有限会社におけるM&Aとは?株式会社との違いから手続き方法まで解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

有限会社は、2006年の会社法制定まで設立できた会社形態の1つです。株式会社と特性が異なるため一定の制約はありますが、M&Aは可能です。当記事では、株式会社との主な違いに触れながら、有限会社におけるM&Aの手続き方法を詳しく解説します。

目次

  1. 有限会社の概要
  2. 有限会社のM&Aの手続き方法
  3. 有限会社のM&Aの手法
  4. 有限会社のM&Aのメリット・デメリット
  5. 有限会社のM&A・売却・買収事例
  6. 有限会社のM&Aを行う場合の注意点
  7. 有限会社のM&Aは専門家へご相談を!
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1. 有限会社の概要

まずは有限会社の概要から押さえましょう。国内では、会社表記に「有限会社」という形態がありますが、これはどのような会社のことを言い、一般的に株式会社との違いはどのような点にあるのでしょうか。また、有限会社でM&Aを活用できるのかという疑問点に関しても併せて解説します。

有限会社と株式会社の違いは?

有限会社は、会社形態の1つです。株式会社と比べ少ない資本金で設立できる点が特徴ですが、2006年(平成18年)の会社法により、有限会社は設立できなくなりました。現在存在する有限会社は「特例有限会社」と呼ばれ、2006年よりも前に設立された会社であるということを意味します。

以下、株式会社との違いを押さえましょう。

有限会社と株式会社の主な違い 有限会社 株式会社
資本金(最低額) 300万円 1円
決算公告の義務
取締役の任期 制限無 制限有
株式譲渡制限 制限有 定款により制限可能

有限会社のM&Aは可能?

有限会社は株式会社と同様にM&Aを活用可能なのでしょうか。結論から言うと、M&Aは可能です。2006年の会社法により、有限会社は会社法上の株式会社として一部の範囲で規定が適用される点が理由として挙げられます。ただし、定款が会社法に沿って変更されているか確認が必要です。

有限会社のM&Aの理由

有限会社がM&Aを活用する理由としては、多くの場合後継者不在や人材不足といった課題の解決が挙げられます。M&Aで会社や事業を他社に売却できれば廃業を避け、これまで培ってきた事業ノウハウや技術を存続させられるため、有益な対処法として多くの会社が注目しています。

【関連】有限会社は売却できる?株式譲渡の手続きのやり方や価格算出の方法・注意点を解説

2. 有限会社のM&Aの手続き方法

では、有限会社でM&Aを実施する際の手続き方法を押さえましょう。M&Aの決議から最終的な契約締結・クロージングまで7つのステップに分けて解説します。以下で記載する内容は基本的に、さまざまな業種に対応するものです。M&Aの基本的な流れをチェックしましょう。

  1. M&Aの決議
  2. ノンネームの検討
  3. 秘密保持契約締結・企業概要書確認
  4. アドバイザリー契約の締結
  5. トップ面談・合意
  6. デューデリジェンスの実施
  7. 契約締結・クロージング

①M&Aの決議

有限会社がM&Aに動き出すためにまず必要なのが、株式譲渡のための決議です。有限会社は取締役会を設置できないため、株主総会を開催し、決議を行う必要があります。株式譲渡制限会社で取締役会を設置している株式会社とは異なる点なので、手続きには注意してください。

②ノンネームの検討

M&Aの実施方向性が定まったら仲介会社に依頼し、助言を受けながら相手企業を選ぶのが一般的です。売却側は、条件や売却価格などの情報を匿名で記載した「ノンネームシート」を作成し、買収側はこれをもとに企業を絞り込みます。効果が見込めると判断できたら、マッチング成功です。

ただ、すぐに効果が見込める企業が見つかるとは限りません。会社の課題が深刻な場合マッチングを急ぐ気持ちはわかりますが、効果が得られなければM&Aを実施しても失敗に終わることになるので、企業選定は慎重に行ってください。マッチングには余裕をもって臨むことをおすすめします。

③秘密保持契約締結・企業概要書確認

マッチング先企業からより詳しい情報を開示してもらうわけですが、情報漏洩を防ぐ観点から秘密保持契約書(Non Disclosure Agreement)と呼ばれる書類を締結します。情報が漏れてしまうと、当事者企業がさまざまな不利益を被る可能性があるため、重要なプロセスです。

秘密保持契約書を取り交わしたら、企業概要書の確認に進みます。この段階で、ノンネームシートでは知り得なかった情報を得られるため、より具体的なM&Aのイメージを膨らませられるでしょう。開示情報を確認後、M&Aにふさわしい企業であれば、具体的な手続きに進みます。

④アドバイザリー契約の締結

相手企業と円滑にM&A手続きを進めるため、M&A仲介会社などの専門家に手続き仲介を依頼し契約を取り交わすのが一般的です。この際に取り交わされる契約を「アドバイザリー契約」と呼びます。アドバイザリー契約を締結する際は、仲介手数料など料金体系を入念に確認しましょう。

⑤トップ面談・合意

次に売却側・買収側双方の経営者が集まり、トップ面談を開催します。トップ面談の主な目的は条件交渉ではなく、経営理念や事業方針など価値観の相互理解を深めることです。多くの共感が得られ、M&Aを実施しても問題ないと判断できたら具体的な取引条件の交渉に進みましょう。

M&Aの取引条件は、双方がしっかり合意できる有益な内容にまとめ上げることが重要です。いずれか一方に不利益な内容では、契約後のトラブル発生リスクが高まります。また、売却側は条件交渉の中で、自社従業員の待遇を確保するなど不安要素を明確にしましょう。

⑥デューデリジェンスの実施

M&Aの条件交渉が済んだら当事者間で基本合意書を取り交わし、デューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスは、売却側の財務や税務の実態把握と、開示した内容に虚偽が含まれていないかを確認するために執り行われる需要なプロセスです。主に専門家に依頼して実施されます。

デューデリジェンスを怠ると、M&A後に売却側の簿外債務や粉飾決算等が発覚した時点で買収側企業の損失が増えることを意味します。時間も費用もかかりますが、リスク軽減のためにもデューデリジェンスは入念に行ってください。

⑦契約締結・クロージング

デューデリジェンス後、双方で細かい条件調整を行い最終的な取引条件を決定します。条件がまとまり次第、最終契約書を締結しましょう。最終契約書の締結後、内容に従い売却側による株式・事業の譲渡と、買収側による対価の支払いが実行されます。この最終プロセスがクロージングです。

最終契約書は、締結すると法的拘束力が発生します。契約後のトラブルを最小限に抑えるためにも、締結前に双方で条件を入念に確認しておくことが重要です。また、買収側は見込んだ効果を早く得るためのさまざまな施策(PMI)を講じ、売却側の事業を迅速に融合させましょう。

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3. 有限会社のM&Aの手法

有限会社が実際に売却・買収を実施する場合、どのような手法(スキーム)が用いられるのでしょうか。ここでは、有限会社で活用される主なM&A手法を4種類紹介します。迷った場合は、専門家に相談しながら会社状況や目的に合った手法を策定しましょう。

  1. 事業譲渡
  2. 株式譲渡
  3. 吸収合併
  4. 会社分割

①事業譲渡

事業譲渡は、売却側の事業の一部(または全部)を譲渡し、買収側が取得した事業の対価を現金で支払うM&A手法です。買収側は引き継ぐ項目を選択できるため、不要な負債を引き継ぐ必要がありません。ただ、許認可の再取得が必要な点と手続きが比較的煩雑であるという点が留意点です。

②株式譲渡

株式譲渡は、売却側の株主が保有する株式を譲渡し、買収側が対価を現金で支払うM&A手法です。株主が変わる程度で、比較的簡単に経営権を移転させられる点がメリットですが、売却側の債務が引き継がれる点がデメリットとして挙げられます。株式譲渡は、最も知名度の高い手法です。

③吸収合併

吸収合併は、売却側企業を買収側の別会社に統合させるM&A手法です。吸収合併では、売却側が消滅会社、買収側が存続会社とした扱われます。これに対し、新しく設立した会社に売却側企業を引き継がせる新設合併という方法もあります。

④会社分割

会社分割は、売却側が保有する事業における権利義務を切り離し、買収側の会社に引き継がせるM&A手法です。買収側の既存会社に引き継がせる吸収分割と、新しい会社に引き継がせる新設分割が存在します。また、会社分割は組織再編で用いられることが多い手法です。

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4. 有限会社のM&Aのメリット・デメリット

M&Aに成功すれば当事者企業は多くの恩恵が受けられるとされていますが、具体的にはどのような点で魅力なのでしょうか。ここでは、有限会社におけるM&Aで、当事者が得られるメリットと留意すべきデメリットとなる点を併せて紹介します。

メリット

まず、有限会社がM&Aを実施することで獲得できるメリットから押さえましょう。売却側・買収側それぞれの視点でメリットをまとめます。各企業にはどのような恩恵を享受できるのでしょうか。

売り手側

有限会社がM&Aを行う際、売却側企業が獲得できる主なメリットをチェックしましょう。

  • 後継者不在を解消できる
  • 廃業を阻止できる

買収側経営者を後継者にできるので、事業を存続させられます。有限会社側の経営者は安心して気兼ねなく引退できるでしょう。従業員の雇用も守られるなど廃業に比べてM&Aはメリットが多いと言えます。

買い手側

一方、有限会社がM&Aを行う際、買収側企業が得られるメリットとしては、以下のような項目が挙げられます。

  • 決算の公告をする必要がない
  • 株式会社よりも会社存続のコストを抑えられる

有限会社は決算公告の義務がなく、財務諸表を公開する必要がありません。また、取締役の任期に制限が設けられていないことから登記にかかる費用を押さえられるというメリットがあります。

デメリット

では次に、有限会社がM&Aを実施する際に想定される主なデメリットを押さえましょう。確かにM&Aに成功すれば、上記のような多くのメリットを得られますが、留意すべき点も同様にあるので注意が必要です。デメリットの多くは事前に対策を講じることで、リスクを軽減させられます。

売り手側

有限会社がM&Aを実施する際、売却側企業に対して想定されるデメリットには、次のような項目が挙げられます。

  • 従業員が不安を感じ退職するおそれがある
  • 相手企業がなかなか見つからない場合がある

売却の話を聞いた従業員が退職すると、企業価値が下落しM&Aが失敗するリスクがあります。また、M&Aを実施しようとしてもマッチングに苦戦し、廃業リスクが高まる可能性もある点に留意が必要です。

買い手側

一方、有限会社がM&Aを実施する際、買収側企業に想定されるデメリットには、以下のような点が挙げられます。

  • 上場できない
  • 買収に時間を要する場合がある

有限会社は上場できないため、M&A後に上場を検討している企業にはおすすめできません。有限会社から株式会社に変更手続きを済ませることで上場自体は可能になりますが、決算公告の表示など株式会社の義務が発生するので、注意が必要です。

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5. 有限会社のM&A・売却・買収事例

有限会社が過去に実施したM&Aによる売却・買収事例を紹介します。当記事で取り上げるのは、以下の3事例です。当事者が策定したM&A手法や実施目的を中心に取引概要をまとめます。

  1. 有限会社ウシオ工産×丸加ホールディングス株式会社
  2. ココカラファイン×有限会社薬宝商事
  3. 有限会社ベル・トップ×株式会社有村紙工

①有限会社ウシオ工産×丸加ホールディングス株式会社

輸送事業やクレーン作業事業などを手掛ける企業が鋼製建築用建具製造会社(有限会社)を買収した事例です。売却側は後継者不在に陥っており、買収側が事業拡大を目的にM&Aによる事業の引き受けを決断しました。

売却側 有限会社ウシオ工産
(鋼製建築用建具製造)
買収側 丸加ホールディングス株式会社
(トラック輸送、クレーン作業、機械部品加工)
M&Aの手法(スキーム) 株式譲渡
M&Aの目的 ・売却側の後継者不在の解決
・買収側の事業拡大
時期 2022年2月
価格 非開示

②ココカラファイン×有限会社薬宝商事

ドラッグストアの運営会社が調剤薬局の運営を行う有限会社を買収したM&A事例です。買収側は売却側の薬局事業を獲得し、神奈川県での事業拡大とヘルスケアネットワークの構築推進を主な目的としています。

売却側 有限会社薬宝商事
(調剤薬局2店舗運営事業)
買収側 ココカラファイン
(ドラッグストア事業、調剤薬局事業)
M&Aの手法(スキーム) 株式譲渡
M&Aの目的 ・神奈川県でのドミナント深耕
・地域におけるヘルスケアネットワークの構築推進
時期 2020年1月
価格 非開示

調剤薬局を展開する有限会社薬宝商事の株式取得に関するお知らせ

③有限会社ベル・トップ×株式会社有村紙工


段ボール事業を手掛ける企業によるM&A事例です。売却側は後継者不在の問題を抱えており、買収側はこの問題の解決とともに取引先を拡げられると判断し、会社事業を引き受けました。

売却側 有限会社ベル・トップ
(引っ越し用段ボール等の販売)
買収側 株式会社有村紙工
(段ボールの加工・製造事業)
M&Aの手法(スキーム) 株式譲渡
M&Aの目的 ・売却側における後継者不在の解消
・買収側の取引拡大
時期 2012年
価格 非開示

6. 有限会社のM&Aを行う場合の注意点

ここでは、有限会社がM&Aを実施する際に気を付けたいポイントを2つ解説します。

  • 売却の案件が限られる
  • 経営方針変更による従業員の処遇悪化の可能性がある

売却の案件が限られる

1つ目のポイントは、売却案件が限られるという点です。先ほど触れましたが、有限会社は2006年の会社法からは設立できません。つまり、2006年よりも前に設立された会社しか残っていないことを意味します。買収側は、目的のM&A案件を見つけられない可能性もある点に留意してください。

経営方針変更による従業員の処遇悪化の可能性がある

2つ目のポイントは、経営方針の変更等で従業員の処遇が悪化する可能性があるという点です。売却側は交渉の時点で自社従業員の処遇を確認し、できるだけ今の待遇を維持できるように努めましょう。何も確認せずにM&Aを進めると、従業員が不利益を被り退職してしまうおそれがあります。

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7. 有限会社のM&Aは専門家へご相談を!

有限会社は、株式譲渡制限や取締役の任期、資本金など株式会社と異なる点がありますが、M&Aによる事業承継は可能です。株主総会の開催や上場制限など株式会社間のM&Aとは別の留意点があるので、事前に特性を理解してから手続きに入ることをおすすめします。

トラブルを最小限に抑えて円滑なM&Aを目指すためにも、ぜひM&A仲介会社など専門家に相談し、サポートを受けましょう。

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