食品製造業界のM&A動向!食品メーカー・食品会社の買収・売却事例【2023年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

昨今、食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却(譲渡)が盛況です。本記事では、食品メーカー・食品会社のM&A動向や買収・売却価格の相場を分析するにあたって、関連する製油業界や、代表的商品である冷凍食品、工場などとの兼ね合いも含めて解説します。

目次

  1. 食品製造業界について
  2. 食品製造業界の市場動向
  3. 食品製造会社・食品メーカーのM&A動向
  4. 食品製造会社・食品メーカーがM&Aするメリット
  5. 食品製造会社・食品メーカーのM&Aポイント
  6. 食品製造会社・食品メーカー関連企業同士のM&A成功事例14選
  7. 異業種による食品業界のM&A事例5選
  8. 食品業界のクロスボーダーM&A事例4選
  9. 食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却の業界動向まとめ
  • セミナー情報
  • 経験豊富なM&AアドバイザーがM&Aをフルサポート まずは無料相談
  • 資料ダウンロード
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1. 食品製造業界について

まずは、食品メーカー・食品会社の業界と動向を解説します。どのような会社なのか、概要を再確認することで、市場を理解しやすくなります。

食品製造会社(食品メーカー・食品会社)とは

総務省の日本標準産業分類「食料品製造業」によると、「食品製造業」は大分類「製造業」の中分類である「食料品製造業」に該当します。製造業における食料品製造業に該当し、食料品製造業に含まれる業種は具体的に以下のとおりです。

  • 畜産食料品、水産食料品などの製造
  • 野菜缶詰、果実缶詰、農産保存食料品などの製造
  • 調味料、糖類、動植物油脂などの製造
  • 精穀、製粉およびでんぷん、イースト、こうじ、麦芽などの製造
  • パン、菓子、めん類、豆腐、油揚げ、冷凍調理食品、惣菜などの製造

食品メーカー・食品会社を経営している場合、自社がどのような業種に該当するのか確認しておきましょう。ここからは、業種についてより詳しく解説します。

製造しているもの(業種)

総務省の定義による「食料品製造業」で製造されているものは、前述のとおりです。食料品製造業には、清涼飲料・酒類・茶・コーヒー・氷・たばこ・飼料・有機質肥料などの製造は含まれません。これらの製造は、「飲料・たばこ・飼料製造業」に分類されます。

自社が上記の5つの業種に含まれない場合、定義上の食品メーカー・食品会社には該当しません。M&Aを成功させるためには、自社の業種を知ったうえで、相性の良い相手を探すことがポイントです。

事業に見られる特徴

食料品製造業に見られる代表的な特徴は、以下のとおりです。

  • 消費者の「安心・安全」を守るための取り組みが重要
  • 消費期限があり、大半が見込生産食品である
  • 季節性があり、繁閑対応が求められる
  • 販売価格の下落圧力が強い
  • 為替相場・原料相場の影響を受ける

このうち特に重要度が高いものは、食品製造者の最も重要な使命である、「食品の安全性」に関する取り組みです。昨今は、食中毒の発生や異物混入など食の安全を脅かす事故が多発しており、消費者の「安心・安全」に対する要求が非常に高いです。

食の「安心・安全」にまつわる事故は社会的な影響が大きく、一度発生してしまうと企業の存続自体が脅かされるおそれがあります。HACCPなど工程管理システムの導入、老朽設備の入れ替え、設備メンテナンスの実施など、安全に対するコストが年々増加傾向にある状況です。

2. 食品製造業界の市場動向

市場規模

経済産業省が実施している工業統計調査の「2020年確報 産業別統計表」によると、2020(令和2)年における食料品製造業の市場規模概要は以下のとおりです。

  • 市場規模(製造出荷額):29兆8,571億8,800万円(前年比0.3%増)
  • 企業数従業員4名以上の事業所:23,648社(前年比3.2%減)
  • 従業者総数(従業員4名以上の事業所):1,136,951人(前年比0.8%減)

参考:経済産業省「2020年確報 産業別統計表」令和3年8月13日公表・掲載

競合・代替品

今後は、環太平洋戦略的経済連携協定の影響輸入価格の下落が考えられるものの、これと併せて国内の食品製造業にとっての代替品である輸入食品の価格も安くなることから、決して楽観視はできません。

食品業界では世界的規模での複合的な要素が変化をもたらすことから、自社が製造している製品への注目だけでなく、安定的な事業経営をするためのポートフォリオ形成も重要視されます。

業界動向

食品メーカー・食品会社を取り巻く動向は、主に以下のとおりです。

  • 市場は成長鈍化
  • 原料価格上昇に伴い値上げ
  • 食品表示偽装などによる安全性への意識拡大
  • 健康ブーム、環境への配慮など多様なニーズの出現
  • コロナ禍による食品業界への影響

これらの動向を押さえることで、食品メーカー・食品会社における業界の理解が進みます。それぞれ順番に解説します。

市場は成長鈍化

出典:農林水産省「令和2年度  食品産業動態調査」 食品製造業生産額指数(推計)及びGDPの推移

出典:https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_doutai/attach/pdf/doutai_top-29.pdf

食料品製造業界では、令和に入るまでは成長を続けていましたが、近年では成長が鈍化し、コロナの影響で前年マイナスとなる年も出ています。
特に、食料品価格の下落や少子高齢化などの影響により、国内市場は縮小傾向です。市場の縮小に加えて、所得水準の伸び悩み・デフレ長期化を主因とする消費者における節約志向の強まりもみられます。企業側には、価格競争の激化とともに、より競争力が高い製品の開発や生産性の向上が求められている状況です。

近年は所得水準が伸び悩んでいます。消費税率が上がったことで国内市場が縮小しているなかで、ますます企業間の競争が激しくなっている状況です。中小規模の食品メーカー・食品会社は生き残るための経営戦略を綿密に立てなければなりません。

原料価格上昇に伴い値上げ

食料品は原材料の多くを輸入に頼っているため、小麦や大豆・食肉などの価格変動や為替動向の影響を大きく受けてしまうのが実情です。

近年の世界的な食料品原料の市場におけるトピックとして、中国の市場拡大があります。これにより、原材料価格が高騰しているほか、為替の円安進行によってコストが増加傾向です。値上げが難しい食料品製造業者にとって、こうした価格変動は経営上の大きな課題だといえます。

食品表示偽装などによる安全性への意識拡大

近年、食品表示偽装問題の報道が相次いでいます。不適切な情報を提示し食料品を製造・販売していた業者が存在したため、消費者における食の安全性に対する意識がますますシビアな状況です。

衛生管理が徹底していない食品メーカー・食品会社や、消費者からの信用が薄い食品メーカー・食品会社は競争に負けてしまう可能性が高く、食品に関する消費者の安全意識を裏切らない経営が求められています。

健康ブーム、環境への配慮など多様なニーズの出現

食品における安全性の観点から、トレーサビリティにも注目が集まっています。

トレーサビリティとは、物品の流通経路を生産段階から最終消費段階もしくは廃棄段階まで追跡できる状態のことです。日本では牛肉・コメ・コメ加工品に対して、こうした対応がすでに義務付けられています。

健康ブームによる健康に対する意識が向上したことへの対応なども迫られている状況です。

コロナ禍による食品業界への影響

出典:農林水産省「令和2年度  食品産業動態調査」 4名目GDP、実質GDP及びGDPデフレーターの推移

出典:https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_doutai/attach/pdf/doutai_top-29.pdf

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、食料消費面で市場が大きく変化しています。外出自粛・緊急事態宣言などにより、2020年以降の食料消費支出額では、外食への支出額が大きく減少しているのに対して、生鮮食品への支出額は増加し、高止まりしている状況です。

生鮮食品への支出額が増加した要因の1つに、自宅での料理機会の増加が挙げられます。これに伴い、食品スーパーの売上高も増加傾向にあります。

【関連】食品卸売業界のM&A・売却・買収!動向やメリット、注意点、成功事例、価格相場も解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

3. 食品製造会社・食品メーカーのM&A動向

消費者の求めるクオリティは年々高くなっています。食品製造会社・食品会社にとっては消費者のニーズを満たせる事業運営が必要であり、その手段としてM&Aが活用されるケースも多いです。

食料品製造業は素材型と加工型に大きく分類され、それぞれ以下のような特徴があります。
 

  • 素材型:加工メーカーや外食産業への原料供給が主要業務(製糖、製粉、製油、飼料など)
  • 加工型:原料を仕入れ加工品を製造し家計へ供給することが主要業務(パン・菓子、調味料、冷凍食品、めん類など)

食品メーカー・食品会社のM&Aには、以下のような動向がみられます。
 
  1. 多角化を目指す同業他社の買収が活発化
  2. 海外進出するために海外メーカーとのM&Aが増加
  3. 異業種からの新規参入M&Aが増加
  4. 地域密着型ファンドなどの参入
  5. コスト高を受けた業界再編

①多角化を目指す同業他社の買収が活発化

「素材型」の食品製造企業では、多角化を目指したM&Aが活発です。一般的に素材型では商品の差異化が難しいうえに、加工メーカーへの原料供給は規模が大きいほど効率的であるため、スケールメリットが非常に大きくなります

その一方で、関税引き下げなどに伴う輸入品との競争激化や、加工メーカー・外食産業からの値下げ圧力が働いている状況を受けて、同業他社の買収による再編が進みました。

近年の事例では、2014(平成26)年10月に砂糖大手の三井製糖が、病院・介護施設向け栄養補助食品メーカーのニュートリー(三重県)を買収したケースがあります。

②海外進出のための海外メーカーとのM&A増加

日本国内は市場が飽和状態にあり競争が厳しいため、積極的に海外に打って出ようとする動きもみられます。加工型の食料品製造企業が実施しているクロスボーダーM&A(海外企業とのM&A)はその典型例です。

2014年9月、味の素は米国におけるアジア食の冷凍食品トップであるウィンザー・クオリティ・ホールディングスを買収しました。

本M&Aの狙いは、ウィンザーの持つ「冷凍食品における米国消費者に精通したマーケティング力」「冷凍食品における全米に広がる流通ネットワークと営業力」「冷凍食品における全米をカバーする生産拠点」を獲得することです。

近年は、大手企業を中心に海外メーカーとのM&Aが増加傾向にあります。資金力に余裕があるなら、海外企業とのM&Aを積極的に検討するのもよいでしょう。

③異業種からの新規参入M&Aが増加

異業種からの新規参入M&Aの動向を見ると、近い将来に増加が見込まれるのは健康食品を製造する企業の買収です。なぜなら、昨今は健康志向が高まっているためです。

食料品製造企業には、老舗ながら後継者不在や経営不振に陥っていたり、特定地域のマーケットに強みを持っていたりする企業も多くあります。こうした企業の買収には、今後さまざまな業種が目を付ける可能性が十分に考えられます。

もしも自社がこうした状況なら、M&Aの際は幅広い視野で買い手を探すと良いでしょう。同業者以外から自社にふさわしい買い手が見つかる可能性も非常に高いです。

④地域密着型ファンドなどの参入

一般的にファンドでは、経営関与を目的として株式を取得し、その企業の経営に関与することで株式価値を高めようとします。

通常、ファンドは株式価値向上後に、株式の新規上場・ 再上場や他社への転売をつうじた投資利益の獲得を目指しますが、後継者難をカバーするケースもあります。これに該当するのが、「地域密着型ファンド」や「事業承継ファンド」などです。

主な流れとしては、ファンドが会社の株式を取得し新たなオーナーとして経営を行いながら、人材を育て適任者を見つけて後継者の育成も並行します。その後、後継者に会社を任せて存続させる形です。

⑤コスト高を受けた業界再編

食料品業界では、原料費が高騰傾向にあることに加えて、加工メーカーや外食産業からの値下げ圧力も受けています。こうしたなかで、「素材型」の食料品製造企業では、M&Aによる業界再編が進んでいます。統合により、原材料調達や間接業務の効率化・工場統廃合などによるコスト削減・販売先との価格交渉力向上を目指しました。

業界再編で最も象徴的だった業界が、製油業界です。2000年代前半に、それまでの製油上位7社が製油3社(J-オイルミルズの製油企業、日清オイリオグループの製油企業、昭和産業の製油企業)に集約されました。

このように、値下げ圧力に対抗するために、M&Aによる業界再編が進んでいます。自社が素材型の食品会社であれば、M&Aで業界が変わることを念頭に入れて経営しましょう。

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食品メーカー・食品会社のM&Aは、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は中小企業のM&A支援実績を多く有しており、食品メーカー・食品会社のM&Aもお任せいただけます。

M&A総合研究所では、豊富な経験と知識を持つM&Aアドバイザーが専任となり、食品メーカー・食品会社の案件をフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、食品メーカー・食品会社のM&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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4. 食品製造会社・食品メーカーがM&Aするメリット

食品製造会社・食品メーカーがM&Aするメリットを把握し、自社が実施する際に多くのメリットを受けられるようにしましょう。本章では、譲渡側と買収側のメリットに分けて、順番に解説します。
 

譲渡側のメリット 買収側のメリット
  • 後継者問題の解決
  • 雇用の継続
  • 負債の解消と創業者の利益確保
  • グループに入ることによる経営の安定
  • 市場の拡大
  • 商品開発力・商品群・ブランド力の強化
  • 製造拠点の拡大
  • 販売チャネルの獲得
  • 人材確保
  • スケールメリットの享受

譲渡側のメリット

食品製造会社・食品メーカーのM&Aにおける譲渡側のメリットには主に以下が挙げられます。

後継者問題の解決

後継者不在の問題を抱える会社にとって、M&Aによる会社売却は問題解決手段のひとつです。後継者がいなければ会社を存続できずに廃業を検討せざるを得ないするケースもでてきます。

しかし、M&Aで売却すれば他社へ経営を引き継ぐことができるため、経営者の後継者候補がいなくても活用できる方法です。

雇用の継続

株式譲渡を用いた場合、譲渡側の会社・工場、従業員の雇用はそのまま買収側へ引き継がれます。経営者のとって、これまで会社や工場に貢献してくれた社員を廃業によって解雇するのは非常に心苦しいものです。

しかし、M&Aで自社を売却すれば従業員の雇用を継続することができます。実際に中小企業の場合は、M&Aによる事業・会社売却の目的が、雇用の維持に置かれることも多いです。

負債の解消と創業者の利益確保

個人事業主や中小企業などでは、代表者が個人保証を利用しているケースが多いです。これらは廃業を選んでも残り続けるため、リタイア後の生活が苦しくなる可能性が高いと考えられます。

しかし、M&Aで会社を売却すれば、個人保証も買収側へ引き継がれます。また、廃業を選択した場合は廃業コストがかかりますが、M&Aで株式を譲渡すれば売却益が得られます。

株式譲渡の売却益は経営者(創業者)が得るため、負債の解消だけでなく利益を得られる点は大きなメリットといえるでしょう。

グループに入ることによる経営の安定

経営不安を抱えていたり業績の見通しがよくなかったりする場合、自社よりも規模が大きく資本力のある会社の傘下となることで、経営の安定化を図れます。

また、買収側の経営資源を活用することによって、事業体制の強化や販路拡大も可能です。中小企業の場合、自社の経営資源だけでは事業の発展が難しいケースも少なくありませんが、M&Aを活用することで経営の安定と事業の成長に期待できます。

買収側のメリット

食品製造会社・食品メーカーのM&Aにおける買収側のメリットには主に以下が挙げられます。

市場の拡大

買収側企業は、M&Aによって譲渡側企業を傘下とすることで、相手の所有する工場などの設備、取引先との関係や従業員の雇用を引き継ぐことができます。

同業他社を買収した場合は相手の顧客を獲得できるので、一気にシェアを拡大することも可能です。市場規模は大きいほどプレゼンスが高まるだけでなく、市場における発言力の強化にもつながります。

商品開発力・商品群・ブランド力の強化

シナジー効果(相乗効果)発揮を目的のひとつとして、買収を行うケースは非常に多くみられます。シナジー効果とは、相手会社におけるマーケット(エリア、対象顧客)、技術やノウハウを自社の事業と合わせて、プラス以上の効果を発揮させることです。

食料品製造業のM&Aでシナジーが発揮されれば、商品開発力が強化や商品群の充実、ブランド力強化に期待でき、売上拡大にもつながります

製造拠点の拡大

食品の種類にもよりますが、加工型の食料品製造業の場合、製造拠点(工場)の拡大が大きなメリットになります。

一般的に、食料品は品質を維持できる期間が工業製品などに比べてはるかに短いため、製造拠点(工場)から遠方への配送などが難しいケースが多いです。

自社商品を販売するエリアを広げるためには、エリア内に製造拠点(工場)が必要ですが、自社で工場を新設するとなれば、立地の獲得から設備投資・従業員の採用まで非常に多くの手間・時間がかかります。

しかし、M&Aによる企業買収であれば、手間や時間を大きく省略して迅速な製造拠点の拡大が可能です。

販売チャネルの獲得

大手企業は国内での市場シェアを拡大が難しい状況に立たされており、M&Aによって海外市場をへの進出を目指す動きが活発化しています。

海外で商品を展開するには輸出する方法もありますが、ブランディングを構築できていない地域でゼロの状態から販売先を探し、その国の市場でプレゼンスを獲得するまでには膨大な手間と時間が必要です。

M&Aによって海外メーカーを買収すれば、相手先の持っている販売チャネルやノウハウをまとめて獲得することができます。初期段階で販売先を探す時間が大きく省略でき、効率的なプレゼンス強化が可能です。

人材確保

自社で工場を新設した場合、次に必要なるのは人材の確保です。十分な人材を採用できても新しい業務に慣れさせて、望ましい生産水準まで向上させるまでには、それなりの時間を要します。

M&Aによる企業買収であれば、すでにその会社・工場で働いている人材を確保できるためスムーズな事業展開が可能です。最初から食料品業界および会社のノウハウを持つ人材を集められるので、教育にかかる手間・時間を軽減できます。

スケールメリットの享受

スケールメリットとは、事業規模の拡大によって生まれる生産性向上・効率性上昇・知名度向上・バイイング・パワー向上などの効果のことです。特にスケールメリットを享受しやすいのが、製造業だといえます。

M&Aによって企業をまとめて買収することで、経営ノウハウから生産能力・収益までをすべて手に入れることが可能です。

1社による大量仕入が可能になるため、原材料の仕入れコスト削減・部品調達コストを削減できます。製造機械の稼働率に余裕があるなかで製品の市場シェアを拡大できれば、生産量増加によって製品1つ当たりの生産固定費の削減が可能です。

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5. 食品製造会社・食品メーカーのM&Aポイント

ここからは、食品製造会社・食品メーカーにおけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。食品製造会社・食品メーカーに限ったポイントではないものの、食品メーカー・食品会社のM&Aにも該当するものです。

  1. 相場
  2. 手法
  3. タイミング

①相場

M&Aで企業を売る際の相場価格は、「相手がどれだけ欲しがっているか」によって変動します。相手が高く評価すれば相場価格は高くなり、買いたい相手がいない場合はたとえ相場価格がゼロでも売れない可能性があるでしょう。

大まかな相場価格を知りたい場合は、計算によって求めることができます。算出方法は複数ありますが、ここでは代表的な2つの手法を紹介します。

M&A交渉は、算出された相場価格をベースに進めること基本であり、成立合意への近道ともいえるでしょう。

  • DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法
  • 純資産法

DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法

DCF(Discounted Cash Flow)法は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く方法を使って、価値を算出する手法です。

売却する会社の資産や事業計画書などをもとに、M&Aの後にどれだけの収益・キャッシュフローが見込まれるかを計算し相場価格を算定します。

DCF法の具体的な計算方法や割引率については、以下の記事でわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。

【関連】DCF法とは?計算式や割引率、メリット・デメリットをわかりやすく解説【企業価値算定】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

純資産法

純資産法の具体的な手法で代表的なものは、「簿価純資産法」と「修正純資産法」です。簿価純資産法は、帳簿価額にもとづいた資産と負債の差額である純資産をもって相場価格を計算します。

修正純資産法は、資産と負債を今の価値で再度どのくらい価値を持つのか調べ、純資金の金額を計算して相場価格を算出するものです。主要な土地や有価証券など資産のみを対象とし、負債と資産のすべてを対象としないケースもあります。

以下の記事では、純資産法の計算方法をくわしく解説しています。専門家による動画解説もありますので、ぜひご覧ください。

【関連】コストアプローチとは?用語の意味、メリット・デメリット、計算方法を解説【動画あり】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

②手法

中小企業のM&Aにおける手法は、9割以上が以下の2点に絞られます。

株式譲渡

企業の株式の全部または一部を売却する方法です。中小企業の株式譲渡では、オーナー経営者がすべての株式を所有していることが多く、その場合は会社はまとめて買収者に引き渡されます。

会社がまとめて譲渡されるため、事業や資産だけでなく債権債務や雇用契約などもそのまま買い手に承継されます。手続きは事業譲渡よりも簡便であるものの、原則として債務も買い手に引き継がれる点に注意しましょう。

事業譲渡

企業の事業の全部または一部を売る方法です。売り手は事業および資産の売りたい部分のみを売却でき、買い手は欲しい部分のみを買収できる点にメリットがあります。

事業譲渡の場合、許認可は買い手に譲渡できないケースがほとんどです。譲渡できない場合、買い手側で取り直す必要があります。

③タイミング

M&Aで企業を売却するタイミングで重要なのは、主に以下の3点です。

  • 業界再編が進行中のとき
  • 景気のよいとき
  • 経営者が元気なとき

1つずつ順番に解説します。

業界再編が進行中のとき

再編が進行中の業界では、現在が会社を高く売るために適したタイミングだといえます。なかでも最も適したタイミングは、業界再編が進行し、売主候補企業が少なくなった段階です。売り手市場となり、高く売れる可能性が高まるためです。

ただし、業界再編は永久には続かないため、売り惜しみに注意しましょう。

景気のよいとき

当然ですが、景気のよいときほど企業は高く売れます。逆に、たとえ買収したい会社が複数現れても、景気が悪くなれば、その意欲は何事もなかったかのように胡散霧消するケースがあります。

経営者が元気なとき

M&Aで企業を売却するなら、経営者が元気なときにできるだけ早めに計画を立てながら進めるべきです。

経営者の身に何かが起こってから急に会社を売却する必要に迫られた場合は、とにかく早く売ることが最優先となります。そうなれば、価格の要求をほとんどできなくなる可能性があるでしょう。

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6. 食品製造会社・食品メーカー関連企業同士のM&A成功事例14選

この章では、食品製造会社・食品メーカーのM&A成功事例を解説します。

山崎製パンによる神戸屋の包装パン事業等の取得

時期 2022年8月
売却側 神戸屋
買収側 山崎製パン
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 非公開

売却側の神戸屋は、包装パン事業を主軸とする業界4位の製パンメーカーです。包装パン事業のほか、フレッシュベーカリー・レストラン事業や冷凍パン事業なども手掛けています。

一方、買収側の山崎製パンは、国内シェア1位の製パン企業です。人気商品「ランチパック」や「ダブルソフト」などのパン部門のほか、コンビニエンスストア「デイリーヤマザキ」も展開しています。

人口減少や少子高齢化が進むなか、神戸屋は事業ポートフォリオの見直しを行い、今後はフレッシュベーカリー・レストラン事業と冷凍パン事業に注力していくとし、包装パン事業と子会社が手掛けるデリカ食品事業の売却を決定しました。

本M&Aによって、山崎製パンはが神戸屋が持つ関西地方の基盤を引き継ぎ、生産体制の強化を図るとしています。

エバラ食品工業グループによるヤマキンの子会社化

時期 2022年5月
売却側 ヤマキン
買収側 エバラビジネス・マネジメント
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 非公開

売却側のヤマキンは、液体調味料などを製造する1948年創業の企業です。主に小袋製品を製造しており、小ロットの生産体制を持っています。

一方、エバラ食品工業は、家庭用や業務用の調味料を主軸として事業展開しています。エバラビジネス・マネジメントはグループ内の経営管理を行う子会社です。

現在、エバラ食品工業は、主軸である家庭向けの食品事業と戦略事業を進めるべく、生産体制の強化を図っています。国内の少子高齢化が進むなか、小容量製品の需要拡大が見込めるとしており、ヤマキンの子会社化を決定しました。

本M&Aによって、柔軟で効率的な生産体制を築き、 小容量製品の製造・供給体制を強化し、競争力の強化を図るとしています。

ダスキンによる蜂屋乳業の売却

時期 2021年11月
売却側 ダスキン(蜂屋乳業)
買収側 バンリュー
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 非公開

売却側のダスキンは、大阪府吹田市に本社を置く日本の企業です。清掃業務を中心に外食産業なども展開しており、ミスタードーナツの事業本部でもあります。蜂屋乳業は、大阪市を拠点に、主にアイスクリームなどのOEM製造を事業とする業歴50年を有する老舗企業であり、大手乳業メーカーに安定した製品供給を行っていました。

対する買収側のバンリューは、兵庫県姫路市を拠点に、出資企業株式の保有管理を事業として手掛けている企業です。

本件M&Aにより、ダスキンでは、事業の選択と集中による事業ポートフォリオの適正化を進めており、食肉の加工・販売・外食を手掛ける子会社を傘下に持つバンリューと蜂屋乳業によるシナジーの獲得を図っています。

三井物産による五洋食品産業の子会社化

時期 2020年10月(同年12月完了と発表)
売却側 五洋食品産業
買収側 三井物産
M&Aスキーム TOB(株式公開買付)
譲渡価格 1株当たり買付価格:879円

売却側の五洋食品産業は、福岡県糸島市に本社を置き、フローズンスイーツの製造販売を手掛けている企業です。対する買収側の三井物産は、三井グループの大手総合商社であり、三井不動産、三井銀行と並ぶ「三井新御三家」の1つとして位置付けられています。

本件M&Aにより、買収側では、高付加価値の冷凍スイーツへの関心がアジア・太平洋市場で高まっていることなどを踏まえ、海外展開の拡大につなげると発表しています。

ミツウロコグループHDによる静岡ジェイエイフーズの子会社化

時期 2021年9月(実施は同年11月)
売却側 静岡ジェイエイフーズ
買収側 ミツウロコグループHD
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 非公開

売却側の静岡ジェイエイフーズは、大手飲料メーカーからの依頼を受けて清涼飲料のOEM製造を手掛けているJA系列の企業です。対する買収側のミツウロコグループHDは、東京都中央区に本社を置く石油製品・LPガス・固形燃料の販売などを手掛ける企業グループの持株会社です。

本件M&Aにより、買収側では、清涼飲料水の生産能力を獲得することで、清涼飲料市場へ参入し、新たな事業分野において事業規模のさらなる拡大を図ると発表しています。

DM三井製糖HDによる関門製糖の子会社化

時期 2021年9月 
売却側 関門製糖
買収側 DM三井製糖HD
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 7億7,600万円

売却側の関門製糖は、福岡県北九州市を拠点に、砂糖およびその副産物の製造・加工、糖蜜の保管業務、食品加工技術の研究・開発・調査などを手掛けている企業です。対する買収側のDM三井製糖HDは、東京都中央区を拠点に、グループ経営管理事業・不動産事業・資産管理事業・日本国外の駐在員事務所の運営および管理に関する事業などを展開しています。

本件M&Aに伴い、関門製糖に折半出資する日本甜菜製糖から株式50%を取得し、持ち株比率を100%とし完全子会社化しています。なお、日本甜菜はこれまで関門製糖に精製糖の製造を委託しているが、全保有株の譲渡後も大日本明治を通じて関門製糖への製造委託を継続すると発表しています。

三光マーケティングフーズによる海商の全事業取得

時期 2021年8月(実施は同年11月)
売却側 海商(民事再生手続き中の海商が新設分割し設立した新会社)
買収側 三光マーケティングフーズ
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 非公開

売却側の海商は、大阪市中央区を拠点に、煮魚や鮮魚など各種食料品小売業を手掛けている企業です。対する買収側の三光マーケティングフーズは、東京都新宿区を拠点に、飲食店経営・水産業などを展開しています。

本件M&Aにより、買収側では、海商が培ってきた事業の強みを生かし、飲食事業の業態および商品強化・新たな販路の開拓・沼津での水産事業とのシナジー効果を生かすことで、早期に事業の確立していくと発表しています。

ファーマフーズによる明治薬品の子会社化

時期 2021年8月
売却側 明治薬品
買収側 ファーマフーズ
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 15億円〜23億円程度

売却側の明治薬品は、東京都千代田区に本社を置き、医薬品・医薬部外品・医療用具・食料品(健康食品)・化粧品の製造およびその販売・輸出入、劇毒物の販売などを手掛けている企業です。対する買収側のファーマフーズは、京都市を拠点に、機能性素材、機能性製品の開発・販売およびバイオメディカル事業、Life Science Information事業を行っています。

本件M&Aにより、買収側では、ファーマフーズの有する研究開発力・商品開発力および通信販売プラットフォームと明治薬品が有する製造・販路などの経営資源を融合させることで、収益拡大やグループの持続的成長と中長期的な企業価値向上の実現を図っています。

不二製油グループ本社によるトーラクの売却

時期 2020年7月
売却側 トーラク(不二製油グループ本社)
買収側 丸大食品
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 12億円

売却側のトーラクは、不二製油グループ本社の100%子会社でした。不二製油グループ本社はグループとして、乳化・発酵素材、植物性油脂や業務用チョコレート、大豆加工素材などの開発・生産・販売事業を行っています。

食品会社のトーラクは、「神戸プリン」「らくらくホイップ」など知名度が高い代表的商品を持つ会社です。丸大食品は、食肉加工品であるハム・ソーセージなどや、各種惣菜類を製造・販売する大手食品メーカーとして知られています。

不二製油グループ本社は、この子会社売却(譲渡)によりトーラクのさらなる発展を鑑み、コアコンピタンス追及の一環として決断しました。

丸大食品は、現事業のデザート部門でさらなる収益向上を目指すうえで、トーラクの商品力・企画開発力・販売力は大きなシナジーが得られると判断しています。

フジッコによるフーズパレットの買収

時期 2019年8月
売却側 フーズパレット
買収側 フジッコ
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

フジッコは、知名度のあるふじっ子やおまめさんを手掛けるだけでなく、健康食品の素材なども販売する会社です。フーズパレットは、四陸(フォールー)やチャイナチューボーなどのブランドで中華惣菜を販売しています。

フジッコの全売上30%は惣菜製品で、主な事業の1つです。この買収により、フーズパレットのブランド力・商品力と、フジッコのマーケティング力・販売力が融合して事業が広がることを狙っています。

亀田製菓によるマイセンの買収

時期 2019年2月
売却側 マイセン
買収側 亀田製菓
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

買収側の亀田製菓は知名度のある柿の種やハッピーターンなどの米菓を製造販売し、売却側のマイセンは玄米パンやベジタリアンミートなどグルテンフリー食品の製造や販売を手掛けています。

亀田製菓は、健康志向食品の需要が近年高まっていることから米菓以外の食品事業を強めるために、この買収を実施しました。玄米などを用いた新しい商品開発を促進し、両社で販路や製造ノウハウなどを共有する狙いです。

エア・ウォーターによる元気の買収

時期 2019年2月
売却側 元気
買収側 エア・ウォーター
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

買収側のエア・ウォーターは、農業・食品事業、産業ガス事業、医療関連事業などさまざまな事業を手掛けています。農業・食品事業では、農産物を栽培して調達し、食品を製造して販売するまで一貫して行っている会社です。

元気は、日本初の黒にんにくを製造した会社で、青森産にんにくを原料に独自製法で「熟成黒にんにく」を製造販売しています。

この買収でエア・ウォーターは、元気とのシナジー効果を狙い、青森産にんにくの調達力を高めて新しく健康食品分野の商品を持つことを見込んでいます。

エア・ウォーターは2018年12月に、調理冷凍食品を販売する見方を買収しました。エア・ウォーターは、M&Aを生かした食品事業を強めています。

純和食品によるヨシムラ・フード・ホールディングスへの売却

時期 2016年7月
売却側 純和食品
買収側 ヨシムラ・フード・ホールディングス
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 4億5,500万円
売却側の純和食品は、1977(昭和52)年の設立以来、ゼリーなどのデザート類やレトルト食品などを製造し、販売してきました。イオングループをはじめとした大手スーパー量販店などのOEM生産を手掛け、外食産業や贈答品市場にも強みがあります。

買収側のヨシムラ・フード・ホールディングスは、食品の製造や販売をする中小企業の支援と活性化を目的とした会社です。経営戦略の立案や実行、経営管理などをメインに活動しています。

ヨシムラ・フード・ホールディングスは、本件買収以前にも、事業承継問題や単独での成長に限界を感じている全国の中小食品企業に対し、独自の「中小企業支援プラットフォーム」を提供して問題を解決してきました。

純和食品は特に経営難ではありませんでしたが、ヨシムラ・フード・ホールディングスの子会社となることで経営基盤の強化と経営の効率化を図る見込みです。

ヨシムラ・フード・ホールディングスは、純和食品が得意とする商品企画・開発・品質管理ノウハウを、自社の「中小企業支援プラットフォーム」に取り入れることで、強固な事業基盤の確立をもくろんでいます。

東ハトによる山崎製パンへの売却

時期 2006年7月
売却側 東ハト
買収側 山崎製パン
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 182億円

売却側の東ハトは1952(昭和27)年創業の製菓大手ですが、バブル期に関連会社が手掛けたゴルフ場事業が失敗し、2003(平成15)年に民事再生法の適用を申請し倒産しています。買収側の山崎製パンは1948(昭和23)年の創業で、菓子パン製造会社で最大手です。

東ハトは一度倒産したものの、本業の食品事業は黒字経営で、倒産の原因となった不動産事業は他社の支援を受ける形で分離していました。その最中でヒット商品開発に乗り出し、再建に取り組んでいたのです。この過程で、現在も続くヒット商品も生まれています。

山崎製パンも製菓事業を行っていましたが、東ハトが持つ製品のブランドを得ることで、新しい経営基盤を目的に買収しました。これにより、東ハトは倒産を乗り越え大手の傘下に入り山崎製パンはブランド力もシェアもある製菓事業を手に入れることに成功しています。

7. 異業種による食品業界のM&A事例5選

異業種による食品業界のM&Aから、5事例を解説します。

不二製油と通販サイト運営cottaの資本業務提携

時期 2022年5月
企業 不二製油
企業 cotta
M&Aスキーム 資本業務提携

食用油脂などの食品素材加工を手掛ける不二製油と、製菓・製パン材料の通販サイトを運営するcottaが、2022年5月に資本業提携を結びました。

不二製油は、植物性油脂や業務用チョコレート、大豆加工素材などを製造する企業です。一方のcottaは、約3万点もの商品を販売するほか、有名パティシエやインスタグラマーを起用したレシピやコンテンツ配信が人気となっています。

両社は、業務用素材を主軸とする不二製油とcottaの情報発信力を組み合わせることで、新製品開発につなげていく考えです。

味の素とおいしい健康の資本業務提携

時期 2022年1月
企業 味の素
企業 おいしい健康
M&Aスキーム 資本業務提携

登録商標のうま味調味料「味の素」が主力商品の味の素は、スタートアップ企業で食・健康に関するデジタル事業を手掛ける、おいしい健康と資本業務提携を結びました。

おいしい健康社は2016年にCOOKPADから独立、以降はAIによるレシピ提案アプリの提供など、ITを活用したヘルスケア事業を多数展開しています。

本提携は、双方の技術やアセットを活かしたヘルスケアと食に関する分野のイノベーション推進が目的です。今後は、ヘルスケアと食に関するプラットフォームの構築やエビデンスの拡充・高度化、デジタル技術による新しい食体験サービスなどを展開していくとしています。

小林製薬による梅丹本舗の買収

時期 2019年5月
売却側 梅丹本舗
買収側 小林製薬
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

小林製薬は、知名度のある熱さまシートなどの商品を持ち、医薬品や医薬部外品を製造販売しています。梅丹本舗は、健康食品を販売する創業94年の老舗メーカーです。

健康食品事業にも注力する小林製薬は、本件買収により、健康食品事業をより強めることを狙っています。小林製薬が持つマーケティング力・販売力・研究開発力を活用して、売上を高める予定です。

塩野義製薬による宝ヘルスケアの吸収合併・タカラバイオの健康食品事業の承継

時期 2019年1月
売却側 宝ヘルスケア・タカラバイオ
買収側 塩野義製薬の子会社シオノギヘルスケア
M&Aスキーム 吸収合併・事業承継
譲渡価額 不明

塩野義製薬は医薬品を手掛ける会社で、子会社のシオノギヘルスケアは主に一般用医薬品のヘルスケア事業を行っています。タカラバイオと宝ヘルスケアは宝ホールディングスの子会社です。健康成分のフコイダンを含んだ商品の開発や販売を手掛けています。

シオノギヘルスケアは、さらに将来加速するであろう超高齢社会へ向けて、シニア層の健康増進をサポートする事業を強めています。宝ヘルスケアのフコイダンを含む健康商品はシニア層に人気があるため、高齢者に対する健康食品事業を強めるために、本件M&Aを行いました。

ユーグレナによるフックの買収

時期 2018年4月
売却側 フック
買収側 ユーグレナ
M&Aスキーム 簡易株式交換
譲渡価額 約18億円

ユーグレナは、社名でもあるユーグレナなど微細藻類の研究開発やユーグレナを生かした食品などの製造販売を手掛ける会社です。フックは自社ECサイトを通じて、天然・自然由来の素材を用いた健康食品などの販売を手掛けています。

今回の子会社化により、ユーグレナは、フックの主な顧客層である20代から30代の女性に販路を広げる予定です。ユーグレナのマーケティング力・商品開発力・資金力とフックのブランド力を融合して、ヘルスケア事業をさらに拡大することも見込んでいます。

ユーグレナは、2016年12月に機能性食品を販売するクロレラサプライを買収しました。ユーグレナは、M&Aでの事業拡大に力を注いでいます。

8. 食品業界のクロスボーダーM&A事例4選

食品業界のクロスボーダーM&Aから、4事例を解説します。

味の素によるモア・ザン・グルメ・ホールディングス社の買収

時期 2019年8月
売却側 モア・ザン・グルメ・ホールディングス
買収側 味の素
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 約38億円

味の素は、日本で最大手の調味料メーカーです。味の素などさまざまな調味料や加工食品を販売しています。モア・ザン・グルメ・ホールディングスは、だし汁のブロス・ソースなど液体調味料事業を手掛け、アメリカに住む人の嗜好などに合わせた高価格帯の調味料が強みです。

本件買収により、味の素は自社の素材や調味料を組み合わせて、モア・ザン・グルメ・ホールディングスの加工食品メーカーや外食企業とのつながりを生かし、北米市場での販路を広げることを狙っています。

アサヒグループHDによるFULLER, SMITH & TURNER P.L.C.社のビール・サイダー事業取得

時期 2019年4月
売却側 FULLER, SMITH & TURNER P.L.C.のビール・サイダー事業
買収側 アサヒグループホールディングス
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 約370億円

アサヒグループホールディングスは、ビール業界で日本トップの市場シェアを占め、スーパードライなどのブランドが有名です。

FULLER, SMITH & TURNER P.L.C.は、主にロンドンでよく知られているビールブランドの「London Pride」「Frontier」、サイダーブランドの「Cornish gold cider」などを持ちます。

本件M&Aにより、アサヒグループホールディングスは、Fuller’s社の海外ブランドを得て、高級ビールのブランドをベースとした欧州事業を強める予定です。Fuller’s社は主にロンドンに複数のパブやホテルを持つため、アサヒグループのブランド販路を広げることも狙っています。

不二製油によるBLOMMER CHOCOLATE COMPANY社の買収

時期 2019年1月
売却側 BLOMMER CHOCOLATE COMPANY
買収側 不二製油
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 約848億円

植物用油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の事業を手掛ける不二製油は、業務用チョコレート業界で世界第4位です。BLOMMER CHOCOLATE COMPANYは、業務用チョコレート業界で世界第3位で、主に北米でチョコレートやココア豆を販売しています。

不二製油は、以前にもブラジルやマレーシア、オーストラリアの業務用チョコレートメーカーとM&Aを実施し、業務用チョコレート事業を広げました。

今回の買収で、不二製油は、世界第3位の業務用チョコレートメーカーになります。売上高も約800億円から約1,800億円に上昇する予定です。

不二製油は、自社の油脂技術をBlommer社に導入し、原料調達を一本化してチョコレート事業をより強める見込みです。Blommer社の販売網を生かして、北米での販売を広げることを狙っています。

山崎製パンによるBAKEWISE BRANDES社の買収

時期 2016年7月
売却側 Bakewise Brandes
買収側 山崎製パン
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 不明

山崎製パンは、食パンや菓子パン、和菓子などを販売する会社です。Bakewise Brandesは、ベーグルを製造してニューヨークなど主にアメリカ東部の量販店で販売しています。手作りに近い食感のパンを作り、ホテルやレストランへ販売するTom Cat Bakery社が子会社です。

本件買収により、山崎製パンは、アメリカで事業規模を広げることを狙っています。両社の製パン技術を日本での商品開発に活用することも見込んでいます。

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9. 食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却の業界動向まとめ

食料品製造業の市場規模は、少子高齢化の影響で縮小傾向にあります。また、コロナ禍の影響で業務用食品の需要は大きく減少し、その一方で家庭用食品の需要は増加しましたが高止まりの状況です。

そのような状況で、競争力や経営基盤の強化を目的とするM&Aが増えており、同業種間だけでなく異業種による買収なども多くみられるようになりました。

食品製造業界では今後もM&Aが活発に行われると考えられます。M&Aを検討している場合は、実施タイミングを逃さないよう早い段階から準備しておくとよいでしょう。

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