会社分割の際の債権者保護手続きの流れを解説!省略方法は?

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

会社分割などの組織再編を行う際は、債権者保護が必要です。本記事では、会社分割の際の債権者保護手続きについて、手続きの流れや手続きの注意点などを解説します。また、会社分割の債権者保護手続きを省略できるケースについても解説します。

目次

  1. 会社分割とは
  2. 債権者保護手続とは
  3. 会社分割の基本的な流れ
  4. 会社分割の際の債権者保護手続きの流れ
  5. 会社分割の際の債権者保護手続きの期間
  6. 会社分割の際の債権者保護手続きは省略できるか?
  7. 会社分割の際の債権者保護手続きの効果
  8. 会社分割の相談はM&A仲介会社へ
  9. まとめ
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1. 会社分割とは

会社分割とは

会社分割とは、事業の権利・義務などを他の会社に包括的に引き継ぐ、組織再編手法を指します。

事業を引き渡す側の会社を分割会社、事業を引き継ぐ側の会社を承継会社と呼びます。また、会社分割は分割方法によって、吸収分割と新設分割に分けられます。

吸収分割と新設分割

会社分割の中でも、すでに存在している会社に事業を分割する場合を吸収分割、新たに設立した会社に事業を分割する場合を新設分割と言います。

吸収分割は、分割会社にとってはコア事業に集中できるメリットがあり、承継会社にとっては必要な事業だけを取得できるメリットがあります。

一方の新設分割は、業績の良い事業や将来性の高い事業を子会社として分離し、事業に集中させる際によく用いられます。

【関連】会社分割(吸収分割・新設分割)とは?わかりやすく解説!

2. 債権者保護手続とは

債権者保護手続とは

会社分割を行うことで債権者に不利益が生じる可能性のある場合、当事会社は債権者保護を行う必要があります。これを債権者保護手続き、または債権者異議手続きと呼びます。

ここでいう債権者とは、例えば融資してもらっている銀行や、まだ支払いが済んでいない取引先などが該当します。

債権者保護手続きが持つ意味

会社分割では事業を包括的に承継するため、債権者から個別に同意を得る必要はありません。

しかし、会社分割によって会社の資産や負債が変動した場合、債権者に返済できなくなる恐れがあります。

そのような事態を防ぐため、会社分割を行う会社は自社の債権者に対して、債権者保護手続き・債権者異議手続きを行うことが法令で定められています。

債権者保護手続きを行う場面

債権者保護手続きが必要となる場面は手法によって違います。ここでは、以下3つの手法について、債権者保護手続きを行う場面を解説していきます。

  1. 会社分割
  2. 合併
  3. 株式交換・移転

①会社分割

会社分割は、分割会社から承継会社へ事業を引き継ぐ手法ですが、引き継ぐ事業に負債がある場合は債務の支払い元も分割会社から承継会社へ移ります。

支払い元が変わる場合は債権者保護手続きが必要となるので、分割会社は債権者保護手続きを行います。

また、承継会社は事業を引き継いだことで負債が増えるため、承継会社も債権者保護手続きが必要になります。

②合併

合併は、2つ以上の法人を1つの法人に統合する手法です。合併を行う相手企業に負債がある場合、合併によって統合された会社にも負債が生じることになります。

そのため、合併によって負債が増えることになる企業は、債権者保護手続きが必要になります。

③株式交換・移転

株式交換とは、相手企業の全株式と自社の株式等を交換することで、相手企業を完全子会社化する手法です。

また株式移転とは、2つ以上の企業が新設会社にすべての株式を移転することにより、完全親会社・完全子会社の関係を作る手法です。

株式交換の場合は、親会社となる企業が子会社となる企業に対して、株式以外の資産を対価とする場合には債権者保護手続きが必要です。

また、子会社となる企業から親会社となる企業に新株予約権付社債が引き継がれる場合も、債権者保護手続きが必要です。

株式移転の場合は、子会社となる企業から親会社となる新設会社へ新株予約権付社債が引き継がれる場合に、債権者保護手続きが必要です。

3. 会社分割の基本的な流れ

会社分割の基本的な流れ

会社分割を行う際は、事前に基本的な流れを把握しておくことが大切です。会社分割の手続きは、以下の流れで進みます。

吸収分割の場合

分割会社 承継会社
基本合意書の締結 基本合意書の締結
取締役会の承認 取締役会の承認
吸収分割契約締結 吸収分割契約締結
事前開示書類の備置 事前開示書類の備置
債権者保護手続き 債権者保護手続き
株主総会招集通知・反対株主手続き 株主総会招集通知・反対株主手続き
株主総会決議 株主総会決議
株式買取請求 株式買取請求
効力発生日 効力発生日
登記手続き・事後開示書類備置 登記手続き・事後開示書類備置


新設分割の場合
分割会社 新設会社
取締役会の承認  
新設分割計画書の作成  
事前開示書類の備置  
債権者保護手続き  
株主総会招集通知・反対株主手続き  
株主総会決議  
株式買取請求  
効力発生日・変更登記 効力発生日・設立登記
事後開示書類備置 事後開示書類備置

①基本合意書の締結

会社分割では、本契約の前に仮契約となる基本合意書を締結します。

吸収分割の場合、分割会社と承継会社で基本合意書を締結します。新設分割の場合、分割会社が2社以上の場合は基本合意書を締結します。

また、分割会社が1社の場合は合意相手が存在しないので、基本合意は行いません。

②取締役会の承認

会社分割では、まず取締役会で承認を得なければなりません。

吸収分割の場合、分割会社と承継会社は取締役会で会社分割の承認を得る必要があります。新設分割の場合、分割会社は取締役会で承認を得ます。

③会社分割の計画書作成

吸収分割の場合、分割会社と承継会社は会社分割契約書を締結します。新設分割の場合、分割会社は会社分割計画書を作成し、分割会社が2社以上の場合は契約を締結します。

契約書には以下の事項などを記載します。

吸収分割の記載例

  • 分割会社と承継会社の社名と所在地
  • 吸収分割の場合
  • 吸収分割する事業・資産内容など
  • 吸収分割の対価
  • 効力発生日

新設分割の記載例
  • 新設会社の社名・所在地・主な事業など
  • 新設会社の定款
  • 就任する役員
  • 分割会社から新設会社に引き継ぐ事業内容など
  • 新設会社から分割会社への対価など

④会社分割に関する書面の備置

会社分割では一定の期間、会社分割に関する事項を記載した書類を本店に備置し、閲覧可能な状態にしておくことが法令で定められています。

吸収分割の場合は分割会社と承継会社の本店に備置し、新設分割の場合は分割会社の本店に備置します。事前開示書類は会社分割の効力が発生した日から6ヶ月間備置しておきます。

会社分割の備置書類

  • 会社分割の内容
  • 対価の相当性について
  • 計算書類

⑤債権者保護手続き

会社分割の際、債権者に不利益が生じる可能性がある場合は、会社分割の当事会社は債権者保護手続きを行います。

当事会社は、会社分割を行うことと、該当する債権者は異議申立を行う権利があることを官報公告に掲載します。また、該当する債権者に対して個別通知も行うことが法令で定められています。

⑥株式総会の承認決議

吸収分割の場合、分割会社と承継会社は株主総会の決議が必要です。また、新設分割の場合、分割会社は株主総会の決議が必要です。

株主総会では特別決議による承認が必要なので、議決権を持つ株主が半数以上参加し、3分の2以上の賛成を得る必要があります。

ただし、簡易会社分割や略式会社分割に該当する場合は、株主総会を省略することができます。

簡易手続き分割とは

分割会社が分割する事業の資産額が、分割会社の総資産額の5分の1以下である場合、その分割会社は株主総会を省略できます。

また、承継会社が分割会社に対価として交付する資産額が、承継会社の資産額の5分の1以下の場合、その承継会社は株主総会を省略できます。

略式手続分割とは

吸収分割において、分割会社と承継会社のどちらかが相手企業の議決権を90%以上持つ親会社の場合、子会社側は株主総会を省略できます。

ただし、承継会社側が子会社で非公開会社の場合、親会社に対価として譲渡制限付株式を交付する際は株主総会を省略できません。

新設分割の場合は略式手続きを行うことができないので、株主総会を省略することはできません。

⑦株式買取請求

会社分割に反対の株主は、会社に対して適正な価格で保有株式の買取を請求できます。

会社分割を行う企業は、あらかじめ株主に対し、会社分割に反対の場合は株式買取請求を行使できる旨を通知しておかなければなりません。

また反対株主は、株主総会の前に会社分割に反対である意思表明をし、株主総会の決議で反対することで、株式買取請求を行うことができます。

なお、株主総会が省略された場合でも、株式買取請求を行うことは可能です。

⑧会社分割

吸収分割の場合はあらかじめ定めた効力発生日を迎えると、会社分割手続きが完了します。新設分割の場合は、新設会社の設立登記がされた時点で会社分割の効力が発生します。

会社分割の効力発生以降6ヶ月間、当事会社は事後開示書類を本店に備置することが法令で定められています。

⑨登記変更

吸収分割の場合、分割会社と承継会社は効力発生日から2週間以内に、変更登記を同時に行います。

また新設分割の場合、分割会社と新設会社は変更登記と設立登記を同時に行います。

【関連】会社分割のメリット・デメリットを詳しく解説!

4. 会社分割の際の債権者保護手続きの流れ

会社分割の際の債権者保護手続きの流れ

会社分割の際の債権者保護手続きは以下の流れで行います。

  1. 官報に会社分割する旨を公告・知れたる債権者への個別催告
  2. 異議の申立を受け付ける

①官報に会社分割する旨を公告・知れたる債権者への個別催告

会社分割の当事会社は、官報公告と個別通知によって、会社分割を行う旨と異議申立てを受け付ける旨を知らせます。

官報に公告する内容

官報公告には、以下の事項を記載します。

  • 会社分割を行う旨
  • 債権者から異議申立てを受け付ける旨
  • 資本金と負債の変動額
  • 計算書類
  • 当事会社の社名と所在地

知れたる債権者とは

知れたる債権者とは、会社分割によって不利益を被る可能性のある債権者を指します。

例えば、分割会社が分割する事業に関わる債権を保有していて、会社分割によって債務者が分割会社から承継会社に変わるような場合は、知れたる債権者に該当します。

官報への公告は省略できる?

会社分割の当事会社は官報公告と個別通知によって、該当する債権者に知らせることが原則定められています。

ただし、定款で日刊の新聞上や電子公告によって公告を行うと定めている場合は、個別通知を省略することができます。

公告方法を官報公告と定めている場合は、個別通知の省略はできません。つまり、個別通知は省略できますが、官報公告だけを省略することはできません。

②異議の申立を受け付ける

会社分割の当事会社は、異議申立期間内に債権者からの異議申立を受け付けます。

債権者から異議申立が無かった場合、当事会社は債権者の賛同を得られたものとして会社分割を進めることができます。

債権者から異議申立があった場合は、債権者に対して支払いを行います。

【関連】会社分割における純資産や資本金の引継ぎ方法を解説!

5. 会社分割の際の債権者保護手続きの期間

会社分割の際の債権者保護手続きの期間

会社分割の当事会社は、債権者に1ヶ月以上の異議申立期間を作らなければなりません。そのため、債権者への公告・通知は1ヶ月以上前に行う必要があります。

なお、1ヶ月に該当するのは、公告掲載日の翌日から会社分割の効力発生日前日までなので注意が必要です。また、官報公告と個別通知の準備は時間がかかります。

特に官報公告は、申し込みから実際に掲載されるまで時間がかかるので、余裕を持って続きを行わなければなりません。

6. 会社分割の際の債権者保護手続きは省略できるか?

会社分割の際の債権者保護手続きは省略できるか?

会社分割の際、必ず債権者保護手続きが必要なわけではなく、債権者保護手続きを省略できる場合と省略できない場合があります。

債権者保護手続きが省略できる場合

債権者保護手続きが省略できるのは、分割する事業に負債が含まれていない場合です。

また、分割事業に負債が含まれている場合でも、会社分割後も債権者が分割会社に支払いを請求できる場合は、債権者保護手続きを省略できます。

例えば、承継した債務に対して分割会社が連帯保証している場合、債権者は分割後も分割会社に請求できるので債権者保護手続きを省略できます。

債権者保護手続きが省略できない場合

負債の移動がない場合でも、承継会社は債権者保護手続きが必要です。

承継会社は会社分割の対価を分割会社に渡すことにより、債権者への支払い能力が落ちる可能性があります。そのため、承継会社は債権者保護手続きを行います。

7. 会社分割の際の債権者保護手続きの効果

会社分割の際の債権者保護手続きの効果

会社分割の際は、以下の点に注意しなければ、債権者保護手続きの効果が得られません。

  1. 債権者保護手続きの不備
  2. 個別催告のし忘れ
  3. 異議を申述していない債権者
  4. 登記する際の注意

①債権者保護手続きの不備

債権者保護手続きに不備があるまま期限を迎えると、会社分割の手続き自体が認められなくなってしまいます。

会社分割手続きのやり直しは大きな負担となるので、よく確認しながら行うことが必要です。

②個別催告のし忘れ

債権者保護に該当する債権者に個別催告をしていなかった場合、債権者は当事会社に対して裁判を起こし、債務の支払いを請求することができます。

故意に債権者保護手続きを行わなかったなど、悪質とみなされた場合には会社分割自体の効力が失われるので注意が必要です。

③異議を申述していない債権者

期限内に異議申立をしなかった場合、その債権者は会社分割を承認したものとみなされます。

当事会社側に何かしらの瑕疵があった場合でなければ、期限が過ぎた後に異議を申し立てても効力はないので、期限内に異議申立を行わなければなりません。

④登記する際の注意

債権者保護手続きは、会社分割の効力発生日前日までに済ませなければなりません。また、登記の際には債権者保護手続きを行った証明となる書類の提出が必要です。

これらを済ませなければ会社分割は無効となるので、登記の際も注意が必要です。

【関連】会社分割の登記!手続き方法や必要書類、費用を解説!

8. 会社分割の相談はM&A仲介会社へ

会社分割の相談はM&A仲介会社へ

ここまで解説してきたように、会社分割における債権者保護手続きは迅速かつ丁寧に行う必要があります。

会社分割手続きをスムーズに行うためには、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。

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9. まとめ

まとめ

本記事では、会社分割の債権者保護手続きについて解説してきました。

会社分割手続きは以下の流れで進みます。

  1. 基本合意書の締結
  2. 取締役会の承認
  3. 吸収分割契約締結
  4. 事前開示書類の備置
  5. 債権者保護手続き
  6. 株主総会招集通知・反対株主手続き
  7. 株主総会決議
  8. 株式買取請求
  9. 効力発生日
  10. 登記手続き

また、会社分割の債権者保護手続きは以下の流れで行います。
  1. 官報に会社分割する旨を公告・知れたる債権者への個別催告
  2. 異議の申立を受け付ける

会社分割の債権者保護手続きでは、以下の点に注意が必要です。
  1. 債権者保護手続きの不備
  2. 個別催告のし忘れ
  3. 異議を申述していない債権者
  4. 登記申請

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