合資会社の事業承継はどうする?株式会社との違いを解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

合資会社を始めとする持分会社の事業承継は、株式会社の場合と違う部分もあるので注意が必要です。本記事では、合資会社の事業承継について、その方法や注意点、押さえておきたいポイント、合資会社とは何か、株式会社との違いなどを解説します。

目次

  1. 合資会社とは
  2. 合資会社の事業承継方法
  3. 合資会社における事業承継のポイント・注意点
  4. 合資会社は事業承継税制が適用されるのか
  5. M&Aの相談はM&A総合研究所へ
  6. まとめ
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1. 合資会社とは

一般に会社というと株式会社を指すことが多いですが、実態は「持分会社」という形態もあります。持分会社とは、出資者と経営者が分離されない会社の形態で、株式を発行しないのが特徴です。

持分会社はさらに「合名会社」「合同会社」「合資会社」に分けられ、3種類の持分会社では合同会社が最も一般的で、グーグルやアマゾンなど世界的な大企業でも合同会社の形態をとっているところがあります。

一方、合資会社は株式会社や合同会社に比べると数が少なく、実態は酒造会社やタクシー会社などの一部でみられるのみです。

合資会社の定義

合同会社・合名会社・合資会社の主な違いは、出資者(社員)の責任範囲です。合同会社は出資者全員が「有限責任社員」、合名会社は全員が「無限責任社員」、合資会社には有限責任社員と無限責任社員の両方が在籍しています。

つまり、合資会社は「有限責任社員と無限責任社員の両者がいる会社」です。よって、合資会社を理解するには、有限責任社員と無限責任社員とは何かを知っておく必要があります。

直接責任と間接責任

有限責任社員と無限責任社員という分類以外に「直接責任」と「間接責任」という概念があり、まずこちらを理解しておくことがポイントです。

直接責任とは債権者に対して直接的に責任を負うことを指し、会社の負債を個人の財産を使ってでも返済する義務があります。

一方、間接責任は債権者に対して会社を通してのみ責任を負うので、自身の財産を返済に充てなければならないといった義務はありません。

株式会社の株主は間接責任、持分会社の社員は直接責任となり、直接責任のうち「有限責任」の社員が有限責任社員、「無限責任」の社員が無限責任社員です。

有限責任社員

有限責任社員とは、自分が出資した出資額の範囲内で、債権者に対して直接責任を負う社員のことです。

有限責任社員は、会社が債務不履行に陥った場合、出資額を全額出資済みであればその出資額を失うだけで、個人の財産で弁済する必要はありません。

しかし、もしまだ未履行の出資があるなら、その分は個人の財産を使ってでも弁済しなければならないことになります。

無限責任社員

無限責任社員とは、出資額に関わらず、限度額なしで直接責任を負う社員のことです。もし会社が債務不履行に陥ったら、無限責任社員は自身の財産を使ってでも全額を弁済しなければなりません。

無限責任社員は個人事業主と同じように、事業の破綻が個人の破綻に結び付く可能性がある、大変責任の重い立場だといえます。

合資会社の特徴

合資会社にはさまざまな特徴がありますが、事業承継に関連する特徴としては、会社の負債を相続した時に、ほかの相続資産と負債を相殺できるという点があります。

例えば、会社が1億円の債務超過で他の相続財産が3億円の場合、相続税の課税対象は3億円から1億円を引いた2億円です。つまり、事業承継において、合資会社は節税になる場合があります。

合資会社と株式会社の違い

合資会社と株式会社の主な違いは、出資者が社員か株主か、つまり直接責任か間接責任かという点です。しかし、両者は他にも細かい点でいろいろな違いがあります。

例えば、株式会社は出資者(株主)と経営者が違うため、株主に対して決算報告を行う義務があります。一方、合資会社は出資者イコール経営者という形態なので、決算報告の義務はありません。

また、実態は合資会社は設立の際に必ずしも資本金を用意する必要がなく、現物や役務の提供、個人の信用などで代替が可能です。

そのほか、合資会社は株式会社より登録免許税が安く定款認証が要らないことから、設立コストが安いという違いもあります。

【合資会社と株式会社の主な違い】

  株式会社 合資会社
出資者 株主 社員
決算報告の義務 あり なし
資本金 必要 資本金以外の出資も可能
設立コスト 比較的高い 比較的安い

2. 合資会社の事業承継方法

会社の事業承継の方法にはいくつかの種類があるので、それぞれのメリット・デメリットを把握しておく必要があります。

さらに、合資会社の事業承継は株式会社と違う部分も多いので、こちらも理解しておくことが大切です。

事業承継の種類

事業承継の種類は、後継者が親族・社内の人物・第三者のどれかによって3つに分類できます。

【事業承継の種類】

  1. 親族を後継者とする事業承継
  2. 社内の人物を後継者とする事業承継
  3. M&Aでの事業承継

①親族を後継者とする事業承継

親族を後継者とする事業承継は、昔からある一般的な方法です。経営者の子供を後継者にすることが多く、子供は将来後を継ぐことを想定し、経営者のもとで働いているケースも多くみられます。

親族の事業承継は、後継者がよく知っている人物なので適正が見極めやすく、早い段階から教育しやすいのがメリットです。

しかし、近年の実態は子供が別な職業に就いていたり、経営の苦労を子供に味わわせたくないと考える経営者が増えてきたりしたのもあり、代々稼業を継ぐケースが減少している実態があります。

②社内の人物を後継者とする事業承継

親族でない社内の人物を後継者とするのも、事業承継としてよくある手法です。親族に限定せず社員・役員から広く後継者を選定すると、より適正のある後継者を選びやすいのがメリットです。

ただし、社内の人物を後継者に事業承継する場合は、持分や株式の買収資金をいかに捻出するかが問題になります。

事業承継では後継者は雇われ経営者ではなく、経営権を譲渡するのが一般的です。そのため、社内の人物が持分や株式を取得しなければなりませんが、会社員である個人が会社の買収資金を持っていることはそう多くありません。

そのため、社内の人物への事業承継では、買収資金を金融機関やファンドから調達することが多いです。

③M&Aでの事業承継

親族や社員への事業承継に替わる手段として、M&Aでの事業承継が近年増えてきています。

M&Aでの事業承継は親族や社員より選択肢が多く、シナジー効果が得られる場合もあるのがメリットですが、今まで面識のなかった第三者へ会社を譲るので、相手をよく見極めることが重要です。

また、従業員の雇用や取引先との関係維持など、承継先と調整しなければならない要素が多いので、慎重に進めていく必要があります。

【関連】事業承継の方法は5種類!方法別のメリット・デメリット、注意点、必要な準備を徹底解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

合資会社における親族内事業承継

合資会社の親族内事業承継も株式会社の場合と同じように可能ですが、実際は株式会社とは形態が違うため同じようにはいかない部分も多いです。

まず、無限責任社員は株主より責任が重いので、親族が後継者になりたがらないケースが考えられます。会社の破綻が自身の破綻につながるリスクを負って、合資会社を引き継ぎたいと思う親族をみつけるのは大変でしょう。

さらに、合資会社は無限責任社員と有限責任社員が両方いなければならないので、もし無限責任社員が死亡して有限責任社員だけになると、合資会社は自動的に合同会社に変更されてしまいます。

そうなると、新たに無限責任社員を入れたうえで、合同会社を解散して合資会社を再び設立するなどの手続きが新たに必要です。

合資会社における社内事業承継

合資会社は家族だけで経営している小規模な会社の割合が高く、社内で親族以外の後継者をみつけるのが難しいケースが多いです。

また、たとえ親族以外の後継者候補が見つかったとしても、借入金の連帯保証などがある場合、それを承継しなければならないのを嫌って事業承継が頓挫するケースも考えられます。

合資会社におけるM&Aでの事業承継

合資会社をM&Aで事業承継する場合、まずどのようなスキームでM&Aを行うのかという問題があります。

株式会社では株式譲渡という比較的簡便なスキームを使うことができますが、合資会社の持分を同じように取り扱うことはできません。

合資会社のM&Aを行うには、事業譲渡や会社分割などのスキームを使うか、株式会社に変更してから株式譲渡するといった、複雑な手続きが必要です。

また、事業譲渡や会社分割の場合、その対価を社員が持分払戻しなどで受け取ると、みなし配当所得として最高55%の税金が課せられることになります。

これは株式譲渡の20%よりかなり高く、これも合資会社のM&Aを難しくする要因になると考えられます。

3. 合資会社における事業承継のポイント・注意点

前章で見たように、合資会社の事業承継は株式会社より難しい面があります。合資会社の事業承継を行うには、ポイントや注意点を押さえて適切に手続きを進めていくことが大切です。

特に、下に挙げた4点はしっかり踏まえておくようにしましょう。

【合資会社における事業承継のポイント・注意点】

  1. 事業承継の計画をしっかり立てておく
  2. 出資者が複数いれば清算は免れる
  3. 持分承継を定款に定めておく
  4. 株式会社へ変更することもできる

事業承継の計画をしっかり立てておく

合資会社は株式会社よりも事業承継が難しい面があるので、早い段階から事業承継の計画をしっかり立てておく必要があります。

後継者の教育や引き継ぎの計画ももちろん重要ですが、合資会社の事業承継の場合は、どのようなスキームで承継するかを計画しておくことがポイントです。

また、持分の相続は税金が高額になりやすいので、節税対策もしっかり行わなければなりません。

持分(の払戻請求権)を相続した相続人がそれを出資して社員となった場合、既存の社員より出資額が大きくなる可能性が高いのも問題点です。

損益の分配は出資額に応じるため、出資額が大きいと分配に不釣り合いが出ることになるので、損益の分配についても定款変更などで調整が必要になるでしょう。

出資者が複数いれば清算は免れる

合資会社を含む持分会社では、社員が誰もいなくなると自動的に会社は解散となるので、持分会社の社員の死亡による解散・清算を免れるには、出資者が複数いればよいことになります。

合資会社の場合は必ず社員が2人以上いるので、一人が死亡しても解散することはありません。しかし、無限責任社員または有限責任社員がいなくなれば、自動的に合同会社や合名会社に変更されるため、また合資会社に戻すのに面倒な手続きが必要です。

社員の誰かが死亡しても合資会社のまま存続したい場合は、無限責任社員と有限責任社員をそれぞれ2人以上置くという方法も考えられますが、実際それだけの人数の出資者がみつかるかという問題もあります。

【関連】会社清算・解散とは?手続きの流れや費用、スケジュールを解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

持分承継を定款に定めておく

合資会社の社員が死亡して持分を相続する場合、相続人は持分の払戻請求権を相続することになります。そこから再び払戻請求権を出資して社員となるのは手続きが面倒になるのに加えて、多額の税金を負担しなければなりません。

こういった面倒を避け、事業承継を円滑に行う対策の一つは、定款に持分承継を定めておくことです。相続人が持分承継して社員になる旨を定款に定めておけば、事業承継をある程度円滑に進めることができます。

株式会社へ変更することもできる

ここまでみてきたように、合資会社の事業承継は株式会社より面倒な部分が多く、税金面でも不利になることが多いです。よって、事業承継を行う前に株式会社に変更するのが現実的な対策方法だといえるでしょう。

株式会社に変更してから株式譲渡で事業承継すれば、手続きが分かりやすく税金面でも有利です。

合資会社から株式会社への変更は、まず合資会社を解散してから株式会社を設立する流れになります。

株式会社の設立にともなって登記費用などがかかりますが、相続時の税金面での有利さを考えると、トータルとしては費用の節約になることが多いと考えられます。

4. 合資会社は事業承継税制が適用されるのか

近年、国は事業承継を推進するために、事業承継の際の相続税・贈与税を猶予・免除できる「事業承継税制」を制定しています。

事業承継税制は株式会社だけでなく、合資会社を含む持分会社にも適用されます。合資会社の事業承継の相続税対策として、事業承継税制を活用することは可能ですが、事業承継税制の適用対象にはいくつかの条件があるので注意が必要です。

まず、資本金や従業員数が一定数以下の中小企業であることが必要です。具体的な資本金額や従業員数は業種によって異なりますが、例えば製造業は資本金3億円以下、従業員数300人以下となっています。

そのほか、風俗営業などの会社や、資産の保有・運用を主な目的とする会社は対象外になるといった条件もあるので、事前によく確認しておくようにしましょう。

【関連】事業承継税制とは?メリットとデメリットを紹介!ポイントは?| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

5. M&Aの相談はM&A総合研究所へ

合資会社のM&Aは、株式会社への変更などさまざまな対策を練る必要があります。M&Aでの事業承継を行う際は、仲介会社など専門家のサポートを得ることが不可欠です。

M&A総合研究所は、中堅・中小企業のM&Aを手がける仲介会社です。多数のM&A実績を持つアドバイザーのサポートのもと、満足いく成約を実現すべくお手伝いさせていただきます。

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6. まとめ

合資会社の事業承継は株式会社と違う部分が多く、基本的には合資会社の事業承継のほうが不利な面が多いです。よって、株式会社の事業承継の場合よりも、事前の計画や対策がさらに重要になるといえます。

【合資会社と株式会社の主な違い】

  株式会社 合資会社
出資者 株主 社員
決算報告の義務 あり なし
資本金 必要 資本金以外の出資も可能
設立コスト 比較的高い 比較的安い

【事業承継の種類】
  1. 親族を後継者とする事業承継
  2. 社内の人物を後継者とする事業承継
  3. M&Aでの事業承継

【合資会社における事業承継のポイント・注意点】
  1. 事業承継の計画をしっかり立てておく
  2. 出資者が複数いれば清算は免れる
  3. 持分承継を定款に定めておく
  4. 株式会社へ変更することもできる

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