食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却の業界動向!相場、手法、成功事例も解説【2021年最新版】

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取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却(譲渡)が盛況です。この記事では、食品メーカー・食品会社のM&A動向や買収・売却価格の相場を分析するにあたり、関連する製油業界、代表的商品である冷凍食品、工場などとの兼ね合いも含めて解説します。

目次

  1. 食品業界とは?食品会社についての基礎知識
  2. 食品メーカー・食品会社のM&A動向
  3. 食品メーカー・食品会社がM&Aするメリット
  4. 食品メーカー・食品会社のM&Aポイント
  5. 食品メーカー・食品会社のM&A成功事例
  6. 食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却の業界動向まとめ
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  • 食品メーカー・食品加工・食品工場会社のM&A・事業承継

1. 食品業界とは?食品会社についての基礎知識

食品業界とは?食品会社についての基礎知識

まずは、食品メーカー・食品会社の業界と動向を確認しましょう。どのような会社なのかを再確認することで、市場を理解しやすくなります。

食品メーカー・食品会社とは

食品メーカー・食品会社の定義から見ていきましょう。

総務省の日本標準産業分類「食料品製造業」によると、「食品製造業」は大分類「製造業」の中分類である「食料品製造業」です。つまり、製造業における食料品製造業のくくりで、食料品製造業に含まれる業種は具体的に以下になります。
 

  • 畜産食料品、水産食料品などの製造
  • 野菜缶詰、果実缶詰、農産保存食料品などの製造
  • 調味料、糖類、動植物油脂などの製造
  • 精穀、製粉およびでんぷん、イースト、こうじ、麦芽などの製造
  • パン、菓子、めん類、豆腐、油揚げ、冷凍調理食品、惣菜などの製造

食品メーカー・食品会社の経営を行っている場合は、自社がどのような業種になるのか確認しておきましょう。業種について、もう少し詳しく見ていきます。

製造しているもの(業種)

総務省の定義による「食料品製造業」で製造されるのは、前述のとおりです。なお、食料品製造業に、清涼飲料、酒類、茶、コーヒー、氷、たばこ、飼料、有機質肥料の製造は含まれません。これらの製造は「飲料・たばこ・飼料製造業」に分類されます。

したがって、自社が上記5つの業種に含まれない場合、定義上の食品メーカー・食品会社のくくりではありません。M&Aを成功させるには、自社の業種を知ったうえで相性のよい相手を探すことがポイントです。

市場規模

経済産業省が実施している工業統計調査の「2019年確報 産業別統計表」によると、2019(令和元)年における食料品製造業の市場規模概要は以下のとおりです。
 

  • 市場規模(製造出荷額):29兆7,815億4,800万円(前年比2.5%増)
  • 企業数従業員4名以上の事業所:24,440社(前年比1.8%減)
  • 従業者総数(従業員4名以上の事業所):1,145,915人(前年比0.6%増)

業界動向

食品メーカー・食品会社をとりまく動向は以下になります。
 

  • 国内市場は縮小傾向
  • 原料価格上昇に伴い値上げ
  • 食品表示偽装などによる安全性への意識拡大
  • 健康ブーム、環境への配慮など多様なニーズの出現

これらの動向を押さえることで、食品メーカー・食品会社における業界の理解が進みます。それぞれ順番に見ていきましょう。

国内市場は縮小傾向

食料品製造業界は、食料品価格の下落や少子高齢化の影響により、国内市場が縮小傾向です。

市場の縮小に加え、所得水準の伸び悩みやデフレ長期化を主因とする消費者における節約志向の強まりもあります。企業側は、価格競争が激化するとともに、より競争力が高い製品の開発や生産性の向上が求められるのは間違いないでしょう。

近年は所得水準が伸び悩んでいます。消費税率が上がったことにより国内市場が縮小している中で、ますます企業間の競争が激しくなっているのです。

中小規模の食品メーカー・食品会社は生き残るための経営戦略をしっかり立てなければならないといえます。

原料価格上昇に伴い値上げ

食料品は、原材料の多くを輸入に頼っているため、小麦や大豆・食肉などの価格変動や為替動向の影響を大きく受けてしまうのが実情です。

近年の世界的な食料品原料の市場におけるトピックとして、中国の市場拡大があります。これにより、原材料価格が高騰しているほか、為替の円安進行によってコストが増加傾向です。値上げが難しい食料品製造業者にとって、こうした価格変動は経営上の大きな課題となります。

食品表示偽装などによる安全性への意識拡大

近年、食品表示偽装問題の報道が相次ぎました。不適切な情報を提示して食料品を製造・販売していた業者が存在したため、消費者における食の安全性に対する意識がシビアになりました。

そのため、衛生管理がなっていない食品メーカー・食品会社や、消費者からの信用が薄い食品メーカー・食品会社は、競争に負ける傾向にあります。食品について、消費者の安全意識を裏切らない経営が求められています。

健康ブーム、環境への配慮など多様なニーズの出現

食品における安全性の観点から、トレーサビリティにも注目が集まっています。

トレーサビリティとは、物品の流通経路を生産段階から最終消費段階もしくは廃棄段階まで追跡できる状態のことです。日本では、牛肉、コメ、コメ加工品に、この対応がすでに義務付づけられています。

健康ブームによる健康に対する意識が向上したことへの対応なども迫られてきました。

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2. 食品メーカー・食品会社のM&A動向

食品メーカー・食品会社のM&A動向

消費者の求めるクオリティが年々上がっているので、消費者のニーズを満たせる経営を行わなければなりません。そのため、食品メーカー・食品会社ではM&Aが盛んです。

食料品製造業は、「素材型」と「加工型」に大きく分類できます。M&A動向は、この2つにより分かれる面があるので、最初に見ておきましょう。
 

  • 素材型:加工メーカーや外食産業への原料供給が主要業務(製糖、製粉、製油、飼料など)
  • 加工型:原料を仕入れ加工品を製造し家計へ供給することが主要業務(パン・菓子、調味料、冷凍食品、めん類など)

食品メーカー・食品会社のM&A動向には、以下のポイントがあります。
 
  1. 多角化を目指す同業他社の買収が活発化
  2. 海外進出するために海外メーカーとのM&Aが増加
  3. 異業種からの新規参入M&Aが増加
  4. 地域密着型ファンドなどの参入
  5. コスト高を受けた業界再編

それぞれのポイントを順番に確認し、食品業界のM&A動向を把握してください。

①多角化を目指す同業他社の買収が活発化

多角化を目指してM&Aが活発なのは、「素材型」の食料品製造企業です。素材型は一般的に商品の差異化が難しいうえ、加工メーカーへの原料供給は規模が大きいほど効率的なので、スケールメリットがとても大きくなります

一方、関税引き下げなどに伴う輸入品との競争激化や、加工メーカーや外食産業からの値下げ圧力が働いているところで、同業他社の買収による再編が進みました。

近年の動向で大きいものでは、2014(平成26)年10月に砂糖大手の三井製糖が、病院・介護施設向け栄養補助食品メーカーのニュートリー(三重県)を買収しています。

②海外進出のための海外メーカーとのM&A増加

日本国内は市場が飽和状態で競争が厳しいため、積極的に海外に打って出ようとする動きもあります。加工型の食料品製造企業が実施しているクロスボーダーM&A(海外企業とのM&A)がその動きです。

2014年9月に、味の素が米国におけるアジア食の冷凍食品トップであるウィンザー・クオリティ・ホールディングスを買収しました。

この狙いは、ウィンザーが持つ「冷凍食品における米国消費者に精通したマーケティング力」「冷凍食品における全米に広がる流通ネットワークと営業力」「冷凍食品における全米をカバーする生産拠点」を獲得することです。

このように、大手企業を中心に海外メーカーとのM&Aは増加しています。資金力に余裕があるなら、海外企業とのM&Aを積極的に検討してください。

③異業種からの新規参入M&Aが増加

異業種からの新規参入M&Aで、今後、増加が見込まれるのは健康食品を製造する企業の買収でしょう。いうまでもなく、昨今における健康志向の高まりを受けてのことです。

食料品製造企業には、老舗ながら後継者不在や経営不振に陥っていたり、特定地域のマーケットに強みを持ったりする企業なども多くあります。こうした企業の買収には、今後さまざまな業種から手が挙がるのも十分あり得る話です。

自社がそのような状況なら、M&Aの際は幅広い視野で買い手を探しましょう。同業者以外から良い買い手が見つかる可能性も非常に高いです。

④地域密着型ファンドなどの参入

ファンドは、一般的に経営関与を目的として株式を取得し、その企業の経営に関与することで株式価値を高めようとするのが常です。

ファンドは通常、株式価値向上後に株式の新規上場・ 再上場や他社への転売をつうじた投資利益の獲得を目指しますが、後継者難をカバーするファンドもあります。よくあるのが「地域密着型ファンド」や「事業承継ファンド」などです。

主な流れとしては、ファンドが会社の株式を取得し新たなオーナーとして経営を行いながら、人材を育て適任者を見つけて後継者の育成も並行します。その後、後継者に会社を任せて存続させる形です。

⑤コスト高を受けた業界再編

食料品業界は原料費が高騰傾向にあることに加え、加工メーカーや外食産業からの値下げ圧力にもさらされています。

こうした中で、「素材型」の食料品製造企業では、M&Aによる業界再編が進みました。統合により、原材料調達や間接業務の効率化、工場統廃合などによるコスト削減、販売先との価格交渉力向上を目指したものです。

業界再編で最も象徴的だったのが、製油業界になります。2000年代前半に、それまでの製油上位7社が製油3社(J-オイルミルズの製油企業、日清オイリオグループの製油企業、昭和産業の製油企業)に集約されました。

このように、値下げ圧力に対抗するためにM&Aによる業界再編は進んでいます。自社が素材型の食品会社であれば、M&Aで業界が変わることを念頭に入れて経営しましょう。

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食品メーカー・食品会社のM&Aは、M&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所は中小企業のM&A支援実績を多く有しており、食品メーカー・食品会社のM&Aもお任せいただけます。

M&A総合研究所では、豊富な経験と知識を持つM&Aアドバイザーが専任となり、食品メーカー・食品会社の案件をフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、食品メーカー・食品会社のM&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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3. 食品メーカー・食品会社がM&Aするメリット

食品メーカー・食品会社がM&Aするメリット

食品メーカー・食品会社がM&Aするメリットを押さえて、自社が実施する際に多くのメリットを受けられるようにしましょう。譲渡側と買収側のメリットに分けて順番に見ていきます。

譲渡側のメリット

食品メーカー・食品会社のM&Aでは、譲渡側のメリットとして以下が挙げられます
 

  • 後継者問題が解決
  • 雇用の継続
  • 負債の解消と創業者の利益確保
  • グループに入ることによる経営の安定

それぞれ順番に見ていきましょう。

後継者問題が解決

後継者不在の問題を抱える会社にとって、M&Aによる会社売却が問題の解決手段になり得ます。後継者がいなければ会社を存続させることが難しく、廃業を検討することもあるでしょう。そこで、他の会社にM&Aで売却して、経営を引き継いでもらいます。

そうすれば、後継者は売買した相手側から選ばれます。つまり、後継者がいなくてもM&Aであれば問題なく会社が存続するでしょう。身近なところに後継者がいなくても、事業の存続をあきらめずM&Aを検討してください。

雇用の継続

M&Aによる事業・会社の売却では、通常、会社・工場と従業員の雇用関係がそのまま引き継がれます

経営者は、今まで会社や工場に貢献してくれた社員を、会社の都合で失業させるのは心苦しいものです。中小企業の場合、M&Aによる事業・会社売却の目的が、雇用の維持に置かれることも少なくありません。

食品会社や食品メーカーを廃業しそうな場合は、M&Aで従業員の雇用を守ることを考えましょう。

負債の解消と創業者の利益確保

個人事業主や中小企業は、代表者が個人保証を利用しているケースが多いです。これらは、廃業を選んでも残り続けるため、リタイア後の生活が苦しくなる可能性が高いでしょう。

M&Aで会社を売却すれば、負債にまつわる個人保証も買収側に移動します。廃業のように設備などの処分に必要なコストも抑えられるのです。

売却の対価として、まとまった資金も得られます。経営者(創業者)にとって、負債の解消と利益を得られることは、見逃せないメリットです。

グループに入ることによる経営の安定

現状で、経営不安を抱えている場合や業績の見とおしが悪い場合は、自社より規模が大きく資本力のある会社もしくはグループに吸収してもらうことで、当面の経営不安から逃れられます

立て直せるかどうかはその後の運営次第ですが、資金や経営ノウハウが集まれば、経営立て直しの初期条件は大きく改善されるでしょう。大手企業の傘下に入ることで経営が安定することは珍しくありません。

自社の経営難をあきらめる前に、M&Aで改善できないかどうか考えましょう。

買収側のメリット

食品メーカー・食品会社のM&Aで、買収側のメリットは以下のとおりです。
 

  • 市場の拡大
  • 商品開発力・商品群・ブランド力の強化
  • 製造拠点の拡大
  • 販売チャネルの獲得
  • 人材確保
  • ​​​​​​スケールメリットの享受

それぞれ順番に見ていきましょう。

市場の拡大

M&Aによる企業買収では、相手の会社・工場を丸ごと買収できます。取引先や従業員まで全てです。

単純に考えると、買収当初は相手の売上がそのまま自社にプラスされます。同業者を買収した場合は、同じ市場で相手が得ていたシェアをそのまま獲得するからです。

特に、大手で市場規模が大きいほど、単に市場でのプレゼンスが高まるだけでも市場における発言力の強化につながるのでメリットになります。

商品開発力・商品群・ブランド力の強化

企業買収は通常、市場シェアの拡大のみを目指すものではありません。相手会社におけるマーケット(エリア、対象顧客)、技術やノウハウを自社の事業と合わせて、プラス以上の効果を発揮させることを目指して行われます。これが、シナジー効果(相乗効果)です。

食料品製造業におけるシナジー効果は、具体的には相手の会社を買収することで「商品開発力」が強化され、「商品群」が豊富になり、「ブランド力」が強化されるプロセスをたどるといえます。

製造拠点の拡大

食品の種類にもよりますが、加工型の食料品製造業では、製造拠点(工場)の拡大が他業種よりも企業買収のメリットになる場合が多いです。

製造するものにもよりますが、食料品は品質を維持できる期間が工業製品などに比べてはるかに短くなります。そのため、製造拠点(工場)から遠方への配送などが難しくなるでしょう。

食料品において自社商品を販売するエリアを広げるためには、そのエリアに製造拠点(工場)を置く必要のあるケースが多いといえます。自社で工場を新設するのもよいですが、立地の獲得から設備投資、従業員の採用まで手間も時間もかかってしまうのは否めません。

M&Aによる企業買収であれば、製造拠点(工場)を立ち上げる手間と時間を大きく省略できます。

販売チャネルの獲得

大手企業は、国内で今以上に市場シェアを広げるのは難しい状況です。そのため、手つかずの海外市場を目指す動きが活発化しています。つまり、M&Aで海外企業を買収して、市場拡大とシェアを広げる企業が多いでしょう。

海外で商品を展開するには輸出する方法もありますが、ブランディングができていない地域で一から販売先を探し、その国における市場でプレゼンスを獲得するまでには、膨大な時間がかかります。

そこで、海外メーカーを買収して、海外メーカーが従来持っている販売チャネルを一気に獲得するのです。その国におけるブランドやプレゼンスは徐々に強化されますが、少なくとも初期段階で販売先を探す時間は大きく省略できます。

海外の企業を買収すれば、現地で事業を展開するノウハウなども得られるでしょう。

人材確保

「製造拠点の拡大」と共通しますが、自社で工場を新設すると、立地の獲得から設備投資、従業員の採用まで、手間も時間もかかってしまいます。

従業員は採用も大変ですが、全く新しい人材を工場で一から業務に慣れさせ、教育して望ましい生産水準まで上げるには、さらに長い期間がかかるのは必須です。

M&Aによる企業買収では、すでにその会社・工場で働いている人材をベースにして自社の望む展開を描けます。何かをいきなり大きく変えるのは難しいですが、最初から食料品業界および会社のノウハウを持つ人材が集まっているので、教育にかかる手間と時間は少ないです。

スケールメリットの享受

スケールメリットとは、事業規模の拡大によって生まれる生産性向上や効率性上昇、知名度向上、バイイング・パワー向上といった効果のことです。特にスケールメリットを享受しやすいのが製造業になります。

M&Aによって企業を丸ごと買収することで、経営ノウハウから生産能力、収益まで全て手に入れられるでしょう。

1社による大量仕入が可能になるので、原材料の仕入れコスト削減や部品調達コストの削減ができます。製造機械の稼働率に余裕がある中で製品の市場シェアを拡大できれば、生産量増加によって製品1つ当たりの生産固定費も減らせるでしょう。

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4. 食品メーカー・食品会社のM&Aポイント

食品メーカー・食品会社のM&Aポイント

メリットを見て、実際に食品メーカー・食品会社のM&Aを実施したいと考えた人も多いのではないでしょうか。ここからは、食品メーカー・食品会社におけるM&Aを成功させるためのポイントを見ていきます。

食品メーカー・食品会社に限ったことではないですが、全て食品メーカー・食品会社のM&Aにも当てはまることです。
 

  1. 相場
  2. 手法
  3. タイミング

それぞれのポイントを順番に見ていきましょう。

①相場

M&Aで企業を売る相場価格は、相手がどれだけ欲しがっているかにかかります。相手が高く評価すれば相場価格は高くなり、買いたい相手がいない場合は相場価格がゼロでも売れない可能性があるのです。

ただし、計算上で大体の相場価格は出せるため、数ある算出方法の中からここでは2つ掲示します。M&A交渉でも、算出された相場価格をベースに話し合うことが売買合意への近道です。
 

  • DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法
  • 純資産法

なお、相場価格も、詳しくはM&A専門会社に相談しながら進めましょう。

DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法

DCF(Discounted Cash Flow)法は、ディスカウントと呼ばれる将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く方法を使って、価値を算出するものです。

売却する会社の資産や事業計画書などをもとに、M&Aの後にどれだけの収益・キャッシュフローが見込めるかを計算して相場価格を算定します。

純資産法

純資産法の具体的な手法で代表的なものは、「簿価純資産法」と「修正純資産法」です。

【簿価純資産法】
簿価純資産法は、帳簿価額に基づいた資産と負債の差額である純資産をもって相場価格を計算します。

【修正純資産法】
修正純資産法は、資産と負債を今の価値で再度どのくらい価値を持つのか調べ、純資金の金額を計算して相場価格を算出するものです。主要な土地や有価証券など資産のみを対象とし、負債と資産全てを対象としないこともあります。

②手法

中小企業のM&Aにおける手法は、9割以上が以下の2点に絞られます。
 

株式譲渡

企業の株式について、全部または一部を売却する方法です。中小企業の株式譲渡では、オーナー経営者が全ての株式を所有していることが多く、その場合、会社は丸ごと買収者に引き渡されます。

会社が丸ごと譲渡されるため、事業や資産だけでなく、債権債務や雇用契約などもそのまま買い手に承継されます。手続きは事業譲渡よりも簡便ですが、債務なども原則として買い手に引き継がれることに注意してください。

事業譲渡

企業の事業について、その全部または一部を売る方法です。売り手は、事業および資産の売りたい部分だけを売却でき、買い手は欲しい部分だけを買収できるメリットがあります。

事業譲渡の場合、許認可などは買い手に譲渡できないことがほとんどです。譲渡できない場合は、買い手側で取り直す必要があります。

③タイミング

M&Aで企業を売却するタイミングで重要なのは、以下3点です。
 

  • 業界再編が進行中のとき
  • 景気のよいとき
  • 経営者が元気なとき

1つずつ見ていきましょう。

業界再編が進行中のとき

再編が進む中の業界は、会社を高く売るのによいタイミングだといえます。中でも最もよいタイミングは、業界再編が進行し、売主候補企業が少なくなった段階です。売り手市場となり、高く売れる可能性が上がります。

ただし、業界再編は永久には続きませんので、売り惜しみに注意しましょう。

景気のよいとき

いうまでもありませんが、景気のよいときほど企業は高く売れます。景気のよいときしか、買いたい相手は現れないと考えるくらいがよいでしょう。

逆に、買収したい会社がいくつか現れても、急に景気が悪くなればその意欲は何事もなかったかのように胡散霧消することがあります。

経営者が元気なとき

M&Aで企業を売却するなら、経営者が元気なときにできるだけ早めに計画を立てながら進めるべきです。

経営者の身に何かが起こってから急に会社を売却する必要に迫られた場合は、とにかく早く売ることが最優先となるでしょう。そうなれば、価格の要求はほとんどできなくなります。

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5. 食品メーカー・食品会社のM&A成功事例

食品メーカー・食品会社のM&A成功事例

この章では、食品メーカー・食品会社のM&A成功事例を見ていきましょう。

近年における食品業界のM&A事例4選

近年における食品業界のM&Aから、4事例を掲示します。
 

  • 不二製油グループ本社によるトーラクの売却
  • フジッコによるフーズパレットの買収
  • 亀田製菓によるマイセンの買収
  • エア・ウォーターによる元気の買収

不二製油グループ本社によるトーラクの売却

時期 2020年7月
売却側 トーラク(不二製油グループ本社)
買収側 丸大食品
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 12億円

売却側のトーラクは、不二製油グループ本社の100%子会社でした。不二製油グループ本社はグループとして、乳化・発酵素材、植物性油脂や業務用チョコレート、大豆加工素材などの開発・生産・販売事業を行っています。

食品会社のトーラクは、「神戸プリン」「らくらくホイップ」など知名度が高い代表的商品を持つ会社です。丸大食品は、食肉加工品であるハム、ソーセージなどや、各種惣菜類を製造・販売する大手食品メーカーとして知られています。

不二製油グループ本社は、この子会社売却(譲渡)によりトーラクのさらなる発展を鑑み、コアコンピタンス追及の一環として決断しました。

丸大食品は、現事業のデザート部門でさらなる収益向上を目指すうえで、トーラクの商品力・企画開発力・販売力は大きなシナジーが得られると判断しています。

フジッコによるフーズパレットの買収

時期 2019年8月
売却側 フーズパレット
買収側 フジッコ
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

フジッコは、知名度のあるふじっ子やおまめさんを手掛けるだけでなく、健康食品の素材なども販売する会社です。フーズパレットは、四陸(フォールー)やチャイナチューボーなどのブランドで中華惣菜を販売しています。

フジッコの全売上30%は惣菜製品で、主な事業の一つです。この買収により、フーズパレットのブランド力・商品力と、フジッコのマーケティング力・販売力が融合して事業が広がることを狙っています。

亀田製菓によるマイセンの買収

時期 2019年2月
売却側 マイセン
買収側 亀田製菓
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

買収側の亀田製菓は知名度のある柿の種やハッピーターンなどの米菓を製造販売し、売却側のマイセンは玄米パンやベジタリアンミートなどグルテンフリー食品の製造や販売を手掛けています。

亀田製菓は、健康志向食品の需要が近年高まっていることから米菓以外の食品事業を強めるために、この買収を実施しました。玄米などを用いた新しい商品開発を促進し、両社で販路や製造ノウハウなどを共有する狙いです。

エア・ウォーターによる元気の買収

時期 2019年2月
売却側 元気
買収側 エア・ウォーター
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

買収側のエア・ウォーターは、農業・食品事業、産業ガス事業、医療関連事業などさまざまな事業を手掛けています。農業・食品事業では、農産物を栽培して調達し、食品を製造して販売するまで一貫して行っている会社です。

元気は、日本初の黒にんにくを製造した会社で、青森産にんにくを原料に独自製法で「熟成黒にんにく」を製造販売しています。

この買収でエア・ウォーターは、元気とのシナジー効果を狙い、青森産にんにくの調達力を高めて新しく健康食品分野の商品を持つことを見込んでいます。

エア・ウォーターは2018年12月に、調理冷凍食品を販売する見方を買収しました。エア・ウォーターは、M&Aを生かした食品事業を強めています。

異業種による食品業界のM&A事例3選

異業種による食品業界のM&Aから、3事例を見ていきましょう。

  • 小林製薬による梅丹本舗の買収
  • 塩野義製薬による宝ヘルスケアの吸収合併・タカラバイオの健康食品事業の承継
  • ユーグレナによるフックの買収

小林製薬による梅丹本舗の買収

時期 2019年5月
売却側 梅丹本舗
買収側 小林製薬
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

小林製薬は、知名度のある熱さまシートなどの商品を持ち、医薬品や医薬部外品を製造販売しています。梅丹本舗は、健康食品を販売する創業94年の老舗メーカーです。

健康食品事業にも注力する小林製薬は、この買収により、健康食品事業をより強めることを狙っています。小林製薬が持つマーケティング力・販売力・研究開発力を活用して、売上を高める予定です。

塩野義製薬による宝ヘルスケアの吸収合併・タカラバイオの健康食品事業の承継

時期 2019年1月
売却側 宝ヘルスケア・タカラバイオ
買収側 塩野義製薬の子会社シオノギヘルスケア
M&Aスキーム 吸収合併・事業承継
譲渡価額 不明

塩野義製薬は医薬品を手掛ける会社で、子会社のシオノギヘルスケアは主に一般用医薬品のヘルスケア事業を行っています。タカラバイオと宝ヘルスケアは宝ホールディングスの子会社です。健康成分のフコイダンを含んだ商品の開発や販売を手掛けています。

シオノギヘルスケアは、さらに将来加速するであろう超高齢社会へ向けて、シニア層の健康増進をサポートする事業を強めています。宝ヘルスケアのフコイダンを含む健康商品はシニア層に人気があるため、高齢者に対する健康食品事業を強めるためにこのM&Aを行いました。

ユーグレナによるフックの買収

時期 2018年4月
売却側 フック
買収側 ユーグレナ
M&Aスキーム 簡易株式交換
譲渡価額 約18億円

ユーグレナは、社名でもあるユーグレナなど微細藻類の研究開発やユーグレナを生かした食品などの製造販売を手掛ける会社です。フックは自社ECサイトをとおし、天然・自然由来の素材を用いた健康食品などの販売を手掛けています。

今回の子会社化でユーグレナは、フックの主な顧客層である20代から30代の女性に販路を広げる予定です。ユーグレナのマーケティング力・商品開発力・資金力とフックのブランド力を融合して、ヘルスケア事業をさらに拡大することも見込んでいます。

ユーグレナは、2016年12月に機能性食品を販売するクロレラサプライを買収しました。ユーグレナは、M&Aでの事業拡大に力を注いでいます。

同業種による食品業界のM&A事例2選

同業種による食品業界のM&Aから、2事例を紹介します。

  • 純和食品によるヨシムラ・フード・ホールディングスへの売却
  • 東ハトによる山崎製パンへの売却

純和食品によるヨシムラ・フード・ホールディングスへの売却

時期 2016年7月
売却側 純和食品
買収側 ヨシムラ・フード・ホールディングス
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 4億5,500万円

売却側の純和食品は、1977(昭和52)年の設立以来、ゼリーなどのデザート類やレトルト食品などを製造し、販売してきました。イオングループをはじめとした大手スーパー量販店などのOEM生産を手掛け、外食産業や贈答品市場にも強みがあります。

買収側のヨシムラ・フード・ホールディングスは、食品の製造や販売をする中小企業の支援と活性化を目的とした会社です。経営戦略の立案や実行、経営管理などをメインに活動しています。

ヨシムラ・フード・ホールディングスは、この買収以前にも、事業承継問題や単独での成長に限界を感じている全国の中小食品企業に対し、独自の「中小企業支援プラットフォーム」を提供して問題を解決してきました。

純和食品は特に経営難ではありませんでしたが、ヨシムラ・フード・ホールディングスの子会社となることで経営基盤の強化と経営の効率化を図る見込みです。

ヨシムラ・フード・ホールディングスは、純和食品が得意とする商品企画・開発・品質管理ノウハウを、自社の「中小企業支援プラットフォーム」に取り入れることで、強固な事業基盤の確立をもくろんでいます。

東ハトによる山崎製パンへの売却

時期 2006年7月
売却側 東ハト
買収側 山崎製パン
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 182億円

売却側の東ハトは1952(昭和27)年創業の製菓大手ですが、バブル期に関連会社が手掛けたゴルフ場事業が失敗し、2003(平成15)年に民事再生法の適用を申請し倒産しています。買収側の山崎製パンは1948(昭和23)年の創業で、菓子パン製造会社で最大手です。

東ハトは一度倒産したものの、本業の食品事業は黒字経営で、倒産の原因となった不動産事業は他社の支援を受ける形で分離していました。そのさなかでヒット商品開発に乗り出し、再建に取り組んでいたのです。その過程で、今に続くヒット商品も生まれています。

山崎製パンも製菓事業を行っていましたが、東ハトが持つ製品のブランドを得ることで、新しい経営基盤を目的に買収しました。これにより東ハトは倒産を乗り越え大手の傘下に入り山崎製パンはブランド力もシェアもある製菓事業を手に入れることに成功しています。

食品業界のクロスボーダーM&A事例4選

食品業界のクロスボーダーM&Aから、4事例を見ていきましょう。

  • 味の素によるモア・ザン・グルメ・ホールディングス社の買収
  • アサヒグループHDによるFULLER, SMITH & TURNER P.L.C.社のビール・サイダー事業取得
  • 不二製油によるBLOMMER CHOCOLATE COMPANY社の買収
  • 山崎製パンによるBAKEWISE BRANDES社の買収

味の素によるモア・ザン・グルメ・ホールディングス社の買収

時期 2019年8月
売却側 モア・ザン・グルメ・ホールディングス
買収側 味の素
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 約38億円

味の素は日本で最大手の調味料メーカーです。味の素などいろいろな調味料や加工食品を販売しています。モア・ザン・グルメ・ホールディングスは、だし汁のブロス・ソースなど液体調味料事業を手掛け、アメリカに住む人の嗜好などに合わせた高価格帯の調味料が強みです。

この買収により、味の素は自社の素材や調味料を組み合わせて、モア・ザン・グルメ・ホールディングスの加工食品メーカーや外食企業とのつながりを生かし、北米市場での販路を広げることを狙っています。

アサヒグループHDによるFULLER, SMITH & TURNER P.L.C.社のビール・サイダー事業取得

時期 2019年4月
売却側 FULLER, SMITH & TURNER P.L.C.のビール・サイダー事業
買収側 アサヒグループホールディングス
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 約370億円

アサヒグループホールディングスは、ビール業界で日本トップの市場シェアを占め、スーパードライなどのブランドが有名です。

FULLER, SMITH & TURNER P.L.C.は、主にロンドンでよく知られているビールブランドの「London Pride」「Frontier」、サイダーブランドの「Cornish gold cider」などを持ちます。

このM&Aによりアサヒグループホールディングスは、Fuller’s社の海外ブランドを得て、高級ビールのブランドをベースとした欧州事業を強める予定です。Fuller’s社は主にロンドンに複数のパブやホテルを持つので、アサヒグループのブランド販路を広げることも狙っています。

不二製油によるBLOMMER CHOCOLATE COMPANY社の買収

時期 2019年1月
売却側 BLOMMER CHOCOLATE COMPANY
買収側 不二製油
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 約848億円

植物用油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の事業を手掛ける不二製油は、業務用チョコレート業界で世界第4位です。BLOMMER CHOCOLATE COMPANYは、業務用チョコレート業界で世界第3位で、主に北米でチョコレートやココア豆を販売しています。

不二製油は、以前にもブラジルやマレーシア、オーストラリアの業務用チョコレートメーカーとM&Aを実施し、業務用チョコレート事業を広げました。

今回の買収で、不二製油は世界第3位の業務用チョコレートメーカーになります。売上高も約800億円から約1,800億円に上昇する予定です。

不二製油は、自社の油脂技術をBlommer社に導入し、原料調達を一本化してチョコレート事業をより強める見込みです。Blommer社の販売網を生かして北米での販売を広げることを狙っています。

山崎製パンによるBAKEWISE BRANDES社の買収

時期 2016年7月
売却側 Bakewise Brandes
買収側 山崎製パン
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

山崎製パンは、食パンや菓子パン、和菓子などを販売する会社です。Bakewise Brandesは、ベーグルを製造してニューヨークなど主にアメリカ東部の量販店で販売しています。手作りに近い食感のパンを作り、ホテルやレストランへ販売するTom Cat Bakery社が子会社です。

この買収により、山崎製パンはアメリカで事業規模を広げることを狙っています。両社の製パン技術を日本での商品開発に活用することも見込んでいます。

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6. 食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却の業界動向まとめ

食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却の業界動向まとめ

食料品製造業界は、食料品価格の下落や少子高齢化の影響により、国内市場が縮小傾向です。原材料価格の高騰にも悩まされています。こうした中で、多角化を目指した同業他社の買収やスケールメリットの獲得を目指したM&Aによる業界再編が進んできました。

近年、最も激変したのが製油業です。2000年代に7社あった製油の大手企業は、J-オイルミルズ、日清オイリオグループ、昭和産業における3つの製油企業になりました。海外へ目を向けると、大きい事例としては、味の素によるアメリカの冷凍食品会社買収があります。

食品業界・食品メーカーでM&Aを行う際は、相場、手法、タイミングの3点を頭に入れることが肝要です。

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