2023年06月06日更新
【2023】警備業界のM&A動向と最新事例を紹介!現状と今後の課題は?
警備業界は大手によるM&Aが活発で、2021年はオリンピックなどによる需要の高まりもあり、最新の業界動向を把握しておくことが重要です。本記事では、2021年の警備業界のM&A動向と最新のM&A事例、警備業界の現状や今後の課題などを解説します。
目次
1. 【2021】警備業界の現状と課題
2021年は、昨年延期になったオリンピックの開催など、警備業界の重要性が高まる年となっています。警備業界でのM&A実施を検討しているのであれば、業界の現状や課題およびM&A動向について、あらためて把握しておくことが大切です。
この章では、そもそも警備業界とは何かについて解説した後、警備業界の市場動向や課題について概観します。
警備業界とは
警備業界とは、警備業を営む事業者による業界です。警備業とは、身の危険や財産を盗難などを防止・予防することを、サービスとして提供する事業のことです。
「警備業法」という警備業を規定する法律があり、警備業界の業務や規則については法律的に定められています。
警備業法では、警備業とは「生命や身体、財産への侵害を警戒・防止する業務を、他人の需要に応じて行うもの」と規定されています。
また、警備業とは具体的に何を指すのかについても、「警備業法施行規則」によって厳密に規定されています。
これによると、警備業は「施設巡回警備」「交通・雑踏警備」「貴重品警備」「身辺警備」という4つの業務に分類されます。主なのは施設巡回警備と交通・雑踏警備で、この2つで売上の大部分を占めています。
さらに、警備業は警備員を施設などに配置する「人的警備」と、防犯カメラなどで警戒・防止する「機械警備」に分けられます。
近年は機械警備の需要が高まるとともに、人的警備では警備員の人材不足などの問題がでてきています。
市場動向
全国警備業協会の調査によると、警備業界の売上高は平成27年が約3兆3500億円、令和元年が約3兆5500億円と、近年は約3兆5000億円前後で微増の傾向にあります。
業界大手はセコムと綜合警備保障で、この2社が他企業を圧倒して大きなシェアを誇っています。
警備業者の数は約1万弱ですが、業者数は年々増えてきています。警備員の数は約55万人で、こちらも増加傾向がみられます。しかし、臨時の警備員の数は減少傾向にあり、常用の警備員が顕著に増えているのが特徴です。
大手警備会社は積極的にM&Aを行っており、警備業以外の分野にも進出しています。特に、介護・福祉系は警備業とのシナジーも高く、綜合警備保障などの大手が主力事業の1つとして非常に力を入れています。
警備業界の課題
警備業界は警備員の数が慢性的に不足しており、警備員不足をいかに解消するかが課題の1つとなっています。M&Aにおいても、人材の獲得を目的とした買収がいくつかみられます。
警備業界における人材不足の理由としては、警備員の仕事はきつい割に給料が安く、なりたいと思う人があまりいないという点が挙げられます。警備員の給与の引き上げを含む待遇改善は、警備業界の重要な課題といえるでしょう。
警備業界のそのほかの課題としては、電子マネーの普及による現金輸送の需要減少など、需要の変化に合わせたサービスを提供できるかという点も挙げられます。
2. 【2021】警備業界のM&A動向・特徴
この章では、2021年現在の警備業界のM&A動向や、特徴についてみていきます。警備業界は主に大手のM&Aが活発で積極的な展開をしているので、M&A動向を把握しておくことが重要です。
警備業界はM&Aが活発
警備業界はほかの業界と比較して、M&Aが活発だに行われています。特に、セコムや綜合警備保障といった大手はM&Aに積極的で、他業種や海外進出も含めた多彩なM&A戦略をとっています。
【警備業界のM&A動向・特徴】
- 人材や設備投資を目的とする同業種間のM&A
- シナジー効果を狙った異業種とのM&A
- 海外進出のためのM&A
人材や設備投資を目的とする同業種間のM&A
警備業界では、人材の確保や設備投資のための同業種間M&Aが活発に行われています。
警備業界では優秀な警備員をいかに確保するかが重要ですが、熟練の警備員を一から育てるのは手間とコストがかかります。そのため、既存の警備会社をM&Aで買収し、優秀な警備員を手早く確保するのが有効な手段になります。
警備業界では機械警備の需要が高まっていますが、セキュリティシステムの構築はコストがかかるので、自社で一から構築するのが困難なケースもあるでしょう。
このようなケースにおいても、機械警備に強い警備会社をM&Aで獲得して、手早く設備投資を達成する動きが活発になっています。
シナジー効果を狙った異業種とのM&A
シナジー効果とは相乗効果を指し、違う強みを持つ会社同士がM&Aで協働することによって、単独では実現できない事業拡大を実現できるようになります。
警備業界では、特に綜合警備保障などの大手がシナジー効果を狙った異業種M&Aを行っています。
特に、介護関連の事業は見守りなどの観点から警備業界との親和性が高く、大手警備会社が積極的に介護事業に進出しています。
海外進出のためのM&A
警備業界では、海外進出を狙った外国企業のM&Aも積極的に行われています。特にアジア圏は人件費の安さなどのメリットがあり、アメリカやヨーロッパに比べ多くのM&Aが行われています。
経済成長が進む国では、富裕層向けのセキュリティサービスの需要も高まってきているので、新たな市場開拓を目指して海外進出する事例もみられます。
3. 【2021】警備業界のM&A事例
この章では、警備業界で実施された主なM&Aのなかから、最近行われた10例を紹介します。
【警備業界のM&A事例】
- 綜合警備保障によるALSOKリースの吸収合併
- 綜合警備保障と三菱商事の資本業務提携
- セコムによるマレーシア・シンガポールのセキュリティ会社の子会社化
- セコムと共栄セキュリティーサービスの資本業務提携
- 東洋テックによる新栄ビルサービスの完全子会社化
- 綜合警備保障によるらいふホールディングスの完全子会社化
- トスネットによる北日本警備の完全子会社化
- セントラル警備保障によるシーティディーネットワークスの子会社化
- セコムによる東芝セキュリティの子会社化
- 綜合警備保障によるケアプラスの子会社化
1.綜合警備保障によるALSOKリースの吸収合併
2021年6月に、綜合警備保障株式会社が、ALSOKリース株式会社を吸収合併するM&Aを決議しました。合併の効力発生日は2022年4月1日です。
綜合警備保障は「ALSOK」ブランドで知られる大手警備・セキュリティ会社で、近年は積極的にM&Aを行って介護事業などにも進出しています。
ALSOKリースはもともと綜合警備保障の完全子会社だった企業で、防犯カメラ火災報知器などの、機械警備機器のリースと販売を手がけています。合併によって経営効率を高めることが本M&Aの目的となっています。
2.綜合警備保障と三菱商事の資本業務提携
2020年12月に、綜合警備保障株式会社と三菱商事株式会社が、介護・高齢者生活支援事業に関する資本業務提携に合意しました。
綜合警備保障が、三菱商事の子会社である株式会社日本ケアサプライの株式を取得することにより、資本関係を結びます。
日本ケアサプライは、福祉用具のレンタルと販売、および病院・介護施設向けの弁当の販売を手がけています。
綜合警備保障・三菱商事・日本ケアサプライ3社が持つノウハウを活かし、高齢者・要介護者向けサービスの充実を図ることが本M&Aの目的となっています。
3.セコムによるマレーシア・シンガポールのセキュリティ会社の子会社化
2020年10月に、セコム株式会社がマレーシアとシンガポールのセキュリティ会社をM&Aで完全子会社化しました。
セコムは警備業界の最大手で、警備・セキュリティ事業を中心に、防災・メディカル・保険事業などを幅広く手がけています。本M&Aで買収した2社は、どちらも現地で警備・セキュリティ事業を営む会社です。
セコムは海外事業を積極的に展開しており、アジアを中心に17か国に進出しています。本M&Aもその経営戦略の一環であり、アジア圏の富裕層・中間層をターゲットにした市場拡大を目指しています。
4.セコムと共栄セキュリティーサービスの資本業務提携
2020年5月に、セコム株式会社と共栄セキュリティーサービス株式会社が資本業務提携を行いました。セコムが共栄セキュリティーサービスの株式の約3%を取得します。
共栄セキュリティーサービスは、施設警備や交通誘導などの、人的警備を中心に手がける警備会社です。
セコムのセキュリティシステムの技術やノウハウと、共栄セキュリティーサービスの人的警備の強みを融合させ、シナジー効果を獲得することが本M&Aの目的となっています。
5.東洋テックによる新栄ビルサービスの完全子会社化
2020年4月に、東洋テック株式会社が株式会社新栄ビルサービスの全株式を取得し、完全子会社化しました。
東洋テックは大阪に本社を置く警備会社で、機械警備や現金輸送、セキュリティ機器の販売などを手がけています。新栄ビルサービスは、関西でビル・マンションの清掃業や設備管理業を営む会社です。
新栄ビルサービスのビル管理ノウハウを活かしたシナジー効果の獲得、および警備業とビル管理業の一体化や人材の相互活用が本M&Aの目的となっています。
6.綜合警備保障によるらいふホールディングスの完全子会社化
2020年4月に、綜合警備保障株式会社が株式会社らいふホールディングスの全株式を取得し、完全子会社化しました。
らいふホールディングスは、介護事業を営む株式会社らいふ、ウイルスやアレルギーなどの検査事業を営む株式会社エムビックらいふを傘下に持つ持株会社です。
綜合警備保障は以前から介護事業に力を入れていますが、本M&Aにより介護事業の拡大を実現しています。
さらに、綜合警備保障の顧客にエムビックらいふの検査サービスを提供することにより、販路の拡大と顧客満足度の上昇を目指します。
7.トスネットによる北日本警備の完全子会社化
2019年7月に、株式会社トスネットが北日本警備株式会社の全株式を取得し、完全子会社化しました。
トスネットは施設警備や交通誘導などの人的警備を中心に手がける会社で、北日本警備は北海道で人的および機械警備を手がける会社です。
トスネットは、北海道に警備・セキュリティ関連の子会社を有しており、これらの会社と北日本警備の間でシナジー効果を獲得することが本M&Aの目的となっています。
8.セントラル警備保障によるシーティディーネットワークスの子会社化
2019年4月に、セントラル警備保障株式会社がシーティディーネットワークス株式会社の株式の51%を取得して子会社化しました。
セントラル警備保障は、機械警備から人的警備まで幅広く警備事業を手がける警備・セキュリティ会社です。
シーティディーネットワークスはシステム開発や通信・電気工事などを手がける会社で、警備業界の会社ではありません。
しかし、子会社の株式会社グラスフィアジャパンは、監視カメラなど機械警備関連の機器を販売しています。
シーティディーネットワークスの工事・施工の技術とノウハウを取り入れて、機械警備の事業拡大を狙うのが本M&Aの目的となっています。
9.セコムによる東芝セキュリティの子会社化
2018年8月に、セコム株式会社が東芝セキュリティ(現:セコムトセック)株式会社の株式の約80%を取得して子会社化しました。
本M&Aは、東芝セキュリティの親会社である株式会社東芝が、保有する株式を譲渡する形で実行されました。
東芝セキュリティは、東芝グループのオフィスや設備の警備、防災・保守・点検などを手がけていた会社です。
東芝セキュリティは東芝グループが持つ大規模な工場・施設の警備に関するノウハウがあり、これを活かすことでより満足度の高いサービスを提供することが本M&Aの目的となっています。
10.綜合警備保障によるケアプラスの子会社化
2018年6月に、綜合警備保障株式会社が株式会社ケアプラスの全株式を取得し、完全子会社化しました。
ケアプラスは要介護者向けの訪問医療マッサージ「まごころベルサービス」を提供している会社で、全国各地に20の営業所を展開しています。
綜合警備保障は介護事業を始めとする高齢者向け事業を積極的に展開しており、本M&Aもその一環となっています。
4. 警備業界M&Aでのメリット
警備業界のM&Aを行うメリットとしては、事業の効率化や高度化、従業員の雇用維持など、以下の4点が挙げられます。
【警備業界M&Aでのメリット】
- 警備事業の効率化や高度化が実現可能
- 従業員の雇用維持
- 生産性の向上やコストカットなどのシナジー効果獲得
- 売却・譲渡益の獲得
警備事業の効率化や高度化が実現可能
警備業界の会社同士でM&Aを行うと、スケールメリットなどを活かした事業の効率化や、お互いの強みによって事業の高度化が実現できます。
例えば、違う地域に拠点を置く警備会社同士がM&Aで協働すれば、広いエリアの需要を効率的にカバーできます。
さらに、機械警備に強い会社と人的警備に強い会社がM&Aで協働すれば、お互いの強みを活かした高度なサービスを提供できます。
従業員の雇用維持
中小の警備会社で経営が苦しい場合や、事業承継に失敗して廃業の危機にある場合は、M&Aで大手警備会社に売却することで従業員の雇用を維持できます。
大手は中小企業より従業員の待遇がよいことが多いので、大手にM&Aすることで雇用維持だけでなく、雇用条件の改善が実現することもあります。
雇用維持は、警備業界に限らずM&A全般にいえるメリットなので、中小企業経営者としては戦略の1つとして押さえておきたいところです。
ただし、買収先の企業の労働環境がよくない、企業風土や人間関係が合わないなどの理由で、せっかくM&Aをしても従業員が退職してしまうケースもあります。
従業員の雇用維持を目的としてM&Aを行う際は、雇用条件だけでなく働きやすさにも配慮することが大切です。
生産性の向上やコストカットなどのシナジー効果獲得
警備業界のM&Aを行うと、お互いの企業の設備や人材を共有することによる、生産性の向上やコストカットといったシナジー効果が見込めます。
特に機械警備はコストが高くなりがちなので、コストカットを目的としたM&Aが有効になることが多いです。
シナジー効果は生産性やコストカット以外にも、さまざまな形で獲得できます。具体的なシナジー効果の形は、M&Aを行う企業の経営資源や強みによって変わるので、自社とどのようなシナジー効果が得られるか見極めながら相手企業を選ぶことが大切です。
売却・譲渡益の獲得
M&Aで会社を売却すれば対価として売却益が得られますが、金銭の獲得というのもM&Aの大きなメリットです。
例えば、複数の事業を営んでいる警備会社なら、不採算事業をM&Aで売却して、その売却益をコア事業の資金にあてるといった戦略がとれます。
また、経営者が引退する際に、リタイア後の生活費を確保するためにM&Aを行うのも有効な方法です。
5. 警備業界のM&Aを成功させるポイント
M&Aは時間的・金銭的・精神的負担がどれも大きいにもかかわらず、必ず成功するとは限りません。警備業界のM&Aを実行するなら、あらかじめ成功させるポイントを押さえておくことが大切です。
この章では、警備業界のM&Aを成功させる売却側の主な3つのポイントについて解説していきます。
【警備業界のM&Aを成功させるポイント】
- スキルのある警備員を多く雇用している
- 安定した受注先(取引先)を持っている
- 法令規定の教育をしっかり実施している
1.スキルのある警備員を多く雇用している
警備業界は慢性的な人材不足で優秀な警備員が欲しい企業が多いので、スキルの高い警備員を雇用している警備会社はM&Aで有利になります。
施設警備や現金輸送など、特定の業務に長く従事している警備員は、経験とノウハウを有しているので重宝されます。
また、機械警備に詳しい警備員を有していれば、機械警備にこれから進出しようとしている企業から高く評価されるでしょう。
買い手が警備員の獲得のためにM&Aを行う場合は、確実に従業員が買い手企業に移籍してくれるよう準備することが重要になります。
雇用条件などをしっかり交渉するとともに、M&Aに関して従業員が納得のいく説明をすることも大切です。
2.安定した受注先(取引先)を持っている
警備業界は、オリンピックなどの大規模イベントで一時的に需要が伸びることもありますが、基本的には安定した受注先を持っている企業が有利になります。
M&Aで警備業界に進出したいと思っている企業も、売り手を探す時にその企業が安定した受注先を持っているかを重視することが多いです。
警備会社のM&Aを行う際は、あらかじめ自社の受注先の一覧などを書面として用意しておき、交渉時に買い手にアピールできるようにしておくとよいでしょう。
3.法令規定の教育をしっかり実施している
警備業法には警備員の教育に対する規定があり、法令に基づく教育をしっかり実施することで買い手からの信頼を得ることができます。
警備員の教育には、新人に対して基礎的な教育を行う「新任教育」と、現職の警備員が業務の質を向上・改善するための「現任教育」があります。
警備員が持つ知識や経験、資格の有無などによって教育内容と時間が変わるので、法令規定をよく確認しておくことが大切です。
6. 警備業界のM&Aにおすすめの相談先
警備会社のM&A・事業承継をご検討中の経営者様は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。
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7. まとめ
今回は、警備業界のM&A動向や成功させるポイントなどをみてきました。警備業界は特に大手によるM&Aが活発に行われており、今後もこの傾向は続くとみられます。
中小の警備会社も警備業界のM&A動向を把握しておくと、いざという時にタイミングを逃さずにM&Aを行うことができるでしょう。
【警備業界のM&A動向・特徴】
- 人材や設備投資を目的とする同業種間のM&A
- シナジー効果を狙った異業種とのM&A
- 海外進出のためのM&A
【警備業界M&Aでのメリット】
- 警備事業の効率化や高度化が実現可能
- 従業員の雇用維持
- 生産性の向上やコストカットなどのシナジー効果獲得
- 売却・譲渡益の獲得
【警備業界のM&Aを成功させるポイント】
- スキルのある警備員を多く雇用している
- 安定した受注先(取引先)を持っている
- 法令規定の教育をしっかり実施している
8. 警備業界の成約事例一覧
9. 警備業界のM&A案件一覧
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