管工事業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイント・事例9選を徹底解説【2024年最新】

企業情報本部長 兼 企業情報第一本部長
辻 亮人

大手M&A仲介会社にて、事業承継や戦略的な成長を目指すM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、経営者が抱える業界特有のお悩みに寄り添いながら、設備工事業や建設コンサルタント、製造業、医療法人など幅広い業種を担当。

管工事とは、建物・施設の給排水・空調・ガス等の設備や送管を取り付ける工事のことです。管工事業界は人材不足や後継者不在の企業も多く、M&Aによって解決するケースも増えています。本記事では、管工事業界のM&A動向や売却・買収のメリットを解説します。

目次

  1. 管工事業界の概要と動向
  2. 管工事業界のM&A動向
  3. 管工事会社のM&Aメリット
  4. 管工事会社のM&AはM&A総合研究所へご相談ください
  5. 管工事会社のM&A事例
  6. 管工事会社のM&Aの流れ
  7. 管工事会社のM&Aを成功させるポイント
  8. 管工事会社のM&A注意点
  9. 管工事業界のM&Aまとめ
  10. 電気工事・管工事業界の成約事例一覧
  11. 電気工事・管工事業界のM&A案件一覧
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1. 管工事業界の概要と動向

近年は、高度成長期に建設された多くの建物が建替えが必要な時期に差し掛かっており、それに伴い管工事の需要も増えてきました。

堅調な管工事業界ですがいくつかの課題を抱えており、その解決手段としてM&Aによる売却や譲渡を行うケースも多いです。管工事のM&Aについて述べる前に、まずは業界の概要や動向を解説します。

管工事業界とは

管工事とは、建物・施設の敷地内における給排水・空調(冷暖房)・ガスなどの設備、またそれらを送るための管や設備を取り付ける工事を指します。

私たちの生活には欠かせないもので、身近な工事例はガス管や暖房器具に接続する管や水洗トイレの管設置などやガス管、厨房などにつながる管の設置などです。

管工事業界での受注体制には「元請け・下請け」「自己建設」の2パターンがあります。前者は元請けであるゼネコンなどが受注した工事をさらに管工事会社へと発注(元請け発注)する構造をいい、管工事を手掛ける会社の大半はこの「下請け」に該当します。

それに対し「自己建設」は発注者から直接業務を請け、計画策定から工事工程および品質管理までの一式を自社で手掛けるかたちです。

管工事業界の市場規模と動向

2024年6月に国土交通省が公表した調査結果によると、設備業界全体の受注総額(2024年4月時点)は4277億円億円であり、2023年4月と比べ1.3%の増加となりました。

設備業界全体の工事発注者別受注高は、官公庁が308億円で26.6%の減少となり、民間は4.3%増加となるは3969億円です。

そのうち管工事業の受注高は1963億円であり、2023年4月と比較して15.2%増加しています。その内訳をみると民間からの受注は前年同月比較で20.8%増加したものの、官公庁からの受注は26.2%減少という結果となりました。

今後は首都圏エリアなどでの再開発や大阪万博の開催などが予定されており、高度成長期に建てられた建物の老朽化による建替えなどもあるため、当面は安定した需要が見込め、それに伴うM&Aもすると考えられます。

参考:国土交通省「令和6年4月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果(各工事主要20社)」

2. 管工事業界のM&A動向

今後の需要増加が見込まれる管工事業界ですが、その一方で慢性的な人材不足が大きな課題となっています。

数年以内に団塊世代の経営者や従業員の多くが引退のタイミングに差し掛かるため、人材不足はさらに深刻化すると予測されますが、管工事業界は若年層の人材が集まりにくいのが実情です。

そのほか、下請け構造や資材高騰によるコスト増加で厳しい経営状況となっている事業者や、後継者不在により廃業せざるを得ない事業者も少なくありません。

このような背景により、人材確保や事業承継、コスト削減などを目的として管工事業界のM&Aが行われる事例も増えてきています。

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3. 管工事会社のM&Aメリット

M&Aは経営課題の解決手段として非常に有効ですが、具体的にはどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、管工事会社をM&Aで売却するメリットを説明します。

ワンストップサービスの提供

元請け・下請けという構造では、特に下請け業者は安定した利益確保が難しいケースも多いですが、ワンストップサービスが提供できれば受注安定につながります。

管工事業は電気工事や土木工事などの隣接業種も多いため、M&Aを行いそのような企業とグループ形成できれば、ワンストップサービス体制の構築が可能です。

買収側にとっても相互補完による事業拡大が見込めるため、サービス拡充を目的として買収を行うケースも多くみられます。

雇用の継続

何らかの理由で事業継続が難しくなり廃業という選択をとった場合、従業員は解雇しなければなりませんが、M&Aによる売却であれば従業員の雇用を継続することができます。

ただし、株式譲渡の場合は自動的に雇用継続が引き継がれますが、事業譲渡の場合は従業員が買収先の企業と新たに雇用契約を結ぶ個別承継です。雇用継続を希望する場合は、M&A交渉時に取り決めておく必要があります。

従業員の雇用継続は売却側だけでなく、買収側にとってもメリットが大きいものです。人材不足が深刻な管工事業界では従業員を一度に獲得できるのはメリットであり、有資格者であればさらに大きなメリットとなります。

後継者問題の解消

近年は中小企業の後継者問題解消が国の課題ともなっていますが、管工事業が含まれる設備業の後継者不在率は他業種より高いのが現状です。

帝国データバンクが行った調査(全国・全業種の約27万社を対象)によれば、全体の後継者不在率が57.2%であるのに対し、設備業は63.7%という結果でした。

そのようななか、経営者の周りに後継者候補がいない企業がM&Aによって第三者へ事業承継を行うケースも増えてきています。

後継者候補を幅広いなかから探すことができるので、後継者不在に悩む企業にとってM&Aによる第三者への事業承継は非常に有効な手段です。

参考:株式会社帝国データバンク「特別企画:全国企業後継者不在率動向調査(2022)」

売却利益の獲得

M&Aによる売却(株式譲渡)では、株主である経営者あるいは創業者が対価を得ることができます。まとまった現金を得られるため、引退後の生活費に充てることも可能です。

また、中小企業は融資を受ける際に経営者が個人保証を負っていたり、担保を差し入れたりしているケースも多いですが、株式譲渡によって自社を売却する場合はこれらも買い手企業へと引き継がれます。

M&Aの売却利益としてまとまった額の現金が得られ、精神的な負担もなくなるので、ハッピーリタイアメントの実現も可能です。

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4. 管工事会社のM&AはM&A総合研究所へご相談ください

管工事業界のM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。当社は、中小・中堅規模のM&A案件を主に取り扱っており、全国の案件に対応しています。

知識・支援実績豊富なアドバイザーが多数在籍しており、ご相談からクロージングまで丁寧にサポートいたします。

M&A総合研究所の料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)

無料相談を随時お受けしておりますので、管工事業界のM&Aをご検討の際はお電話・Webよりお気軽にお問い合わせください。

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5. 管工事会社のM&A事例

M&Aによるシナジーも見込みやすいため、管工事会社の売却・買収は同業者や関連する業種と行われるケースが多いです。ここでは、管工事会社のM&A・買収・売却事例6選を紹介します。

高砂熱学工業がWOTAの第三者割当増資を引き受けた事例

2023年6月、空調・電気設備・衛生・工事を手掛ける高砂熱学工業は、東京都中央区のWOTAとの協業に向け、同社の第三者割当増資を引き受けたと発表しました。

WOTAは、生活排水を再生後に有効活用する「水処理自律制御システム」「小規模分散型水循環システム」の開発を手掛ける企業です。

今回の出資によって、高砂熱学工業は互いの技術・ノウハウを掛け合わせて水に関する社会課題の解決を図り、持続可能な循環型社会を目指して取り組みを進めていくとしています。

参考:WOTA株式会社「水問題の構造的な解決に挑むWOTA、シリーズBラウンド 資金調達完了」

大成温調がウッドテックをM&Aした事例

2023年4月、建設総合設備工事業を手掛ける大成温調は、千葉県印西市のウッドテックをグループ傘下とすると発表しました。本M&Aは、大成温調がウッドテックの完全親会社ホライズン5を完全子会社化することによって、ウッドテックをグループ傘下とするかたちとなっています。

大成温調のグループ傘下となるウッドテックは、千葉・東京・茨城のエリアで消火設備工事や一般管工事などを手掛ける企業です。

大成温調は、ウッドテックをグループに加えることで首都圏エリアの施工管理機能およびサービス提供力を強化・拡充していくとしています。

参考:大成温調株式会社「ウッドテック株式会社のグループ会社化に関するお知らせ 」

ダイダンがシンガポールのPresico社をM&Aした事例

2023年1月、総合設備工事を手掛けるダイダンは、シンガポールのPresico Engineering Pte. Ltd.を持分法適用関連会社とすると発表しました。

Presico Engineering Pte. Ltd.は、電気設備工事および機械設備工事をシンガポールを中心に展開する企業です。本M&Aにより、ダイダンは、Presico Engineering Pte. Ltd.の有する実績や技術力、商圏などとのシナジー発揮により事業拡大を図るとしています。

なお、M&A後もPresico Engineering Pte. Ltd.のブランド力や経営の自主性は維持していく方針です。

参考:ダイダン株式会社「海外企業の株式取得(持分法適用関連会社化)に関するお知らせ」

北陸電気工事が蒲原設備工業をM&Aした事例

2022年12月、北陸電気工事は蒲原設備工業の全発行済み株式を取得して子会社化しました。本M&Aの取得価額は非公表です。

北陸電力の子会社である北陸電気工事は、北陸エリアを事業エリアとして、電気工事・管工事や電力供給設備工事などの設備工事業を行っています。

子会社となった蒲原設備工業は、創業50年を超える新潟県有数の管工事会社です。同社は、管工事業のほかに消防施設工事や土木工事なども手掛けています。

本M&Aの主な目的は事業エリアの拡大です。北陸電気工事は蒲原設備工業の子会社化を新潟方面への事業進出の足ががかりにし、事業エリアと売り上げの拡大を目指すとしています。

参考:北陸電気工事株式会社「 株式取得(子会社化)に向けた株式譲渡契約締結のお知らせ」

前澤化成工業が常陽水道工業をM&Aした事例

2022年10月、前澤化成工業は常陽水道工業の発行済み株式91.93%を取得して子会社化しました。本M&Aの株式取得価額は非公表です。

前澤化成工業は上下水道関連製品の生産および販売事業を主軸としており、産業排水処理システム(民間企業向け)提案・設計を強みとしています。

売却側の常陽水道工業は、茨城県を事業基盤とする管工事会社です。施工力の高さや施工管理能力などに定評があり公共工事に強みがあります。

本買収の目的は、事業基盤強化と収益力向上です。前澤化成工業は常陽水道工業の技術やノウハウを融合させることで、民間・公共事業へ共同で取り組み収益拡大につなげていくとしています。

参考:前澤化成工業株式会社「常陽水道工業株式会社の株式取得(子会社化)についてのお知らせ」

ウェーブロックホールディングスがエイゼンコーポレーションをM&Aした事例

2022年4月、ウェーブロックホールディングスは子会社のイノベックス通じてエイゼンコーポレーションの全発行済株式を取得し、孫会社化しました。本M&Aの株式取得価額は非公表です。

ウェーブロックホールディングスは、グループの戦略策定や経営管理を行う持株会社で、イノベックスは合成繊維製網製品やプラスチックシート・フィルムおよび関連商品の販売を手掛けています。

売却側のエイゼンコーポレーションは、水道施設工事・土木工事・舗装工事を行う企業です。「特定建設業」として22種の許可を保有しています。

近年、ウェーブロックホールディングスは、地中熱ビジネス新たな成長分野と位置付けており、エイゼンコーポレーションをグループに迎えることで、当該事業の推進を加速させ設計業務への対応力強化を図る予定です。

参考:ウェーブロックホールディングス株式会社 「子会社による株式会社エイゼンコーポレーションの株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ」

エクシオグループが光陽エンジニアリングをM&Aした事例

2022年1月、エクシオグループは静岡県の光陽エンジニアリングと株式交換を行い、同社を子会社化しました。本株式交換における比率は、1:1000(エクシオグループ:光陽エンジニアリング)です。

エクシオグループは、通信キャリアや致死インフラなどのエンジニアリングソリューションや、システムソリューションを手掛けています。

子会社となった光陽エンジニアリングは、空調・給排水衛生・防災設備などの設計施工および保守管理を行う企業です。管工事を得意としており、リピート受注も多く確かな工事品質と優良な顧客基盤を持っています。

本M&Aは、エクシオグループにおける都市インフラ事業拡大の一環として行われた事例です。エクシオグループは、光陽エンジニアリングを子会社化することで、管工事分野での相互協力などを通じて顧客基盤の強化および企業価値向上を目指すとしています。

参考:エクシオグループ株式会社「光陽エンジニアリング株式会社の簡易株式交換による完全子会社化のお知らせ」

コムシスホールディングスが朝日設備工業をM&Aした事例

2020年10月、コムシスホールディングスは岐阜県の朝日設備工業と株式交換を行い、同社を子会社化しました。

コムシスホールディングスは、電気設備工事業・情報通信工事業などを手掛けており、そのほかグループ子会社の経営管理なども行っています。

子会社となった朝日設備工業は、管工事・水道施設工事のほか、土木工事・電気工事・消防施設工事などを行う企業です。

本M&Aにより、コムシスホールディングスは両社の強みを活かして東海エリアを中心に広く事業展開を進め、シナジーの最大化と企業価値の向上を図るとしています。

参考:コムシスホールディングス株式会社「簡易株式交換による朝日設備工業株式会社の完全子会社化に関するお知らせ」

高田工業所が渡部工業をM&Aした事例

2020年7月、高田工業所は北海道苫小牧市にある渡部工業の全発行済み株式を取得し、子会社化しました。

高田工業所は総合プラント建設業および保全工事業を手掛ける企業です。本社は北九州市にありますが、国内に複数の支店・事業所を構えています。売却側の渡部工業は、石油・天然ガスプラントの配管工事と保守を行う北海道小牧市の企業です。

高田工業所グループは、中期経営計画でプラント事業における生産体制と施工体制の再構築を掲げており、事業拡大を進めています。

本M&Aもその一環であり、産業プラント事業の基盤強化と拡大が主な目的です。高田工業所は渡部工業を傘下とすることでネットワークや技術力を相互活用し、事業エリアの拡大を図るとしています。

参考:株式会社高田工業所「渡部工業株式会社の株式取得に関するお知らせ」

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6. 管工事会社のM&Aの流れ

M&Aを行う目的やM&Aの方向性を明確化

M&Aを具体的に検討し始めたら、まずは自社がM&Aを行う目的やM&Aの方向性を明確化します。というのは、M&Aでなにを(どのような効果を)得たいかによって、相手先探しの条件も変わる可能性があるためです。

その際は、自社の強み・弱みはどこにあるのか、本当にM&Aが必要なのかといった点も併せて考え、M&Aを実行すべきかを検討する必要があります。

そして、M&A実行する意思が固まったら、相手期先への希望条件・売却希望価額・売却時期などをある程度決めておくとよいでしょう。

専門家への相談

M&Aは成立までに短くとも半年程度はかかることが多いといわれています。専門的な知識が必要となる工程や手続きも多く、これを通常の事業運営を行いながら進めていくため、M&Aの専門家へ依頼することで経営者の負担を軽減することが可能です。

相談するM&A仲介会社は支援実績・得意業種・サポート範囲・手数料体系などを比較検討するだけでなく、無料相談を活用して担当アドバイザーとの相性も確認して決めるとよいでしょう。

M&A候補先の選定

M&A仲介会社の場合、担当アドバイザーが売り手側企業の希望条件に合う企業やシナジーを見込める企業をリストアップしてくれるので、そこから業種・事業内容・企業規模・事業エリアなどの条件で交渉したい相手先を絞り込みます。

交渉相手先を選定するときは、業種・事業内容・企業規模・事業エリアなどのほかに、M&A後のPMIも踏まえて経営理念や社風などが自社とかけ離れていないかという点も確認しておくことがポイントです。

秘密保持契約書の締結

M&Aの候補先企業へ交渉を打診し相手側も交渉に臨む意向であれば、秘密保持契約書を結んでから売り手側企業の詳細情報を記載した企業概要書を提出します。

企業概要書に記載するものは、会社名・詳細な所在地・財務情報・役員構成・主な取引先・詳細な事業内容・技術やノウハウに関する情報などが含まれるため、第三者へ漏えいすることがないよう必ず秘密保持契約の締結しておかなければなりません。

トップ面談

トップ面談は、売り手側と買い手側の経営者同士(オーナー同士)が直接会い、経営理念や互いの人柄、M&A後のビジョンなどを確認したり、企業概要書では分かりにくかった点を質問したりするために設けられます。

M&Aは面識のなかった企業間で行われるケースが多いため、信頼関係を構築することがトップ面談の大きな目的です。そのため、一般的に具体的な交渉(価額など)は行われません。

そして、トップ面談後は買い手側が買収の意向を示す「意向表明書」が売り手側へ提出されることが多いですが、提出は必須でないため省略される場合もあります。

基本合意の締結

トップ面談後、売り手側・買い手側の双方がM&A成立を目指す意向であれば交渉をさらに進め、譲渡価額・使用M&Aスキーム・条件・完了までの予定など、双方がM&A内容に大筋合意した段階で基本合意契約書を結びます

基本合意書にはその時点での合意内容を記載しますが、M&Aを中止せざるを得ない大きな問題がなければ成立に向けて交渉を進めるという意思確認と合意内容の確認という意味合いが強く、基本合意書そのものには法的な拘束力はありません。

例外的に独占交渉権などの一部事項には法的拘束力を持たせることが多いですが、基本合意書を締結してもM&Aの最終合意が決定したわけでない点に注意が必要です。

買い手企業によるデューデリジェンス

デューデリジェンスとは、買い手側が売り手側から事前開示された情報の正確性や買収によるリスクの有無などを調査する買収監査のことです。

デューデリジェンスには、法務・財務・人事・ビジネス・ITなど多くの分野があり、それぞれの専門家(士業など)が調査を行います。買い手側はデューデリジェンスを実施する目的は、M&A実行の可否や価額の妥当性などを判断するためです。

そのため、買い手側が買収リスクが大きいと判断した場合、価額が引き下げられた李M&A取引が中止されたりする可能性もあります。

最終交渉・最終契約の締結

買い手側がデューデリジェンスの結果からM&A実行を決断したら、最終交渉へ移ります。最終交渉はデューデリジェンスの結果を踏まえて行われるため、場合によっては価額の引き下げなどが起こりうることを売り手側は理解しておきましょう。

そして、互いが最終交渉で取り決めた内容全てに最終合意したら、最終契約を作成して締結しM&Aが成立となります。

なお、最終契約書には、M&A対象とその範囲・使用スキーム・価額・条件・対価の決済方法・競業避止義務・表明保証・クロージング条項などが記載され、すべてが法的拘束力を持つため締結以降の一方的な破棄は原則として認められません。

クロージングの実行

M&A対象(企業または事業)の経営権を買い手側へ移転させ、対価の決済手続きを行うことをクロージングといいます。クロージングを実行するには売り手側がクロージング条件を満たしていることが前提となるため、最終契約の締結日からクロージング実行日までは一定期間あけることがほとんどです。

クロージングを行うことでM&A効力が法的に認められることとなるので、必要手続きを事前によく確認しておくことが重要です。そしてクロージングが実行されればM&A取引は完了となります。

7. 管工事会社のM&Aを成功させるポイント

管工事会社のM&Aを成功させるためには、以下の点を意識して進めていくことが大切です。事前にポイントを把握して計画的に進めることは、M&Aの成功率をあげることにもつながります。

M&Aを行う目的を明確にする

まずは自社がなぜ売却・譲渡を行うのか、その目的を明確にしておく必要があります。事業承継目的で従業員の雇用維持を希望するケース、安定した経営基盤構築のために大手グループの傘下りを果たしたいケースなど、M&Aを行う目的は企業によってさまざまです。

M&Aを行う目的を明確にすることで、交渉先を選ぶ際の基準を決めやすくなり、交渉するうえで条件の譲歩が必要になっても判断がしやすくなります。

売却・譲渡先をしっかり選定する

管工事が含まれる建設業界には元請け企業と下請け企業が存在し、同じ下請け業者であっても一次下請け・二次下請けと続くいわゆる多重下請け構造です。

株式譲渡の場合は取引先との関係も買い手企業へ自動的に引き継がれますが、事業譲渡の場合はM&A後に買い手先と取引先とが新たに契約を結ぶかたちになります。

事業譲渡スキームを使用する場合、売り手企業は取引先や自社の下請け会社への影響も考慮し、買い手企業を選ぶことも重要です。

自社の強みをリストアップしておく

より良い条件で売却・譲渡を行うためには、M&Aを行う前に自社の強みを資料にまとめておくことも大切です。

買い手企業にとって、売り手が持っている技術・ノウハウ、事業エリアや販路などは、M&Aを決断する決め手のひとつになります。

工事実績・主要取引先・有資格者などを資料にまとめておき、自社の強みを買い手企業へアピールできるよう整えておくとよいでしょう。

業界動向に注視してタイミングを逃さない

納得のいくM&Aを実現するためには、売却・譲渡のタイミングを逃さないことも重要なポイントです。

特にM&Aが活発に行われている場合は、業界動向を注視して売却・譲渡タイミングを決めることで好条件でのM&A成立も目指せます。

そのためには、M&Aの検討を始めたらできるだけ早い段階から準備を進めておくことが必要です。

M&Aの専門家に相談する

中小企業の場合、特に売り手側はM&Aが未経験であることが多いです。また、譲渡・売却を行う場合は、通常業務と並行してM&Aの交渉や手続きを進めていかなければなりません。

業務への支障を最小限にとどめながら、成功ポイントをおさえて進めていくためにはM&Aの専門家によるサポートが有用です。

M&A仲介会社の多くは戦略策定から交渉・書類作成などのM&A行程を一括サポートしているところが多いので、スムーズに進めることができM&Aの成功率も高まります。

具体的にどのように進めていけばよいかなどの相談もできるので、まずは相談してみるのも1つの方法です。

8. 管工事会社のM&A注意点

財務面の整理

売り手側はM&Aを行う前に自社の財務状況を再度確認し、簿外債務などの問題点があれば整理してからM&Aに進むことが重要です。

中小企業の場合、未払い残業代・賞与引当金・退職給付引当金などが簿外債務となりやすいため、しっかり確認しておく必要があります。

誠実な対応

M&Aは売り手側と買い手側に信頼関係が構築されなければ、成功させるのは難しくなります。互いにどうしても譲れない条件があるのは普通ですが、一方的に自社の希望のみを伝えても交渉はうまくいきません。

売り手側・買い手側どちらの立場であっても、相手に対しては常に誠実な対応を心がけることが満足度の高いM&Aにつながる大切なポイントです。

情報漏えい

M&Aでは秘密情報を含めて相手先へ情報を開示しますが、そのなかには独自技術やノウハウに関する内容なども含まれるため、M&A成立前に情報漏えいが起これば企業価値を大きく損なうおそれもあります。

情報漏えいを防ぐためにも情報開示の際は必ず秘密保持契約を結び、万一の際の責任所在を明確にしておくことが重要です。

また、M&Aが成立する前(基本合意締結前)にM&Aを行うことが従業員や取引先などへ伝わってしまうと、人材流出や取引中止などが起こる可能性もあります。そのような事態を避けるため、M&Aの情報共有は社内の重要な人物に限定してしておくことも必要です。

9. 管工事業界のM&Aまとめ

今後は、老朽化した建物の建て替え工事やリノベーション工事が増えることが見込まれており、それに伴い管工事業界の需要も高まると考えられます。

同時に、需要の高まりに対応するための人材確保や、事業承継目的でのM&Aも増加すると考えられるため、管工事会社の売却・譲渡を検討している場合は早めの対策がカギといえるでしょう。

10. 電気工事・管工事業界の成約事例一覧

11. 電気工事・管工事業界のM&A案件一覧

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