2023年06月13日更新
NPV(正味現在価値)とは?意味や計算方法・メリット・デメリットまで解説!
新規投資を行う上で、NPV(正味現在価値)を算出するのは重要です。
NPVは投資の価値があるかないかを判断する重要な指標になります。NPVを算出することによって、正確な価値を計ることができます。
新規投資を行ううえで、NPV(正味現在価値)を算出するのはとても重要です。
NPVは投資額に対し、現在を基準として価値があるかないかを判断する指標になるためです。
しかし、NPVの計算方法や前提を知らないと、算出された数値が意味のないものになってしまう可能性があります。
本記事では、NPVの意味から計算方法、メリット・デメリット、NPVに関連する用語についても詳しく解説します。
不動産投資への応用方法や、株式取得に関して役立つ情報になるので、参考にしてください。
1. NPV(正味現在価値)とは?
NPV(Net Present Value)は、日本語訳では「正味現在価値」や「純現在価値」と呼ばれます。
ここでは、NPV(正味現在価値)について、下記の2項目に分けて説明します。
- 投資額に対しての価値を示す指標
- NPVの重要性
投資額に対しての価値を示す指標
NPV(正味現在価値)とは、投資することによりどれだけの価値を得られるのかを示す指標になる数値のことをいいます。
キャッシュフロー(お金の流れ)を長期的に見たときに、現在価値に換算してどれくらいの価値があるのか、プラスまたはマイナスになるのかを評価することができます。
判断基準はNPVが0やマイナスになるときは、投資の価値がないと判断ができ、逆にプラスになればなるほど投資する価値は大きいと判断することが可能です。
そのため、複数の投資に対する評価を比較して、より良い投資先を選ぶことができます。
NPVの重要性
NPV(正味現在価値)は、考え方がDCF法(割引キャッシュフロー法)の基礎となっているという点でも重要です。
DCF法は株式などの金融商品や事業、不動産の価値を現在価値に直して算出する方法です。
NPVが「投資額」に対して価値を示す指標であるのに対し、DCF法は「企業」や「資産」に対する価値を評価する手法であることが両者の違いになります。
DCF法で企業や資産の現在価値を算出したうえで、NPVが投資額に対してプラスまたはマイナスになるかを算出し、投資をするか否かを判断できます。
例えば、1年後に100万円得ることができる場合と10年後に100万円得る場合では価値が異なります。
そのため、その時の市場価値で判断することが重要になります。
2. NPVを計算するメリット・デメリット
NPV(正味現在価値)は現在の価値に換算して比較ができるメリットがある反面、デメリットも存在します。
ここでは、NPVの計算するうえでのメリット・デメリットについて説明するので参考にしてください。
計算式自体は、簡易的なものですが一つひとつの用語を理解して計算をしないと誤った結果になります。
用語も理解した上で、NPVの計算を算出するようにしましょう。
NPVのメリット
NPV(正味現在価値)で計算することは、投資の判断基準を判別しやすくなるメリットがあります。
具体的に挙げられるNPVのメリットは、下記の2つです。
- 基準がわかりやすい
- 少額の案件が過大評価されにくい
基準がわかりやすい
NPVは将来的に得られる収益を現在価値に換算して比較できるため、基準がわかりやすいことが挙げられます。
初期投資額に対して、現在価値でどれだけの収益を得られる可能性があるかを判断でき、マイナスやゼロになる場合は除外対象として判別できることもわかりやすい点です。
少額の案件が過大評価されにくい
NPVを活用することで、少額の案件が過大評価されにくいこともメリットの1つです。
収益額を基礎として算出するため、投資に対してどれだけのリターンが望めるかを割り出すことが可能です。
そのため、効率の良さではなく利益の大きい投資先を選定することに活用できます。
投資した金額を回収する見積もりをするのではなく、投資すべきか否かを判断する指標となりますので、新規の投資先を開拓する際にはNPVに対する正しい理解が必要です。
NPVのデメリット
NPV(正味現在価値)で計算することは、計算の際に設定される割引率などの判断の難しさがデメリットになります。
具体的に挙げられるNPVのデメリットは、下記の3つです。
- 割引率の設定が難しい
- 過去にさかのぼっての計算が煩雑である
- 途中で追加投資をする場合の再評価が難しい
割引率の設定が難しい
割引率が少し違うだけで結果が大きく変わるため、割引率の設定は重要視されています。
しかし、納得感を与える割引率の設定をする判断基準は難しく、設定の困難さがNPVのデメリットの1つと言えるでしょう。
割引率は、事実や根拠に基づいた数値でなければ正しい価値を算出することができません。
過去にさかのぼっての計算が煩雑である
NPVは、新規投資の判断を行う際に活用するため、過去のデータをさかのぼって計算することや現在進行している投資に対しての利用には向いていません。
現在価値を基準にして計算を行うため、過去のデータを計算するには向かないところがNPVのデメリットの1つと言えるでしょう。
途中で追加投資をする場合の再評価が難しい
NPVは初期投資額に対する価値を示す指標のため、途中で追加投資を行うと再度評価することが難しくなる点がデメリットです。
NPVを算出したうえで投資をするかどうかの判断は、初期投資額により利益がでるかでないかで検討します。
そのため、途中で追加投資を行った場合、式が複雑化してしまい正しい数値が出せない可能性があります。
NPVは万能ではなく、新しく投資をするときに将来収益額を現在の価値に換算し、評価を行うための指標だということを覚えておきましょう。
3. NPVを算出する前提
NPV(正味現在価値)で予測収益を算出するためには、前提として収益を測る基準を設定する必要があります。
NPVを算出する前提として設定しなければいけないのは、下記の2つです。
- フリー・キャッシュ・フロー(FCF)
- 割引率の設定
フリー・キャッシュ・フロー(FCF)
FCFとは「Free Cash Flow」の頭文字を取った略称で、日本語では「純現金収支」と呼ばれます。
FCFを式で表すと、下記の記述になります。
■式
FCF=営業利益✕(1−法人税率)+減価償却費−投資−正味運転資本増加額
営業利益は、売上総利益から「販売費及び一般管理費」を差し引いた利益のことです。
税金を引くのは、投資した側の手元には税金は残らないためです。
減価償却費とは、固定資産の価値が、その使用や時間の経過により減少していくことを想定して、その分を費用として計上するものです。
これは実際には現金での支出はないため、FCFでは減価償却費を足し戻します。
上記の式で計算され、最終的に手元に残る金額が「自由に使える現金」=「Free Cash Flow」です。
FCFで見積もりを出した期間は、長く続くと事業環境が変化してしまう恐れがあるため、意味をなさない可能性があります。
そのため、通常では大体3〜5年分を見積もり期間として設定します。
割引率の設定
割引率は、1%でも増減すると大きく結果が異なるため、適切な値を設定することが必要です。
企業の価値を算定するときには、割引率の基準として「WACC」を使用します。
WACCとは「Weighted Average Cost of Capital」の頭文字を取った略称で、日本語では「加重平均資本コスト」と呼びます。
銀行や投資家などから資金を調達するためにかかるコスト(資本コスト)を、加重平均により算出する方法がWACCです。
このように、より精度の高いNPVを算出するためには、前提となる条件を整える必要があるので注意しましょう。
4. NPVの計算方法
NPVを算出する前提条件が揃ったなら、実際に計算を行いましょう。
NPVの計算方法を下記の2項目に分けて説明します。
- 計算式の割り出し方
- 計算で出た数字での判断方法
NPVの計算式
NPVを算出する計算は、下記の式を用います。
NPV=t年後に見込めるキャッシュ・フロー÷(1+割引率)−初期投資額
求めたい年数分だけ「t年後に見込まれるキャッシュ・フロー÷(1+割引率)t乗」を足していきます。
最終的に初期投資額を差し引いてプラスになる場合は投資する、マイナスになる場合は投資しないという判断をすることが可能です。
計算で出た数字での判断方法
NPVの計算方法で出た数字で複数の投資に対して比較を行いたい場合は、NPVがプラスでどの投資先が一番収益規模が大きいかを調べます。
マイナスやゼロになるのであれば、利益が発生しない可能性が大きいため、検討する対象から除外します。
プラスになる投資先は、最終的に算出されたNPVの数字が一番大きい投資先が、一番高い利益に繋がる可能性がある最適な投資先だと判断が可能です。
5. NPVの不動産投資への応用方法
NPVを不動産投資へ応用する際は、NPVの計算方法などの細かい部分が変わります。
ここでは、NPVの不動産投資への応用方法として下記の2項目に分けて説明します。
- 売却を前提とした不動産投資の場合
- リスクを割引率に反映させる方法
売却を前提とした不動産投資の場合
NPVを不動産投資に応用する場合は「NPVの計算方法」で説明した下記の式と計算方法が少し相違があります。
NPV=t年後に見込めるキャッシュ・フロー÷(1+割引率)−初期投資額
売却を前提とした不動産投資の場合、応用として上記の式に加えて最終的に売却するときの計算式が必要になります。
NPV=t年後に見込めるキャッシュ・フロー÷(1+割引率)+(t年後に見込めるキャッシュ・フローt乗+売却価格)÷(1+割引率)t乗−初期投資額
不動産投資に応用したNPVの計算方法を使い、5年後や10年後で売却価格が変わる不動産に対して、どの段階で売却すべきかを検討することも可能です。
ただし、NPVは変化が苦手で、環境の変化をすべて想定して反映することは難しいでしょう。
そのため、さまざまな推測を行ったうえで不動産投資に応用する割引率を設定することが大切です。
リスクを割引率に反映させる方法
不動産投資にNPVを応用する場合、リスクを割引率に反映させるのは景気・政策・不動産価格の市況の移り変わりもあり、個人の投資家ではかなり難しいでしょう。
理想的なシュミレーションだけでなく、複数の計算を行うことにより、さまざまな事象に影響を受けやすい不動産投資へのNPVの応用が可能になります。
ポジティブな結果だけでなく、ネガティブな結果のシミュレーションを行っておくことで、投資をしないことに対する意識を持てます。
NPVはプラス・マイナスで投資をするしないの判断がしやすい分、イレギュラーに弱いところがあるので、1つの判断基準だけで進めないように気をつけましょう。
6. NPV(正味現在価値)は投資プロジェクトの評価指標!
NPV(正味現在価値)は、新規の投資を行ううえで評価の指標となる数値です。
数値がプラスになる場合は、利益が見込める投資のため検討するに値します。
逆に、マイナスやゼロの場合は、利益が見込めないどころか損をしてしまう可能性があるため、検討対象から控除できます。
NPVを正しく算出するためには、事実と根拠に基づいた割引率を設定することが重要です。
割引率が1%でも変わるとNPVの数値が大きく異なるので、WACCなどの基準を用いて計算する必要があります。
また、不動産投資にNPVを応用する場合は、売却価格やリスクを考慮したうえでNPVを計算しなければいけないので注意してください。
NPVを正しく活用し、損のない投資を目指しましょう。
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