ドラッグストアのM&A動向と事例!実施の背景と成功のポイントも解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

ドラッグストアは、人材不足や後継者不足などでM&Aが行われることも多い業界です。ドラッグストア業界のM&A動向や売却・買収・譲渡事例・買収に積極的な会社をまとめました。ドラッグストア業界でM&Aを成功するポイントも紹介します。

目次

  1. ドラッグストア業界の現状
  2. ドラッグストア業界のM&A動向
  3. ドラッグストア業界のM&Aが行われる背景
  4. ドラックストア業界のM&Aのデメリット
  5. ドラックストア業界のM&Aを成功させるポイント
  6. ドラッグストア業界のM&A・売却・譲渡事例一覧【2024年最新版】
  7. ドラッグストアのM&A・買収に積極的な企業2選
  8. ドラッグストア業界のM&Aにおすすめの相談先
  9. ドラッグストア業界のM&A動向まとめ
  10. ドラッグストア業界の成約事例一覧
  11. ドラッグストア業界のM&A案件一覧
  • ドラッグストアのM&A・事業承継

1. ドラッグストア業界の現状

まずは、ドラッグストア業界の実情やM&Aの定義を見ていきましょう。

ドラッグストア業界とは

ドラッグストアとは、医薬品を中心に食品・日用品・化粧品などを販売している店舗をさします。近年は、調剤薬局を併営するドラッグストアも増えてきました。

ドラッグストア業界の大きな特徴は、食品や日用品などを他業態よりも安く販売することで集客し、利益率の高い医薬品で収益を上げるビジネスモデルである点です。ただし、改正されることの多い薬事法による規制への対応など、柔軟な経営が必要な業界でもあります。

ドラッグストア業界の歴史・変遷

近年、ドラッグストア業界に影響を与えた主な法改正として、以下の3つが挙げられます。

  • 2009(平成21)年の薬事法改正:一般用医薬品(医師の処方箋がいらない薬)のコンビニにおける販売解禁
  • 2013(平成25)年の薬事法改正:第一類医薬品、第二類医薬品のインターネット販売解禁(従前は薬剤師による対面販売が義務)
  • 2017(平成29)年のセルフメディケーション税制導入:特定の医薬品購入額における所得控除制度

セルフメディケーション税制における特定の医薬品とは、スイッチOTC医薬品(薬局やドラッグストアなどで自由に買えるように転用された一般用医薬品と要指導医薬品)のことです。2021(令和3)年12月では、2,550種類の医薬品が指定されています。

一例として、頭痛薬の「バファリン」、風邪薬の「パブロンS」、胃薬の「ガスター10」などです。2022(令和4)年1月1日からは、非スイッチOTC医薬品3,457種類が対象に追加されました。

ドラッグストア業界の現状

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が毎年実施する「日本のドラッグストア実態調査」の2023年度速報によると、全国のドラッグストア総店舗数は381社2万3041店舗に達し、前年より957店舗増加しました。特に150坪以上300坪未満の店舗が全体の42.9%を占め、300坪以上の店舗と合わせると過半数に達し、大型店舗の割合が高いことがわかります。

全国総売上高は9兆2022億円で、初めて9兆円を突破しています。前年度比で5.6%増加しており、前回調査の伸び率2.0%を上回る結果となりました。この成長率は、ドラッグストア業界が依然として拡大を続けていることを示しています。


参考:薬事日報「ドラッグストア業界に成長余地」

ドラッグストア業界の抱える問題・課題

どの業界でも人材不足が叫ばれていますが、ドラッグストア業界の場合、薬剤師不足が課題です。薬剤師獲得を目的にしたM&Aが、今後も続いていくでしょう。ドラッグストア業界における業績拡大のチャンスになり得るのが、先述したセルフメディケーション税制です。

一般に広く認知されているとはいい難いセルフメディケーション税制を、納税者である国民に対して広範に知らせるなどのキャンペーンを行うことで、セルフメディケーション税制の活用者が増えれば、ドラッグストア業界の売上増につながります。

また、近年の積極的な出店や日本の人口減少の影響により、ドラッグストアの店舗過剰も課題となるでしょう。特に都市部では出店余地が減少しており、今後は積極的な店舗拡大は難しくなっていくと考えられます。

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2. ドラッグストア業界のM&A動向

M&Aとは、事業・会社の買収・売却・譲渡や合併・会社分割などの組織再編を行う手法の総称です。日本では、中小企業経営者の高齢化や後継者問題により、事業承継目的のM&Aが活性化しています。

ドラッグストア業界のM&A動向は、以下のように推移しています。

  1. 市場規模は約20年で大きく拡大
  2. 業界の成長率に合わせてM&Aも増加
  3. 大手グループによるエリア拡大目的のM&Aが増加
  4. 大手同士の業務提携も増加

①市場規模は約20年で大きく拡大

ドラッグストア業界の市場動向は約20年間で大きく変化し続け、市場規模の拡大に合わせて、大手ドラッグストア企業は新規出店やプライベートブランドの開発などにより成長してきました。

しかし、薬事法の改正やドラッグストア数の飽和など業界動向の変化により、近年はドラッグストア市場の伸びが鈍化しています。

②業界の成長率に合わせてM&Aも増加

ドラッグストア業界の成長が鈍化し始め、好条件の新規出店場所も限られてきたことから、各大手ドラッグストア企業は、M&Aによるシェア拡大戦略を積極的に行っています

一方、中小ドラッグストア企業は、成長の鈍化により業績が厳しいことから、M&Aによる売却・譲渡が増加中です。

③大手グループによるエリア拡大目的のM&Aが増加

ドラッグストア業界では、コンビニエンスストア業界と同じく、大手各社によるドミナント戦略が一般化しています。

営業エリアに店舗を複数配置し他社の参入を妨げることで市場占有率を高めるドミナント戦略を、他社に先駆けて進めるため、M&Aによるエリア拡大競争が激しくなるでしょう。

④大手同士の業務提携も増加

近年、ドラッグストア業界は再編動向が激しくなっています。ドミナント戦略で他社に差をつけるには、業界シェアの確保が必須であるため、大手ドラッグストア企業は業務提携などにより業界順位の上昇を狙っています。

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3. ドラッグストア業界のM&Aが行われる背景

ドラッグストア業界では、以下の理由でM&Aが行われています。

  1. 深刻な人材不足による影響
  2. 薬事法の改定を受けたエリア拡大
  3. 小規模店舗の後継者不足と経営難
  4. 新規事業に投資したい
  5. 売却益を得たい

①深刻な人材不足による影響

ドラッグストア業界では、他社と差別化するために、調剤薬局を併設した店舗が増えてきました。一般用医薬品を販売するため、販売登録者資格を持った人材の需要が高い業界でもあります。

しかし、これらのサービスを行うための薬剤師や登録販売者資格の保有者数が不足している状況です。したがって、ドラッグストア業界では人材確保目的のM&Aによる買収が行われています。売却・譲渡側も、売り手市場のドラッグストア業界で、従業員の雇用維持目的で売却・譲渡を行うケースがあります。

②薬事法の改定を受けたエリア拡大

2006(平成18)年に薬事法の改定が決定してから、他業界との競争が激化することを予測したドラッグストア業界では、大手ドラッグストア企業同士のM&Aや中小ドラッグストア企業の取り込みによる規模拡大が活発に行われるようになりました。

その効果もあって、2009年の改正薬事法施行後も、大手ドラッグストア企業は成長を続けています。しかし、今後の薬事法(薬機法)改定に伴う他業界との競争激化に備え、大手ドラッグストア企業は専門性を強化中です。

③小規模店舗の後継者不足と経営難

大手ドラッグストア企業が規模を拡大していく中、小規模の薬局数は年々減っています。

大手ドラッグストアへの売却・譲渡需要が高いこともあって、後継者不在や経営難により事業継続が難しい小規模の薬局は、廃業ではなく大手ドラッグストアへの売却・譲渡を選ぶケースが増えているでしょう。

④新規事業に投資したい

新規事業をスタートさせる際、既存事業をM&Aで売却することで投資資金を捻出することができます。

M&Aであれば事業を存続させたまま他社へ売却することができます。売却益をそのまま新規事業に投資することができ、より良いスタートダッシュを切ることが可能です。

⑤売却益を得たい

M&Aを行う大きな理由の1つに、売却益を得ることが挙げられます。

例えば、経営から退く経営者の老後資金のためにM&Aを行い売却益を得るケースがあります。ハッピーリタイアメントを行うためのM&Aとしてドラッグストア事業の売買が盛んに行われています。

  • ドラッグストアのM&A・事業承継

4. ドラックストア業界のM&Aのデメリット

この章では、ドラッグストア業界におけるM&Aのデメリットを見ていきましょう。売却側と買収側に分けて紹介します。

売却側のデメリット

売り手側のデメリットは、主に4つです。

1つ目は、労働条件の悪化や人員整理が行われる可能性がデメリットとして挙げられます。2つ目のデメリットは、経営統合により業績が悪化してしまう可能性です。

3つ目のデメリットは、経営上における権限や裁量が制限されることもあるでしょう。4つ目のデメリットは、元経営者や元役員が新しい事業を行う場合、競業避止義務により事業展開を制限される可能性です。

買収側のデメリット

買収側の主なデメリットは、3つ挙げられます。

1つ目のデメリットは、経営統合が成功するかどうかの不確実性が高く、M&Aに失敗すると大損失となる点です。2つ目のデメリットは社風や労働条件が変化することで、従業員のモチベーションが下がったり離職が生じたりして、経営統合に支障が出る可能性がデメリットになります。

3つ目のデメリットは、売り手側が持つリスクなどを引き継いでしまうケースがあることです。ここでいうリスクとは、残業代未払いによる訴訟などです。

5. ドラックストア業界のM&Aを成功させるポイント

ドラッグストア業界でM&Aを成功させるには、以下のポイントを押さえる必要があります。

  1. 地域性に強みを持っている 
  2. 人材を多く雇用している
  3. サービス面の充実
  4. 将来を見据えたM&A先の選定
  5. M&Aの専門家に相談

①地域性に強みを持っている

ドラッグストアは立地が重要なので、買収側は好立地の店舗を優先的に買収します。M&Aによる売却・譲渡の際は、立地や地域性に優位性を持っていると、好条件での売却・譲渡が可能です。

②人材を多く雇用している

慢性的な人材不足、特に有資格者の人材が不足しているドラッグストア業界では、人材確保目的の買収も多く見られます。薬剤師や登録販売者などの有資格者を多く雇用しているかどうかも、M&Aによる売却・譲渡を成功させるポイントの1つです。

③サービス面の充実

ドラッグストア業界では、他社との差別化のために付加価値のあるサービスを各社が開発・提供するのが常です。専門性の高いサービスをM&Aにより取得するケースもあります。専門性があり付加価値の高いサービスを提供している場合は、M&Aによる売却・譲渡も有利です。

④将来を見据えたM&A先の選定

買収側は、今後の薬事法(薬機法)改定や、他のドラッグストア企業、他業界の動きを見据えて買収地域や店舗を選ぶ必要があります。

売却・譲渡側は、売却後における従業員の処遇、リタイアする場合は自身の生活、新事業を始める場合は資金や競業避止義務などに注意して、売却・譲渡を行うことが重要です。

⑤M&Aの専門家に相談

ドラッグストア業界の買収や売却・譲渡では、M&Aに関する幅広い知識や、ドラッグストア業界に関する専門知識が必要です。最適な買収、売却・譲渡先を見つけるための情報ネットワークも不可欠といえるでしょう。

M&A専門家の中には、ドラッグストア・調剤薬局の売買を専門に扱う専門家や、医療関係のM&Aを得意とする専門家もいます。最適な戦略を立てるために、まずはM&A仲介会社などに相談してみることも成功ポイントの1つです。

6. ドラッグストア業界のM&A・売却・譲渡事例一覧【2024年最新版】

ここからは、ドラッグストア業界のM&A・売却・譲渡事例を見ていきましょう。

ドラッグストア業界のM&A・売却・譲渡事例【2024年最新版】

ドラッグストア業界のM&A・売却・譲渡最新事例を順番に紹介します。

マツキヨココカラ&カンパニーによるAppBrewとのM&A

2024年11月14日、マツキヨココカラ&カンパニーの子会社であるMCCマネジメントは、化粧品メディア「LIPS」を運営する株式会社AppBrewの全株式を取得し、完全子会社化することで合意しました。

MCCマネジメントはグループ全体のマーチャンダイジング戦略を担い、一方のAppBrew社は「LIPS」の運営やオンライン広告、化粧品販売事業を展開しています。

この買収により、グループは「LIPS」を活用して顧客ニーズに幅広く応える体制を構築し、事業の拡大と成長を目指す方針です。

株式譲渡(完全子会社化)のお知らせ

アクサスによるGIVERSとのM&A

2024年9月18日、アクサスホールディングスは、子会社であるアクサスがGIVERSの株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。

アクサスは、小売事業、酒類や化粧品の輸入卸、ウイスキー製造、不動産賃貸など多岐にわたる事業を展開する総合ライフスタイル企業です。一方、GIVERSはサプリメントや化粧品のOEM製造を手がけています。

今回のM&Aにより、両社の事業規模拡大と利益率向上を目指し、アクサスグループ全体の成長と企業価値の向上を図る計画です。

当社連結子会社による株式取得(孫会社化)に向けた株式譲渡契約締結のお知らせ

マツキヨココカラ&カンパニーによるグループ内の組織再編

2022年2月、マツキヨココカラ&カンパニーは、グループ内における組織再編の実施を決めました。MCCマネジメントが承継会社です。

マツモトキヨシグループが有するエムケイプランニング、マツモトキヨシ保険サービス、マツモトキヨシホールセールと、ココカラファイングループが持つシーエフエナジー、ココカラファインソレイユ、ココカラファインアソシエ、ココカラファインフリュアヴァンスにおけるすべての株式を吸収分割します。

完全子会社間で行う吸収分割なので、MCCマネジメントは対価を交付しません。これにより、営業企画・運営支援機能などをMCCマネジメントに集約し、シナジー効果の創出とグループ全体における経営の効率化を狙います。

ウエルシアHDによるコクミンとフレンチとの資本業務提携

2022年1月、ウエルシアホールディングスは、コクミンとフレンチの株式を得て、資本業務提携することを決めました。議決権所有の割合は、コクミンが76.26%でフレンチが100%です。

ウエルシアHDとグループは、調剤併設型ドラッグストアチェーンの運営を手掛ける子会社とグループ会社の経営管理などを実施しています。コクミンは、薬局、薬店の経営、フレンチは薬局の経営を行っており、両社ともに大阪府の会社です。

これにより、ウエルシアHDは、全国へ出店網を広げ、ノウハウや人材などの経営資源を共有してさらなる経営規模拡大と経営体質強化を狙います。

クスリのアオキによるホーマス・キリンヤとフードパワーセンター・バリューとのM&A

2022(令和4)年1月、クスリのアオキホールディングスは、100%子会社であるクスリのアオキがホーマス・キリンヤおよびフードパワーセンター・バリューと吸収合併することを発表しました。クスリのアオキが存続会社で同年3月に実施予定です。

対価は現金ですが金額は公表されていません。クスリのアオキはドラッグストアおよび調剤薬局を運営しています。ホーマス・キリンヤはスーパーマーケットの運営、フードパワーセンター・バリューはディスカウントストアの運営を行っている企業です。

ホーマス・キリンヤとフードパワーセンター・バリューは、ともに岩手県で事業を行っており、クスリのアオキホールディングスは、東北地域におけるドミナント強化を見込みます。

ウエルシアホールディングスによるププレひまわりとのM&A

2021年12月、ウエルシアホールディングスは、ププレひまわりとの資本業務提携契約に基づいて出資し同社を子会社化しました。取得株式数や取得価額は公表されていません。ウエルシアホールディングスは、調剤併設型ドラッグストアチェーンの運営を行うグループの持株会社です。

ププレひまわりは、広島県を中心に中国・四国地方で123店舗のドラッグストアを運営しています。ウエルシアホールディングスは、中国四国地方のドミナント強化を実現しました。

ナルックスによるスーパーマルモとのM&A

2021年6月、ナルックスは、スーパーマルモとの間で吸収分割を行い、スーパーマルモが茨城県で行ってきたスーパーマーケット事業などを承継しました。分割対価は公表されていません。

クスリのアオキホールディングスにおける子会社のナルックスは、石川県で食品スーパーマーケット、 ドラッグストアを運営しています。このM&Aは、クスリのアオキホールディングスにおける茨城県のドミナント強化として行われました。

アインホールディングスによるエス・ケー・ファーマシーとのM&A

2021年3月、アインホールディングスとエス・ケー・ファーマシーは資本業務提携を締結しました。契約内容に基づき、アインホールディングスがエス・ケー・ファーマシーに出資し、20%の株式を取得しています。取得価額は公表されていません。

アインホールディングスは、調剤薬局・コスメ&ドラッグストアの経営、ジェネリック医薬品の卸売販売、化粧品の販売、売店の経営などを行うグループの持株会社です。エス・ケー・ファーマシーは、大分県で調剤薬局13店を運営しています。

アインホールディングスは、事業運営ノウハウや経営資源を共有・共用することで、相互の企業価値向上を図ります

ココカラファインによる薬宝商事とのM&A

ココカラファインは2020年1月、神奈川県で2店舗の調剤薬局を手掛ける薬宝商事の全株式を得て、子会社化しました。

ココカラファインは、ドラッグストア事業と調剤薬局事業の拡大に取り組んでおり、今回の買収によって、神奈川県におけるヘルスケアネットワークの構築を推進するとしています。

ココカラファインとマツモトキヨシホールディングスの経営統合

2019(令和元)年8月、ドラッグストアチェーン大手のココカラファインとマツモトキヨシホールディングスは、経営統合に向けた協議を開始する覚書を締結しました。

ココカラファインは、スギホールディングスからも経営統合に向けた協議提案を受けていましたが、マツモトキヨシホールディングス側の提案を受け入れています。

ココカラファインとマツモトキヨシホールディングスが経営統合すると売上高は1兆円を超え、首位争いが激しいドラッグストア業界でトップに立ちます。

ウエルシアホールディングスによる金光薬品とのM&A

ウエルシアホールディングスは2019年6月、岡山県内でドラッグストアと調剤薬局を展開する金光薬品を、株式譲渡により子会社化しました。

ウエルシアホールディングスは、全国でドラッグストアの新規出店とM&Aを進めており、金光薬品を取得したことで岡山県と中国地方での店舗網を強化しています。

アインホールディングスによる土屋薬品とのM&A

2019(平成31)年3月、調剤薬局やドラッグストアを全国チェーン展開するアインホールディングスは、長野県で調剤薬局を営む土屋薬品を、株式譲渡により子会社化しました。

アインホールディングスは、新規出店とM&Aにより全国の店舗網を拡大しており、長野県の有力調剤薬局である土屋薬品を取得することで、長野県内での市場占有率を県内トップクラスに引き上げています。

ウエルシア薬局による一本堂とのM&A

ウエルシアホールディングスは2019年3月、子会社同士のウエルシア薬局を存続会社、一本堂を消滅会社とする吸収合併を実施しました。

東京都でドラッグストアを展開していた一本堂は2018(平成30)年、ウエルシアホールディングスの子会社となっています。事業の効率化を図るため、本合併に至りました。

ツルハホールディングスによる広島中央薬局とのM&A

ツルハホールディングスは2019年2月、子会社のツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本をつうじて、広島中央薬局を子会社化しました。

広島県に拠点を置き、中国エリアと九州エリアでドラッグストアと調剤薬局を展開するツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本は、広島中央薬局を子会社化することで、広島県内での店舗網を強化しています。

2018年以前のドラッグストア業界M&A・売却・譲渡事例

2018年以前に行われたドラッグストア業界のM&A・売却・譲渡事例は以下です。

  1. メディカルシステムネットワークによる永冨調剤薬局のM&A
  2. ウエルシアホールディングスによるMASAYAのM&A
  3. ココカラファインによるケイエスのM&A
  4. アインホールディングスによるコム・メディカルとABCファーマシーのM&A
  5. ツルハホールディングスによるビー・アンド・ディーホールディングスのM&A

メディカルシステムネットワークによる永冨調剤薬局のM&A

調剤薬局を中心として、ドラッグストアや訪問看護ステーションなどを展開するメディカルシステムネットワークは、2019年1月、大分県内で調剤薬局を営む永冨調剤薬局を株式譲渡により連結子会社化しました。

メディカルシステムネットワークは、自社の調剤薬局経営サポートシステムを活用し、永冨調剤薬局における地域調剤薬局としての質を高めています

ウエルシアホールディングスによるMASAYAのM&A

ウエルシアホールディングスは2018年12月、化粧品専門店を展開するMASAYAを、株式譲渡により子会社化しました。MASAYAの経営者は高齢化により全国の店舗管理を行うのが難しくなったことから、事業承継M&Aの形を選んでいます。

このM&Aにより、ウエルシアホールディングスはMASAYAの化粧品事業を取得し、当該事業の強化を図っています。

ココカラファインによるケイエスのM&A

ココカラファインは2018年11月、千葉県内で調剤薬局を展開するケイエスを、株式譲渡により子会社化しました。このM&Aによってココカラファインは、千葉県での調剤薬局シェア拡大を図っています。

アインホールディングスによるコム・メディカルとABCファーマシーのM&A

アインホールディングスは2018年9月、新潟県を拠点に調剤薬局を展開するコム・メディカルとABCファーマシーを株式譲渡により子会社化しました。

アインホールディングスは、コム・メディカルとABCファーマシーの経営方針が自社の方針と合致していると判断し、子会社化に至っています。

ツルハホールディングスによるビー・アンド・ディーホールディングスのM&A

ツルハホールディングスは2018年5月、愛知県でドラッグストアを展開するビー・アンド・ディーホールディングスを、株式譲渡により連結子会社化しました。

これによりツルハホールディングスは、愛知県や周辺エリアでの市場占有率を高め、両社の事業シナジーを獲得しています。

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海外を対象としたドラッグストア業界のM&A・売却・譲渡事例

海外を対象としたドラッグストア業界のM&A・売却・譲渡事例は以下です。

  1. マツモトキヨシホールディングスによるベトナム企業との合弁事業
  2. マツモトキヨシホールディングスによる台湾企業との合弁事業
  3. ウエルシアホールディングスによるシンガポール企業との合弁会社設立

マツモトキヨシホールディングスによるベトナム企業との合弁事業

マツモトキヨシホールディングスは、2019年7月にベトナムのロータス・フード・グループとの合弁事業により、ベトナムでマツモトキヨシを運営することを発表しました。

ベトナムは経済成長が著しいうえドラッグストアといった業態がなく、今後の高い需要が見込めると判断したことから、ベトナム進出を決めています。

マツモトキヨシホールディングスによる台湾企業との合弁事業

マツモトキヨシホールディングスは、2018年1月に台湾の臺隆工業股份有限公司との合弁事業により、台湾でマツモトキヨシの展開を始めました。

台湾人は日本人と同様に健康意識と美意識が高く、日本へ訪れる台湾人も多いことから、ドラッグストアとの親和性が高いと判断しての参入です。

ウエルシアホールディングスによるシンガポール企業との合弁会社設立

ウエルシアホールディングスは2017年3月、シンガポール企業のBHG Holdings Pte. Ltd.と合弁会社を設立し、ドラッグストアの展開を始めました。シンガポールは急速に経済成長が進むとともに高齢化も進んでいます。

ウエルシアホールディングスが蓄積してきたアジアでのドラッグストア事業におけるノウハウが、シンガポールでも生かせると判断しての参入です。

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7. ドラッグストアのM&A・買収に積極的な企業2選

では最後に、ドラッグストアのM&A・買収に積極的な企業を2社ご紹介します。
 

  • アイリスファーマ
  • ココカラファイン

①アイリスファーマ

アイリスファーマは、1都3県で調剤薬局「あけぼの薬局」を50店舗以上展開している企業です。

地域密着型の薬局事業展開を得意としており、処方箋なしで手軽に相談できます。地域貢献を目標にしているドラッグストアを積極的に買収している企業でもあります。

②ココカラファイン

ココカラファインは、ドラッグストアチェーンで全国に1,000店舗以上展開しています。

1,000店舗以上展開することができたのはココカラファインが積極的にM&Aを行っているからです。ドミナント戦略を得意としており独占状態を作り出すのがココカラファインのM&Aのやり方です。

8. ドラッグストア業界のM&Aにおすすめの相談先

ドラッグストア業界のM&Aにおすすめの相談先をご紹介します。

金融機関

近年、金融機関が企業のM&A(合併や買収)を支援する専用部門を設ける動きが活発化しています。特に、大手投資銀行やメガバンクは、資金調達の助言や取引戦略の策定など、M&Aをスムーズに進めるための多岐にわたるサポートを提供しています。

これらの支援を活用すれば、企業は事業承継や資金調達といった複雑な課題を効果的に解決できるほか、専門家のアドバイスを得ることで取引成功の可能性を高めることが可能です。

ただし、大規模な取引が優先される傾向があり、中小企業が十分な支援を受けられない場合も少なくありません。そのため、企業規模や目的に応じた適切な支援機関を選ぶことが重要です。また、これらのサービスには高額な費用が発生することもあるため、料金体系を事前に確認し、費用対効果を慎重に見極める必要があります。

公的機関

最近、事業承継やM&Aを支援する公的機関の取り組みが大幅に強化されています。「事業承継・引継ぎ支援センター」は全国各地に設置されており、後継者不足に悩む中小企業に対して、事業承継やM&Aに関する無料の相談や情報提供を行っています。

さらに、企業間マッチングを支援する仕組みが整備されているため、地方の企業でも専門的なサポートを受けやすい環境が整っています。個人事業主を対象とした支援も充実しており、必要に応じてM&A仲介会社や専門家を紹介してもらうことも可能です。

ただし、公的サービスは民間仲介会社に比べてスピードや柔軟性に課題がある場合もあります。そのため、利用の際にはこれらの特性を理解し、自分に適した選択肢かを慎重に判断する必要があります。

これらの公的支援は、リスクを抑えながら事業承継やM&Aを進めるための一つの有効な手段といえます。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の売買をスムーズに進めるための専門的なサポートを提供する機関です。単に売り手と買い手をつなぐだけでなく、交渉の調整、企業価値の評価、契約書作成など、取引を円滑に進めるために必要な幅広い業務を支援します。これにより、M&Aの経験が少ない企業でも安心して手続きを進めることができます。

特に優れている点は、広範なネットワークを駆使して、最適な取引相手を迅速に見つけられる能力です。このネットワークが、取引成功率を大幅に向上させる鍵となっています。また、M&A初心者にも分かりやすく丁寧に説明を行い、不安を解消する姿勢も大きな魅力です。

ただし、仲介会社を利用する際には、着手金や中間報酬といった費用がかかる場合があるため、料金体系を事前に確認することが重要です。費用を抑えたい場合は、成功報酬型サービスを選ぶことで、よりコスト効率の良い支援を受けることが可能です。

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9. ドラッグストア業界のM&A動向まとめ

調剤薬局も含めたドラッグストア業界は、M&Aが活発な業種の1つです。しかし、買収側は手慣れたM&Aでも、売却側には初体験のケースが多いでしょう。諸手続きを安全に進めるには、M&A仲介会社などの専門家を起用するのが得策といえます。

10. ドラッグストア業界の成約事例一覧

11. ドラッグストア業界のM&A案件一覧

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