老人ホーム・介護施設のM&A動向!事例14選、案件一覧も解説【2022年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

老人ホーム・介護施設のM&Aについて、2022年度の事例を含めた最新版のM&A事例を紹介します。そのほか、老人ホーム・介護施設のM&Aの概要やM&Aを選択する理由、M&A動向をはじめ、譲渡を希望しているM&A案件も取り上げています。

目次

  1. 老人ホーム・介護施設のM&Aとは
  2. 老人ホーム・介護施設のM&A動向
  3. 老人ホーム・介護施設のM&A事例14選【2022年最新版】
  4. 老人ホーム・介護施設のM&Aが行われる理由
  5. 老人ホーム・介護施設のM&Aの案件一覧
  6. 老人ホーム・介護施設のM&A相場
  7. 老人ホーム・介護施設のM&Aの際におすすめの相談先
  8. 老人ホーム・介護施設のM&Aまとめ
  9. 施設介護・老人ホーム業界のM&A案件一覧
  • 施設介護・老人ホームのM&A・事業承継

1. 老人ホーム・介護施設のM&Aとは

老人ホーム・介護施設のM&Aとは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業、認知症高齢者グループホーム、老人ホーム、その他の老人福祉・介護事業に該当する事業を売却・買収するものです。

内閣府の報告によれば、日本では超高齢化が進み、65歳以上の高齢者は総人口の28.8%に達しました(令和2年10月1日現在)。

国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、65歳以上の人口は2015年の3,387万人から緩やかに増加し、2042年には3,935万人に達するとしています。

このように、老人ホーム・介護施設の事業はこれからも需要が見込める業種と捉えられているため、介護事業者は、競争の激化や制度の改正、収益・事業領域の拡大などを理由に、事業の売却・買収を選択しているといえます。

参照:内閣府「令和3年版高齢社会白書」

老人ホーム・介護施設とは

有料老人ホームなど民間による高齢者向けの老人ホーム・介護施設は、1960年代から存在します。

多くは高齢者に対する住宅や食事の提供を目的にしており、以前は介護サービスを前提にしたものではありませんでした。

しかし、介護を必要とする高齢者の増加、核家族化の進行、家族の介護による離職が国内でも大きな社会問題となりました。家族の負担軽減や介護のサポートを目的に2000年に創設されたのが介護保険制度です。

その中で制度化されたのが、特定施設入居者生活介護です。一定の基準を満たした施設の居室を高齢者の自宅とし、施設のスタッフによる介護サービスを介護保険の居宅サービスと位置づけ特定施設としました

具体的な特定施設とは、有料老人ホームや養護老人ホーム、軽費老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅などが挙げられます。

老人ホーム・介護施設の特徴

2006年4月の介護保険法の改正によって、各地方自治体は介護保険事業計画に基づき、有料老人ホームの新規開設を制限できるようになりました。

有料老人ホームの中でも民営運営の老人ホームは、大きく以下の3種類に分かれるでしょう。

  • 介護付有料老人ホーム:医療体制、食事、入浴・排せつなど介護全般が受けられる施設
  • 住居型有料老人ホーム:自立可能な高齢者に対して、外部の介護サービス事業者と契約し、必要になった際、事業者から介護サービスが受けられる
  • 健康型有料老人ホーム:自立生活が可能である高齢者向けの施設

これらの老人ホームへ入居する際は、条件や提供するサービス、居住費など施設によって異なるため、入居希望者は条件にあった施設を選択するでしょう。

老人福祉法、高齢者住まい法など、施設の種類や入居希望者の状態によって、さまざまな規制がある点が業界の特色でしょう。介護付有料老人ホームなど介護サービス事業者の収入として介護報酬があります。

被保険者に提供したサービスの対価として、原則としてその1割が被保険者本人から、そして残りの9割が市町村などの保険者からサービス事業者に支払われる仕組みです。これは公定価格で決まっており、3年ごとに改定されます。

老人ホーム・介護施設の市場規模

厚生労働省によると、2020年度の介護保険給付に係る総費用等における提供サービスの内訳は10兆5,078億円となり過去最大を更新しました。

国内の超高齢化に伴ってサービスの利用者が増え、3年連続で10兆円を超えています。介護保険制度が始まった翌年度の2001年度(4兆3,000億円)と比較すると約2.5倍です。

2000年4月末の要介護(要支援)の認定者は218万人、2021年3月末は682万人と、制度開始当初の3.1倍になりました。高齢者の増加に伴って介護が必要な人が増え、政府の推計では、今後団塊の世代が75歳以上になる2025年度には2,180万人となり、給付費はさらに膨らむ見通しです。

日本経済新聞社が2021年10月に発表した「サービス業調査」によると、有料老人ホームの20年度の売上高は前年度に比べ3.9%、在宅(訪問)福祉サービスの売上高は6.5%増加しました。介護サービス需要は一段と高まっていることが伺えます。

行政は在宅ケアを推進しているが、国内の老人ホーム・介護施設の市場規模は、今後も拡大するでしょう。業界の競争が厳しくなる中、周辺の医療機関と連携して安心感を売りにするなど工夫を凝らす施設が増加しています。

業界内の大手3社による2020年の売上高をみてみると、日本経済新聞社の「サービス業調査」によると、2020年度の有料老人ホームの売上高1位はベネッセスタイルケアで、2位はSOMPOケア、3位はベストライフです。

参照:厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について(2022年)

老人ホーム・介護施設を取り巻く環境・課題

老人ホーム・介護施設を取り巻く環境として、介護サービス事業所における人手不足は依然として強く、約9割の事業所が採用を困難としています。今後も超高齢社会による市場規模が拡大すると予想される中で、人材の争奪戦も激しくなるでしょう。

介護者が増加している一方で、介護施設の1割は利用者の受入を制限しているのが現状です。人材不足の要因は、賃金の低さ、業務に対するストレスが大きいとされています。

高齢者への介護は、ささいなことから事故やケガにつながるため、職員にかかる精神的、肉体的な負担は想像以上に厳しい業界といえるでしょう。

2000年以降、電力、保険、警備などの大手異業種企業が介護業界に相次いで参入していますが、事業環境の厳しさなどから撤退の動きもみられます。

2. 老人ホーム・介護施設のM&A動向

老人ホーム・介護施設のM&Aでは、どのような動きが見られるのでしょうか。ここでは、老人ホーム・介護施設のM&Aを検討する際に把握しておきたい業界のM&A動向を解説します。

 

  1. 異業種からの参入も増えている
  2. 関連業種からのM&Aも増加
  3. 中国・アジアへの介護需要を求めるケースも

①異業種からの参入も増えている

1つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A動向は、増加する異業種の参入です。

厚生労働省が発表した「令和元年度介護保険事業状況報告」によると、保険給付(介護給付・予防給付)の費用額は10兆7,812億円で、年比3.3%増加となっています。

業界の需要増加を見越した異業種もM&Aによる買収で、介護事業への参入を図る動きがみられると予想されます。

②関連業種からのM&Aも増加

2つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A動向は、関連業種によるM&Aの増加です。事業領域の拡大や関連事業とのシナジー、対象企業が持つノウハウ・人材の確保を目的に、老人ホーム・介護施設を買収しています。

関連業種はM&Aにより、自社のノウハウと融合させた新サービスの提供を始めたり、自社の事業に介護事業のサービスを加えたりと、他社との差別化・トータルケアへの展開を目指しているといえるでしょう。

【関連】訪問介護のM&A・売却・事業譲渡の完全マニュアル!流れ、相場、成功事例、案件の探し方| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

③中国・アジアへの介護需要を求めるケースも

3つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A動向は、中国・アジア圏に介護需要を求めるケースです。

中国では一人っ子政策の影響から介護の需要が高まるとして、ニチイ学館が2015年に中国の現地法人・大連九鼎互聯科技発展有限公司の株式を取得しています。

学研ホールディングスは2018年に日本政策投資銀行と共同して、中国とマレーシアで介護施設の事業を行うメディカル・ケア・サービスを子会社としました。

このようなM&A事例から、国内市場のみならず海外市場にも目を向けて介護事業を展開させている企業の姿も見受けられます。

3. 老人ホーム・介護施設のM&A事例14選【2022年最新版】

老人ホーム・介護施設のM&Aでは、どのような企業が買収・譲渡を行っているのでしょうか。ここでは、最新事例を含む老人ホーム・介護施設のM&A事例をご紹介します。

 

  1. ケア21による凛のM&A
  2. テノHDによるフォルテのM&A
  3. フランスベッドによるホームケアサービス山口のM&A
  4. ニチイ学館による西日本ヘルスケアのM&A
  5. ケアサービスによるひだまりのM&A
  6. ソラストによるなごやかケアリンクのM&A
  7. 幸和製作所によるパムックとあっぷるのM&A
  8. ユニマット リタイアメント・コミュニティによるホームライク湘南のM&A
  9. ソラストによるオールライフメイトのM&A
  10. global bridge HOLDINGSによるYUANのM&A
  11. 学研ホールディングスによるメディカル・ケア・サービスのM&A
  12. 綜合警備保障によるケアプラスのM&A
  13. ソラストによる日本ケアリンクのM&A
  14. 京進によるシンセリティグループのM&A

①ケア21による凛のM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、ケア21による凛のM&Aです。

ケア21は2022年4月、凛の全ての株式を取得し、子会社化しました。ケア21は訪問介護、居宅介護支援、グループホーム、介護付有料老人ホームなどを首都圏・近畿地方・名古屋・仙台・広島・福岡など全国各地で展開している会社です。

一方、対象会社である凛は、2016年に創業した会社で、都内に拠点を置き、訪問介護・居宅介護支援事業を展開しています。

双方の既存事業所と事業展開エリアが重複しているため、M&Aにより営業、人的資源の一本化によって、業務の効率化が図れるなどメリットが大きいとしてM&Aを実施しました。

今回のM&Aにより、両社の実績とノウハウを生かし、サービス充実・企業価値拡大などのシナジー効果が得られるとしています。
 

ケア21による凛のM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 グループの企業価値向上
獲得した事業 訪問介護・居宅介護支援事業

②テノHDによるフォルテのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、テノ・ホールディングスによるフォルテのM&Aです。

テノ・ホールディングスは2022年1月、フォルテの株式を全て取得し、子会社化しました。

テノ・ホールディングスは福岡県福岡市に本社があり、グループとして女性のライフステージ を取り巻く社会ニーズに対応すべくグループの事業ドメイン(育児・家事・介護)に沿った新規事業開発を成長戦略の一つとしていました。

2019年12月には、介護事業への新規参入を行っていました。対象会社であるフォルテは、大阪府で介護施設を4施設運営しています。

今回のM&Aは、グループの長期ビジョン「tenoVISION2030」の実現に向けた取り組みの一環であり、介護事業における事業拡大を目指します。
 

テノHDによるフォルテのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 介護事業のサービスラインアップの拡充
獲得した事業 高齢者向け住宅の運営事業

③フランスベッドによるホームケアサービス山口のM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、フランスベッドによるホームケアサービス山口のM&Aです。

フランスベッドホールディングスは2021年12月、子会社であるフランスベッドをとおしてホームケアサービス山口の株式を全て取得し、連結子会社化しました。

フランスベッドホールディングスは、超高齢社会で求められるニーズ、ライフスタイルの多様化に対して、消費者が求める商品・サービスを提供しています。

対象会社であるホームケアサービス山口は、山口県を中心に介護用品のレンタル・販売、介護保険対象のリフォームを行っていました。

今回のM&Aにより、フランスベッドグループに顧客基盤が加わることで、メディカルサービス事業の事業規模拡大を目指します
 

フランスベッドによるホームケアサービス山口のM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 グループの既存事業の
事業規模拡大
獲得した事業 介護用品のレンタル・販売、リフォーム

④ニチイ学館による西日本ヘルスケアのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、ニチイ学館による西日本ヘルスケアのM&Aです。

ニチイ学館は2021年7月、西日本ヘルスケアの全ての株式を取得し、完全子会社化しました。ニチイ学館は、教育、介護、医療、保育などの分野で事業活動を行っている企業です。

Letechの完全子会社の西日本ヘルスケアは、滋賀県、京都府、大阪府に、計7施設の住宅型有料老人ホーム、グループホーム・小規模多機能型居宅介護およびサービス付き高齢者向け住宅を運営しています。

今回のM&Aにより、トータル介護サービスネットワークを生かして、施設利用者や対象地域へ安定的なサービスの供給を図るとともに企業価値を向上していきます。
 

ニチイ学館による西日本ヘルスケアのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 トータル介護サービスネットワーク
企業価値向上
獲得した事業 住宅型有料老人ホーム

⑤ケアサービスによるひだまりのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、ケアサービスによるひだまりのM&Aです。


住宅型有料老人ホーム・訪問介護・デイサービスなどを営むケアサービスは、2019年の7月に居宅介護支援・訪問介護事業を展開するひだまりの株式をすべて取得し、子会社としています。

ひだまりは東京都江東区で事業を行っているため、M&Aの実施によりケアサービスは周辺地域で提供するデイサービス事業との相乗効果や、訪問介護などの在宅介護における事業領域の拡大を狙いとしています。

 

ケアサービスによるひだまりのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 既存事業とのシナジーの獲得
事業領域の拡大
獲得した事業 居宅介護支援・訪問介護事業

⑥ソラストによるなごやかケアリンクのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、ソラストによるなごやかケアリンクのM&Aです。

 

訪問介護・通所介護・住宅型有料老人ホーム・グループホーム事業などを営むソラストは、2019年の4月に東京都で通所介護事業を展開するなごやかケアリンクの株式をすべて取得し、子会社としました。

ソラストは、2030年までに売上高1,500億円を達成するためにエリアの拡大を図っています。そこで、事業エリアの重複が少ないなごやかケアリンクの買収を実行したとしています。

 

ソラストによるなごやかケアリンクのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 エリアの拡大
獲得した事業 通所介護

⑦幸和製作所によるパムックとあっぷるのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、幸和製作所によるパムックとあっぷるのM&Aです。

介護・福祉用具の製造と販売を手掛ける幸和製作所は、2019年の3月にデイサービス・福祉用具のレンタルと販売・車いすのオーダーメイド事業を展開するパムックと、デイサービス・福祉用具のレンタル事業を営むあっぷるを買収しています。

幸和製作所は、両社の株式をすべて取得して連結子会社としました。対象企業の買収により、現場の情報を生かした製品開発や事業エリアを集中させたシナジーの獲得を見込んでいます。

 

幸和製作所によるパムックとあっぷるのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 獲得した情報を製品開発に反映させる
エリアの集中によるシナジーの獲得
獲得した事業 デイサービス
福祉用具のレンタル・販売
車いすのオーダーメイド

⑧ユニマットリタイアメント・コミュニティによるホームライク湘南のM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、ユニマットリタイアメント・コミュニティによるホームライク湘南のM&Aです。

デイサービス・グループホーム・訪問介護・住宅型老人ホームなど運営を手掛けるユニマットリタイアメント・コミュニティは、2019年の2月に神奈川県茅ケ崎市でグループホームを運営するホームライク湘南を完全子会社としています。

ユニマットリタイアメント・コミュニティは、買収により周辺地域にある自社の施設とノウハウを共有して、労働環境の整備・人材育成などのシナジーを得ることを目指しています。

 

ユニマット リタイアメント・コミュニティによるホームライク湘南のM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 シナジーの獲得
獲得した事業 グループホーム

⑨ソラストによるオールライフメイトのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、ソラストによるオールライフメイトのM&Aです。

訪問介護・通所介護・住宅型有料老人ホーム・グループホーム事業などを展開するソラストは、2018年の12月に東京を中心に住宅型有料老人ホーム事業を営む、オールライフメイトの株式をすべて取得し子会社としています。

ソラストは、2030年までの売上目標を達成するために、事業を展開するすべて地域で各老人ホーム・介護施設事業(訪問介護・通所介護・住宅型有料老人ホーム・グループホームなど)の事業所を、1カ所以上設置するとしています。

そこで、住宅型有料老人ホームを営むオールライフメイトを買収し、エリアの拡大と施設の確保を図りました。

 

ソラストによるオールライフメイトのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 事業エリアの拡大
対象施設の獲得
獲得した事業 住宅型有料老人ホーム

⑩global bridge HOLDINGSによるYUANのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、global bridge HOLDINGSによるYUAN(現・global life care)のM&Aです。

 
保育・障害福祉事業や住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・訪問介護といった介護事業などを手掛けるglobal bridge HOLDINGSは、2018年の11月に住宅型有料老人ホームを営むYUANの株式を取得し、子会社としています。
 

global bridge HOLDINGSは、社会福祉への需要は継続すると予想し、介護事業の拡大のために対象企業の買収を行っています。

 

global bridge HOLDINGSによるYUANのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 介護事業の拡大のため
獲得した事業 住宅型有料老人ホーム

⑪学研ホールディングスによるメディカル・ケア・サービスのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、学研ホールディングスによるメディカル・ケア・サービスのM&Aです。

家庭教師派遣・出版などの教育事業や、グループホーム・住宅型有料老人ホームなどの介護事業を手掛ける学研ホールディングスは、2018年9月に認知症の高齢者向けグループホーム事業を展開するメディカル・ケア・サービスの株式を取得しました。

株式の取得は日本政策投資銀行と共同して行われ、学研ホールディングスが発行済み株式の61.8%を取得し、日本政策投資銀行が残りの38.2%を買い取り、完全子会社としています。

学研ホールディングスは、自社のサービス付き高齢者向け住宅と対象企業が持つ認知介護事業を関連させて、質の高いサービスを提供するのを狙いとしています。
 

学研ホールディングスによるメディカル・ケア・サービスのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 質の高いサービスの提供を図る
獲得した事業 グループホーム

⑫綜合警備保障によるケアプラスのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、綜合警備保障によるケアプラスのM&Aです。

個人・法人向けにセキュリティ事業を展開する綜合警備保障は、2018年の6月に訪問医療マッサージ事業を手掛けるケアプラスの株式をすべて取得し、連結子会社としています。

綜合警備保障は、高齢者向けサービスの拡充を進めるため、対象企業の買収を行いました。専門技術を備えた訪問医療マッサージ事業を取得し、利用者の満足度を高めて企業価値の向上を図るとしています。
 

綜合警備保障によるケアプラスのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 満足度・企業価値の向上
獲得した事業 訪問医療マッサージ

⑬ソラストによる日本ケアリンクのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、ソラストによる日本ケアリンクのM&Aです。

 

訪問介護・通所介護・住宅型有料老人ホーム・グループホーム事業などを展開するソラストは、2017年の11月に関東エリアで認知症高齢者向けのグループホームや、住宅型有料老人ホームなどを運営する日本ケアリンクを買収しました。

ソラストは業界の需要に対応するため、事業の拡大を図っています。自社の訪問型サービスに、対象会社が提供する施設型サービスを加えることで、トータルケアの介護サービスを提供するとしています。
 

ソラストによる日本ケアリンクのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 トータルケアの介護サービスの提供
獲得した事業 認知症の高齢者を対象としたグループホーム
小規模多機能型居宅介護
住宅型有料老人ホームなど

⑭京進によるシンセリティグループのM&A

老人ホーム・介護施設のM&A事例は、京進によるシンセリティグループのM&Aです。

学習塾をはじめとした教育事業や、介護施設・住宅型有料老人ホームといった介護事業を手掛ける京進は、2017年の6月に住宅型有料老人ホームや高齢者介護施設などを運営するシンセリティグループを連結子会社としました。

京進は、シンセリティグループの代表が所有する4社の株式についてシンセリティグループが取得した後、対象会社のすべての株式を取得しています。

シンセリティグループが備えている介護事業のノウハウと自社の教育事業のノウハウを融合させて、新しいサービスを提供していくとしています。

 

京進によるシンセリティグループのM&A
M&Aのスキーム 株式譲渡
M&Aの目的 ノウハウの融合による新サービスの提供
獲得した事業 住宅型有料老人ホーム
高齢者介護施設
居宅訪問介護
デイサービス
高齢者施設への給食サービス
福祉用具のレンタル・販売

  • 施設介護・老人ホームのM&A・事業承継

4. 老人ホーム・介護施設のM&Aが行われる理由

老人ホーム・介護施設のM&Aを実施する理由にはどのようなものがあるのでしょうか。介護事業者がM&Aを選択する理由には、以下の3つが挙げられます。

 

  1. 後継者問題の解決
  2. 介護報酬の改定による影響
  3. 別事業への注力
  4. 人材の確保

①後継者問題の解決

1つ目に挙げる老人ホーム・介護施設のM&Aが行われる理由は、後継者問題の解決です。

オーナーの高齢化や持病の悪化など健康面の問題に直面したり、ふさわしい後継者を育てられなかったりする場合に、第三者への譲渡により後継者問題を解消しています。

廃業や撤退を選んでしまうと利用者やその家族に影響が及ぶため、親族の内外で後継者が見つからない場合には、事業を引き継いでもらえる相手を探して事業の継続を図っているといえるでしょう。

②介護報酬の改定による影響

2つ目に挙げる老人ホーム・介護施設のM&Aが行われる理由は、介護報酬の改定による影響です。介護報酬とは、サービスの提供に対して支払われる報酬をいいます。

介護報酬は業界が直面している問題が考慮されるため、3年に一度のスパンで改正が行われているでしょう。

2018年の改正では、2020年に団塊の世代が75歳を超える事態に備えて0.54%のプラスに改定しており、質が高く効率を考えたサービスを提供するとしました。

ただし、提供するサービスによっては介護報酬を得られる基準が厳しくなり、現在の事業形態・従業員数・設備では改正に対応できず、改正前と同様の介護報酬を得られない介護事業者も存在しています。

介護事業からの撤退を選択して老人ホーム・介護施設を譲り渡しているといえるでしょう。

③別事業への注力

3つ目に挙げる老人ホーム・介護施設のM&Aが行われる理由は、別事業への注力です。

介護事業者の中には、業界で生き残るための力を備えていない・新しい事業に興味が向いた・並行して行う別事業に専念するなどの理由で、別の事業へ資本と選択を集中させています。

④人材の確保

4つ目に挙げる老人ホーム・介護施設のM&Aが行われる理由は、人材の確保です。

各業界における人材不足は深刻化していますが、老人ホームや介護施設では、過酷な労働環境や低い給与水準の影響から特に人材不足が深刻です。せっかく人材を確保しても育て上げるまでに時間がかかり、その間に辞めてしまうことも少なくありません。

キャリアがあって即戦力となる人材の確保を目的にM&Aを実施しています。

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5. 老人ホーム・介護施設のM&Aの案件一覧

老人ホーム・介護施設のM&Aでは、どのような事業所が売却を希望しているのでしょうか。他の老人ホーム・介護施設のM&Aでは、以下のような企業・事業が譲渡先を探しています。

 

  1. 医療・介護向け福祉用具製造
  2. 保育園と老人ホーム
  3. 健康保険適用の訪問マッサージ
  4. 地域密着型のグループホーム
  5. 介護事業運営会社
  6. 入居稼働率が安定している介護施設
  7. 住宅型有料老人ホームの運営と訪問介護事業
  8. デイサービスと訪問介護の運営
  9. 認知症高齢者グループホームの運営
  10. デイザービスを併設した住宅型有料老人ホームの運営

①医療・介護向け福祉用具製造

1つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、医療・介護向けの福祉用具製造です。

全国の病院・高齢者施設・介護保険を受ける在宅の療養者に向けて、自社開発した商品をOMEで生産し、販売店を通じて提供しています。

対象会社は、製品開発に時間と費用が掛かったことで資金不足となり、事業の売却を希望しています。販路が確立され販売モデルもできあがっているため、福祉用具の製造業に新規として参入したい方におすすめの案件です。

 

①医療・介護向け福祉用具製造
業種 製造業
エリア 東京都
強み ・長年介護向け製品の研究を行っている
・すべての社員が介護技術研修における講師を務められる
・在宅レンタル業者との販路を持つ
・台湾のグループ会社を通じた中国・東南アジア圏の販路拡大が可能
売上高 1,000万~5,000万円
希望譲渡額 1,000万~5,000万円

②保育園と老人ホーム

2つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、保育園と老人ホームの譲渡です。

売り手は、医師・歯科医・栄養士などの専門家と協力した保育園の運営と、月に1度の健康診断を行う老人ホームの運営の譲渡を希望しています。

後継者不足により、保育園と老人ホームの事業を引き継いでくれる買い手を探しています。

 

②保育園と老人ホーム
業種 介護・福祉・医療
エリア 近畿
強み ・医療機関による月に一度の健康診断(老人ホーム)
・栄養士が栄養バランスのとれた食事を提供する
売上高 1億~2.5億円
希望譲渡額 2.5億~5億円

③健康保険適用の訪問マッサージ

3つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、健康保険適用の訪問マッサージです。

対象事業では、地元のケアマネジャーや介護施設などの関係機関と提携し、訪問マッサージのサービスを提供しています。

提供する顧客の9割が75歳以上の後期高齢者で、提携するケアマネジャーを通じて、新規の利用者が紹介されるとのことです。後継者不足と体調不良を理由に、対象事業の譲渡を希望しています。

 

③健康保険適用の訪問マッサージ
業種 介護
エリア 福島県
強み ・施術者の屋号は、ケアマネジャーに知られている
・提携先とのこまめな連絡、月に一度の定期報告を行う
・介護施設のケアマネジャーを通じて、新規の利用者が紹介される
売上高 1,700万円台
希望譲渡額 2,000万円

④地域密着型のグループホーム

4つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、地域密着型のグループホームです。

住宅地としても人気のエリアにグループホームを構え、施設の運営のほかに医療介護訪問のサービスも提供しています。代表が勤め先の仕事に注力するのを望んでいるため、法人の同業者で事業経験のある相手を探しています。

 

④地域密着型のグループホーム
業種 介護施設
エリア 岡山県
強み ・好立地
・約20室の部屋は満室
・医療介護訪問による地域密着のサービスを提供
売上高 1.9億円台
希望譲渡額 5,000万円

⑤介護事業運営会社

5つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、介護事業運営会社です。閑静な住宅街に事業所を構え、通所介護・訪問介護・居宅介護などの介護事業や障がい者福祉事業を手掛けています。

資本の選択と集中を理由に会社の譲渡を希望しています。

 

⑤介護事業運営会社
業種 介護・障がい者福祉事業
エリア 長野県
強み ・事業所は閑静な住宅街にある
・ケアマネジャーが多い
・十分な人員を確保している
・退職者が少ない
売上高 1.1億円台
希望譲渡額 応相談

⑥入居稼働率が安定している介護施設

6つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、入居稼働率が安定している介護施設です。

約10床を備える住居型有料老人ホームに加え、訪問介護事業のサービスを提供しています。資本の選択と集中を理由事業譲渡を希望しています。

 

⑥入居稼働率が安定している介護施設
業種 介護施設・訪問介護事業
エリア 愛知県
強み ・入居稼働率はほぼ満床の状態で推移
・増床の予定から収益のアップを見込める
・地域のケアマネジャーが、相談者を紹介してくれる
売上高 非公開
希望譲渡額 5,000万円

⑦住宅型有料老人ホームの運営と訪問介護事業

7つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、住宅型有料老人ホームの運営と訪問介護事業です。

施設には洗濯機・浴室・トイレなどの基本的な設備はもちろん、多目的ホールやカラオケなどが楽しめる共用スペースも備えています

スタッフの対応は、介護スタッフが24時間待機する体制をとっています。看護師2名が常勤し、近隣のクリニック・医療機関とも提携しているため、医療面のサポートも充実しているといえるでしょう。

施設の稼働率は現在満室を維持し、待機する方も出ていました。施設の代表者は、後継者不足を理由に事業譲渡を希望しています。

なお、譲渡の条件には、オーナーの連帯保証の解除・従業員の雇用継続・役員借入金の返済を挙げています。

 

⑦住宅型有料老人ホームの運営と訪問介護事業
業種 介護施設・訪問介護事業
エリア 秋田県
強み ・充実したサポート体制
・100%の稼働率を維持
・楽しく暮らせる設備と環境を提供
売上高 1億円台
希望譲渡額 2,300万円

⑧デイサービスと訪問介護の運営

8つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、デイサービス(2施設)と訪問介護の運営です。

当該エリアの同業者にはよく知られている介護施設で、周辺の高齢者に向けてサービスを提供していました。資格を持ったスタッフを多く抱え、提供するサービスの信用度も高く、行政との強いつながりを有しています。

代表は事業を引き継いでくれる管理者を育てられなかったため、事業譲渡を希望しています。引き継ぎの条件には、取引・雇用の継続を挙げています。

 

⑧デイサービスと訪問介護の運営
業種 訪問・通所
エリア 石川県
強み ・当該エリアの同業者で知られた存在
・提供するサービスの信用度も高い
・行政などとの強いつながりを持つ
・有資格者が多く、人材が充実している
売上高 6,700万円台
希望譲渡額 1,000万円

⑨認知症高齢者グループホームの運営

9つ目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、認知症高齢者グループホームの運営です。

山と海に囲まれた場所に施設を構え、地域密着の運営を心がけています。運営に必要な設備が整っているため、すぐに事業を始めることが可能です。

代表はほかの事業を始めるため、事業譲渡を希望しています。当該エリアには競合する施設が少なく、認知症高齢者グループホームを閉鎖してしまうと、利用者・家族への影響が大きいため、事業を引き継いでくれる方を探しているとのことです。

 

⑨認知症高齢者グループホームの運営
業種 介護施設
エリア 長崎県
強み ・自然豊かな環境に施設を構える
・競合する同業者が少ない
・開業に必要な設備が整っている
売上高 6,700万円台
希望譲渡額 4,000万円

⑩デイサービスを併設した住宅型有料老人ホームの運営

10番目に紹介する老人ホーム・介護施設のM&A案件は、デイサービスを併設した住宅型有料老人ホームの運営です。

空気のきれいな場所に事業所を構え、穏やかに過ごせる環境で介護サービスを提供しています。施設の利用者が多く、ほぼ満室の状態(約30室)です。

設備は新しくメンテナンスも行き届いているため、引き継ぎ後の使用も問題はありません。抱えている人材には有資格者も多く、介護福祉を安心して任せられるでしょう。

代表は自身の年齢を考慮して、住宅型有料老人ホームの会社譲渡を希望しています。譲渡の対象は法人・事業経験者とし、譲渡の条件には会社名の存続と従業員の雇用を挙げています。
 

⑩デイサービスを併設した住宅型有料老人ホームの運営
業種 介護施設
エリア 関東地方
強み ・デイサービスを併設する
・約30室の部屋は満室状態
・スタッフの多くは資格を持ち、ふさわしい人格を備えている
・設備の継続使用が可能
・良好な立地
・地域の病院から利用者を紹介してもらえる
売上高 8,300万円台
希望譲渡額 3,500万円

6. 老人ホーム・介護施設のM&A相場

老人ホーム・介護施設のM&Aでは、拠点の営業権を事業譲渡する場合、土地・建物は譲渡対象としないケースも可能です。

このケースでは、買い手が土地・建物を賃貸借するため、売り手が土地・建物のオーナーとなり、会社・事業売却後も引き続き賃料収入が得られるでしょう。

土地・建物も含めて譲渡する場合や、利用者の利便性が高い立地に施設があるなどの場合は、買収価格も高額になります。老人ホーム・介護施設のM&A相場は、業態により評価の方法が変わってくるため、M&Aの専門家へ相談するのがおすすめです。

7. 老人ホーム・介護施設のM&Aの際におすすめの相談先

老人ホーム・介護施設のM&Aでは、M&A総合研究所へご相談ください。主に中小企業向けにM&A仲介を提供し、老人ホーム・介護施設などの介護事業の案件も取り扱っています。

M&A総合研究所では、案件ごとに知識と経験が豊富なM&Aアドバイザーが専任に就き、クロージングまでフルサポートします

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談はお電話・Webより随時お受けしていますので、老人ホーム・介護施設のM&Aを検討されている場合は、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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8. 老人ホーム・介護施設のM&Aまとめ

老人ホーム・介護施設のM&Aに関して、2022年の事例を含むM&Aの取引を紹介しました。日本では超高齢化が進行し、介護事業の需要は今後も継続すると見られるため、老人ホーム・介護施設のM&Aは活発に行われるでしょう。

介護事業者の中には後継者不足や介護報酬の改定、他事業への注力を理由に、自社の事業を譲渡しています。良好な経営を続けている企業・事業の買収も可能といえるでしょう。

とはいえ、老人ホーム・介護施設のM&Aでは、専門知識を必要としますので、M&Aを検討している場合は、M&A仲介会社などへの相談をおすすめします。

9. 施設介護・老人ホーム業界のM&A案件一覧

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