2025年07月16日更新
会社を売るメリット・デメリットとは?最適なタイミングや高く売却するコツも解説
高い株価で会社を売るためにはタイミングを見計らうことが重要で、タイミング次第で株価が大きく変わります。本記事では、会社を売る最適なタイミングを解説するとともに、より高い株価で売るための考え方や、タイミングを逃さないポイントを解説します。
目次
1. 会社を売ることで得られるメリット
会社を売却(M&A)することは、単に会社を手放すだけでなく、経営者や従業員、事業にとって多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的なメリットを3つ紹介します。
①創業者利益(売却益)を獲得できる
会社を売ることで、経営者は株式の対価として多額の現金を得られます。これは「創業者利益(キャピタルゲイン)」と呼ばれ、ハッピーリタイア後の生活資金や、新たな事業を始めるための資金として活用できます。長年の経営努力が大きな資産となって還元される点は、最大のメリットといえるでしょう。
②後継者問題が解決する
親族や社内に適当な後継者が見つからず、事業承継に悩む経営者は少なくありません。M&Aによって第三者に会社を売ることは、有力な事業承継の手段です。これにより、長年培ってきた事業や技術、そして大切な従業員の雇用を守りながら、会社を存続させられます。
③大手企業の傘下で事業を成長させられる
資本力やブランド力、販売網を持つ大手企業の傘下に入ることで、自社だけでは難しかった大きな成長を実現できる可能性があります。買い手企業が持つ経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を活用することで、新製品開発や海外展開など、事業の可能性を大きく広げることが期待できます。
2. 会社を売る最適なタイミングはいつなのか?
会社を売るときは、自社の条件にあった買い手を探すことも重要ですが、最適なタイミングを見逃さないこともポイントといえます。なぜなら、同じ価値を持つ会社でも、タイミングによって株価が大きく変わることも多いためです。
しかし、会社を売ることは個々の事情が大きく影響するうえ、ほとんどの経営者にとって初めての経験となるので、いつがよいタイミングなのかわからないケースも多いです。
この章では、個々の会社の事情によらず、一般論として会社を売るのに最適と考えられるタイミングを解説します。
会社売却に適した4つのタイミング
会社を売るのに一般的によいといわれるタイミングは、好景気の時や業界再編の動きがある時ときなど、主に以下の4つがあります。
しかし、あくまでも一般論なので、実際に会社を売るときは個々の会社の事情なども加味し、総合的に判断することが必要です。
- 業績はよいが経営者の意欲が減少しているとき
- 経営者が気力や体力の衰えを感じたとき
- 好景気のとき
- 業界再編の動きがあるとき
①業績はよいが経営者の意欲が減少しているとき
会社の業績がよいときは経営者は誰しも意欲に満ちていると思われがちですが、実際はさまざまな理由で意欲が落ちることもあります。
もし、意欲がもう戻ることはないと判断したのなら、業績がよいときが会社を売る最適なタイミングです。業績のいい会社は株価が高くなりやすいので、経営を続けるつもりがないならできるだけ早めに会社を売るほうがよいでしょう。
②経営者の引退を考えているとき
経営者自身が気力や体力の衰えを感じたときは、会社を売るタイミングのひとつです。人は70代くらいになるとどうしても気力・体力が落ちるといわれているため、60代くらいで会社を売るための準備を始めるほうがよいでしょう。
早めの準備が必要な理由は、会社を売ること自体が気力と体力を必要とするので、完全に気力と体力が衰えてしまってから会社を売る検討を始めてもタイミングが遅すぎるためです。
衰えてから会社を売るとどうしても成約を急ぐことになるので、精神的に余裕のある買い手に対して交渉面でも不利になりやすくなります。
③好景気のとき
業界が好景気のときは買い手が積極的になるので、会社を売るのに適したタイミングとなります。好景気なら会社を売る必要はないことも多いですが、買い手の傘下に入って事業拡大したい場合やイグジットを狙いたい場合は好機です。
異業種間M&Aの場合、会社を売る側の業界は好景気ではないが、買う側の業界が好景気というパターンも考えられます。買い手・売り手双方の業界動向をみて、最適なタイミングを判断することが大切です。
④業界再編の動きがあるとき
業界再編の動きがあるときも、会社を売るいいタイミングとなる可能性があります。ただし、業界再編といってもいろいろなタイプがあるので、中小企業にとって最適なタイミングとなる業界再編であるかを見極めなければなりません。
中小企業にとっていいタイミングとなるのは、業界がまだ成長期にあり、中小企業がM&Aで協働し力をつけていくタイプの業界再編が起こっている段階です。この時期は株価も高くなりやすいので、会社を売るいいタイミングだといえます。
一方、成熟期に入ってしまうと大手同士の生き残りを目指すM&Aが中心となるので、中小企業が会社を売るタイミングとしては遅すぎることが多いです。
自社の業績から考える売却タイミング
業績がよい時期と悪い時期では、会社を売る最適なタイミングは異なります。会社を売る際は、自社の業績を鑑みたうえで、その業績において最適なタイミングがいつなのかを見極めることが大切です。
- 自社の業績がよい時期
- 自社の業績が悪い時期
- 業績はよくないが事業に対する意欲があるとき
①自社の業績がよい時期
業績がよいときは、基本的には会社を売るのではなく経営を続けて事業発展していけばよいですが、意欲減少など会社を売る理由がある場合は、逆にむしろ業績がよい時のほうが最適なタイミングといえます。
業績がよいのであれば基本的には経営に邁進(まいしん)すればよいですが、あえてこの時期に会社を売る選択肢もあることを知ると経営戦略の幅が広がります。
②自社の業績が悪い時期
自社の業績が悪い時期は、経営者の意欲や経営状態の深刻度合いなどによって、会社を売る最適なタイミングを見極めていきます。
業績が悪く経営者の意欲がない時は、たとえ安値でも早く会社を売るほうが社員や取引先に迷惑をかけずに済むケースもあるので、しっかりタイミングを見極めることが大切です。
③業績はよくないが事業に対する意欲があるとき
経営者に意欲があって経営状態もまだ倒産を意識するような段階でない場合、経営者にとっては頑張りどころだといえます。この段階では会社を売るというよりも、資本提携や業務提携で業績回復を狙う場面が多いです。
ただし、いくら意欲があっても倒産を回避できないような状態なら、倒産してしまう前に会社を売るというのも現実的な選択肢です。
3. 会社をより高く売るための方法
自社を売却するとなれば、できるだけ高く価格で売りたいと考えるのは当然ですが、そのためにはどのような点を意識すればよいのでしょうか。
会社をより高い株価で売るためには、タイミングを見極めるだけでなく、非上場企業の株価算出方法を理解したうえで、自社の株価を高める努力をする必要があります。
非上場企業の株価算出方法
非上場企業の株式には市場株価がないため、M&Aで会社を売る際は、企業価値評価(バリュエーション)によって妥当な株価を算定します。企業価値評価の方法は主に3つに大別されます。
- コストアプローチ:会社の純資産を基準にする方法です。「時価純資産法」などが代表的で、中小企業のM&Aでは、この時価純資産に数年分の営業利益(のれん)を加味して評価することが多くあります。
- インカムアプローチ:将来期待される収益やキャッシュフローを基に評価する方法です。「DCF法」が有名で、将来性のあるベンチャー企業や成長企業でよく用いられます。
- マーケットアプローチ:類似する上場企業の株価やM&A事例を参考に評価する方法です。「類似会社比較法(マルチプル法)」などがあります。
どの評価方法を用いるかは、会社の規模や業種、成長段階によって異なり、複数の方法を組み合わせて総合的に判断するのが一般的です。
企業価値(株価)を高める3つのポイント
株価を高めるためには、収益力・財務状況・投資効率を改善する必要があります。ただし、これらの指標は完全に独立したものではないので、総合的にみていく視点も必要です。
- 収益力を上げる
- 財務状況を改善する
- 投資効率を上げる
①収益力を上げる
収益力の高さは、買い手が最も重視するポイントの一つです。収益力強化とは、具体的に「売上向上」と「コスト削減」を指します。会社を売る準備段階では、短期間で効果が見込める施策に着手することが重要です。
- コスト削減: 役員報酬の見直し、不要な交際費や広告宣伝費の削減、遊休資産の売却による固定資産税の圧縮などが挙げられます。
- 売上向上: 短期での改善は容易ではありませんが、既存顧客へのアップセル・クロスセル強化や、Webマーケティングの改善など、着手しやすい部分から見直しましょう。
これらの取り組みは、損益計算書(PL)の改善に直結し、企業価値を高める効果があります。
②財務状況を改善する
買い手は財務諸表、特に貸借対照表(BS)を入念にチェックします。健全な財務状況は買い手に安心感を与え、交渉を有利に進める要因となります。具体的には、以下のような改善策が考えられます。
- 不要資産の整理: 事業と無関係な資産(高級車、ゴルフ会員権、不動産など)を売却し、現金化します。
- 債権・債務の整理: 売掛金の回収を早め、滞留債権を整理します。また、過剰な借入金があれば返済を進めます。
- 在庫の適正化: 不良在庫や過剰在庫を処分し、管理コストを削減します。
これらの対策により、貸借対照表がスリム化され、資産効率の良い会社だと評価されやすくなります。
③投資効率を上げる
限られた資本をいかに効率的に利益へ結びつけているかは、会社の経営効率を示す重要な指標です。会社を売る前に、以下のような観点から投資効率を見直しましょう。
- 不採算事業の見直し: 複数の事業を展開している場合、赤字が続いている事業や将来性の低い事業から撤退・売却を検討します。これにより、経営資源を主力事業に集中させられます。
- 設備投資の最適化: 稼働率の低い設備は売却や廃棄を検討し、維持コストを削減します。一方で、生産性向上に直結する設備への投資は、企業価値を高める上で有効です。
事業ポートフォリオを整理し、経営資源を「選択と集中」させることが、投資効率の改善につながります。
4. 会社売却のタイミングを逃さないための6つのポイント
会社を売るタイミングを把握していても、早めの準備や磨き上げといった、実行に移すための用意ができていなければスムーズに進みません。
会社を売る目的を明確にしたり、情報漏洩に気をつけたりなど、手続きを円滑に進めるための準備も必要です。M&Aの専門家に相談することも重要なポイントとなります。
- 早めに準備をする
- 会社を売る目的を明確にする
- 自社の磨き上げを行っておく
- 業界動向をこまめにチェックする
- 情報漏洩に気を付ける
- M&Aの専門家に相談する
①早めに準備をする
会社を売るタイミングを逃さないためには、早めに準備を始めることが重要です。会社を売る準備として、まずは会社の現在の状況をあらためて把握しておきましょう。自社の財務状況や経営資源を理解しておくことは、次節で解説する目的の明確化や磨き上げの土台にもなります。
株式が複数の株主に分散している場合は、全株式を集約できるか確認しておくことも大切です。特に中小企業の場合は、株券発行会社なのに株券を紛失してしまっていたり、そもそも正式な株主が誰なのかわからなくなっていたりといったケースもあります。
このようなケースでは、不発行会社への移行など面倒な手続きが必要になるので、早めに取りかかっておくことが大切です。経営者の個人資産が会社名義になっている場合は、資産を分離する手続きも行わなければなりません。
②会社を売る目的を明確にする
会社を売る目的には、事業承継や資金の獲得、シナジー効果などさまざまなものがあります。どのような目的のために会社を売るのかを明確にしておくことが、タイミングを逃さないための重要なポイントです。
会社を売る目的があいまいでは買い手候補選定の基準が不明確になり、よい買い手を見つけるタイミングを逃してしまいかねません。
目的があいまいなままでは買い手に効果的なアピールができなくなるので、交渉で買い手に買い叩かれる危険性もあります。
③自社の磨き上げを行っておく
磨き上げとは、会社を売る前に自社がより魅力的に見えるように準備することです。同じ価値を持つ会社でも、磨き上げをしっかり行うことで買い手がつきやすくなり、最適なタイミングを逃さず成約できます。
磨き上げのプロセスですが、まず会社を売るにあたって重大な問題点があれば、それを排除する必要があります。
特に、コンプライアンス違反は会社を売る前に必ず解消しておかなければなりません。相続対策のための不要な資産は整理しておきましょう。
重大な問題点を排除したら、次はより高い株価を引き出すための準備を行います。業務システム検討しなおして効率化できる部分がないか探したり、強みを明確化して分かりやすい資料にまとめたりするのは非常に有益です。
④業界動向をこまめにチェックする
M&Aは同業種間だけでなく、近年は異業種からの参入も活発です。自社の業界動向はもちろん、周辺業界や市場全体のトレンドを常にチェックすることが、最適な売却タイミングを計る上で重要になります。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)の流れで、自社の技術や事業が他業種からどのように評価されているかを把握しておくことが大切です。
⑤情報漏洩に気を付ける
情報漏洩は会社売却が失敗する重大なポイントなので、事前にきちんと対策しておく必要があります。
大前提として、社内や取引先などに会社を売る情報を漏らさないことが大切です。社内で会社を売ることを必要以上に話したり、関連資料を見える場所に置いたままにしたりといったミスで情報は漏洩します。
買い手・売り手間の情報漏洩にも気をつけなければなりません。基本合意書などで保持すべき情報の範囲を明記し、秘密保持契約を締結しておくことが大切です。
⑥M&Aの専門家へ相談する
初めて会社を売る経営者の方が、自身の力だけで最適なタイミングを図るのは困難です。M&A・売却をするためには専門的な知識も不可欠なので、M&A仲介会社などの専門家に相談し、売却のタイミングや準備などのサポートを受けるとスムーズに進められます。
5. 会社を売るタイミングの相談先
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6. 会社を売るタイミングのまとめ
会社を売る最適なタイミングは、経営者の状況、会社の業績、業界動向など、多くの要因によって決まります。創業者利益の獲得といったメリットを最大化するためにも、自社にとっての売り時を見極めることが重要です。本記事で解説したポイントを参考に、早い段階から準備を進め、必要に応じて専門家のサポートを受けながら、納得のいく会社売却を目指してください。
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