などの個性ある製品群が存在します。製造地域自体にブランド価値があり、創業約100年と地域での知名度も抜群です。
 

管理戸数：約1,250戸（アパート、テナント、駐車場、土地など）、テナント管理戸数は地域トップクラスです。地域密着の企業として長年の業歴があり、土地仕入・建築・管理まで行っています。

金融機関とのコネクションが強固であるため土地情報が安定的に入ってきます。新築建築・リフォーム工事も手掛けています。
 

群馬県のM&A・会社売却・事業 承継の現状や動向については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

弊社がお手伝いさせていただいたM&Aのうち、栃木県での成約事例をご紹介いたします。

弊社では、排水処理コンサルティング業の企業様と水処理設備のコンサルティング業の企業様とのM&Aをお手伝いいたしました。
譲渡企業と譲受企業の社長のお二方に、M&Aを決意した背景や今後へのビジョンについてインタビューいたしました。
詳細は以下のURLからご覧ください。

【譲渡企業：排水処理コンサルティング業K社】
創業34年　栃木県本社
主に工場等の廃水診断やコンサルティング、浄水設備の運転管理等を行う。取引先は地場企業から大手企業まで幅広く、排水処理に関する確かな技術と長年の誠実な取引で信頼関係を築いています。
　　
【譲受企業：環境関連ソリューション業L社】
創業50年　大阪府本社
水処理設備のコンサルティングを中心とした環境事業だけでなく、エネルギー関連事業や不動産業も併せて行う。

近年における栃木県のM&A・事業承継ニュースをお伝えします。

フロンティア・マネジメントは、連結子会社であるフロンティア・キャピタルを通じて、ホビーリンク・ジャパン（栃木県佐野市）の親会社であるイーグルインベスコ（東京都中央区）を子会社化することを決定し、株式及び新株予約権譲渡契約を締結しました。

フロンティア・マネジメントは、経営コンサルティングやM&Aアドバイザリー、投資事業などを展開する企業です。一方、ホビーリンク・ジャパンは玩具の小売業を行っています。

今回の買収は、ホビー用品のEC市場が世界的に成長の可能性を持つと判断したことにより、フロンティア・マネジメントが投資を通じて同社の事業拡大に貢献することを目的としています。

ワキタは、日東レンタル（栃木県小山市）の株式90％を取得し、子会社化することを決定しました。

ワキタは、土木・建設機械の販売・賃貸を中心とする建機事業のほか、商事事業として映像・音響機器や介護用品の販売・賃貸を行っています。日東レンタルは、土木・建設機械の製造・販売を手掛ける企業です。

今回のM&Aにより、ワキタは日東レンタルを連結子会社とすることで、同地区における建機事業の既存拠点とのシナジー効果を高め、事業の拡大と効率化を図ることを目的としています。

栃木県のM&A・事業承継・会社売却案件を探す手段としては、主に以下3つの方法があります。

1. 公的機関・地元の金融機関などに相談する
2. M&Aマッチングサイトを活用する
3. M&A仲介会社・専門家に相談する

まず、M&A・会社売却・事業承継案件を探す手段としては、栃木県の公的機関・金融機関に相談する方法があります。

主な機関ごとの特徴は以下のとおりです。

栃木県事業承継・引継ぎ支援センターに限らず、全国の事業承継・引継ぎ支援センターが行っている独自事業である後継者人材バンクも活用できます。後継者人材バンクとは、事業承継により経営者となることを望む起業家と、後継者不在の中小企業をマッチングするサービスです。

登録された起業家の希望と、後継者不在企業側の条件が一致した場合に両者を引き合わせ、双方が合意すればその後の事業承継手続きなども事業承継・引継ぎ支援センターがバックアップしてくれます。士業などの専門家に実務を依頼しない限り、一連の支援は無料です。

栃木県では、平成27年12月に施行された「栃木県中小企業・小規模企業の振興に関する条例」に基づき、県、市町、商工団体、金融機関、専門家などが連携し、中小企業・小規模企業を支援する体制を整えています。

その一環として、平成28年5月に「とちぎ地域企業応援ネットワーク」を設立しました。このネットワークを活用し、創業から事業承継まで、企業の成長段階に応じた切れ目のない支援を提供し、地域全体で企業の発展を支えることを目的としています。

参考：とちぎ地域企業応援ネットワーク

栃木のM&A・会社売却・事業承継案件を探す手段としては、近年、注目されている以下のようなM&Aマッチングサイトを活用する方法もあります。

地元企業だけでなく全国の買い手・売り手とつながれて、自社に合った最適な相手を見つけやすくなります。また、仲介会社を利用するよりも手数料が安価な場合が多く、M&Aの費用負担を軽減できます。

一方で、登録されている案件の中には、条件が合わないものも多く、理想の相手を見つけるまでに時間がかかることがあります。仲介会社を通さない場合、交渉や契約手続きを自社で進める必要があり、専門知識や法務対応が求められる点には注意しましょう。

M&A総合研究所が運営するM&Aプラットフォームは、AIシステムを採用しており、高精度のマッチングを目指しています。豊富な案件を手軽にご覧いただくことが可能です。

M&Aアドバイザーによる支援が必要な場合は、別途、お手続きしていただければ丁寧なサポートをご提供します。

BATONZは、成約支援実績が国内トップクラスのM&A・事業承継マッチングサイトです。対面での無料相談サービスも行っています。

TRANBIは、主に1億円以下の小規模案件を取り扱うM&A・事業承継マッチングサイトです。国内最大級規模のM&A・事業承継プラットフォームの1つといえます。

M&A仲介会社の特徴と選び方については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

M&A仲介会社や専門家は、多数の案件を取り扱っているため、幅広い選択肢を提供します。彼らは独自のネットワークを活用して、クライアントのニーズに合った相手先を見つけることに長けています。

また、初めてM&Aを実施する企業にとって、手続きや交渉のサポートを行うことで、安心してプロセスを進めることが可能です。
仲介会社や専門家は、一貫したサポートを提供するため、M&Aの全過程にわたって的確なアドバイスを受けることができます。これにより、トラブルを防ぎ、スムーズにM&Aを進行させることができます。

栃木県でM&A仲介会社を選ぶ際は、本章で紹介する5つのポイントに注目すると成功率を高められます。

M&A仲介会社が、依頼者と同分野の事業に従事していた経験または同分野のM&A実績があると、M&Aを円滑に進められます。

該当する分野におけるM&Aの実績がある仲介会社は、その分野に特化した専門的な知識を有しています。例えば、製造業やIT業界など特定の業界は、業界特有の課題やニーズが独特なことが多いです。

そのため、仲介会社を選ぶ際は、自社の業界において実績が豊富な仲介会社を選ぶことが重要です。これにより、適切なアドバイスを受けることができ、成功率が高まります。

同じ分野でも、案件規模によって求められる知識は変わります。栃木県でのM&A支援実績が多ければ、ほかの栃木企業・専門家・金融機関との連携もスムーズに進みやすいです。

仲介会社には、それぞれ得意とする案件規模やエリアがあります。例えば、地元の中小企業を対象としたM&Aに強みを持つ仲介会社は、地域の特性や市場動向を把握しており、地域に根ざした適切なアプローチを提案してくれます。

自社の案件規模や地域に適した仲介会社を選ぶことで、より効率的にM&Aを進めることが可能です。

M&Aでは、法律・会計・税務・労務など幅広い知識が求められます。M&Aに関する知識と経験を持っているだけでなく、不足をカバーできる専門家とのネットワークを持っていることも重要です。

例えば、税務面での最適なアドバイスを提供できる仲介会社は、売却益にかかる税金を最小限に抑えるための戦略を提案してくれます。幅広い知識と経験を持つ仲介会社であれば、あらゆる問題に迅速かつ適切に対応できます。
特に複雑な案件では、このような広範な知識が重要となります。複雑な法的問題や財務分析にも対応できる仲介会社を選ぶことで、安心してM&Aプロセスを進めることができます。

手数料の負担額が不明確だと、不安で信頼関係を築きにくくなったり依頼をためらったりするケースがあります。シンプルな報酬体系の仲介会社を選んだ方が、トラブルなくM&A手続きを進めやすいです。

例えば、成功報酬型の料金体系を採用している仲介会社は、案件が成功するまで費用が発生しないため、予算管理がしやすくなります。手数料や相談料、成功報酬などの費用がわかりやすく提示されている仲介会社を選ぶことで、予算管理がしやすくなります。

また、料金に関する不明点は事前に確認しておくことが大切です。不明確な料金体系を持つ仲介会社に依頼すると、予期せぬ出費が発生するリスクがあるため、注意が必要です。

M&Aを成功させるうえで、担当者との信頼関係も非常に重要な要素の1つといえます。仲介会社の実績も大事ですが、それだけにとらわれず担当スタッフとの相性を見極める目もポイントです。

例えば、担当者が親身になって相談に乗ってくれるか、丁寧に説明してくれるかなどの対応の質が問われます。自分の意見をしっかりと伝えられ、相手の意志を理解することができるスタッフとの相性が良ければ、M&Aの過程もスムーズに進行します。

信頼できる担当者と協力することで、安心してM&Aを進めることができます。

M&A仲介については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

本記事では、栃木県におけるM&A（合併・買収）、事業承継、会社売却の現状と最新動向について詳しく紹介しました。以下に主要なポイントをまとめます。

• 建設業はじめ第二次産業の企業によるM&Aが盛ん
• 栃木県の後継者不在率は全国平均よりも高水準
• 栃木県内企業の休廃業件数は過去5年間で最多