障害者福祉サービスのM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイント・事例6選を徹底解説【2024年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、障害福祉サービスのM&A・事業承継の現状から手法や流れ、注意点を過去事例と併せて解説します。障害福祉サービスは、障害者総合支援法に基づいて行わなければなりません。障害福祉サービス業界のM&Aを検討している方は必見です。

目次

  1. 障害者福祉サービスの概要
  2. 障害者福祉サービスのM&Aの動向
  3. 障害福祉サービスのM&Aメリット
  4. 障害者福祉サービスのM&A・事業譲渡の2つの手法
  5. 障害者福祉サービスのM&Aの流れ
  6. 障害者福祉サービスのM&Aにおける注意点
  7. 障害者福祉サービスのM&A事例
  8. 障害者福祉サービスのM&Aまとめ
  9. 障害者施設 ・就労継続支援施設業界の成約実績一覧
  10. 障害者施設 ・就労継続支援施設業界のM&A案件一覧
  11. 障害者施設 ・就労継続支援施設業界の成約事例一覧
  12. 障害者施設 ・就労継続支援施設業界のM&A案件一覧
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1. 障害者福祉サービスの概要

障害福祉サービス業界は、中小事業者が廃業や倒産するケースが目立ち、大手や中堅企業が規模拡大による利益増を目的としたM&Aを活発に行っています

M&Aによって新規参入を図る事業者なども増えているため、業界内での競争はさらに厳しくなる見込みです。

障害福祉サービス業界に限らず、事業を存続させる手段としてM&Aの活用は非常に有効です。この記事では、障害福祉サービスのM&Aに用いられる主な手法や実施時に注意すべき点を解説します。

障害者福祉サービスとは

障害福祉サービスとは、障害者総合支援法の定めに基づき、障害のある人に提供するサービスのことです。

障害福祉サービスは、介護給付と訓練等給付の大きく2つに分けられています。介護給付とは、介護が必要と認められた人を対象とする障害福祉サービスです。

訓練等給付は、身体障害や知的障害のある人を対象に、自立した社会生活を営むためのスキルや仕事を身に付けられるよう支援を行います。

障害者福祉サービスの現状

障害者福祉サービスのM&Aについて触れる前に、市場規模などの現状を確認していきましょう。

障害者福祉サービスの市場規模

厚生労働省「障害福祉分野の最近の動向 」

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001098279.pdf

厚生労働省「障害福祉分野の最近の動向」によると、2022年12月時点での障害福祉サービス利用者数は約147.0万人であり、前年同時期の139.4万人から5.4%増加しました。

2018年以降、障害福祉サービスの利用者数は増加傾向にあり、障害福祉サービス関係予算額も2007年から2022年の15年間で3倍以上に増えています。

利用者が増える一方で障害福祉サービスの従業員不足は深刻な状況であり、国も障害福祉サービスにおける人材確保の一環として処遇改善などの対策を行っていますが追いついていないのが現状です。

参考:厚生労働省「障害福祉分野の最近の動向」

障害者福祉サービスの倒産状況

東京商工リサーチの2020年 障害者福祉事業 倒産と休廃業・解散調査によると、2020年における障害者福祉事業の休廃業・解散数は過去最高の107件を記録しました。

倒産数は新型コロナ支援策の影響で抑制されているものの、事業不振における事業者の増加から、年々増加している状況です。休廃業・解散数が過去最高となった理由として、安易に新規参入した企業における事業上の失敗が指摘されています。

2. 障害者福祉サービスのM&Aの動向

障害福祉サービスを行っている大手・中堅の事業者は、M&Aによって事業規模をさらに広げて利益増を目指すケースが増えています。

そのほか、異業種から新たに障害福祉サービスへ参入する際にM&Aが活用される事例も増加し、中小規模の事業者は厳しい競争下でどのように生き残るかが課題です。

事業の性質上、障害福祉サービスの場合は経営状況が悪化しても廃業が難しいため、今後はM&Aを行って事業を存続させる事業者も増えると考えられます。

譲渡側の悩み・ニーズ

障害福祉サービスのM&Aで、譲渡側は下記の悩みやニーズを抱えています。

  • 利用者がなかなか集まらず、赤字経営が継続している
  • 児童発達支援管理責任者などの離職が増え、採用コストがかかる
  • どこの譲受先を信頼したらよいのかわからない
  • 小規模案件のためM&A専門会社が取り扱っていない
  • M&A専門会社や銀行の障害福祉事業に対する理解が不足している

譲受側の悩み・ニーズ

次に、障害福祉サービスのM&Aにおける譲受側の悩みやニーズを見ていきましょう。

  • 現在存在する障害福祉事業を広げて、効率的に運営したい
  • 現在存在する障害福祉事業の多角化を図りたい
  • 実質的な総量規制が生じる障害福祉事業の権利を得たい
  • 障害福祉事業に参入したいが、知識がないため譲受が不安
  • M&A専門会社は障害福祉分野の知識が欠けていて、時間がかかってしまう

3. 障害福祉サービスのM&Aメリット

障害者福祉サービスをM&Aする5つのメリットについて見ていきましょう。

後継者問題の解決

少子高齢化や事業の先行き不安などの理由から、廃業を選択する障害者福祉サービス事業者は少なくありません。国内の後継者不在率は近年改善傾向にありますが、まだまだ後継者問題を抱える中小企業は多いのが現状です。

M&Aは事業承継手段としても活用できる方法であり、経営者の親族や社内(役員など)に後継者がいなくても、第三者へ事業を引き継ぐことができます。

従業員の雇用確保

事業承継ができないなど何らかの理由で廃業する場合、自社の従業員を解雇しなければならないため、経営者にとっての心理的ストレスも大きくなるものです。また、従業員にとっても新しく勤務先を探さなければなりません。

廃業となれば経営者・従業員ともに負担が大きくなりますが、M&Aを活用すれば売り手側の従業員(雇用)を買い手側へ引き継ぐことができます。

使用するM&A手法によって雇用の継続に必要な手続きは変わりますが、障害福祉サービス業は慢性的な人材不足が課題となっているため、買い手側にとってもメリットのある方法です。

創業者利益の拡大

M&Aを行った場合、売り手側は譲渡益を得ることができ、株式譲渡の場合はオーナー株主、事業譲渡の場合は法人が利益を得ます。

事業譲渡の場合は退職金などのかたちで受け取る必要はありますが、オーナー経営者はまとまった利益を得ることができるのもM&Aの大きなメリットです。

廃業手続きの手間を削減

廃業を選択した場合、従業員や取引先への通知、廃業の届け出、税金や保険関係の届出など、さまざまな手続きが必要です。また、手間だけでなく費用も当然かかり、経営者が個人保証を負っている場合はそのまま残ります。

廃業手続きにかかる手間や費用、個人保証などの存在は経営者にとって大きな負担となりますが、M&Aを活用すればこれらの手間を削減することができ、前述した創業者利益も得ることが可能です。

利用者の継続利用

障害者福祉サービス事業者が廃業を選択する場合、考えなければならないのはサービス利用者の存在です。障害者福祉サービスの利用者は新たに利用先を探さなければならず、不安や混乱を招く場合もあるでしょう。

一方でM&Aを活用した場合、利用者にとっては運営元が変わるものの、サービスを継続して利用することができます。

  • 障害者施設 ・就労継続支援施設のM&A・事業承継

4. 障害者福祉サービスのM&A・事業譲渡の2つの手法

障害福祉サービスのM&Aでは、主に2つの手法が用いられます。この章では、それぞれの手法を見ていきましょう。

①事業・事務所譲渡

事業・事務所譲渡は、障害福祉サービスの事業もしくは事務所だけを譲渡できます。買い手のメリットは、対象の資産のみ譲り受けるので負債を背負う必要がないこと、価格を低く抑えられることなどです。

しかし、事業・事務所譲渡の場合は基本的に従業員を引き継げず、引き継げたとしても離職の可能性が高まる点はデメリットになります。

障害福祉サービスの事業・事務所譲渡を行う場合は、旧事業所の廃止と新事業所の指定申請手続きを同時に行わなければなりません。

②株式譲渡

株式会社の場合は株式の譲渡を行うことで経営権を買い手側へ移転させることができます。株式譲渡は、売り手の権利・義務が包括的に承継させる方法です。

障害福祉サービス事業者自体を売却するケースなどに適した方法ですが、一般社団法人やNPO法人の場合は理事の交代で経営権が移動します。

③経営権取得

一般社団法人やNPO法人の場合は理事の交代で経営権が移動します。法人譲渡の場合、譲渡前の組織をそのまま手に入れられるため、大きな組織変革を行う必要はありません。また、譲渡された従業員の離職リスクも、事業・事務所譲渡に比べると低くなります。

一方で、法人譲渡は負債も引き受ける必要があり、買い手のリスクは簿外債務も引き継ぐ点です。このリスクを下げるためには、売り手に対する財務デューデリジェンスをしっかり行う必要があります。

合併

合併は、2つ以上の複数法人を1つの法人各に統合する手法で、新設合併と吸収合併の2方式があります。合併の大きな特徴は存続会社となる側のみが権利・義務をすべて承継して存続し、消滅側となる側の法人格が消滅することです。

新設合併と吸収合併の違いは存続会社となる側が新設会社なのか既存会社なのかという点であり、新設合併の場合は存続会社となる会社を新設し、残りの消滅会社はすべて法人格を消滅させます。

一方、吸収合併の場合は存続会社となるのは既存会社です。合併後は既存会社が権利・義務を承継したあと消滅します。

5. 障害者福祉サービスのM&Aの流れ

障害福祉サービスのM&Aを行う際は、全体の流れを把握すると、準備や手続きをスムーズに進められます。ここでは、生涯福祉サービスにおけるM&Aの大まかな流れを見ていきましょう。

①M&A仲介会社・M&Aの専門家に相談

障害福祉サービスのM&Aを行うためには、相手先を探し、そのうえで適切な手法を選択しなければなりません。

障害福祉サービス特有の注意すべきポイントも把握したうえで進めなければならないため、まずはM&A仲介会社・M&Aの専門家に相談してサポートを依頼するのが一般的です。

サポートの依頼先を決める際は、自社の規模と同じ程度の案件を扱うところ、障害福祉サービス業界のM&A支援実績があるところを選ぶとよいでしょう。

②M&A先の選定・交渉

サポートを依頼するM&A仲介会社・アドバイザーが決まった後に行うのが、M&A相手先の選定です。自社の希望条件をM&Aアドバイザーへ伝えると、見合った候補先をリストアップしてもらえるので、その中から交渉したい相手を決めます。

交渉したい相手先を選定したら、M&Aアドバイザーを通して具体的な交渉を行います。

③トップ同士の面談

トップ同士の面談は、双方の経営理念を確認したり互いの為人を見極めたりするなど、書面ではわからない情報を直接知る機会です。特に買い手側企業は買収後の統合プロセスを見据えたうえ、買収しても問題がないかを判断できる場でもあります。

④基本合意書の締結

トップ面談後、売り手・買い手双方がM&A成立に前向きである場合は、基本合意書の締結へと進みます。基本合意書は、ここまでの交渉で互いに取り決めた内容をまとめたものですが、この時点ではまだM&Aが成立していません。

基本合意書には、M&A手法や価格、今後のスケジュール、デューデリジェンスへの協力義務、独占交渉権付与などが盛り込まれています。一般的に、一部内容を除いて法的拘束力はありません

⑤買収側によるデューデリジェンスの実施

基本合意締結後は、買収側によるデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスとは、企業監査のことで、財務や法務などの面から売り手側の企業あるいは事業を調査することです。

一般的に、デューデリジェンスは、各分野の専門家が調査を行います。所要期間は譲渡対象の規模により1カ月から2カ月程度です。デューデリジェンスの結果によっては、M&Aの条件や取引価格が変更されます。大きな問題がある場合は、M&A自体が白紙になることもあるでしょう。

⑥最終契約書の締結

デューデリジェンスを実施し、買い手側が買収して問題ないと判断した場合は、最終契約書の締結へ進みます。

最終契約書には、譲渡価格や譲渡対象、表明保証、クロージングの前提条件などが記載され、基本合意書とは異なり、すべての項目に法的拘束力が生じます

最終契約書の締結後、一方的に破棄した場合は損害賠償を請求されることもあるので、最終契約書の内容確認・理解が必要です。

⑦クロージング

クロージングとは、最終契約書の内容に沿ってヒト・モノ・カネなどが移動することです。例えば、株式譲渡によるM&Aの場合は、売り手の株式が買い手へ譲渡され、買い手はその対価を支払います。

通常は、クロージングの前提条件が最終契約で定められ、条件を満たせない場合はM&A自体が中止です。

⑧統合プロセスを実施する(買い手側)

クロージング後、買い手側は統合プロセスを実施します。統合プロセスをしっかり実施しなければ、従業員の離職率が高まるでしょう。

統合プロセスにはハード面とソフト面の2つがあり、ハード面は業務や情報システムなどを統一あるいは調整して事業運営をスムーズに進めるプロセスです。

ソフト面はいわゆる意識の融合で、新たな組織や企業理念に対して売り手・買い手双方の従業員が理解を深めるプロセスです。

統合プロセスではソフト面が難しくかつ時間がかかります。焦って進めると離職やモチベーションの低下につながりかねないため、時間をかけて慎重に進めてください。

6. 障害者福祉サービスのM&Aにおける注意点

この章では、障害福祉サービスのM&Aで、買い手側が注意すべき点を見ていきます。障害福祉サービス特有のポイントもあるので、しっかり理解しましょう。

①同地域に存在する同サービスの数

障害福祉サービスのM&Aを行う際は、同地域に存在する同サービスの数を確認しておくことが大切です。

国内における障害福祉サービスの利用者数は年々増加しており、それに伴い施設数も増えています。M&Aを行う地域の障害福祉サービス数が多すぎると、競争は当然厳しく利用者を確保できない可能性もあります。

特にM&Aによって新規参入を図る場合は、事前の調査をしっかり行うことがポイントです。売り手の希望譲渡価格が相場よりもかなり安い場合は、譲渡理由も確認しましょう。

②施設の広さ・賃料を確認しておく

障害福祉サービスのM&Aを行う際は、施設の広さ・賃料を確認することがポイントです。障害福祉サービスの事業を取得する場合、営業を行うには行政への申請が必要になります。

しかし、M&A時点で売り手の施設が営業をしていても、売り手側が行政に許可を得ずに区画を変更している可能性もあるでしょう。こういったケースでは認可が下りないこともあるので、リスクを回避するためにも施設の広さ・賃料を再確認してください。

③利用者・受け入れ者数を確認する

障害福祉サービスのM&Aを実施するときは、収益性を見計らうために利用者・受け入れ者数を確認することも大切です。

買収後すぐに得られる売上や、買収後に利用者が増加したときの最大売上が予測できるので、中長期的な経営計画を立てやすくなります。可能であれば、周辺地域における見込み顧客のリサーチも行うとよいでしょう。

④有資格者の人数を確認する

障害福祉サービスの事業運営には、支援事業によってサービス管理責任者や児童発達支援管理責任者などの人員配置基準が設けられています。

M&Aで障害福祉サービス事業に参入する場合は、人員配置基準を満たせなければ新規申請の認可が下りず、事業開始が大幅に遅れてしまいます

M&Aに際しては、有資格者の人数を確認し契約条件を精査しましょう。

⑤許認可の有無を確認する

障害福祉サービスのM&Aにおいては、許認可に関する事項に特に注意を払う必要があります。これらのサービスは、許認可業種であるとともに、補助金や助成金と深く関係しているため、基準が守られているか、不正受給が行われていないかを厳重に確認することが重要です。

⑥従業員の流出が起こらないようにする

障害福祉サービスのM&Aでは、前述の人員配置基準を満たすためにも、買収後の従業員流出に対する配慮が必要です。

有資格者が離職すると、事業運営に大きな影響をおよぼしかねないので留意しましょう。M&A後の待遇などを従業員へ丁寧に説明し、職場環境にも目を配るなどの配慮も大切です。

譲渡前に流出してしまった場合のリスク

障害者総合福祉法で設置が義務付けられている、サービス管理責任者または児童発達支援管理責任者が離職した場合に問題となります。

離職後に株式取得で社会福祉サービスを法人ごと取得すると、人員欠如減算が生じます。この場合、リスクは翌々月からの基本報酬30%カットです。

離職後、事業譲渡により事業所を取得した場合は、新事業所の指定申請ができなくなるため開業できないリスクがあります。

⑦人員配置と減算を確認する

障害福祉サービスでは、法律で適正な人員配置や人員数が定められ、それが満たされない場合は基本報酬の減算により売上が減少するリスクがあります。適正な人員配置がなされているか、相手方の言葉をうのみにせず自社できちんと確認しましょう。

⑧立地状況を確認する

障害福祉サービスのM&Aを行う際は、障害福祉サービス事業所の立地状況も確認しておきましょう。立地状況によっては、障害を持つ方がより安全に利用するためにバスなどによる送迎サービスが必要なこともあります。

あらかじめ立地状況を確認しておけば、車両や人員確保などの準備を進められるため、M&A後のスムーズな事業展開が可能です。

⑨フランチャイズ契約の有無を確認する

障害福祉サービスの事業所をフランチャイズ契約によって運営している場合もあるので、M&Aを行う前に売り手のフランチャイズ契約の有無を確認しましょう。

フランチャイズ契約がある場合、M&A後も契約が維持できるかは契約時の内容によって変わります。

新規参入の場合は、フランチャイズ契約が維持できればノウハウなども得られるためメリットもありますが、ロイヤルティの支払いや経営の自由度といった面ではデメリットもあります。

売り手の障害福祉サービス事業所がフランチャイズ契約をしている場合は、内容をよく確認してメリットが大きいか検討することが大切です。

⑩ローン・リースの残債を確認する

売り手側にローン・リースの残債があると、希望譲渡価格が低く設定されることも多いため、相場より安価で取得することも可能です。しかし、M&A手法によっては負債も引き継ぐため、どの程度残債があるのかを事前によく確認しなければなりません。

特に事業譲渡の場合は、リース契約の名義変更が問題となりやすく、契約内容によっては名義変更できないこともあるでしょう。そういった場合、買い手は一括で残債を支払うことになり、金額によってはキャッシュフローにも影響をおよぼします。

⑪機材や施設の老朽化を確認する

障害福祉サービス事業のM&Aでは、取得する機材や施設の老朽化における事前確認が大切です。障害福祉サービス事業の認可を得るためには、利用者に対して安全なサービス提供ができるよう機材や設備の要件が定められています

要件は改定されることもあるので、買収先の機材や設備が現在の基準を満たしていない可能性もあるでしょう。特に創業歴の長い障害福祉サービス事業を買収する場合などは、機材や施設が老朽化していないかチェックしましょう。

⑫福祉的なデューデリジェンスの徹底

一般的な業界のM&Aと同様、株式譲渡を用いる際はM&Aによって簿外債務などを引き継いでしまうリスクがあるため、デューデリジェンスを行うことが重要です。

財務面だけでなく法務面でのトラブルを抱えていないかなどのチェックを行うため、各専門家に依頼してデューデリジェンスを徹底して行う必要があります。

障害福祉サービスのM&Aでは、有資格者の確保や法定の人員配置に対する配慮が必要です。一般的な財務、法務だけでなく、福祉的なデューデリジェンスを行うことをおすすめします。

⑬M&Aの専門家に相談する

障害福祉サービスのM&Aは注意するべき事項が多いため、安全・確実に進めるためにはM&Aの専門家によるサポートが不可欠といえます。M&Aを扱う専門家や相談先はいろいろありますが、障害福祉サービスあるいは介護事業の支援実績を有する専門家がおすすめです。

実績だけでなくM&Aアドバイザーとの相性なども重要になるので、無料相談などを活用して自社に合うところを探しましょう。

7. 障害者福祉サービスのM&A事例

この章では、過去に実施された障害福祉サービスのM&A事例を紹介します。

QLSホールディングスによるふれあいタウンとクオリスの合併

2024年1月、QLSホールディングスは、子会社であるクオリス(連結子会社)とふれあいタウン(非連結子会社)を合併すると発表しました。クオリスは介護・障害福祉サービス事業と保育事業、ふれあいタウンは介護・障害福祉サービス事業を手掛けています。

本合併は、クオリスが存続会社となる吸収合併方式です。QLSホールディングスは、クオリスとふれあいタウンの2社を合併することでグループ全体のリソースを有効活用でき、事業の合理化と効率化・合理化を図ることで経営基盤の強化につなげるとしています。

参考:子会社同士の合併のお知らせ

エルサーブによるAKの障がい者グループホーム事業譲受

2023年11月、QLSホールディングス傘下のエルサーブは、沖縄県のAKが手掛ける障がい者グループホーム事業を譲受すると発表しました。

AKは農園事業と障がい者グループホーム事業を手掛ける企業で、今回のM&Aで譲渡対象となったのは、グループホーム事業「g-port」です。

買い手のエルサーブはQLSホールディングスの完全子会社であり、保育事業と障がい福祉サービス事業を手掛けています。今回QLSホールディングスが当該事業を譲受したのは、沖縄県でのサービス提供エリアの拡大が主な目的です。

今回の事業譲受により、QLSホールディングス全体の九州・沖縄エリアにおける運営施設数は業界トップクラスとなりました。QLSホールディングスは人的リソースやノウハウを相互活用して、サービス品質や優位の向上を図り、QLSグループの持続的な成長を目指すとしています。

参考:当社連結子会社における一部事業譲受に関するお知らせ

こころネットによるNPO法人エルタへの事業譲渡

2021年1月、こころネットは介護事業子会社である「こころガーデン」の事業をNPO法人エルタへ譲渡することを公表しました。

こころガーデンは、福島市内で高齢者向け住宅を運営するほか、訪問介護や通所介護、居宅介護支援も行っています。NPO法人エルタは介護事業や障害福祉サービス事業を手掛けており、特に障害福祉サービス事業において高い専門性を持っています。

こころネットは、障害福祉サービスを利用者の観点で考えた場合、NPO法人エルタに譲渡した方が専門的なサービスを提供できると判断し、譲渡を決めています。

参考:連結子会社における事業譲渡に関するお知らせ

メディカル一光グループによるライフケアの子会社化

2020年10月に実施されたメディカル一光グループによるライフケアの子会社化です。買い手側のメディカル一光は、三重県に本社を置き、調剤薬局事業を主軸としています。ライフケアは、愛知県で住宅型有料老人ホームを14施設運営している企業です。

メディカル一光グループは、ヘルスケア事業における規模拡大の一環としてライフケアの子会社化を行っています。

参考:当社連結子会社による「株式会社ライフケア」の株式取得 (当社の孫会社化)に関するお知らせ

ソラストによるファイブシーズヘルスケアの子会社化

2020年9月に行われたソラストによるファイブシーズヘルスケアの子会社化です。買い手側のソラストは、障害福祉サービス事業を全国展開しています。

売り手のファイブシーズヘルスケアは、2003年に設立された介護サービス事業を行っており、関西エリアで19事業所を運営する会社です。ソラストは株式譲渡によってファイブシーズヘルスケアを傘下に加え、関西エリアでの経営基盤強化を図ります。

参考:株式会社ファイブシーズヘルスケアの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

ケアサービスによる広域社会福祉会の訪問介護事業取得

2020年9月に実施されたケアサービスによる広域社会福祉会の訪問介護事業取得です。ケアサービスは東京都大田区内を中心に、訪問介護やデイサービスなど障害福祉サービスを行っており、売り手側の広域社会福祉会は、東京23区内を中心に障害福祉サービス事業を展開しています。

ケアサービスは、同じ都内で障害福祉サービスを展開している広域社会福祉会の介護訪問事業を取得することで、事業基盤の強化と既存事業とのシナジーを見込みます。

参考:事業譲受に関するお知らせ

8. 障害者福祉サービスのM&Aまとめ

障害福祉サービス業界は、M&Aによる大手・中堅事業者の事業規模拡大、異業種からの新規参入などが増え、競争がさらに厳しくなると予想されます。

この状況下、中小規模の事業者はどのように生き残るかが重要です。M&Aを活用するのも非常に有効な手段といえるでしょう。

9. 障害者施設 ・就労継続支援施設業界の成約事例一覧

10. 障害者施設 ・就労継続支援施設業界のM&A案件一覧

11. 障害者施設 ・就労継続支援施設業界の成約事例一覧

12. 障害者施設 ・就労継続支援施設業界のM&A案件一覧

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