2022年06月06日更新
消防設備点検・工事会社のM&A動向や売却・買収の事例や相場、成功ポイントを解説
消防設備点検・工事会社業界は、売上低迷や後継者不足が課題です。その解決策として、M&Aによる買収や売却(譲渡)は有効です。消防設備点検・工事会社の買収や売却を検討するうえでのポイントについて、事例も交えたM&A動向から分析します。
目次
1. 消防設備点検・工事会社とは
消防設備点検・工事会社のM&Aを解説します。まずは、消防設備点検・工事会社の定義や業界動向について見ていきましょう。
消防設備点検・工事会社業界の定義
消防設備点検・工事会社という業種は、マンションなどの住宅やオフィスビルなどにおいて、消防設備のメンテナンスを行う業者をひとまとめにした呼称です。近年の防災意識の高まりから注目が集まっている、ニーズの高い業種の1つとなりました。
消防設備点検・工事会社業界の現状
消防設備点検・工事会社のM&Aを考える場合、業界の現状の動向を把握しておくのは非常に重要です。消防設備点検・工事会社の注意すべき動向としては、以下の3つのキーポイントがあります。
- 受注単価の低下が深刻
- 小規模業者では仕事の請負が困難化
- 業界減退で売上が低迷
受注単価の低下が深刻
2008(平成20)年9月のリーマン・ショックなどの影響から、マンションやビルなどを所有しているオーナーが経営難に陥ってしまいました。消防設備点検・工事会社の受注単価は低下の一途をたどっている状態です。
小規模業者では仕事の請負が困難化
小規模な消防設備点検・工事会社の場合は、マンションやビルなどの管理会社による業者選定から漏れてしまう可能性も大きく、業務請負で不利になる動向が見られます。
業界減退で売上が低迷
上述した状況から、消防設備点検・工事会社の業界自体が停滞してしまっている状態です。高齢化により後継者問題を抱えている場合もあり、事業承継がままならない事例も数多く存在します。
2. 消防設備点検・工事会社業界のM&A動向
消防設備点検・工事会社業界は、先に記述した課題などにより、M&Aによる買収・売却(譲渡)などが盛んに行われている業界であるといわれています。そこで、消防設備点検・工事会社業界におけるM&Aの動向について、以下の3点にしぼり分析してみましょう。
- 規模拡大を目指したM&Aの増加
- 中堅・大手によるM&Aが増えている
- 関連周辺業界から内製化のためのM&Aも増加傾向
①規模拡大を目指したM&Aの増加
消防設備点検・工事会社の業界動向としてあるのが、価格競争の激化から中小企業が苦境に立たされている現実です。こうした中小の零細企業を対象に、同業種あるいは異業種の企業がM&Aにより買収を実施し、業務または会社規模の拡大を目指す流れが見られます。
②中堅・大手によるM&Aが増えている
M&Aの買収側として活発的なのは、消防設備点検・工事会社業界の中堅・大手企業です。その中には、異業種となるビルメンテナンス会社などを、M&Aにより獲得する動向も見られています。
③関連周辺業界から内製化のためのM&Aも増加傾向
一方で、建設工事業や不動産業の企業が、消防設備点検・工事会社をM&Aによって買収し獲得する動向も増加しています。つまり、消防設備点検・工事会社業界全体では、中小企業を中心とした売却・譲渡が増えている傾向です。
3. 消防設備点検・工事会社業界のM&Aの流れ
上図は、M&A全般について、その種類を一覧にしたものです。広義のM&Aを含め、実にさまざまなM&A手法があるのがおわかりいただけるでしょう。
消防設備点検・工事会社のM&Aにおいても、それら全てのM&A手法が用いられていますが、特に中小企業が関わるM&Aで多く用いられるのは、「買収」のうちの「株式譲渡」や「事業譲渡」です。
M&Aの詳しい流れや内容は、以下の記事に記載されています。こちらの記事と合わせて参考にご覧ください。
4. 消防設備点検・工事会社業界のM&A手法
消防設備点検・工事会社業界のM&Aを検討する際には、どういった手法を取り入れるかも非常に大切です。
前項で示した図のとおり、M&Aれの手法は実にさまざまなものがあります。M&Aの各手法の詳細は、以下の記事で解説していますので、そちらを一読し参考としてください。
5. 消防設備点検・工事会社のM&A・売却・買収・譲渡の相場
上場企業でない場合、M&Aに関わる金額を公表しないケースがほとんどであるため、詳しい相場はわかりません。したがって、相場となる金額を明示するのは困難です。
しかしながら、消防設備点検・工事会社の事例を見てみると、数億円から数十億円で買収や売却されている事例もあるのは確かです。
海外などにおけるクロスボーダー案件のM&Aとなれば、数百億円での買収・売却取引が行われている例も少なくありません。
6. 消防設備点検・工事会社関連のM&A・売却・買収・譲渡の事例
消防設備点検・工事会社関連のM&A・売却・買収・譲渡の事例として、以下に11事例を提示します。
初田製作所のM&A
初田製作所は、創業以来、消火器、消防設備、自動消火システム、防災商品の製造・販売、施工、メンテナンスを行っている企業です。2021年1月に横井製作所の株式を取得しました。
横井製作所の株式は、もともと親会社であるくおんが保有していましたが、今回のM&A(株式取得)によって、一部、初田製作所が保有する運びとなりました。横井製作所は1958年の創業以来、消防設備機器の製造販売を行っていて、消火栓設備では国内トップクラスの市場シェアを誇っています。今回のM&Aによって、さらなる収益基盤の強化と企業価値の向上を目指しています。
環境エネルギー投資のM&A
環境エネルギー投資は、2020年6月に建物の消防設備点検業務に特化したプラットフォーム「スマテン」を運営している、スマテンに総額1.3億円の資金を提供しました。
もともと、スマテンは消防業界では初のWeb管理システムを開発・提供している企業です。建物を包括的に管理できるよう、法令点検を軸に総合管理が可能なプロダクトを提供しています。環境エネルギー投資は、このスマテンの独自性に着目して投資を決めました。
環境エネルギー投資は、環境・エネルギー分野に特化した日本で唯一のベンチャーキャピタルです。今回の資金調達では、プロダクト開発と営業組織を強化して、スマテンのビジョンである消防設備点検の実施率を100%の達成を目指しています。
ニューホライズンキャピタルのM&A
ニューホライズンキャピタルは2020年2月にウッドテックの全株式を取得するのに成功しました。
ニューホライズンキャピタルは、エクイティ投資を中心とする投資ファンドの運営、経営アドバイザリー業務を行っている企業です。成長支援、産業再編、事業再生のプロを多数擁する独立系のファンドとして注目されています。
ニューホライズンキャピタルが株式取得したウッドテックは、もともと1972年に小池設備工業として創業した企業で、長年の事業活動によって社内にノウハウを蓄積してきました。
2001年に消防設備工事を主力としていたウッドテックを吸収合併したのを機に、商号をウッドテックに変更し、その後、消防設備工事事業を中核として成長を続けています。
今後の事業の成長のために、今回のニューホライズンキャピタルのM&A(買収)を受け入れました。
アサヒホールディングスのM&A
2019(令和元)年8月、アサヒホールディングスは、100%子会社で消防設備点検・工事会社である紘永工業の全株式を永和ファシリティーズに譲渡しました。永和ファシリティーズも、消防設備点検・工事会社です。
アサヒホールディングスとしては事業の選択と集中の実践、永和ファシリティーズとしてはスケールメリットの獲得が主な目的として行われたM&Aになります。
あなぶきハウジングサービスのM&A
2019年7月、あなぶきハウジングサービスは、テクノ防災サービスの株式を取得し子会社化するのに成功しました。もともと、テクノ防災サービスは、後継者問題を抱えていて、事業の譲渡先を探していました。
一方、あなぶきハウジングサービスは、首都圏へ事業を拡大する協業先を探していて、今回のM&Aに至っています。このM&Aによって、設備点検等、建物メンテナンスに関する高いシナジー効果でお客様により高品質のサービスが提供できるようになり、今回の取引が成立しました。
ミライト・ホールディングスのM&A
2019年1月、ミライト・ホールディングスと四国通建は、ミライト・ホールディングスを株式交換完全親会社、四国通建を株式交換完全子会社とする経営統合を行いました。
このM&Aにより、双方が所持しているブランド力と競争力をグループ内に取り組むのに成功しています。
日本ドライケミカルのM&A
2017(平成29)年11月、日本ドライケミカルは、韓国にある始興金属の全株式を取得して子会社化を行いました。取得価額は4億5,800万円にのぼります。
日本ドライケミカルはとしては、このM&Aを実施して、始興金属が保有しているアルミニウム製消火器用部材を内製化し、シェア拡大するのが目的です。
ラックランドのM&A
2017年1月、ラックランドが、大阪市にある協和電設の全株式を取得し子会社化を行いました。
飲食店舗などの企画デザインを手掛けるラックランドは、このM&Aにより防災設備工事のノウハウを取り入れるとともに、関西地区でのサービス拡大を視野に入れています。
モリタホールディングスによるM&A
2016(平成28)年1月、モリタホールディングスは、フィンランドのBRONTOの全株式を取得し、子会社化を行いました。取得価額は101億8,400万円と公表されています。
モリタホールディングスは、このM&Aにより、消防車両事業のグローバル展開を進めるとともに、企業価値の向上を目指すと発表しました。
日本ハウズイングのM&A
日本ハウズイングは2015(平成27)年4月、亜細亜綜合防災の全株式を取得し子会社化しました。不動産の管理会社である日本ハウズイングは、このM&Aにより、消防などの点検工事などまで請け負える体制を整えたのです。
ハリマビステムによるM&A
2013(平成25)年4月にハリマビステムは、関東消防機材の全株式を譲り受け子会社化しました。消防設備業務の担い手として、迅速かつ高品質なサービス提供が狙いとしてあります。
7. 消防設備点検・工事会社業界のM&A・売却・買収・譲渡のメリット
消防設備点検・工事会社業界でM&Aを実施するにあたり、どういったメリットが考えられるのか、売却側と買収側の視点からそれぞれ紹介します。
売却側のメリット
まず、消防設備点検・工事会社のM&Aで売却側に見られるメリットは、以下の5項目が考えられます。
- 従業員の雇用確保
- 後継者問題の解決
- 売却・譲渡益の獲得
- 大手・中堅との協業による経営安定
- 個人保証・債務・担保などの解消
従業員の雇用確保
経営が困難な状況の場合、M&Aによる会社売却(譲渡)を実行して、従業員の雇用を安定的に確保できます。
後継者問題の解決
昨今の少子高齢化に伴い、事業後継者問題は喫緊の課題です。こうした事業承継の課題に対して、M&Aにより解決に導けるメリットがあります。
売却・譲渡益の獲得
廃業で事業を清算するのとは違い、M&Aにあれば売却利益や譲渡利益が生まれます。老後資金や新規事業資金などに充てるのが可能ですかから、これは大きなメリットの1つといえるでしょう。
大手・中堅との協業による経営安定
経営状況が不安定な状態を脱するために、M&Aによる会社売却や事業譲渡は有効です。相手先が大手や中堅などの経営地盤が安定している企業でしょうから、円滑な経営環境に変わります。
個人保証・債務・担保などの解消
M&Aによって第三者への売却を行った場合、中小企業経営者が個人で抱えていた保証や債務、そして担保といった負担から解放されます。
買収側のメリット
消防設備点検・工事会社のM&Aにおいて、買収側のメリットとしては以下の5項目が考えられます。
- 従業員の確保
- 専門性のある事業強化
- 内製化に伴う顧客満足度の充実
- 顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
- 事業規模・エリアの拡大
従業員の確保
人材不足が叫ばれている現在において、人材の確保は急務な課題の1つです。M&Aによる買収を実行すれば、即戦力となり得る人材の確保が可能となります。
専門性のある事業強化
会社の事業において、より強い専門性を出し強化する際にはM&Aは有効です。業務の効率化や相乗効果なども生まれやすい特徴が、M&Aにはあります。
内製化に伴う顧客満足度の充実
異業種である消防設備点検・工事会社をM&Aで買収して、従来、外部の消防設備点検・工事会社へ発注していた業務を内製化できます。そうすると、ワンストップで顧客ニーズに応えるのが可能となり、結果的に顧客満足度が高まり、業績向上へとつなげられるでしょう。
顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
消防設備点検・工事会社のM&Aを行って、同業者の場合はより広く新たなシェアを、異業種の場合は売却側が抱えていた既存の取引先やノウハウを獲得するのが可能です。
事業規模・エリアの拡大
同業者が消防設備点検・工事会社のM&Aを行い、経営統合して、最小限のコストと手間で事業規模や事業エリアが拡大します。そして、スケールメリットを得やすい状況を構築できるのです。
8. 消防設備点検・工事会社業界のM&A・売却・買収・譲渡の成功ポイント
消防設備点検・工事会社のM&Aによる売却・譲渡や買収には、成功するポイントがいくつかあります。ここでは、売却側と買収側に分けてそれぞれのポイントを見ていきましょう。
M&Aにおける売却側の成功ポイント
消防設備点検・工事会社のM&Aにおける売却側の成功ポイントとして、以下の5項目に着目します。
- 権利や特許を含めてアピールポイントを持つ
- 適切なタイミングでの売却
- 税務・財務面がきちんと管理されている
- ノウハウ・教育などがしっかりしている
- M&Aの専門家に相談する
権利や特許を含めてアピールポイントを持つ
M&Aでは、買収側に自社のメリットを理解させなければなりません。売却するうえで有利になり得る権利や特許などを、アピールポイントとして持つのが大切です。
適切なタイミングでの売却
経営判断も同じようにいえますが、M&Aにおいてもタイミングは非常に大切です。買収側が買いたいと考えているタイミングや時代状況をよく見極めるようにしましょう。
税務・財務面がきちんと管理されている
財務や税理関係に信頼がおけない場合は、M&Aの成功事例は少なくなっています。したがって常日頃から、会社における財務・税務面での管理や整理をしっかりと行いましょう。
ノウハウ・教育などがしっかりしている
M&Aにおける買収側のメリットの1つは、人材と知的財産の確保です。人材や知的財産が整っているのは、成功事例でもよく見るポイントです。
M&Aの専門家に相談する
M&Aでの売却益を増やしたり自社に有利な条件にしたりなど、M&Aによる売却にはいろいろと考える部分があります。
こういった疑問や問題、そして手法を的確に判断してくれる専門家への相談は、安全で安心なM&Aには欠かせないポイントです。
M&Aにおける買収側の成功ポイント
消防設備点検・工事会社のM&Aで買収側を成功に導く主なポイントは、以下の3点です。
- デューデリジェンスの徹底
- 統合プロセスの実施
- M&Aの専門家に相談する
デューデリジェンスの徹底
デューデリジェンスとは企業内監査です。M&Aで買収を考えている相手に対し企業内監査を徹底するのは、トラブルやリスクを回避するのには必要不可欠以外の何ものでもありません。
統合プロセスの実施
買収・売却(譲渡)の成立がM&Aのゴール地点ではありません。M&A成約後の経営統合プロセスこそが、より重要です。異なる企業が1つになるわけですから、収益向上化に向けて焦らずに計画的に経営統合を進めるのが肝要です。
M&Aの専門家に相談する
M&Aによる買収はリスクがつきものです。売却側のリサーチや買収方法などについてM&Aの専門家に相談するのは、当然不可欠なポイントになります。
9. 消防設備点検・工事会社業界のM&A・売却・買収・譲渡におすすめの仲介会社
M&A総合研究所は中小・中堅規模のM&Aを主に手掛けており、知識や経験、培ったノウハウにより消防設備点検・工事会社業界のM&Aを支援いたします。案件ごとにM&Aアドバイザーが担当につき、ご相談からクロージングまでしっかりサポートいたします。
M&Aは通常半年~1年以上かかるとされていますが、M&A総合研究所は最短3カ月の成約実績を有するなど、機動力も特徴です。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
方針 | M&Aアドバイザーの専任担当制 |
手数料・報酬など | 相談料:無料 着手金:無料 中間報酬:無料(※譲渡企業様のみ) 成功報酬:レーマン方式 |
お問い合わせ先 | 0120-401-970 |
サイトURL | https://masouken.com/lp/firefighting |
10. 消防設備点検・工事会社のM&A・売却・買収・譲渡まとめ
消防設備点検・工事会社の業界動向は厳しい状況にあります。
- 受注単価の低下が深刻
- 小規模業者では仕事の請負が困難化
- 業界減退で売上が低迷
このような状況から、M&Aにも積極的な部分があります。
- 規模拡大を目指したM&Aの増加
- 中堅・大手によるM&Aが増えている
- 関連周辺業界から内製化のためのM&Aも増加傾向
11. 消防設備点検・工事業界の成約事例一覧
12. 消防設備点検・工事業界のM&A案件一覧
【EBITDA約1億円】関東×鉄道会社メインの設備工事業
建設・土木・工事・住宅/専門サービス/その他/関東・甲信越案件ID:2401公開日:2024年11月22日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
5000万円〜1億円
譲渡希望価格
2.5億円〜5億円
鉄道会社向けをメインとした各種設備工事
【西日本エリア/発電所×定検・修繕】創業来20年以上無事故無災害の安定経営
その他/非公開案件ID:2201公開日:2024年09月11日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
1億5,000万円
機械器具設置工事業・電気工事業・特別管理産業廃棄物処理業
【海外/優良企業】消防設備の販売、メンテナンス業
専門サービス/リサイクル・環境/海外案件ID:1506公開日:2023年12月28日売上高
10億円〜25億円
営業利益
2.5億円〜5億円
譲渡希望価格
希望なし
シンガポールにて消防設備の点検、施工、販売、リース等を行っている企業でございます。
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