2023年04月18日更新
EV/EBITDA倍率とは?計算方法や使い方から平均と割安の目安まで詳しく解説!
本記事では、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率の意味や計算方法、平均と割安の目安を解説します。EV/EBITDA倍率とは、企業価値をEBITDA(イービッダー)指標で割ることで算出した倍率です。EV/EBITDA倍率について知りたい方は必見です。
目次
1. EV/EBITDA倍率とは
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率とは、企業価値を算出する際に用いられるもので、M&Aを行ううえで関わりの深い指標です。
本記事では、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率の意味や計算の仕方・平均と割安の目安などを解説しますが、まずはEV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率の意味を説明します。
EV/EBITDA倍率について
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率とは、EV(Enterprise Value)、つまり企業価値をEBITDA(イービッダー)と呼ばれる収益力を測る指標で割ることで算出した倍率のことです。
M&Aの際はさまざまな指標を参考に買収判断を行いますが、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率は計算のしやすさと数字の分かりやすさから国際的に広く使われています。
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率を用いるメリット・デメリット、計算方法などの詳細は後述します。
EV/EBITDA倍率により分かること
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率を用いると、買収企業は買収金額をどのくらいの期間で回収できるか、おおよその見当を付けることが可能です。
例えば、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率が6.5だった場合、買い手企業は買収にかかった費用を買収先企業の収益力によって、約6.5年で回収できるとおおよその予測を立てられます。これにより、その買収案件が割安なのか、それとも割高なのかを判断可能です。
EV/EBITDA倍率の意味
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率とは、企業価値をEBITDAと呼ばれる指標で割ることで算出した倍率です。M&Aの際、買い手企業は売り手企業の企業価値や将来収益力の分析を参考に、M&Aを行うかどうかの判断やM&A価格の決定を行います。
中には、企業価値は低くても将来的に高い収益力が期待できたり、これとは反対に現在の企業価値は高くても今後の収益力が低かったりする企業もあります。
買い手企業が売り手企業の現在の企業価値のみで買収判断を行ってしまうと、買収後に投資を回収できずに失敗してしまいかねません。これを避けるためにも、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率を算出し、おおよその投資効率を判断することが大切です。
EVの意味
EV(イーブイ)は、Enterprise Value、つまり企業価値を表しています。M&Aで企業価値の算出は非常に重要です。売り手企業は自社の企業価値を算定することで、自社の売却可能性やおおよその売却価格を判断できます。
買い手企業からしても、売り手企業の企業価値を算定することで、買収に値する企業なのか、買収するとしたらどれほどの金額で提案するのが妥当なのかなどを判断する際の材料として活用できます。
EBITDAの意味
EBITDA(イービッダー)は企業の収益力を表しています。M&Aの際に買い手企業が買収するかどうか判断する基準となる指標は、売り手企業の現在の価値と今後の価値です。
現在の価値はEV(イーブイ)を参考にして判断できる一方、売り手企業が買収後どれだけの収益を上げてくれるか、つまり将来の価値はどのくらいあるのかを判断するには、EBITDA(イービッダー)を用いる必要があります。
M&A時の買収判断で、現在の価値と今後の価値のいずれかが欠けていると、M&A後の経営がうまくいかない可能性が高いでしょう。
その意味では、EV(イーブイ)もEBITDA(イービッダー)も、同程度に重要な役割を果たしています。
DD(デューデリジェンス)の意味については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
2. EV/EBITDA倍率の計算方法
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率を求めるためには、まずEV(イーブイ)とEBITDA(イービッダー)をそれぞれ算出しなければなりません。
EV(イーブイ)は、株式時価総額と純有利子負債の合計で求められます。株式時価総額は、株価と株式数を乗じることで算出可能です。上場企業の場合は参考となる株価がわかりますが、非上場企業の場合は株価がはっきりしないので、専門家に株価の価値算定を行ってもらう必要があります。
純有利子負債とは、金融機関からの融資など金利を付けて返済しなければならない有利子負債から、直接事業に貢献していない資産を引いた負債のことです。事業に貢献していない資産とは、内部留保・投機目的の有価証券・有給不動産などです。
EBITDA(イービッダー)は、営業利益と減価償却費を合わせて算出します。営業利益とは、その会社が本業で上げた利益のことで、粗利益からコストを引くことで計算可能です。営業利益には減価償却費が含まれていませんが、それでは大規模な設備投資を行っている企業などの場合は利益の正確性が低くなってしまいます。
EBITDA(イービッダー)では、営業利益の減価償却費を加えることで、設備投資などを加味したより現実的な数字を算出可能です。
EV(イーブイ)とEBITDA(イービッダー)をそれぞれ求めたら、EVをEBITDAで割ることで、投資回収に必要な大まかな期間を算出できます。
のれん(会計)については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
計算例
ここでは、EV/EBITDA倍率の計算例を提示します。
A社の株式時価総額が10億円、有利子負債が4,000万円、現預金が1億円、営業利益が1億円、減価償却費が2,000万円であるケースを想定します。このケースのEVは、以下の計算式で算出可能です。
- EV=10億円+4,000万円-1億円=9億4,000万円
また、EBITDAは、以下の計算式で求められます。
- EBITDA=1億円+2,000万円=1億2,000万円
上記の数値を用いてEV/EBITDA倍率を算出すると、以下のとおりです。
- EV/EBITDA倍率=9億4,000万円÷1億2,000万円=7.83
つまり、A社を買収した場合に発生するコストは、7.83年で回収可能であると判断できます。
3. EV/EBITDA倍率の使い方
この章では、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率が実際に使用される場面やメリット・デメリットを解説します。
EV/EBITDA倍率が使用される場面
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率は、企業評価の際に用いられる指標の1つです。
企業価値評価の方法にはコストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチなどがあり、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率はマーケットアプローチに含まれる指標の1つです。
厳密にいうと、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率は、マーケットアプローチの中でも類似企業比較法と呼ばれる手法に含まれます。
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率は、売り手企業と似ている上場企業を探し、その企業の数値を参考に評価します。
類似企業比較法は参考となる上場企業を見つけられれば効果的ですが、企業にはそれぞれ個性があり、似たような内情の企業を選び出すことは決して容易ではありません。自社のみで探すのは難しいため、企業価値評価を得意とするM&Aの専門家に依頼し、的確に評価してもらうことがおすすめです。
M&A総合研究所では、豊富な企業価値算定経験のある専門家がサポートしますので、的確な評価を目指せます。ご相談は無料で受け付けていますので、企業価値評価をご検討の際はどうぞお気軽にご相談ください。
EV/EBITDA倍率のメリット
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率の分母であるEBITDA(イービッダー)は、営業利益に減価償却費を加えて算出します。
投資家などが企業の価値を見極める際は営業利益を参考にするケースも多いですが、営業利益には減価償却費が含まれていないので、算定する業種によっては実態とかけ離れた数字が出てしまいやすいデメリットがあります。
一方、EBITDA(イービッダー)は、減価償却費・利息・税金などを差し引く前の数字で表されているので、営業利益のみで算定する場合と比べると、企業の収益力をより正確に把握できる点がメリットです。
EV/EBITDA倍率のデメリット
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率の分母であるBITDA(イービッダー)は、事業を行っていくうえで必要となる要素がすべて加味されているわけではありません。あくまでも、買い手企業が売り手企業への投資効率を大まかに見積もるための指標である点に注意が必要です。
M&A価格は、買い手は売り手企業の時価純資産に将来のキャッシュフローを加えることで、決定されることがあります。
この場合、例えばEV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率が8年と算定されたとしても、実際にM&A価格に加味する将来キャッシュフローが8年分になるとは限りません。
つまり、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率は正確性に欠ける点にデメリットがあります。
DCF法については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
4. EV/EBITDA倍率の平均と割安の目安
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率にはメリット・デメリットがあると述べましたが、それではEV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率がどのくらいであれば割安・割高の判断基準となるのでしょうか。
本章では、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率の平均と割安となる目安を解説します。
EV/EBITDA倍率の平均倍率
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率の平均は8倍から10倍とされているため、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率が8倍であれば割安と考えられます。
実際には、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率が8倍未満の企業も多く存在しており、8倍は割高なのではないかと考える意見も少なくありません。
しかし、東証一部上場企業のEV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率を平均すると8倍から10倍になる計算であり、非上場の中小企業に当てはまるわけではありません。
EV/EBITDA倍率の割安の目安
EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率が割安といえる目安は8倍以下とされています。
しかし、これは東証一部上場企業のEV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率を平均すると出てくる数字であり、多くの中小企業に当てはまるとは限りません。
それでは、非上場の中小企業の場合、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率が割安といえる目安はどれくらいなのでしょうか。
すべての中小企業のEV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率を平均したデータはありませんが、買い手企業が売り手企業の買収価格を決める際に何年分の収益を上乗せするか判断する平均は存在します。
一般的に、買収価格に上乗せされる収益は平均3年分から5年分です。つまり、中小企業の場合は3年ほどで投資が回収できれば割安だといえます。
EV/EBITDA倍率の限界
東証一部上場企業の平均的な投資回収期間は8年から10年であるのに対して、非上場中小企業の平均的な投資回収期間は3年から5年とされています。ただし、あくまでも平均であって、実際に東証一部企業の投資回収期間を業種別に見ると、8年から10年に当てはまらず、大きなばらつきがあるケースがいくつもあります。
平均は数字が高く出る傾向にあるため、東証一部上場企業でもEV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率が8倍から10倍に当てはまらない企業も多く存在するのが実情です。
つまり、EV/EBITDA(イーブイ/イービッダー)倍率は、個別の企業が割安かどうかを見極めるためには大ざっぱな指標であるため、実際に売り手企業が割安かどうかを判断する場合は、さまざまな角度から分析して判断する必要があります。
そのためには、M&Aの専門家による詳細な分析と判断が望ましいでしょう。M&A総合研究所では、豊富な経験を持ったアドバイザーがM&Aをフルサポートします。企業価値評価もお任せください。
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5. EV/EBITDA倍率の3つの改善方法
EV/EBITDA倍率を向上できれば、それだけ多くの買い手から注目を集めやすくなります。そこで本章では、EV/EBITDA倍率を改善するために役立つ方法の中から代表的な内容をピックアップし、順番に解説します。
商品・サービスの原価削減
商品・サービスの原価削減は非常に有力な施策です。具体例を挙げると、取引先を見直し材料費・外注費を削減できれば、経費が減少する一方で純利益・営業利益が増加するため、EBITDAの上昇につながります。とはいえ、1つ1つの小規模なコストの削減に注力していても大幅な経営改善は難しいので、コスト全体を抜本的に見直すことが望ましいでしょう。
営業利益の増加
営業利益を増加させると、それだけ負債を返済しやすくなり、有利子負債の減少につながります。資金が余った場合、自己株式の消却によって株価を下落させずに時価総額の低下につなげられます。営業利益の増加により、上記とは異なる観点でEV/EBITDA倍率を改善可能です。
商品・サービスの値上げ
商品・サービスを値上げして売上数を維持できれば、売上純利益が増加するため、EV/EBITDA倍率の改善につながります。とはいえ、取引先との契約や競合他社との競争を考慮するとリスクが高い方法です。最悪のケースでは顧客を失ってしまうおそれがあるので、慎重に検討しなければなりません。
6. EV/EBITDA倍率のまとめ
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