2025年01月13日更新
段ボール業界のM&A・事業承継の動向!最新事例・案件例・ポイントも解説
近年の段ボール業界では、大手による業界再編・海外企業の買収をはじめ、M&A・事業承継の事例が多く目立ちます。本記事では、段ボール業界の動向やM&A・事業承継の事例を、2025年最新情報をもとにまとめました。
目次
1. 段ボール業界を取り巻く環境
はじめに段ボール業界を取り巻く環境をお伝えします。
段ボール業界の市場環境
2024年の日本経済は、新型コロナの影響から回復し、4~6月期の実質GDP成長率は前期比年率で2.2%を記録しました。しかし、7~9月期には物価高への不安やコロナ禍明けの消費が一巡したことから、成長率は1.2%(第2次速報値)と回復ペースが鈍化しました。
当初、民間調査機関は2024年度の実質GDP成長率を1%前後と予測していましたが、現在は0.3%程度に下方修正されています。
2024年の段ボール需要については、当連合会が2023年12月時点で14,200百万㎡と予測していましたが、1~10月の累計実績は11,613百万㎡(前年比99.0%)となりました。年間では14,030百万㎡(前年比98.7%)程度に落ち着く見通しです。
参考:全国段ボール工業組合連合会「2025 年(令和 7 年) 段ボールの需要予測」
段ボール業界の課題・展望
段ボールの需要が増加している一方で、業界全体では価格の上昇が続いています。主な要因は、原材料費の高騰によるコスト増加です。この影響を受け、多くの企業がコスト負担に直面し、段ボールの価格引き上げを余儀なくされています。
しかし、段ボールは製品の差別化が難しく、価格競争に陥りやすい特性があります。そのため、価格の引き上げは慎重を要し、企業にとってリスクの高い選択となります。今後は、コスト削減に重点を置いた効率的な戦略が必要とされるでしょう。
2. 段ボール業界のM&A・事業承継の動向
現時点で段ボール業界のM&A・事業承継・売却・買収はそれほど活発ではありません。しかし、大手による海外企業のM&Aなど、段ボール業界に特徴的な動向も見られます。この章では、段ボール業界のM&A動向をまとめました。
- 大手による再編も落ち着いている
- 海外M&Aが増加中
それぞれの項目を順番に見ていきましょう。
①大手による再編も落ち着いている
近年の段ボール業界では、大王製紙・日本製紙・レンゴーなどによる大規模な再編が行われていました。しかし、2020年に入り、再編の動きが落ち着いてきています。
②海外M&Aが増加中
近年の段ボール業界では、海外企業のM&Aが活発に行われています。段ボールの国内需要は今後も急激に伸びることはないと考えられるため、海外需要を見込んだ事業展開を行う企業が増加中です。
例えば、2021年10月、王子HDは、インド北部で段ボール製造販売事業を行うEmpire Packages Private Limitedを子会社化しました。
3. 段ボール業界のM&A・事業承継の事例
この章では、段ボール業界におけるM&A・事業承継の実際の事例を取り上げて解説します。段ボール業界におけるM&A・事業承継では、大手企業による買収・海外企業の買収事例が多い点が特徴的です。
トーモクによる大和段ボールの買収
2024年10月1日、トーモクは大和段ボール(千葉県野田市)の全株式を取得し、子会社化しました。トーモクは段ボールや紙器の製造・販売を中心に、住宅事業や運輸・倉庫事業などを展開しており、大和段ボールは段ボールの製造・加工・販売を専門とするメーカーです。
今回のM&Aにより、埼玉、千葉、茨城をはじめとする近隣地域でのグループ会社間の連携が強化され、生産や配送の効率化が期待されています。これにより、グループ全体で相乗効果を生み出し、企業価値の向上を目指しています。
レンゴーによる柴田段ボールの買収
2024年7月10日、レンゴーは柴田段ボール(愛知県豊橋市)の全株式を取得し、完全子会社化しました。レンゴーは段ボールや紙器、板紙などの製造・販売を手掛けており、柴田段ボールは段ボールケースの製造・販売を専門としています。
このM&Aにより、レンゴーは愛知県東部およびその周辺地域での事業基盤を強化し、直営工場やグループ会社との連携を深めることで、段ボール事業のさらなる拡大を目指しています。
レンゴーによるヴェルヴィン・コンテナーズの買収
2023年11月、レンゴーはヴェルヴィン・コンテナーズの株式の3割を取得しました。
レンゴーは、あらゆる産業の全ての包装ニーズに積極的に働きかける段ボール・板紙・包装の最大手の企業です。ヴェルヴィン・コンテナーズ社は、インドに拠点を置く段ボールメーカーです。インドはまだまだ段ボール市場の伸長が期待できる市場と判断し、M&Aを実施しました。
今回のM&Aにより、インド市場に参入しグローバル展開を図ります。
大王製紙による吉沢工業の買収
2022年4月、大王製紙は、子会社である大王パッケージが、新潟県に拠点を置く吉沢工業の全株式を取得し、子会社化することを発表しました。吉沢工業は、段ボールシートや段ボールケースの製造販売を行う会社です。
国内14番目のダンボールシート生産拠点として、大王パッケージの営業力や生産ノウハウを活用することによる競業や収益力の強化などが期待されます。
吉沢工業がグループ化されることで、段ボール原紙の販路拡大や生産性を向上させるだけでなく、取引先の業態や品ぞろえなどの拡大により、段ボール事業の成長を加速させ、企業価値向上を実現し、さらなる事業拡大に取り組んでいくとしています。
レンゴーによるヒロパックスの買収
2022年2月、レンゴーは群馬県高崎市を中心に4カ所の拠点をもつヒロパックスの発行済株式をすべて取得し、子会社化しました。ヒロバックスは、段ボールケース・プラスチック真空成形品・シール印刷物の製造販売を行っています。電子部品や食品などの業界に確固たる顧客基盤を築いている会社です。
レンゴーは、ヒロパックスと近隣の直営工場・グループ会社との営業面・開発面での連携を強化し、化成品、ラベル・シール事業を活用した幅広い包装ニーズに応えるとともに、関東地域におけるダンボール事業のさらなる拡充を図っていくものとしています。
ラクスルによるダンボールワンの完全子会社化
2022年2月、ラクスルはダンボール・梱包材専門通販ECサイトとして4年連続の国内売上シェア第1位を獲得したダンボールワンの株式を追加取得し、完全子会社化しました。
ラクスルはセグメントの成長戦略として、オフィス・産業資材への印刷領域の拡張を推進しています。当該領域におけるサービスとの相乗効果を目的に、2020年12月、ダンボールワンを関連会社化していました。
ダンボールワンのより一層の事業拡大への期待と、ラクスルセグメントの今後の成長から、企業価値最大化に資すると判断しました。
4. 段ボール業界のM&A・事業承継の相場
段ボール業界は堅調な業界であるため、M&A・事業承継の相場は、他業種とそれほど変わりません。シナジー効果が比較的わかりやすく、リスク要因が少ないため、企業価値評価を行いやすい業界でもあります。
5. 段ボール業界のM&A・事業承継のメリット
この章では、段ボール業界のM&A・事業承継のメリットを、売却側・買収側に分けて詳しく見ていきます。
売却側
段ボール業界のM&A・売却・買収で、売却側が得られるメリットは以下の5つです。
- 従業員の雇用確保
- 後継者問題の解決
- 売却・譲渡益の獲得
- 大手企業の中で経営安定
- 個人保証・債務・担保などの解消
それぞれのメリットを順番に見ていきましょう。
従業員の雇用確保
会社を廃業すると、従業員は職を失いますが、M&Aで売却すれば従業員の雇用を確保できます。
後継者問題の解決
後継者が不在であるがために、業績が好調にもかかわらず、会社を廃業してしまうケースは非常に多く見られます。子供など親族に後継者がいない場合でも、M&Aであれば親族以外からも後継者を見つけられるでしょう。
売却・譲渡益の獲得
新しい事業のための資金調達や、リタイヤ後の生活資金に向けて会社を売却するのも有効な方法です。M&Aで会社を売却すれば、譲渡益を獲得できるだけでなく、廃業費用の節約にもなります。
大手企業の中で経営安定
中小規模の段ボール会社は、苦しい経営を強いられているケースもあります。こうしたケースでは大手企業に売却して経営基盤を安定させるのも有効な解決策の一つです。ただし、子会社になると独立性が失われるため、メリット・デメリットは慎重に見極める必要があります。
個人保証・債務・担保などの解消
個人保証や債務・担保を解消できるのも、M&Aによる売却のメリットの一つです。個人保証や債務・担保は経営面だけの課題ではなく、経営者からすると心理的な負担も少なくありません。ストレスや負担から解放されたい理由で会社を売却するのも、決して悪くない選択肢です。
買収側
段ボール業界のM&A・売却・買収で、買収側が得られるメリットは以下の5つです。
- 従業員の確保
- 必要な事業を獲得して効率アップを図る
- 新規事業へ低コストで参入
- 顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
- 地域性の強い業界で事業エリアの拡大
それぞれのメリットを順番に見ていきましょう。
従業員の確保
自社でゼロから従業員を教育し優秀な人材に育てられることが最善ですが、現実的には難しい側面もあります。M&Aで優秀な人材を持つ企業を買収すれば、買収先の企業で働いている従業員を獲得可能です。
必要な事業を獲得して効率アップを図る
段ボール事業は、製造・加工・販売など多くのプロセスで成り立っています。M&Aで会社を買収すれば、必要な事業を獲得して効率アップを図れるでしょう。
新規事業へ低コストで参入
新規事業に低コストで参入できる点も、M&Aで会社を買収するメリットの一つです。たとえゼロから事業を立ち上げるのは難しい場合でも、M&Aなら積極的に事業を拡大できます。
顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
買収する企業が築き上げた顧客・取引先・ノウハウなどを獲得できる点も、M&Aによる買収の大きなメリットです。
地域性の強い業界で事業エリアの拡大
段ボール会社の中には、特定の地域を強みにしている企業も多く存在します。こうした企業を買収すれば、短期間での事業エリア拡大も可能です。
6. 段ボール業界のM&A・事業承継の成功ポイント
段ボール業界でM&A・事業承継を成功させるには、以下のポイントを押さえて行うことが重要です。
- 需要拡大を図る意味で海外M&Aに視野を向ける
- 必要な事業・分野などを獲得すること
- 事業計画やM&A戦略を立てる
- 簿外債務などを事前に把握すること
- 会社売却の専門家に相談すること
それぞれのポイントを順番に見ていきましょう。
①需要拡大を図る意味で海外M&Aに視野を向ける
段ボール業界では、国内需要は落ち着いていますが、海外ではまだまだ大きな需要を持つ地域も存在します。こうした需要が見込める地域・国へいち早く事業展開できれば、収益拡大の足がかりとなるでしょう。
②必要な事業・分野などを獲得すること
段ボール業界では中小規模の個別製造業者が多いです。個別製造業者にはそれぞれ必要な事業・分野があります。必要な事業・分野をM&Aで獲得すれば、短期間で安定した経営基盤を得られます。
③事業計画やM&A戦略を立てる
M&Aにはさまざまな手法があるため、ふさわしい手法を吟味しながら最適なM&A戦略を立てることが重要です。明確な事業計画があれば、売買相手も見つかりやすくなり、後の事業展開をスムーズに進められます。
④簿外債務などを事前に把握すること
M&Aで会社を買収する際は、デューデリジェンスを念入りに行い、簿外債務などのリスクがないか事前に把握しておくことが重要です。
⑤会社売却の専門家に相談すること
M&Aによる売却・買収は自力ですべて行うことも不可能ではありません。しかし、M&A仲介会社などの専門家に相談した方が安心・スムーズな取引を目指せます。サポートを受けながら進めていくと良いでしょう。M&A仲介会社などの専門家に任せることで、本業への支障も最小限に抑えられます。
段ボール業界のM&Aを検討する場合は、M&A仲介会社へ相談することをおすすめします。M&A仲介会社は、適切なスキームを選び、交渉・書類作成代行など、一括したサポートを行うからです。
M&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には、M&Aアドバイザーが在籍しており、親身になって案件をフルサポートします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
7. 段ボール業界のM&A・事業承継でおすすめの相談先
段ボール業界のM&A・事業承継でおすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
金融機関がM&Aのファイナンシャル・アドバイザーを務めるケースがあります。外資系投資銀行や日系証券会社は大規模なM&Aに強みを持ち、成功報酬の相場は外資系が2億円以上、日系が2千万円以上とされています。商業銀行の場合、メガバンクは2千万円以上、地方銀行では数百万円以上が目安です。
金融機関を利用する利点として、専門的な知識に基づくサポートが受けられることや、資金調達に関する相談が容易である点が挙げられます。一方で、中小企業が絡む案件では、金融機関の専門性が十分に発揮されにくい場合があります。また、成功報酬が高額になることは、特に小規模な企業にとって大きな負担となる可能性があります。
公的機関
商工会議所などの公的機関は、中小企業向けにM&A支援を行っています。政府が策定した「事業承継ガイドライン」においても、M&Aは重要な手法として位置づけられています。
公的機関を利用するメリットとして、中小企業特有の業務や文化に対する深い理解があり、売り手・買い手企業が中小企業の場合に特に適している点が挙げられます。また、商工会議所の会員であれば、初期費用が無料でM&Aの相談やサポートを受けることができます。
しかし、商工会議所の会員になるには会費が必要であるため、この費用が利用を検討する際の大きな障害となる場合があります。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&Aに特化したサービスを提供しており、それぞれ異なる得意分野や経験を持っています。そのため、企業のニーズに合った仲介会社を選ぶことが成功の鍵となります。
仲介会社を利用する最大のメリットは、広範なネットワークを活用して最適な買い手や売り手を見つけてもらえる点です。また、金融機関と比較して成功報酬が比較的低い場合が多く、専門的なサポートを受けながらコストを抑えることが可能です。
一方で、仲介会社の中には、報酬を優先するあまり契約成立を急かすような対応を取るところもあるため、注意が必要です。信頼性が高く、自社の状況や目標を十分に理解してくれる仲介会社を選ぶことが、M&Aを成功させるために重要です。
8. 段ボール業界のM&A・事業承継の動向まとめ
近年における段ボール業界のM&A・事業承継は大手の再編や海外進出を目的とした事例が多いです。中小企業にとってもM&Aは有効な手段だといえます。
特定地域への販路拡大や施設・人材の獲得など、多くのメリットがあるM&Aを活用すれば、会社のさらなる成長が可能です。
9. 段ボール業界の成約事例一覧
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