適格株式移転の要件を総まとめ!

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

適格株式移転の要件とは、株式移転の際に一定の条件を満たすことにより、適用される税務などの優遇措置のことです。本記事では、適格株式移転が適用されるための要件を、株式移転を行う企業の支配関係ごとに分けて解説します。また、株式移転の際の税務についても解説します。

目次

  1. 適格株式移転とは
  2. 適格株式移転が求められるシーン
  3. 適格株式移転の要件とは
  4. 適格株式移転の要件一覧と該当条件
  5. 適格株式移転の税務関係
  6. 適格株式移転の注意点
  7. まとめ
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1. 適格株式移転とは

適格株式移転とは

適格株式移転とは、株式移転の際に適用される税制の優遇措置のことです。

株式移転とは、完全親会社となる新会社を設立し、株式移転を行う当事企業が完全親会社に株式を移転することで完全子会社となる、組織再編手法です。株式移転は主に組織を持株会社化する際に採用されます。

株式移転を行う際は、当事企業の関係によって適用株式移転か非適格株式移転が適用されます。

適格株式移転と認められるには、完全親会社が完全子会社に交付する対価が株式のみなど、いくつかの要件を満たさなければなりません。

株式交換との違い

株式交換とは、支配関係や提携関係にある相手企業を100%完全子会社化する際に、よく用いられる組織再編手法です。

株式移転は新会社を完全親会社とするのに対して、株式交換は既存の企業同士で行う点が違います。

株式交換にも適格株式交換と非適格株式交換があり、適格株式交換の方が税務上有利になります。

会社法上の扱い

株式移転は、会社法上の組織再編行為に該当します。組織再編行為には吸収型再編と新設型再編があり、株式移転は新設型再編に分類されます。

また上記の株式交換は、会社法上吸収型再編となります。

【関連】株式移転とは?株式交換との違いや手続き、メリットや注意点を解説

2. 適格株式移転が求められるシーン

適格株式移転が求められるシーン

株式移転では、完全子会社の株主が完全親会社に保有株式を売却します。通常であれば株式の売買には税金が発生しますが、それでは企業や株主に組織再編を躊躇させることとなります。

しかし、適格株式移転を適用すれば、そのような弊害を無くし円滑な組織再編が可能になります。

また、株式移転は持株会社化する際によく用いられる手法ですが、持株会社化後に連結納税制度を挿入することがあります。連結納税とは、100%支配関係のあるグループ会社内で損益通算できる制度です。

さらに、完全親会社の繰越欠損金をグループ内で適用できるメリットもあります。この連結納税によるメリットを得るために、適格株式移転を用いることもあります。

3. 適格株式移転の要件とは

適格株式移転の要件とは

適格株式移転の要件とは、株式移転の際に税制の優遇措置が受けられる条件のことです。適格株式移転の要件は、株式移転を行う当事会社の関係によって変わります。

当事会社間での株式の保有割合が多いほど要件は少なく、保有割合が少ないほど要件は多くなります。

適格株式移転が適用されるには、それらの要件をすべて満たさなければなりません。

【関連】株式移転と株式交換の違いとは?手法やメリット、費用も解説【事例あり】

4. 適格株式移転の要件一覧と該当条件

適格株式移転の要件一覧と該当条件

適格株式移転の要件は、株式移転を行う企業の関係性によって違いがあります。

  • 完全支配関係にある適格株式移転の要件
  • 支配関係にある適格株式移転の要件
  • 共同事業の適格株式移転の要件

完全支配関係とは、適格株式移転を行う企業が株式を100%保有している関係のことです。また、支配関係とは、株式を50%超100%未満保有している関係で、共同事業とは50%以下保有している関係のことです。

完全支配関係にある適格株式移転の要件(100%関係)

完全支配関係にある企業が適格株式移転を適用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
 

  1. 金銭等不交付要件
  2. 株式継続保有要件

①金銭等不交付要件

株式移転の完全親会社は、完全子会社に対して株式だけを交付する場合に、適格株式移転の要件を満たします。ただし、株式以外を交付しても適格要件と認められる例外があります。
 

  • 完全子会社株主の単元未満株を現金で買い取る場合
  • 株式移転の反対株主から買取請求があり、現金で買い取る場合

②株式継続保有要件

株式移転前から当事会社が100%親子会社関係、または当事会社に同じ親会社がいる兄弟会社関係で、株式移転後も関係が変わらない場合は適格株式移転の要件を満たします。

また、自社だけで株式移転を行う単独株式移転のケースでも、株式移転前後で親子関係が変わらない場合は適格株式移転の要件を満たします。

支配関係にある適格株式移転の要件(50%超から100%未満)

支配関係にある企業が適格株式移転を適用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
 

  1. 金銭等不交付要件
  2. 株式継続保有要件
  3. 従業員業務要件
  4. 事業継続要件

①金銭等不交付要件

完全支配関係の場合と同じく、株式移転の完全親会社は、完全子会社に対して株式だけを交付する場合に限り、適格株式移転の要件を満たします。

ただし、完全支配関係の場合と同じく例外もあります。
 

  • 完全子会社株主の単元未満株を現金で買い取る場合
  • 株式移転の反対株主から買取請求があり、現金で買い取る場合

②株式継続保有要件

株式移転前から当事会社が親子会社関係、または兄弟会社関係で、株式移転後も関係が変わらない場合は適格株式移転の要件を満たします。

また、自社だけで株式移転を行う単独株式移転のケースでも、株式移転前後で親子関係が変わらない場合も適格株式移転の要件を満たします。

③従業員業務要件

完全子会社となる企業の約8割程度以上の従業員が、株式移転後も同じ会社で働き続けるか、完全親会社で働き続ける場合は、適格株式移転の要件を満たします。

約8割程度とは、必ず8割以上というわけではなく、8割を多少割っていても認められることがあります。

④事業継続要件

完全子会社となる企業のコア事業が株式移転後もコア事業として引き続き経営される場合は、適格株式移転の要件を満たします。

共同事業の適格株式移転の要件(0%から50%以下)

共同事業関係にある企業が適格株式移転を適用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
 

  1. 金銭等不交付要件
  2. 株式移転完全子会社の株主の株式継続保有要件
  3. 株式移転完全親会社の株式継続保有要件
  4. 従業員業務要件
  5. 事業継続要件
  6. 事業関連性要件
  7. 同等規模要件、もしくは双方経営参画要件

①金銭等不交付要件

完全支配関係や支配関係の場合と同じく、株式移転の完全親会社が完全子会社に対して株式だけを交付する場合は、適格株式移転の要件を満たします。ただし、共同事業の場合も例外があります。
 

  • 完全子会社株主の単元未満株を現金で買い取る場合
  • 株式移転の反対株主から買取請求があり、現金で買い取る場合

②株式移転完全子会社の株主の株式継続保有要件

完全子会社となる企業の株式を20%以上保有している支配株主が、株式移転で完全親会社から株式を交付された後も株式の売却などをすることなく保有し続けている場合は、適格株式移転の要件を満たします。

③株式移転完全親会社の株式継続保有要件

完全親会社と完全子会社の関係が株式移転後も続くことが明確な場合は、適格株式移転の要件を満たします。

④従業員業務要件

完全子会社となる企業の約8割程度以上の従業員が、株式移転後もそのまま同じ会社に従事するか、完全親会社で働き続ける場合は、適格株式移転の要件を満たします。

⑤事業継続要件

完全子会社となる企業のコア事業が株式移転後もコア事業として引き続き経営される場合は、適格株式移転の要件を満たします。

⑥事業関連性要件

株式移転によって完全子会社となる企業同士のコア事業が、同業種であったり事業を行ううえで欠かせない関係だったりする場合は、適格株式移転の要件を満たします。

⑦同等規模要件、もしくは双方経営参画要件

完全子会社となる企業同士の売上高や従業員数を比較した時に、5倍以上の差がなければ適格株式移転の要件を満たします。これを同等規模要件と言います。

また、株式移転前の完全子会社の特定役員が、株式移転後同じ会社に1人でも残っていれば適格株式移転の要件を満たします。

特定役員とは、社外取締役などの外部役員ではなく、自社の経営に直接関わっている役員のことを指します。これを双方経営参画要件と言います。

同等規模要件か双方経営参画要件は、どちらか一方を満たせば適格株式移転の要件と認められます。

【関連】持株会社設立で経営統合!作り方や手順、メリット・デメリットを解説!

5. 適格株式移転の税務関係

適格株式移転の税務関係

株式移転では、適格か非適格かによって税務が変わります。この章では、以下のケースごとに発生する税務についてそれぞれ解説します。
 

  • 株式移転完全親会社の税務
  • 株式移転完全子会社の税務
  • 株式移転完全小会社の旧株主の税務

株式移転完全親会社の税務

まずは完全親会社の税務について、適格株式移転と非適格株式移転の場合に分けて解説します。

適格株式移転の場合

適格株式移転で完全親会社が完全子会社の株主から株式を取得する場合、完全子会社の人数によって取得価額が変わります。

完全子会社の株主数が50人未満の場合は、簿価に株式取得にかかった費用などを加えて算出します。株主数が50人以上の場合は簿価純資産に株式の取得にかかった費用などを加えて算出します。

非適格株式移転の場合

非適格株式移転では、完全親会社が完全子会社の株主から株式を取得する場合、取得価額は完全親会社設立日の時価を用いて算出します。

株式移転完全子会社の税務

続いて、完全子会社の税務について、適格株式交換と非適格株式交換に分けて解説します。

適格株式移転の場合

適格株式移転の場合、完全子会社の資本金等は株式移転前後で変わらないため、必要な税務はありません。

非適格株式移転の場合

非適格株式移転では、完全子会社の資産の一部を時価評価します。時価評価された資産は、損益算入をしなければなりません。

株式移転完全子会社の旧株主の税務

最後に完全子会社株主の税務について解説します。株主に対する課税は、適格株式移転か非適格株式移転かに関係なく、完全親会社から株式のみの交付か株式以外の交付があったかによって変わります。

適格株式移転の場合

完全子会社株主が完全親会社から受け取った対価が株式のみの場合は、簿価での引き継ぎとなるので、株主に課税はされません。

株式以外の交付があった場合、時価での取得とみなされて、譲渡損益による課税が発生します。

非適格株式移転の場合

非適格株式移転の場合も、適格株式移転の税務と同様であり、上記のように、株式のみの交付かそれ以外の交付があったかで変わります。

【関連】M&Aの税務を解説!税制適格・非適格って何?

6. 適格株式移転の注意点

適格株式移転の注意点

企業によっては、連結納税の導入を目的として適格株式移転を行う場合があります。連結納税はグループ企業にとって税務面のメリットが大きい分、租税回避目的の利用に対して厳しく規制が入ります。

また、連結納税は完全親会社と完全子会社の状況によってデメリットとなることもあります。連結納税は1度導入したら途中でやめることができません。連結納税導入目的での適格株式移転には注意が必要です。

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連結納税導入目的での適格株式移転を行う際は、M&Aや税務などの専門家によるサポートを受けながら行うことをおすすめします。

M&A総合研究所では、M&A・税務に精通した公認会計士がフルサポートをいたします。株式移転についてご検討の際は、お気軽に無料相談をご利用ください。

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7. まとめ

まとめ

適格株式移転とは、一定の要件を満たすことで税務上の優遇措置を受けられる制度のことです。適格株式移転の要件は、株式移転を行う当事会社の関係性によって変わります。

完全支配関係(100%支配関係)にある適格株式移転の要件

金銭等不交付要件 完全親会社が完全子会社に対して株式のみ交付する
株式継続保有要件 株式移転後も完全支配関係が続く

支配関係(50%超から100%未満)にある適格株式移転の要件
金銭等不交付要件 完全親会社が完全子会社に対して株式のみ交付する
株式継続保有要件 株式移転後も支配関係が続く
従業員業務要件 完全子会社のおよそ8割程度の従業員が株式移転後も引き続き会社に残る
事業継続要件 完全子会社が株式移転後もコア事業を引き続き営む

共同事業(0%から50%以下)の適格株式移転の要件
金銭等不交付要件 完全親会社が完全子会社に対して株式のみ交付する
株式移転完全子会社の株主の株式継続保有要件 完全子会社の株式を20%以上保有する株主が株式移転後も引き続き保有し続ける
株式移転完全親会社の株式継続保有要件 完全親会社と完全子会社の関係が株式移転後も続く
従業員業務要件 完全子会社のおよそ8割程度の従業員が株式移転後も引き続き会社に残る
事業継続要件 完全子会社が株式移転後もコア事業を引き続き営む
事業関連性要件 完全子会社同士の事業に関連性がある
同等規模要件または双方経営参画要件のいずれか ・完全子会社同士の売上高や従業員数の差が5倍以内
・株式移転後も特定役員が完全子会社に残る

株式移転を行う際は、適格株式移転に該当するかどうかで税務上大きな差が生まれます。また、株式移転の際は債権者や株主の保護など、丁寧な手続きが必要となるためM&A仲介会社など、専門家のサポートを受けながら進めていくことことをおすすめします。

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