人材派遣会社のM&A動向と売却・買収事例13選!メリットや譲渡の注意点も解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

人材派遣会社の需要は近年高まっていますが、一方で人材不足なども課題もあり、解決手段としてM&Aが活用されるケースも増えています。この記事では、人材派遣会社のM&A動向やメリット、譲渡の注意点を解説します。

目次

  1. 人材派遣会社とは
  2. 人材派遣業界の市場規模と動向
  3. 人材派遣業界のM&A動向
  4. 人材派遣会社のM&A事例
  5. 人材派遣会社をM&Aするメリット
  6. 人材派遣会社をM&Aする時の流れ
  7. 人材派遣会社のM&A時の売却価格の相場
  8. 人材派遣会社を高値で売却するための成功ポイント
  9. 人材派遣会社のM&Aまとめ
  10. 人材派遣業界の成約事例一覧
  11. 人材派遣業界のM&A案件一覧
  • セミナー情報
  • セミナー情報
  • 人材派遣会社のM&A・事業承継

1. 人材派遣会社とは

少子化の加速により国内の労働人口は長期的な減少が予想されており、なかでも不足すると考えられているのが技術者です。

高度な専門性を持つ技術者などの必要人材を求める企業は将来的に増加すると考えられ、それに伴い人材派遣会社のニーズも高まると予想されます。

人材派遣会社の定義

人材派遣業とは、派遣元の事業主が雇用する労働者を他社へ派遣し、派遣先の指揮命令を受けて労働者が従事する事業を指します。

法律上の正式名称は「労働者派遣事業」であり、労働者派遣事業を行うためには厚生労働大臣の許可が必要です。

人材派遣と人材紹介の違い

人材紹介も人材派遣と同様、企業(顧客)と労働者(求職者)を結ぶ役割を担いますが、事業内容は大きく違います。

両社の大きな違いは、雇用契約とサービス内容です。人材派遣では求職者(労働者)と人材派遣会社が雇用契約を結び、労働者は企業(顧客)で派遣社員として業務にあたります。

実務に関しては派遣先企業の指示に従いますが、派遣先と雇用関係はなく給与や就業規則は派遣会社の規定に準じるため、労働条件や労働上限時間を超える業務を行うことはできません。

対して、人材紹介では企業(顧客)と労働者(求職者)が雇用契約を結ぶため、給与や就業規則も採用先の企業に準ずるかたちとなります。

両社はサービス範囲も違い、人材派遣は企業(顧客)に合った派遣スタッフの選定、派遣スタッフの労働管理や賃金の支払いを行いますが、人材紹介が行うのは人材の紹介と採用支援までです

人材派遣と業務請負の違い

前述したように、人材派遣の場合は企業(顧客)の指揮命令を受けて労働者(求職者)は業務を行いますが、業務請負は企業(顧客)から注文を受けた仕事を完成させるのが目的です。

そのため、業務請負の場合は企業(顧客)と労働者(求職者)の間に指揮命令関係はなく、業務上の指示は請負会社から労働者(求職者)へ行われます。

人材派遣と求人メディアの違い

求人メディアとは「転職サイト」と呼ばれるWebサイト上のサービスを指し、労働者(求職者)は掲載されている情報をみて自身で企業を選びます。

近年は労働者(求職者)が自身の情報を求人メディア登録しておくと、企業から直接スカウトやオファーがくるサービスを行っている求人メディアも多いです。

求人メディアはあくまでも求人情報を紹介しているだけであり、人材紹介や人材派遣のように選考に関するアドバイスや採用(内定)後のフォローなどは基本的に行いません。

2. 人材派遣業界の市場規模と動向

近年、人材派遣業界の市場は拡大傾向にあり、厚生労働省「令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」によれば、2020年度の年間売上高は8兆6209億円と前年度に比べ9.6%の増加となりました。

年間売上高のうち約2.3兆円は、高い専門性が求められる研究者やエンジニアなどの技術者派遣が占めると推計されます。

また、派遣先件数は前年度から7.6%増加して約75万件派遣労働者数は前年度から4.9%増加の約193万人となりました。

特に近年は、AI・IoT・ロボットを活用した事業で技術革新速度が上がっており、専門知識をもつ技術者が不足している状況です。

IT技術者だけでなく医療・グローバル人材などもニーズが高くなっており、今後も人材派遣業のニーズは継続するものと考えられます。

参考:厚生労働省「令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」

3. 人材派遣業界のM&A動向

人材派遣業界では近年M&Aが活発に行われていますが、その大きな理由として考えられるのは「人手不足」です。

ニーズはあるものの即戦力となる労働者(求職者)の確保が難しいケースも多く、好業績であっても自社・事業を売却する中小規模の人材派遣会社が増えています。

また、近年目立つのはエンジニア領域などのBPOや大手による海外企業の買収です。現在、人材派遣業界には約44,000事業者が存在しており、競争はますます激化してきました。

生き残りのためには、労働者(求職者)確保に向けた体制整備、専門性の高い分野・業種の拡充などが必要となるため、これらを目的としたM&Aは今後も活発に行われると推察されます。

  • 人材派遣会社のM&A・事業承継

4. 人材派遣会社のM&A事例

ここでは、実際に行われた人材派遣会社のM&Aから、13事例を紹介します

ハイブリッドテクノロジーズがキャスレーコンサルティングをM&Aした事例

2023年1月、ハイブリッドテクノロジーズは、キャスレーコンサルティングの子会社化を決定しました。ハイブリッドテクノロジーズは、webサービスやモバイルアプリ開発によって顧客のDXを推進する「ハイブリッド型開発」を手掛けています。

子会社となったキャスレーコンサルティングは、情報処理システムに関する受託開発や労働者派遣事業などを手掛ける企業です。

ハイブリッドテクノロジーズは、本M&AによりキャスレーコンサルティングのノウハウやPM/コンサルティング人材を獲得し、既存事業である「ハイブリッド型サービス」の品質と安定性の向上を図るとしています。

参考:株式会社ハイブリッドテクノロジーズ「キャスレーコンサルティング株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

メイホーホールディングスがエムアンドエムの人材派遣事業をM&Aした事例

2022年11月、メイホーホールディングスは孫会社のスタッフアドバンスを通じ、エムアンドエムが手掛ける人材派遣事業を譲受すると発表しました。

譲渡側のエムアンドエムは岩手県で人材派遣事業や業務請負事業などを行っています。スタッフアドバンスは福島・山形・宮城で人材派遣業を展開していますが、今回の事業譲受で岩手県にも派遣先を広げることが目的です。

メイホーホールディングスは、本M&Aにより東北エリアでの事業規模とシェア拡大を図るとしています。なお、本件の取得価額は2000万円、取得予定日は2023年1月1日です。

参考:株式会社メイホーホールディングス「当社連結子会社における事業譲受に関するお知らせ」

アピリッツがY'sをM&Aした事例

2022年6月、アピリッツはY’sの全株式を取得し、同社を子会社化すると発表しました。アピリッツは、WEBソリューション事業とオンラインゲーム事業を手掛ける企業で、WEBソリューション事業ではWebシステム開発・ECサイト構築・マーケティング支援などを行っています。

子会社となったY’sは、IT人材の派遣事業やWEBサイト・動画制作などを手掛ける企業です。アピリッツは、Y’sのデジタル人材やノウハウを取得することで、中期的な成長戦略の達成および企業価値向上を図るとしています。

参考:株式会社アピッツ「株式会社Y’sの株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ 」

ピアズがウィルをM&Aした事例

2022年5月、ピアズはウィルの全株式を取得して、同社を子会社化すると決定しました。ピアズは、店舗DX事業・セールスプロモーション事業などを手掛ける企業で、オンライン接客システム「ONLINX」などを開発・販売しています。

子会社となったウィルは、通信業界に特化した人材派遣事業やセールスプロモーション事業を行う企業です。

ピアズはウィルの強みである採用力を活かし、セールスプロモーション事業での人材確保、研修講師やオンラインオペレーターの確保を図るとしています。

参考:株式会社ピアズ「株式会社ウィルの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

日総工産がニコン日総プライムをM&Aした事例

2022年5月、 日総工産はニコン日総プライムの株式2%を追加取得して子会社化すると発表しました。ニコン日総プライムは日総工産とニコンの共同出資会社です。

ニコン日総プライムは、ニコングループの高齢従業員の雇用確保や開拓、地方自治体との連携により地域への人材還元などを行ってきました。

日総工産の持ち株比率は49%でしたが、今回の追加取得で51%に引き上げて子会社化し、今後は日総工産主導の経営体制へ移行します。

参考:日総工産株式会社「持分法適用関連会社の異動(連結子会社化)に関するお知らせ 」

アウトソーシングがサンキョウ・ロジ・アソシエートをM&Aした事例

2022年4月、アウトソーシングはサンキョウ・ロジ・アソシエートと子会社のサンキョウ・ロジ・アソシエートグループ(以下 SLAグループ)を子会社化すると発表しました。

アウトソーシングは、総合アウトソーシング事業・シェアドサービス事業・人材サービス業を手掛けています。

子会社となったサンキョウ・ロジ・アソシエートは、倉庫内作業の人材派遣業や、商品の仕分発送・管理業務の請負を行う企業です。

アウトソーシングはサンキョウ・ロジ・アソシエートおよびSLAグループに自社の営業力や採用力などを活かすことで、成長加速と生産性向上、グループ内での人材流動化を図り、外国人や高齢者人材の活用も進めていくとしています。

参考:株式会社アウトソーシング「株式会社サンキョウ・ロジ・アソシエートの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

ひろぎんホールディングスがマイティネットプラスをM&Aした事例

2022年1月、ひろぎんホールディングスは子会社であるひろぎんヒューマンリソースを通じ、マイティネットプラスの全株式を取得して子会社化すると発表しました。

また本M&Aに伴い、マイティネットプラスはひろぎんヒューマンリソースを存続会社とする吸収合併を行う予定だとしています。

ひろぎんヒューマンリソースは、人事労務コンサルティングや人材紹介、研修・セミナーなどのコンサルティング事業を展開する企業です。子会社となったマイティネットプラスは、人材派遣事業・ITサポート事業・研修事業を展開しています。

ひろぎんホールディングスは人材派遣事業へ新規参入と、業務軸の深化・拡大を目的として本M&Aに至りました。

参考:株式会社 ひろぎんホールディングス「当社子会社による株式会社マイティネットプラスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

iDAがリンクスタッフィングの国内人材派遣事業をM&Aした事例

2021年11月、iDAはリンクアンドモチベーションの子会社であるリンクスタッフィングが手掛ける人材派遣事業を譲受すると発表しました。

本件は吸収分割方式で行われ、リンクスタッフィングが分割会社、iDAを承継会社となり当該事業を引き継ぎます。

本件の目的はリンクアンドモチベーションによる事業の選択と集中です。リンクアンドモチベーションは、コンサルティング・採用支援・クラウドサービス提供などを展開しており、リンクスタッフィングは営業・販売職に特化した人材紹介業ならびに人材紹介業等を手掛けています。

今後はリンクスタッフィングの人材紹介業を強化すべくリソースを集中させ、高収益体制の確立を図るとして本譲渡へ至りました。なお、事業譲渡日と会社分割の効力発生日は2022年1月1日の予定となっています。

参考:株式会社リンクアンドモチベーション「国内人材派遣事業の譲渡に関するお知らせ」

アウトソーシングがISC就職支援センターをM&Aした事例

2021年9月、アウトソーシングはISC就職支援センターの全発行済株式を取得して子会社化しました。

子会社となったISC就職支援センターは、茨城県に事業基盤をもつ人材サービス企業です。製造系や物流系などへ人材派遣などをおこなっており、生産変動の少ない派遣先を多数保有しています。

アウトソーシングは自社のリソースをISC就職支援センターへ活用することで成長加速が期待できるとし、物流系をはじめとする事業の拡大においてもシナジーが見込めるとして本M&Aに至りました。

参考:株式会社アウトソーシング「株式会社ISC就職支援センターの子会社化に関するお知らせ」

UTグループが富士通エフサス・クリエをM&Aした事例

2021年8月、 UTグループは富士通グループの富士通エフサス・クリエの発行済み株式を51%取得し、同社を子会社化すると発表しました。

UTグループは富士通アプリコ(現FUJITSU UT)を2018年に子会社化しており、協業による人材派遣事業を展開しています。

今回子会社化した富士通エフサス・クリエは、官公庁や銀行・外資系企業などへの事務系人材の派遣、エン ジニア人材の派遣、ITインフラに関するサポートデスクやヘルプデスク請負事業などを行う企業です。

UTグループは本M&Aによって富士通グループとの関係強化を図り、大手企業を対象とする構造改革支援サービスを強化していくとしています。

参考UTグループ株式会社「富士通エフサス・クリエ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」

グロップエスシーがジーエスケーとグランドスタッフをM&Aした事例

2021年5月、グロップエスシーはジーエスケーとグランドスタッフの2社をインターライフホールディングスから譲受すると発表しました。

グロップエスシーは、業務請負・人材派遣業を手掛ける岡山県の企業です。ジーエスケーとグランドスタッフはともにインターライフホールディングスの子会社であり人材派遣業を行っています。

今回の売却はインターライフホールディングスのグループ内事業再編の一環です。同社は2015年にM&Aを行い、ジーエスケーとグランドスタッフを傘下に収めましたが、コロナ禍の影響で人材サービス事業を取り巻く環境が変化したため、2社の売却を決断しています。

参考:インターライフホールディングス株式会社「連結子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ」

UTグループがプログレスグループをM&Aした事例

2021年5月、UTグループはプログレスグループの全発行済み株式を取得して子会社化すると発表しました。

プログレスグループは傘下に人材派遣業を行うプログレスがあり、同社は自動車部品・ゴム製品・電子部品などの製造業に特化した人材派遣を行う企業です。

UTグループはプログレスグループを傘下に加えることで、東海エリアでの製造系人材派遣サービスを強化し、営業基盤や顧客基盤を相互活用することでさらなる事業拡大を進めていくとしています。

参考:UTグループ株式会社「株式会社プログレスグループの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

廣済堂がエヌティとNeoをM&Aした事例

2021年4月、廣済堂は人材派遣業のエヌティとNeoの2社を子会社化すると発表しました。廣済堂グループは、情報ソリューション事業・人材サービス事業・エンディング関連事業をグループで展開しています。

子会社となった2社は主に物流倉庫業への人材派遣業を手掛けており、大手物流会社などの優良顧客を数多く持っています。

廣済堂は、2社の子会社化により既存の情報ソリューション事業やBPO事業等とのシナジー創出を見込んでおり、業容拡大につながると判断し本M&Aに至りました。

参考:株式会社廣済堂「株式会社エヌティ及び株式会社Neoの株式取得 (子会社化)に関するお知らせ」」

5. 人材派遣会社をM&Aするメリット

人材派遣会社をM&Aするメリットにはさまざまなものがあります。ここでは、人材派遣会社のM&Aで得られる主なメリットを売却側・買収側それぞれの立場からみていきましょう。
 

売却側のメリット 買収側のメリット
  • 事業承継手段として活用できる
  • 売却益を獲得できる
  • 経営の安定化が図れる
  • 事業の選択と集中ができる
  • 人材を一度に獲得できる
  • 事業規模を拡大できる

売却側のメリット

売却側のメリットとしては、主に以下が挙げられます。

事業承継手段として活用できる

中小規模の人材派遣会社のなかには、経営者が引退のタイミングにさしかかっていても後継者候補がいないために事業承継が行えないケースもみられます。

黒字であっても事業承継ができなければ、残されるのは廃業という選択だけですが、M&Aは事業承継手段として活用することも可能です。

M&Aでは買収側の企業が引き継ぎ先となり、売却側企業は自社の存続と事業継続が実現できます。また、事業承継目的でのM&Aでは株式譲渡を用いるのが一般的です。

株式譲渡では権利・義務がそのまま買収先へ引き継がれるため、従業員との雇用契約や顧客との関係も維持できるのも大きなメリットといえるでしょう。

売却益を獲得できる

なんらかの理由により廃業する場合は、設備の処分や賃貸オフィスの場合は原状回復工事費の負担など「廃業コスト」がかかります。また、廃業に関する手続きも必要となり、コストだけでなく時間も割かなければなりません。

廃業ではなくM&Aという選択をすれば、人材派遣会社を売却した利益を得ることができます。

株式譲渡の場合は、オーナー(株主が)対価の受け取り先となるので、まとまった現金を得ることが可能です。

経営の安定化が図れる

中小規模の人材派遣会社の場合、自社の力だけでは経営基盤の安定や事業拡大が難しいケースもあるでしょう。

競争が激化する人材派遣業界では、経営の安定化を図るためにM&Aで自社・事業を売却するケースも増えています。

買収側は売却側より規模が大きいケースがほとんどなので、M&A後の経営安定化を見込むことができるうえ、リソースの相互活用によって自社の成長・発展にも期待できる点がメリットです。

事業の選択と集中ができる

M&Aは事業の選択と集中を目的として行うこともできます。リスク分散のために多角化戦略をとる企業も多いですが、市場動向や社会環境の変化などで不採算事業がでる場合も少なくありません。

そのような場合、M&Aによって不採算事業を切り出して売却すれば、経営資源をコア事業へ集中させることができます。

複数事業を展開している企業が注力したい事業がある場合、人材派遣事業のみを売却するという方法があり、株式の移転を伴わないため引き続き会社運営をすることが可能です。

買収側のメリット

買収側のメリットとしては、主に以下が挙げられます。

人材を一度に獲得できる

人材確保は人材派遣会社が抱える課題のひとつであり、どれだけ優秀な人材を抱えているかは売上に直結する重要な要素です。

近年は高い専門性が求められるITや医療などで人材業のニーズが高まっていますが、このような専門分野に特化した人材やスキルのある人材を確保するのは容易なことではありません。

ですが、同業種間でM&Aを行えば売却側の人材(労働者)を一度に獲得することができます。売却側が専門分野に強みを持つ人材派遣会社であれば、業容拡大につながるのもメリットです。

事業規模を拡大できる

同業種間のM&Aでは売却側企業のシェアを獲得することができます。新たな派遣先企業(顧客)が増えれば新規求職者の獲得につながり、サービスの質向上や業容拡大も実現可能です。

さらにM&Aによって既存事業の規模が拡大すれば知名度アップにもつながるため、結果として優秀な人材も確保しやすくなり、さらなる売上拡大も見込めます。

【関連】会社を売るメリット・デメリット!高額で売るためのポイントも解説

6. 人材派遣会社をM&Aする時の流れ

使用スキームによって多少の違いはあるものの、人材派遣会社のM&Aは以下の流れで進みます。ここでは、売却側の立場からM&Aの流れとポイントをみていきましょう。

M&Aの専門家への相談

M&Aは専門家のサポート下で進めるケースが一般的であり、中小企業の場合はM&A仲介会社を利用するケースが多いです。

M&A仲介会社は戦略策定や相手先探し、交渉、クロージングまでを一貫支援していることが多いため、はじめてM&Aを行う場合でも通常常務への支障を最小限に抑えて進めていくことができます。

スムーズに進めるためには、相談前にM&Aを行う目的を明確にしておき、相手先への希望条件などをおおまかに決めておくとよいでしょう。

M&Aのご相談はM&A総合研究所までお気軽にお問い合わせください

人材派遣業界のM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、中小・中堅規模のM&A案件を主に取り扱っており、全国の案件に対応しています。

知識・支援実績豊富なアドバイザーが多数在籍しており、ご相談からクロージングまで丁寧にサポートいたします。

M&A総合研究所の料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。)

無料相談を随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお電話・Webよりどうぞお気軽にお問い合わせください。

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売却先の選定

依頼するM&A仲介会社が決まり仲介契約(アドバイザリー契約)を交わしたら、次は相手先企業探しを進めます。

担当M&Aアドバイザーへ希望条件を伝え、紹介された候補先のなかから交渉したい企業を絞り込むかたちが一般的です。

その後はM&A仲介会社を通して相手先へ交渉を打診し、双方がM&Aに前向きであれば本格的な交渉へ進みます。

秘密保持契約の締結

M&Aを進めるうえでは、売却側・買収側企業は互いに自社の詳細情報を開示しなければなりません。

財務やノウハウ・技術なども開示が必要となるため、第三者へ知り得た情報を漏洩しない旨を取り決めた「秘密保持契約」を締結します。

秘密保持契約で重要なのは開示範囲の決定であり、ポイントは開示対象となる情報と使用可能範囲を明確にすることです。

どこまで開示範囲とするかは慎重に決定する必要があるため、専門家に相談して進めていくとよいでしょう。

トップ面談・条件交渉

次は売却側・買収側の経営者(オーナー)が直接顔を合わせる「トップ面談」と呼ばれる場が設けられます。

トップ面談の目的は、信頼関係の構築、人柄や経営理念など書面で伝わりづらい部分の認識を深めることです。そのため、一般的に売却価額などの具体的な交渉はトップ面談では行われません。

トップ面談を行い、双方がM&A成立に向けて前向きであることが確認できたら、売却価額や引継ぎ条件などより細かな内容について交渉していきます。

基本合意の締結

M&Aの内容(使用スキーム・条件・売却価額など)、この時点までで取り決めた内容に互いが大筋合意したら基本合意書を作成して締結します。

基本合意書の契約はM&Aにおいて重要な意味を持ちますが、秘密保持や独占交渉権などの一部条項を除いて法的拘束力はありません。つまり、M&A成立を確約したものではない点に注意が必要です。

また、基本合意書で取り決めた諸条件や売却価額はデューデリジェンスの結果によって変更される場合もあります。

【関連】MOU(Memorandum of Understanding)とは?M&Aにおける基本合意書の効力も解説

デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスでは、売却側企業がどのようなリスクを抱えているかを財務・法務・人事・ITなどの面から専門家が調査します。

デューデリジェンスの結果は、買収側企業が買収金額の妥当性や買収の実行可否を判断する材料となるものです。

売却側企業に費用負担や必要準備などはありませんが、買収側に協力を求められたときは誠実に対応することが大切です。

【関連】M&Aのデューデリジェンス(DD)とは?用語の意味、項目別の目的、業務フロー、注意点を徹底解説

最終交渉と最終契約の締結

買収側がM&A実行を決めたら、最終交渉を行いM&A価額や諸条件などを決定します。最終交渉はデューデリジェンスの結果を踏まえて行うものです。そのため、基本合意締結時と条件が変わったり価額が修正されたりする場合もあります。

最終交渉の内容に互いが合意したら、最終契約を締結しM&Aが成立します。最終契約書の内容はそのすべてに法的拘束力があるため、締結前に齟齬がないかをしっかり確認することが重要です。

なお、最終契約締結以降は内容の変更や一方的な破棄は認められません。万一違反した場合は、相手先企業から損害賠償請求をされる可能性もあります。

クロージング

M&A成立後は株式の交付や対価の支払いなどを行うクロージングへ移ります。M&A成立からクロージングまでは一定期間あけることが多く、売却側はその間にクロージングのための要件を満たさなければなりません。

要件を満たさなければクロージングは行えないため、最終契約書の内容に沿ってしっかり準備をすることが重要です。

クロージングをもってM&A工程は完了となりますが、必要な手続き・準備はM&Aスキームによって違うため、M&Aアドバイザーと確認しながら進めていくようにしましょう。

【関連】M&Aクロージングの重要性!手続きの変化や注意点・実施方法を詳しく解説

7. 人材派遣会社のM&A時の売却価格の相場

人材派遣会社のM&Aにおいて、売却相場価格はどの程度なのかと考える経営者も多いはずです。ここでは、人材派遣会社のM&Aの売却価格について解説します。

大まかな相場価額

M&Aの最終的な売却価額は買収側との交渉で決まり、ブランド力や保有人材など「のれん」も価値に含まれるため一概にこの程度が相場価額と述べることはできません。

ですが、一般的な相場価格であれば簡単な計算で求めることができます。

  • 株式譲渡による売却:時価純資産額+営業利益の2~5年分
  • 事業譲渡による売却:時価事業純資産額+事業利益の2~5年分

上記の計算式に用いる年数をどのくらいにするのかは個々のケースによって違いますが、実際のM&Aでは2~3年に設定することが多いといわれています。

【関連】会社売却、M&Aの相場を解説!企業評価とは?

売却価格の計算方法

M&Aの最終価額は交渉で決まると述べましたが、交渉時は企業価値評価を基に交渉を進めるのが通常です。企業価値の算出方法には主に以下があり、それぞれ違った特性を持ちます。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、将来見込まれる企業(あるいは事業)の収益価値をもとに現在の企業価値を算出する方法です。代表的な手法には、DCF法・配当還元法・収益還元法があります。

業種や地域に限定されることなく評価をすることができ、将来性が加味されるため成長段階にある企業にも適した方法です。

その一方で、将来の収益予測には主観要素が入りやすく、市場や経済の状況を予測するには不確実要素が多いため、適正な評価が難しい点がデメリットといえるでしょう。

【関連】インカムアプローチとは?特徴や種類からメリットとデメリットまで解説!

コストアプローチ

コストアプローチは、評価対象となる企業の貸借対照表の純資産をもとに企業価値を算出する方法です。

純資産額は簿価ベースあるいは時価評価ベースのどちらかを用い、前者を簿価純資産法、後者を時価純資産法といいます。

貸借対照表上の金額をもとに企業価値を算出するため、主観がはいることはなく信頼性が高い点が特徴です。

また、買収側にとっては売却側企業の資産と負債を適正に評価できるので、有用な判断材料となります。

その一方で、企業(あるいは事業の)の将来見込まれる収益は評価に反映されない点がデメリットです。

【関連】マーケットアプローチとは?企業価値評価の方法をわかりやすく解説【実例あり】

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、評価対象となる企業と類似した上場企業を選び、時価総額や類似のM&A事例を参考に企業価値を算出する方法です。

非上場企業がマーケットアプローチを用いる場合は、事業内容や規模などが似た上場企業を選んで、財務諸表から比較倍率を求めて株価を評価します。

市場環境が反映される点や客観性が高い点では優れた算出方法ですが、自社と類似した上場企業の選定は難しく、また類似事業を行う上場企業がないスタートアップ企業などは、マーケットアプロ―チによる算出はできません。

【関連】マーケットアプローチとは?企業価値評価の方法をわかりやすく解説【実例あり】

8. 人材派遣会社を高値で売却するための成功ポイント

人材派遣会社の高値売却を実現するためには、どのようなポイントを意識すればよいのでしょうか。

人材派遣会社のM&Aでは、以下のような要素を満たしている売却側企業が高い評価を得られやすい傾向がみられます。

社会保険の加入状況

2020年5月の法改正により社会保険の適用範囲が拡大され、派遣会社と契約する労働者が一定要件を満たしている場合は加入が義務付けられました

具体的な加入条件は以下であり、このすべてに該当する労働者は社会保険に加入しなければなりません。

  • 所定労働時間:20時間以上/週
  • 賃金:8.8万円/月以上(年収106万円以上)
  • 勤務期間:2カ月を超える場合(見込みを含む)
  • その他:学生ではないこと

上記の条件を満たすにもかかわらず派遣労働者のなかに未加入者がいると、売却後に買収側から責任追及されトラブルに発展するケースも考えられます。人材派遣会社の売却を行う前は、社会保険の加入状況を今一度確認しておくことが重要です。

特化している専門分野がある

医療・介護・ITなど専門分野に強みをもつ人材は顧客(派遣先企業)からのニーズが高いため、このような専門スキルをもつ派遣労働者を多数持っている人材派遣会社は買収側からの高評価が得やすくなります。

特に近年はDX化を推進している企業が増えており、高度IT人材や先端IT人材などが多数在籍している人材派遣会社の取得は買収側にとって大きなメリットです。

自社に専門性の高い人材が揃っていたり、特化している専門分野がある場合は、派遣実績などを資料にまとめておき積極的にアピールするとよいでしょう。

優秀な派遣人員の離脱を防ぐ

人材派遣業のビジネスモデルでは、派遣労働者の質や人数が売り上げを左右します。人材派遣会社のM&A価額は、買収側はM&A後も売却側の派遣労働者が契約を継続することを想定したものです。

そのため、売却側が高い専門スキルを持つ派遣労働者を多数抱えていても、M&A前に離れてしまっては買収側は見込んでいたメリットやシナジーを得られなくなります。

M&Aの場合、人的資源は喪失されるケースも少なくないため、売却前に対策を講じておくとともに派遣労働者の引き継ぎも丁寧に行うことが重要です。

派遣労働者の能力向上を行っている

派遣労働者(登録スタッフ)に対して研修やセミナーの開催など、能力向上を図るための教育・訓練制度が充実している人材派遣会社は、買収側企業から高い評価を得られるケースが多いです。

自社が派遣労働者の能力向上のために制度を構築している場合は、どのような内容を行っているかなどを具体的にまとめておくとよいでしょう。

専門家のサポートを受ける

人材派遣会社のM&Aを成功させるためには、まず希望条件に合った相手先を探すことが重要であり、業界動向を分析したうえでタイミングを計るなどの戦略も必要です。

専門的な知識が必要となる工程も多いため、専門家にサポートしてもらいながら進めるとよいでしょう。

M&A仲介会社などの専門家は、必要な工程のサポートやM&A成功に向けた具体的なアドバイスを行うだけでなく、万一当事者間でトラブルが起こった際も解決に向けて対応してくれるため、安心かつスムーズなM&A進行ができます。

9. 人材派遣会社のM&Aまとめ

人材派遣事業の需要は拡大傾向にあり、少子化の加速による労働人口減少などで今後も需要が拡大するとの予測もあります。

近年は人材確保や事業拡大を目的とするM&Aだけでなく、異業種とのM&Aや海外進出のためのM&Aなどもみられるようになりました。

M&Aには自社の成長や発展、存続など多くのメリットがあり、有効な経営戦略のひとつです。M&Aを検討している場合は専門家へ早期に相談することで、満足度の高いM&A実現を目指せます。

10. 人材派遣業界の成約事例一覧

11. 人材派遣業界のM&A案件一覧

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