介護業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイント・事例25選を徹底解説【2024年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

高齢化が進む現在の日本では介護需要が高まっており、それに比例して同業界でのM&A件数が増加しています。本記事では、介護業界のM&A動向、M&Aを行うメリットや実施時のポイントなどを実際の事例と併せて紹介します。

目次

  1. 介護業界の現状
  2. 介護業界のM&A最新動向
  3. 介護業界でM&Aを行うメリット
  4. 介護施設をM&Aで売却する流れ
  5. 介護施設のM&A売却相場
  6. 介護施設のM&A費用
  7. 介護業界内の再編M&A事例13選
  8. 介護業界による異業種へのM&A事例5選
  9. 異業種による介護業界へのM&A事例3選
  10. 介護関連業界のM&A事例4選
  11. 介護業界のM&A失敗事例と要因2選
  12. 介護業界のM&A案件一覧
  13. 介護業界のM&Aの注意点
  14. 介護業界のM&Aで売却を成功させるポイント
  15. 介護業界のM&Aのまとめ
  16. 介護事業業界の成約事例一覧
  17. 介護事業業界のM&A案件一覧
  • セミナー情報
  • セミナー情報
  • 介護事業のM&A・事業承継

1. 介護業界の現状

介護業界の現状としては、市場拡大と人材不足という2つの特徴が挙げられます。

市場の拡大

厚生労働省 老健局「介護保険制度をめぐる最近の動向について」

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000917423.pdf

介護業界は、高齢化の進行によって利用者が急激に増えている現状です。厚生労働省「介護分野をめぐる状況について」によれば、介護保険制度が設けられてから20年の間に、65歳以上の被保険者数は約1.6倍、 サービスの利用者数は約3.3倍に増えました。

高齢者人口は今後さらに増加するため、団塊世代が高齢者となる頃には介護サービスの需要はかなり拡大すると考えられます。それに比例して介護業界の企業数も増えていますが、従業員の低賃金問題など課題が多いのが実情です。

補助金などが政府から注入されていますが、完全な解決には至っておらず、介護業界は慢性的な人員不足の状態が続いています。2040年には生産年齢人口の減少が加速すると推測されており、政府はその状況を見据えた社会保障制度の見直しを開始しました。

その取り組みの一環として、厚生労働省には「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」が設置され、以下3つの策を進めていくとしています。

  • 多様な就労・社会参加
  • 健康寿命の延伸
  • 医療・福祉サービス改革

具体的には、70歳まで就労希望者や外国人労働者の受け入れなどによる就業機会の確保、健康寿命を3年以上伸ばして男女とも2040年までに75歳以上を目指し、地域や保険者間の格差解消を図るとしています。

さらに、ロボット・AI・ICTなどの実現化を進め、2040年時点におけるサービス提供の単位時間当たり5%改善(医師については7%)を目指す予定です。

参考:厚生労働省「今後の社会保障改革についてー 2040年を見据えて ー」

人材不足

厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」より

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804129.pdf

厚生労働省が公表しているデータによれば、日本国内の介護人材は2025年度まで5万人(年あたり)規模で不足すると試算しています。その後は、徐々に介護人材の不足幅が減少し、2040年度には3万人(年あたり)の不足へ転じ見込みです。

2040年ごろになると高齢者数が減少し始めるため、介護業界の需要自体が縮小します。つまり、介護業界での人材不足が最も表面化するのは現時点から数年間ということです。

介護業界は以前から人材不足が深刻な状況ですが、その背景には賃金引上げなど処遇面が改善されていない点が要因として挙げられます。
そのため国としては介護職員の処遇改善にための加算や交付金の給付などはこれまでも行われてきました。しかし、業務内容における処遇は十分改善されたとはいえず、人材不足の解消に至っていないというのが実情です。

参考:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

介護報酬改定

2024年度の報酬改定は、診療報酬が本体0.88%(薬価△0.96%)介護報酬は1.59%(0.98%は処遇改善加算を含む)となり、多くのサービスで基本報酬がプラス改定されました。

処遇改善加算の1本化に伴う加算や光熱費高騰への対策分などを含めると実質は2.04%のプラスとなっており、過去最高だった2009年度の改定(3.0%)に次ぐプラス改定となりました。また、介護報酬の改定率がが診療報酬を上回るのは初であり、同業界で働く職員の処遇改善に期待できる数字といえるでしょう。

しかし、「訪問介護」「訪問リハビリテーション(予防)」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「夜間対応型訪問介護」の4サービスは基本報酬(単位)がマイナス改定となりました。

現在、国内には36000超の訪問介護事業所がありますが、今回のマイナス改定によって撤退する事業者が加速したり、地方では在宅介護サービスの供給量が不足し、現場崩壊を招いたりする可能性も考えられます。

2. 介護業界のM&A最新動向

冒頭で述べたように、介護業界ではM&Aが活発に行われていますが、具体的にはどのような動向がみられるのでしょうか。次は、介護業界のM&A最新動向について解説します。

人材確保を目的とするM&A・買収の増加

内閣府 「令和5年版高齢社会白書」

出典:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/zenbun/05pdf_index.html

内閣府の資料によると介護関係の職種の有効求人倍率は、全職業の有効求人倍率に比べ高くなっています。この慢性的な人材不足は介護業界の大きな課題となっていますが、その要因として考えられているのは処遇面や待遇面が他業種と比較して低いことや離職率が高いことなどです。

そのような背景により、人材確保を目的とするM&Aは多くなっており、同業種の企業を買収することでスキルやノウハウを持つ従業員を取り込む動きもみられます。

これは従業員にとってのキャリアアップにもつながり、事業規模が拡大して施設数が増えれば一般職員がリーダー格とほかの施設へ異動することも可能です。

企業側にとっては、人材育成を積極的に行っていることは採用時のアピールにつながるので、新たな人材の確保もしやすくなるメリットがあります。

新規参入を目的での異業種によるM&Aの増加

介護事業のM&A件数は増加傾向にありますが、近年特に増えているのは異業種からの新規参入です。介護業界は成長産業であるため、異業種からの参入が今後も盛んに行われると予想されます。

ゼロから介護業界に参入するのはリスクが高くなるため、大手企業がすでに介護事業を展開している企業をM&Aによって取得するケースが多いです。なかでも、有料老人ホームは総量規制で新規開設が難しいため、需要が高くなっています。

事業承継目的でのM&Aが増加

介護保険制度は2000年の発足から20年余りが過ぎ、当時事業を始めた経営者の多くは引退のタイミングに差し掛かっており、事業承継目的でのM&A・売却が増えています。

発足当時は介護報酬が高かったため異業種からの参入が多く、特に建設業界のM&Aによる参入が目立ちました。しかし、近年は介護報酬が下がっており、複数事業を引きいだ後継者が選択と集中を目的に介護事業を売却するケースもみられます。

介護業界の課題やM&Aを行うメリットについては、以下の動画で弊社アドバイザーがわかりやすく解説しています。ぜひご覧ください。

海外へのM&Aを行う介護サービス企業

介護業界の国内需要は頭打ちというわけではありませんが、将来を見越していち早く中国などへの進出を目指す介護サービス企業もみられます。

海外では、介護サービスがまだ充実していない地域も多く、そのような国で地盤を築くことで事業拡大や売上向上が見込まれます。

介護の事業領域を切り替えるM&A

同じ介護業界でも、在宅サービスと施設サービスとでは必要な経営資源が異なります。また、施設サービスには、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅などがあり、その種類は豊富です。

在宅サービス・施設サービス両方を運営している企業が、どちらかの事業を売却し資源を集中させたり、施設サービスの企業が施設を売却した資金で在宅サービスに進出したりしています。そのような背景により、介護の事業領域を切り替えるM&Aの件数も、今後増えると考えられます

3. 介護業界でM&Aを行うメリット

介護業界でM&Aを行うメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、売り手・買い手双方の立場からみたメリットを解説します。
 

売り手のメリット 買い手のメリット
  • 後継者問題の解決
  • 廃業の回避
  • 従業員の雇用継続
  • 個人保証・担保の解消
  • 売却益の獲得
  • 経営の安定・拡大
  • 弱点サービスの補強(同業者)
  • 人材・拠点の確保(同業者・異業種)
  • エリアシェアの拡大・獲得(同業者・異業種)
  • 業績拡大(同業種)
  • 簡易に新規参入(異業種)

売り手側のメリット

売り手側のメリットとしては主に以下の4つが挙げられます。

後継者問題の解決・廃業回避

国内では後継者不足が問題となっており、廃業の危機にある中小企業も多いです。介護業界も例外ではありませんが、後継者がいない場合でもM&Aを活用することにより事業承継が可能です。

従業員の雇用継続

廃業という選択を取った場合、多くの経営者が気にするのが従業員の雇用についてです。廃業した場合は従業員を解雇しなければなりませんが、M&Aによる事業承継は買い手が新たな経営者(後継者)となって事業が存続する形となり、会社の負債や従業員の雇用もそのまま引き継がれます。
 

個人保証・担保の解消

業種を問わず、中小規模の事業者が金融機関から借り入れを行う場合、経営者が個人保証を負ったり担保を差し入れたりしているケースがほとんどです。経営者にとって個人保証や担保の存在は大きなストレスであり、引退や親族への事業承継時に足かせとなることも少なくありません。

経営者の個人保証や差し入れていた担保が解消されるだけでなく、経営者(株主)は売却益を獲得でき、新たな事業資金や老後の生活資金など自由に使うことが可能です。

経営の安定・拡大

中小規模の事業者は独力では事業拡大が難しいこともあります。経営の安定や拡大を図りたい場合もM&Aは非常に有用です。

大手企業の傘下となった場合、その知名度や資金力によって安定した経営を見込むことができます。グループ会社との協業によってシナジー効果が十分に発揮されれば、業績拡大が図れる可能性も高くなるでしょう。

買い手側のメリット

買い手側のメリットとしては主に以下の4つが挙げられます。

サービスの拡大

同業種あるいは関連性の高い業種とM&Aを行えば、強み・弱みの相互補完やリソースの相互活用によってサービスの拡大を図ることができます。

中小規模の事業者はて自社のリソースだけでは事業拡大が難しいことも多いですが、M&Aを活用することで効率的にサービス拡大を図ることができる点は大きなメリットです。

人材確保

介護業界では、慢性的な人材不足が課題となっています。有資格者や経験のあるスタッフを十分確保できるかは事業運営にも大きくかかわる要素ですが、新規採用だけでは難しいというのが実情です。

M&Aの場合、売り手側の人材も引き継ぐことができるので、買い手にとっては人材不足を一気に解消することもできます。同業種とのM&Aであれば有資格者や実務経験のある人材を確保できるのは非常に大きなメリットです。

エリアシェアの拡大・業績向上

エリアシェアを拡大して業績向上を図れる点もM&Aの大きなメリットです。売り手企業が買い手の未進出エリアで事業展開していれば、時間をかけずにエリアシェアを拡大することができます。

また、売り手が既存エリアにある企業であればシェア拡大だけでなく、業績向上やシナジー効果発揮にも期待できるのもメリットのひとつです。

新規参入

新規事業への参入には時間とコストがかかるうえ、必ずしも成功する保証はなくリスクも伴います。M&Aは新規事業への参入をスムーズにし、リスクを軽減できる有用な手段です。

介護事業は総量規制や許認可の問題があるため、他業種よりも新規参入の難易度が高いですが、M&Aで既存事業を取得することで業界へのスムーズな進出が可能となります。

  • 介護事業のM&A・事業承継

4. 介護施設をM&Aで売却する流れ

ここでは介護業界M&Aの基本的なフローを紹介します。一般的なM&Aは、以下の順番で手続きが行われます。

相談・検討

まずはM&Aに関して専門家へ相談を行いましょう。専門家は豊富な知識をもとにして、相談相手にマッチしたM&A手法の検討します。このときに、会社の強み、財務状況、売却相手先などの希望を聞かれるでしょう。

質問を想定し、情報を資料にまとめたり、相手先の方向性を決めたりしておくのが大切です。具体的には、以下をまとめておきましょう。

  • 譲渡・売却する資産や負債の範囲
  • 譲渡・売却したい事業の売上や利益・財務状況
  • 譲渡・売却したい事業の将来
  • 買い手企業の理想の企業像(業種・規模・エリアなど)
  • 希望譲渡価額
  • 希望譲渡時期

これらを事前にまとめておくことで、M&A仲介会社との相談もスムーズに運びます。M&Aの相談先をどこにするかお困りなら、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、訪問介護の事業譲渡・売却・M&Aに精通したアドバイザーが専任となり、M&Aをフルサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を行っていますので、訪問介護業界のM&Aをご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

電話で無料相談
0120-401-970
WEBから無料相談
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M&A仲介会社などの専門家との契約

業務委託に関して納得したのち専門家と契約を行います。この段階で秘密保持契約、アドバイザリー契約そして自社情報・資料の提出を行います。

秘密保持契約とは、「外部に情報を漏えいしません」という旨を宣言する契約です。M&Aに関する情報漏洩はデメリットになることが多いので忘れずに締結しましょう。秘密保持契約を締結した後に事業主の会社資産などの会社資料を提示し、今後の計画なども併せて具体的な打合せを進めていきます。

アドバイザリーとはM&Aに関する相談やアドバイスを行う業務のことです。アドバイザリー契約締結以降は、仲介会社であれば一般的にクロージングを行うまでサポートが受けることができます。料金体系によっては着手金や月額報酬などが発生しますので事前にチェックしましょう。

M&A戦略の決定・売却先選定

アドバイザーが決定した後にM&A戦略を決め、売却先の選定を行います。売却先選定の際、ノンネームシートに書かれた売却先企業の情報をもとに行います。

ノンネームシートとは、M&A仲介会社から提供される資料で、具体的な企業名は特定できないですが、業種や規模、エリア、収益、買収を希望する理由などが記載されています。この情報を基に売却先候補との条件を照らし合わせ、自社のメリットについて検討します。

買収候補への打診・基本合意書の締結


買収企業の候補がみつかった場合は、相手企業に打診を行います。相手企業が興味を持ってくれたら、相手企業と秘密保持契約の締結です。この段階では、M&A成立に至らない可能性も十分にあり得るため、詳細な情報を開示する前に両社間で秘密保持契約を締結します。

秘密保持契約の締結後、社名や財務情報、事業内容の詳細などを相手企業に公開し交渉が始まります。その後、経営者同士の面談を交えて交渉を繰り返し、条件が大筋で合意したら基本合意書を締結します。基本合意書は、合意内容の確認書という位置付けであるため、法的拘束力はありません。

しかし、この合意書を作ることで認識のずれを減らせます。基本的にはこの内容で契約が成立するものと考えておきましょう。第三者が見てもわかるよう、細かく条件を明記しておく必要があります。

デューデリジェンスの実施

基本合意書の締結後は、買い手企業によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスとは、買い手企業による売り手企業の経営状況や人事などに対する調査のことです。具体的には、以下のような内容を調査されます。

  • 企業の沿革
  • 直近の収益状況
  • 取引先
  • 役員・従業員の人数・年齢・スキル・給与
  • 労働時間
  • 残業手当の支給状況
  • M&A後に削減できるコスト
  • 事業上のトラブル
  • PMI(Post Merger lntegration=経営統合)計画策定のために必要な情報収集

売り手企業は、デューデリジェンスへの協力をしなければなりません。求められた資料を提出したり、調査の立ち会いを行ったりします。デューデリジェンスで問題が発覚すると、​​​​基本合意時よりも譲渡価額を下げられる可能性が高いです。

最終交渉・最終契約書の締結

デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終交渉を行います。何らかの問題がなければ、基本合意書の内容どおりに最終契約書が締結されます。その後、クロージング(契約内容の履行)として、売り手は具体的な譲渡手続きを行い、買い手は対価を支払います。

統合作業

クロージング後、買い手側では経営統合(PMI)作業に移行します。売り手企業の従業員は買い手企業の文化に合わせる形になるため戸惑いや不安も多いです。

新体制に早く従業員がなじめるよう、売り手企業経営者に買い手企業から協力が求められることが多いので、その場合には一定期間、会社にとどまる必要があります。

5. 介護施設のM&A売却相場

大まかなM&A相場

介護施設のM&Aの売却相場は首都圏では3,000万〜1億円ほどです。ただし全てのM&Aでこの金額というわけではなく、利益額や施設の立地によりM&Aの価額は異なります。

しかしながら大まかなM&A相場を計算することは可能です。

  • 介護施設のM&A相場 = 時価純資産額 + 営業利益の3年〜5年分

この計算より正確な売買価額を知る場合には企業価値評価によって予測することが可能です。

企業価値評価の方法

企業価値評価の求め方には大きく以下の3種類があります。

コストアプローチ 貸借対照表の純資産から企業価値を算定します。客観性があり、計算方法も簡易な点が特徴です。
インカムアプローチ 事業計画書などを基に将来の収益力を割り出し、それを組み込み企業価値を算定します。
マーケットアプローチ M&Aの対象会社と類似する企業の市場株価や事例を参照し、企業価値を算定します。客観性が高く、リアルな企業価値を割り出せるのが特徴です。

なお、M&Aでの最終的な売買価額は買い手、売り手双方の交渉で決まります。

6. 介護施設のM&A費用

M&A仲介の手数料には様々な種類があり、依頼する案件会社によって金額や支払いタイミングが異なります。

今回は代表的なものを以下の表にまとめました。

手数料 相場 内容
相談料 0~1万円 M&A仲介の依頼をする前の相談料
着手金 50万~200万円 M&A仲介の依頼をするための手数料
中間金 50万~200万円 M&A基本合意契約を締結したときに発生する手数料
成功報酬 売却価額に左右される M&A成立時の最終契約を締結したときに発生する手数料
リテイナーフィー
(月額報酬)
30万~200万円/月 毎月支払う月額定額手数料
デューデリジェンス費用 0~200万円 企業調査費用
業務実行にかかる実費 実費 出張費や弁護士相談費用など、業務実行に付加して生じる費用

7. 介護業界内の再編M&A事例13選

介護業界で行われた再編M&Aにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、買い手・売り手とも介護関連企業であった業界内再編M&A事例を13件を紹介します。

①ライクとグッドタイムとのM&A

2024年3月、チャーム・ケア・コーポレーション傘下のライクは、グッドタイムが手掛ける有料老人ホーム運営事業を譲受すると発表しました。

チャーム・ケア・コーポレーショングループは、東京・神奈川・兵庫・大阪・奈良・京都に87カ所のを運営しており、ライフは大阪にある4ホームを運営しています。

売り手側のグッドタイムは、大阪府羽曳野市で介護付有料老人ホーム1カ所(今回の譲受対象ホーム)を運営する企業です。当該ホームは、近鉄南大阪線「古市駅」から徒歩7分の好立地にあり、特定施設入居者生活介護の指定も受けています。

現在、チャーム・ケア・コーポレーショングループは、成長戦略の柱のひとつにM&Aを位置付けており、新たなエリアおよびホームの拡大を進めているところです。

グッドタイムが運営するホームは現在定員割れが続いていますが、本M&A後にこれまでライクが行ってきた改善策を取り入れることで運営効率の向上と早期の入居率改善が実現できると判断し譲受に至りました。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公表
取得理由 事業エリアの拡大


参考:株式会社チャーム・ケア・コーポレーション「連結子会社における事業譲受に関するお知らせ 」

②リビングプラットフォームケアとシニアケアとのM&A

2023年12月、リビングプラットフォームは子会社を通じて兵庫県のシニアケアが運営する高齢者グループホーム事業を譲受すると発表しました。

シニアケアは介護事業のほかに、介護人材養成事業・日本語学校事業・人材紹介事業を手掛ける企業であり、今回の譲受対象は兵庫県内の阪神南地域にあるグループホームです。

リビングプラットフォーム子会社のリビングプラットフォームケアは介護事業を手掛けており、神戸市と今回譲受する阪神南地域を重点出店地域と位置付けています。

リビングプラットフォームケアは今回の譲受で同地域へ初進出し、今後は同エリアでのシェア拡大を図る基盤としてドミナント戦略を進めていく予定です。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公表
取得理由 事業シェア拡大

参考:株式会社リビングプラットフォーム「連結子会社における株式譲渡契約締結(完全子会社化)に関するお知らせ 」

③日本生命とニチイホールディングスとのM&A

2023年11月、日本生命は投資ファンドのベインキャピタルが間接保有しているファンドからニチイホールディングスの発行済み株式99.6%を取得すると発表しました。

介護事業最大手のニチイ学館を傘下のもつニチイホールディングスは、1999年から日本生命保険と業務提携を行っています。これまで、介護や子育ての「ライフケア」分野を中心に協業してきました。

今回のM&Aによって既存事業の活性化や持続性および生産性の向上を図り、顧客へ提供する安心をより拡大させ全世代が暮らせる社会の実現を目指すとしています。

なお、本件の買収金額は約2100億円(予定)です。今後、日本生命は関係当局などでの認可・承認手続きを進めるとしています。
 

M&A手法 株式譲渡
取得価額 約2100億円(予定)
取得理由 既存事業の活性化や持続性・生産性の向上


参考:日本生命保険相互会社「株式会社ニチイホールディングスの株式取得に関する合意について」

④ケア21とトチギ介護サービスとのM&A

2023年10、ケア21は東京都文京区のトチギ介護サービスが手掛ける訪問介護事業を譲受すると発表しました。トチギ介護サービスは、文京区および隣接地域で訪問介護事業と居宅介護支援事業を行っています。

今回のM&Aでケア21が取得するのは、同社が手掛ける訪問介護事業所1拠点と居宅介護事業所1拠点です。ケア21の既存介護事業所(千代田区・豊島区・北区・荒川区)とのリソースが相互活用でき、さらに多くの利用者ニーズに対応できると判断して本M&Aに至りました。

今後は、ケア21がこれまで培ってきたノウハウや実績を生かし、さらなるサービスの拡大・拡充を図るとしています。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公表
取得理由 事業エリア拡大・サービスの拡充

参考:株式会社ケア21「有限会社トチギ介護サービスからの事業譲受に関するお知らせ」

⑤揚工舎とヒューマンライフケアとのM&A

 2023年9月、揚工舎はヒューマンライフケアが手掛ける有料老人ホーム事業と小規模多機能型居宅介護事業を一部譲受すると発表しました。

ヒューマンライフケアは介護事業介護教育事業を行っており、埼玉県で有料老人ホーム「鳩ケ谷の郷」および併設する居宅介護「鳩ケ谷の宿」を運営しています。

揚工舎は、介護サービス事業・介護人材紹介業・介護資格の教育事業などを手掛ける企業です。近年は首都圏エリアでの事業拠点拡大をすすめており、今回譲受する施設は埼玉県川口市に位置しているため自社の戦略に合致することからM&Aに至りました。

なお、本M&A後、譲受した「鳩ケ谷の郷」は「ヨウコーキャッスル鳩ケ谷」へ、「鳩ケ谷の宿」は「ヨウコーキャッスル鳩ケ谷ヴィラ」に名称を変更する予定だとしています。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公表
取得理由 事業エリア拡大・事業拠点拡大


参考:株式会社揚工舎「事業の一部譲受に関するお知らせ」

⑥ニチイ学館と有限会社松本のM&A

2023年3月、ニチイ学館は「介護付有料老人ホーム ラウンドコスモス大宮」を譲受すると発表しました。

松本は地域密着型の事業展開を行う企業です。
一方、譲渡対象の施設は広島県の有限会社松本が保有する特定施設入居者生活介護事業所です。

ニチイ学館はトータル介護サービスを全国で展開しております。具体的には医療・介護・保育サービスの事業を手掛けています。

今回のM&Aによって地域ニーズへの対応ができ、さらにサービス提供体制強化を図るとしています。

2023年5月1日からは名称変更が予定されており、新しい名称は「(仮称)ニチイケアセンター広島西 特定施設入居者生活介護」です。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公表
取得理由 サービス提供態勢の強化

参考:株式会社ニチイ学館「事業譲受に関するお知らせ」

⑦ケア21とソフトケア宮城のM&A

2023年1月、ケア21は、宮城県のソフトケア宮城が運営する訪問介護事業の譲受を発表しました。

ケア21は、首都圏・近畿圏・など複数エリアで介護付有料老人ホーム・訪問介護支援などを手掛ける事業展開している会社です。今回譲り受ける宮城県仙台市は同社の飛び地エリアですが、譲り受ける施設が位置しているのは事業所がを多く展開しているため、近隣事業所とスムーズな連携ができると判断し本M&Aに至りました。

今後は、ケア21のノウハウと実績を活かし、さらなるサービスの拡充とシナジー発揮を見込むとしています。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公表
取得理由 事業規模拡大および提供サービスの充実

参考:株式会社ケア21「ソフトケア宮城株式会社からの事業譲受に関するお知らせ」

⑧ニチイ学館と西日本ヘルスケアのM&A

2021年7月、ニチイ学館は西日本ヘルスケアの株式取得し子会社化しました。

ニチイ学館は、医療関連事業・介護事業・保育事業を中心としてサービスの展開している企業です。多様な事業を展開しているのがニチイ学館の特徴です。

一方、西日本ヘルスケアは、2021年4月に設立された企業で、資本金は1,000万円、介護事業を展開しています。もともと、西日本ヘルスケアは、LeTechで介護事業を展開する事業会社でした。

LeTechの完全子会社として事業を展開する予定でしたが、ニチイ学館へと事業譲渡されました。 今回の事業譲渡を受けて、西日本ヘルスケアへと社名が変更されています。

西日本ヘルスケアは、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームの設置、運営、管理、介護保険法に基づく介護予防支援事業、居宅介護保険事業を行っています。

これらのノウハウを福祉、介護、医療に関する企画、開発、調査、立案、運営、コンサルティングに生かし、成長につなげる見込みです。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公表
取得理由 安定的なサービスの提供と中長期的な成長

参考:株式会社ニチイ学館「株式譲渡契約締結(完全子会社化)に関するお知らせ」

⑨グッドタイムリビングと舞浜倶楽部のM&A

2021年4月、大和証券のグループ企業であるグッドタイムリビングは、介護付有料老人ホームなどを運営している舞浜倶楽部の買収に成功しました。

昨今の介護業界は、高齢者住宅の供給が増加する一方で、働き手が一層減少している現状があります。将来、入居者と家族にとってより良い介護と生活のサービスを提供し続けるためには、新たなシステムや設備への投資が必要です。

そこでグッドタイムリビングが目を付けたのが舞浜倶楽部です。グッドタイムリビングは、2013年から進めてきたICT機器の導入や多職種の人材採用による業務効率化などによって培ってきた介護職の専門性を、舞浜倶楽部の安定経営に生かせると判断して、今回の事業引受に至りました。

今後は、両企業におけるさらなるサービスの充実を目指します。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公開
取得理由 サービスの向上

参考:グッドタイムリビング株式会社「株式会社舞浜倶楽部の株式取得に関するお知らせ」

⑩フレアスとスカイハートのM&A

2021年3月、フレアスは千葉県千葉市を中心に、スカイハートの株式を取得して100%子会社化するのに成功しました。

フレアスは、在宅マッサージサービスや訪問看護、介護事業などを展開しています。
スカイハートは、居宅介護支援事業や訪問介護事業を行う企業です。当時、売上高2,810万円、営業利益△94万7,000円、純資産84万5,000円の財政状態・経営成績でした。

この事業引受によってフレアスは、スカイハートの取引先に対し在宅マッサージとの複合サービスを開始しています。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 550万円
取得理由 千葉県における居宅介護支援事業と訪問介護事業への参入

参考:株式会社フレアス「子会社の異動を伴う株式取得に関するお知らせ」

⑪SOMPOケアと東京建物シニアライフサポートのM&A

2020年12月、SOMPOケアは東京建物シニアライフサポートの株式を取得して子会社化しました。

SOMPOケアは、この取得によって、サービスラインアップの拡充による介護オペレーターとしての成長や地域における介護、看護、医療の連携強化ができるとしています。持続可能なサービス提供体制の確保を図ります。

老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、在宅サービスなど幅広く提供している東京建物シニアライフサポートは、東京都・神奈川県・埼玉県で、19施設を運営していました。

SOMPOケアが戦略的に重要視している地域かつ、多くの施設が好立地で入居率も高いためM&Aが決まりました。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公開
取得理由 介護 サービス品質の向上や組織運営の効率化

参考:SOMPOケア株式会社「東京建物シニアライフサポート株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑫ユニマットリタイアメント・コミュニティとアメニティーライフのM&A

2020年12月、デイサービスやショートステイ、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの運営を行っているユニマットリタイアメント・コミュニティは、アメニティーライフの株式を全株取得しました。

今回、買収したアメニティーライフは、近隣の協力医療機関と連携を図りながら、緑豊かな郊外で高齢者が健康を維持し快適なシニアライフを実現する施設として「アメニティーライフ八王子」を運営しています。介護の質を高く保つため職場環境の整備や介護人材の育成にも尽力しています。

ユニマットリタイアメントは、職場環境づくりや介護人材の育成におけるノウハウの共有を含めたシナジー効果が期待できるとして、今回の買収に踏み切りました。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 非公表
取得理由 サービスの向上

参考:株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティ「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ 」

⑬ケアサービスと広域社会福祉会とのM&A

2020年11月、ケアサービスは広域社会福祉会から、事業を譲受しました。

ケアサービスは東京23区を中心として訪問介護事業や福祉用具貸与・販売などを行っている企業です。
広域社会福祉会は、蒲田事業所と西蒲田事業所を有しており、該当地域における市場シェア拡大が目的のM&Aとなっています。
 

M&A手法 事業譲渡
取得価額 500万円
取得理由 東京都大田区における事業強化

参考:株式会社ケアサービス「事業譲受に関するお知らせ」

8. 介護業界による異業種へのM&A事例5選

次は、介護業界の企業と異業種の企業による協業事例を5つ紹介します。異業種の技術を介護業界で活用しようと、大きな資本力を持つ企業が介護業界へ参入しています。

①ベネッセHDとプロトメディカルケアのM&A

2021年5月、ベネッセホールディングスがプロトメディカルケアを買収しました。ベネッセHDは、その傘下に介護事業を営む介護大手のベネッセスタイルケアを有し、今回の買収によってさらに介護事業を伸ばす戦略です。

プロメディカルケアは、介護サービス事業者のガイドブックである「ハートページ」を発行しており、多くの自治体介護保険窓口に同書が設置されるなど、高い知名度があります。

介護・医療の求人サイト「介護求人ナビ」、高齢者施設検索サイト「オアシスナビ」の運営も手掛けています。

プロメディカルケアは、情報誌・WEBサイトの広告掲載料以外に、福祉用具貸与・販売事業の規模も拡大させ、売上の半分に迫るまで成長していました。

今回の買収を通じて、ベネッセHDは介護事業で利用者の視点に立ったサービスの運営を追求するとともに、新規の介護施設やサービス展開エリアの拡大、人材サービスの拡大を図ります。
 

M&A手法 株式譲渡
譲渡価額 42億5,000万円
取得理由 介護事業の強化

参考:株式会社ベネッセホールディングス「 株式会社プロトメディカルケアの株式取得に関する 株式譲渡契約締結のお知らせ 」

②SOMPOホールディングスとABEJAとの資本業務提携

2021年4月、産業界のデジタルトランスフォーメーションをAIと人の協調により実現するABEJAは、介護業界大手であるSOMPOホールディングスと資本業務提携を結びました。

ABEJAは、2020年からSOMPOホールディングスの介護・ヘルスケア事業、国内損害保険事業領域において、データ解析や機械学習を活用した予測モデルの構築、共同事業開発などを担ってきた経緯があります。

SOMPOホールディングスが取り組むDX人材の育成や採用などでも協業を進めており、今後もその方向性で協力関係を築きたいSOMPOホールディングスが、資本業務提携を決めた形で合意となりました。
 

M&A手法 株式譲渡(一部)
出資額 非公表
取得理由 DXの推進

参考:SOMPOホールディングス株式会社「ABEJA と資本業務提携契約を締結 ~「安心・安全・健康のリアルデータプラットフォーム」の早期実現に向けた出資~ 」

③揚工舎とケア・フレンドのM&A

揚工舎は、介護サービス事業や介護資格取得のための教育事業や介護人材の紹介を行っている企業です。福祉用具貸与・販売事業を手掛けるケア・フレンドを2021年3月に同社の株式を100%引き受けて買収しました。

これにより、揚工舎におけるさらなるサービスの充実を図っています。
 

M&A手法 株式譲渡
譲渡価額 非公表
取得理由 事業の多角化

参考:株式会社揚工舎「有限会社ケア・フレンドの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

④三菱電機がZ-Worksへ出資

2020年11月、電機メーカー大手の三菱電機は、高齢者向けヘルステック事業を加速させるため、独自のセンサー技術とIoTプラットフォームで介護分野の課題解決を行っているスタートアップ企業のZ-Worksに出資しました。

この出資によって、Z-Worksは新製品や新技術の開発を加速させます。2015年に設立された比較的若い企業ですが、大型の資金調達を成功させました。

三菱電機は、センシングデバイスの共同開発やクラウド上でのデータ連携、高齢者向け介護支援サービスの販売協力などを図ります。
 

M&A手法 株式取得(一部)
出資額 非公表
取得理由 事業活動の強化

参考:三菱電機株式会社「Z-Works 社への出資のお知らせ 」

⑤チャーム・ケア・コーポレーションとグッドパートナーズのM&A

2020年5月、チャーム・ケア・コーポレーションはグッドパートナーズを子会社化しました。チャーム・ケア・コーポレーションは、2005年に介護付有料老人ホームを開設し、近畿圏・首都圏で59ホーム、4,002室を運営しています。

グッドパートナーズは、首都圏にて介護スタッフの人材派遣や人材紹介・訪問看護事業・特定技能の外国人人材紹介などを行っている企業です。

今回の株式取得によって、相互に協力関係を構築し、さらなる事業の展開を図ります。
 

M&A手法 株式取得
譲渡価額 非公表
取得理由 事業の強化

参考:株式会社チャーム・ケア・コーポレーション「株式会社グッドパートナーズの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

9. 異業種による介護業界へのM&A事例3選

続いて、主に異業種の買い手が介護業界に新規参入するM&A事例を紹介します。こちらの件数は3件です。

異業種からのM&A事例は業界内再編に比べると件数は少ないですが、それでも他の業界に比べると活発で、介護事業の重要性を認識している企業の多さがうかがえます。

①ALSOKによる関西電力の介護子会社2社の取得

2022年6月、綜合警備保障(ALSOK)は、関西電力の子会社であり介護事業を営むかんでんジョイライフ及びかんでんライフサポートを完全子会社化すると発表しました。

かんでんジョイライフとかんでんライフサポートは、ともに京都・奈良・大阪・兵庫で介護付有料老人ホームなどを運営しています。

関西電力は、介護事業の成長にはさらなる設備投資が必要となるがグループの現状では厳しいと判断し、事業の選択と集中のため2社を売却を決定しました。

アルソックは2012年から介護事業へ進出しており、今回の子会社化は警備の周辺エリアとなる介護事業を強化することを目的としています。
 

M&A手法 株式譲渡
譲渡価額 非公表
取得理由 事業強化

参考:関西電力株式会社「介護事業会社2社の株式をALSOKに譲渡 ~かんでんジョイライフ・かんでんライフサポート~」

②ぐんま地域共創パートナーズによるエフビー介護サービスへの出資

2021年3月、群馬銀行とぐんま地域共創パートナーズは、ぐんま地域共創パートナーズが運営する2つのファンドを通じて、エフビー介護サービスに出資しました。

エフビー介護サービスは、長野県を中心に群馬・埼玉・栃木・新潟の各県で福祉用具レンタル事業や介護事業を展開しています。堅調な業績で徐々に売上規模を拡大してきました。

エフビー介護サービスは、今回、増資を行って財務・経営基盤の強化を図り、地域に密着した介護サービスをワンストップで提供できる体制のさらなる充実を目指しています。
 

M&A手法 出資
出資額 13.6億円
出資理由 投資

参考:地域経済活性化支援機構「【ぐんま医工連携活性化ファンド】 エフビー介護サービス株式会社への出資について 」

③出光興産とQLCプロデュースのM&A

2021年1月、出光興産はQLCプロデュースの株式を取得しました。

QLCプロデュースは、介護事業を包括的に連携・サポートする仕組みづくりに取り組んでおり、「Let's倶楽部」「ブリッジライフ」といったブランド名でデイサービスを164店舗展開する企業です。

今回の株式取得によって、出光興産は介護ビジネスに参入しました。

QLCプロデュースが持つ介護事業に関する各種ノウハウを融合し、自立支援型デイサービスの直営やフランチャイズによる店舗展開を図り、新たな介護保険適用事業への参入や介護保険適用外における高齢者向けサービスの開発を目指しています。
 

M&A手法 株式取得
譲渡価額 非公表
取得理由 新規事業への参入

参考:出光興産株式会社「QLCプロデュース株式会社の株式譲渡契約を締結」

10. 介護関連業界のM&A事例4選

ここでは、介護関連業界のM&Aについて4つの事例を紹介します。介護関連業界でも、近年、盛んにM&Aが行われ、投資ファンドから多額の資金出資をうけた事例も少なくありません。

①農林中金イノベーションファンドなどによるドクターメイトへの出資

2021年7月、農林中金は、農林中金イノベーションファンドを通じて、介護施設向けに医療相談・夜間オンコール代行を提供するドクターメイトへ出資しました。出資額は1.8億円です(この出資額には、みずほ銀行と商工中金からのデットファイナンスが含まれています)。

ドクターメイトは、医師による遠隔アドバイスや相談対応サービスを提供している企業です。介護施設では、救急車を呼ぶ判断に悩む局面もあります。その場合も医師のアドバイスを受けられるうえ、救急搬送先の医師へ情報の連携などができるでしょう。

超高齢社会を迎え、こうしたサービスは介護事業を充実させるうえで成長の見込みがあると判断し、農林中金は出資に至りました。
 

M&A手法 出資
出資額 1.8億円
出資理由 財務基盤の安定とサービスの充実

参考:農林中央金庫「農林中金イノベーションファンドを通じたドクターメイト株式会社への出資について」

②サイバーエージェント・キャピタルによるメダへの出資

2021年6月、介護書類をクラウド管理するDXプラットフォームを開発するメダが、サイバーエージェント・キャピタルを中心とするファンドから資金調達に成功しました。

テック業界からはサイバーエージェントが、介護業界からは社会福祉法人である一燈会がメダへ出資しています。出資額は非公表です。
 

M&A手法 出資
出資額 非公表
出資理由 新製品の開発

参考:株式会社サイバーエージェント・キャピタル「介護書類クラウド管理、メダ株式会社に出資」

③栗原医療器械店とセラピのM&A

北関東および首都圏エリアを中心に営業展開をしている医療機器ディーラーの栗原医療器械店は、2021年1月、新潟県で介護・福祉用具や医療器具の卸売事業およびレンタル事業を展開するセラピを買収(事業承継)しました。

栗原医療器械店は、今回の買収によって、ヘルスケア事業のエリア拡大による市場対応力の強化および高収益体質化などの統合シナジーが見込めるとしています。
 

M&A手法 株式譲渡(事業承継)
譲渡価額 非公表
取得理由 売上規模の拡大

参考:株式会社栗原医療器械店「株式会社セラピからの事業承継に関するお知らせ」

④ブラッククローキャピタルほか2社によるLINKのM&A

2020年10月、ブラッククローキャピタルは、マネックスベンチャーズ、三井住友海上キャピタルとともに、保険外介護支援サービス「イチロウ」を提供するLINKへ出資しました。出資額は公表されていません。

LINKは介護の利用者と提供者である介護士の理解を強みとして、介護に新しい選択肢を作るべく事業に取り組んでおり、今後における事業の成長を見込んで、ブラッククローキャピタルを中心に出資が行われています。
 

M&A手法 出資
出資額 非公表
出資理由 投資

参考:BlackCrow Capital合同会社「ブラッククローキャピタル、仕事と介護の両立支援プログラム「LCAT」を提供する株式会社リクシスに出資」

11. 介護業界のM&A失敗事例と要因2選

介護業界のM&A成功事例は数多くありますが、失敗事例もあります。ここでは、M&Aの失敗事例と要因を解説します。

①譲渡価格で折り合いが付かなかった事例

譲渡価格で折り合いが付かなかった事例を紹介します。

訪問介護・訪問看護事業所を運営していたD社は、開業から5年がたち、介護事業の大きな課題である人材不足の点で、将来的な経営に不安を感じていました。B社からM&Aによる事業譲渡を提案され、譲渡を決定しています。

D社とB社はスムーズにM&Aの交渉を進め、事業譲渡の条件が決まりつつありましたが、最終的に譲渡価格で折り合いが付かず、断念せざるを得なくなりました。その後、経営状況が悪化し、廃業となっています。

②買収後に問題が発覚した事例

買収後に問題が発覚した事例です。

C社はデイサービスをはじめとした介護事業所を県内で複数展開しています。隣接する県でも同様にデイサービスを運営するA社から事業譲渡を提案され、譲受を決定しました。

C社とA社はM&Aの交渉を進め、無事に事業譲渡が成立しましたが、買収後、売り手に属する従業員が買い手の雇用条件や運営方針に賛同できず、優秀な従業員が次々と退職する事態となりました。

結果として、買収した介護事業所の運営が難しくなり、C社は休止しています。

12. 介護業界のM&A案件一覧

本章では、弊社M&A総合研究所が取り扱っている介護業界のM&A案件を紹介します。

【関西/地域密着】 要介護3~5を対象とした特別養護老人ホーム

特別養護老人ホーム、デイサービス事業、短期入所事業、居宅介護支援事業、障害福祉サービス事業、診療所等を手がけています。
 

エリア 近畿
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望額 1,000万円〜5,000万円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

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【業歴20年以上】東北地方の介護福祉施設運営

福祉施設の運営、デイサービス施設の運営を手がけています。医療機関・ケアマネジャーによる紹介、口コミ等で利用者を確保しているのが強みです。
 

エリア 東北
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望額 1億円〜2.5億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)、戦略の見直し

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13. 介護業界のM&Aの注意点

介護業界の業績は介護報酬改正の影響を大きく受けるため、M&Aを行う際は注意が必要です。そのほか、手続きなどでも意識すべき点があるので、事前に把握しておくようにしましょう。

介護報酬の改正

介護報酬は3年ごとに改正があり、その内容によって介護業界の業績も左右されます。そのため、M&Aを実施する企業は介護報酬改正のタイミングを見計らうケースが多いです。

また、老人ホームなどはそれぞれ入居定員数があります。つまり、おのずと売上げ上限が決まってしまうことになり、利益を確保するためにはコスト削減や業務の効率化が必要です。介護業界では、このような問題を解決手段としてもM&Aが活用されています。

許認可・行政への届け出

M&A実施時の注意点としては、事業譲渡を活用する場合は許認可や行政への届け出が必要になることです。M&A後にスムーズな事業運営ができるよう、早めの準備しておくことが望ましいでしょう。

補助金の返済要求

売り手は、介護施設の建設時や設備(主にスプリンクラー)増設などの際、行政の補助を受けていることもあります。介護業界のM&Aでは、過去に受け取った補助金の取り扱いに注意が必要です。

注意が必要となるのは事業譲渡を用いた場合で、過去に受けた補助金の返済を行政から要求される可能性があります。全額または一部の返済、一定要件を満たせば返済免除など、その対応は行政によってまちまちです。

そのため、介護業界の事業譲渡を行う場合は、補助金の取り扱いについて管轄行政へ事前に確認しておく必要があります。

賃貸借契約の再契約

介護業界のM&Aで株式譲渡を用いる場合は権利義務がそのまま買い手へ引き継がれるため、施設の土地・建物に関する賃貸借契約を改めて結ぶ必要はありません。

しかし、事業譲渡を用いる場合は個別承継となるため、買い手側は注意が必要です。売り手が使用していた土地・建物について賃貸借契約を結んでいた場合、事業譲渡によって買い手側へ自動的に引き継がれることはありません。

買い手側は土地や不動産の持ち主と新たに契約を結び直すかたちとなりますが、その際に互いの条件が折り合わず合意に至れなかったり、賃料や敷金が増額されたりする可能性も生じ得ます。

資格保有者の継続雇用

従業員との雇用契約も、賃貸借契約と同様、事業譲渡の場合は結びなおしが必要です。賃金体系は各社異なるため、従業員に不利益が生じないよう売り手と買い手は事前に調整を行っておく必要があります。

また、M&Aの実施は少なからず従業員に不安を与えてしまうため、雇用が継続されることや処遇が守られることを丁寧に説明することも大切です。

14. 介護業界のM&Aで売却を成功させるポイント

介護業界ではM&Aが他の業界と比べて数多く行われていますが、ここからは会社売却や事業売却を成功させるポイントを説明します。

事業の状況を正確に認識する

M&Aを実行する前に、事業の状態をできるだけ正確に把握しなければなりません。事前に状況を把握しなければ、せっかくM&Aを行ってもお互いの良さを生かせず、M&Aが失敗に終わるケースが少なくありません。

施設入居者の属性を考慮する

施設入居者の属性によって、必要となる介護サービスは異なります。認知症の度合いは入居者によって異なり、必要なサービスも異なるでしょう。事前に施設入居者の属性を考慮して、会社や事業の買収先を決定する必要があります。

建物の所有・メンテナンスを確認する

介護事業では介護士などの人的資源も重要ですが、装置産業としての一面を持ち合わせていることも忘れてはなりません。

介護事業者がどのような建物を所有し、メンテナンスにどれだけの費用がかかるのかを理解せずに、会社や事業を取得しても意味がありません。それによって、今後の成長度合いやどれくらいの投資が必要なのかがわかります

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早い段階で相談先をみつける

M&Aは多くの手続きが必要となるため、通常業務をこなしながら自社だけで進めていくのは難しいケースが多いでしょう。業務への影響を最小限にとどめつつ、納得のいくM&A実現を目指すためには早い段階で相談先をみつけることがポイントです。

早い段階から準備を進めておけば、タイミングを逃さずM&Aを行うことができるうえ、自社の磨き上げに時間を割くこともできます。

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15. 介護業界のM&Aのまとめ

介護業界のM&Aは、業界内再編だけでなく異業種からの参入も多いです。将来的にも、M&A件数は増えていくと予想されます。海外展開や事業領域の切り替えなども、今後の重要ポイントといえるでしょう。

16. 介護事業業界の成約事例一覧

17. 介護事業業界のM&A案件一覧

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