2022年12月01日更新
名義株とは?M&Aや相続時の名義株問題を解決する方法を解説!
実際の株主と株式名簿の株主が別人となっている名義株は、M&Aや相続時にトラブルの要因となる場合があります。本記事では、名義株とはどのようなものか、M&Aや相続の際に想定されるトラブルとその解決法を解説します。
1. 名義株とは
名義株とは、本当の株主でない人が名義だけ株主名簿に載せている状態の株式のことです。実際に出資したのは別人で、名簿に載っている人は配当を受け取らず株主総会にも出席せず、株主としての実態がない株式をいいます。
本来、株主名簿に記載された株主と真の株主は一致するはずですが、実際はさまざまな理由で一致していないケースも多いです。
事業譲渡など一部のスキームを除いて、M&Aでは多くの場合で株式を売買するので、保有者が明確でない名義株はトラブルのもとになります。M&Aを行う際は、自社株式に名義株がないかあらためて確認しておくことが重要です。
なぜ名義株が多いのか
名義株が多い理由はさまざま考えられますが、最も大きな要因は旧商法時代のなごりです。
昔は会社を設立するためには7人以上の発起人が必要だったので、小さな会社は親戚や社員などに形だけの株主になってもらうケースが多くありました。株主名簿に名前だけを書かせてもらい、実際の出資は経営者など別の人が行う仕組みです。
こういったいきさつで設立された会社が現在も存続している場合、名前だけ借りている状態も継続されたままであれば、その株式は名義株になります。
名義株問題は決して一部の特殊な事情の会社だけのものでなく、特に社歴の長い会社の場合には当てはまる可能性の高い一般的な問題だと認識すべきです。
そのほかの理由としては、何らかの理由で意図的に名義株を作るケースもあります。例えば、経営者が過去に破産したことがあり、経歴を隠しておきたい場合に名義株を作るケースが考えられます。
相続税対策で子供名義の名義株を作るのも考えられるケースです。後の章で詳しく解説しますが、名義だけ変えても相続税対策にはならず、かえってトラブルの原因となるおそれがあります。
名義株主=株主ではない
名義株が存在すると、その株式の保有者は名義を貸している人なのか、それとも借りた人なのかといった問題が生じます。
名義人と名義を借りた人のどちらが株主なのかは、過去の判例で名義人は株主ではないとの判断が下されており、それに従うのが通例です。名義株主は株主ではありません。
名義株であるかの判断基準
過去の判例により、名義株の本当の株主は名義人ではなく、名義を借りた人としなければなりません。しかし、名義人に本当に株主としての実態がないか判断するのは、ケースによっては難しいこともあります。
名義株であるかの判断基準も、過去の判例に従うのが通例です。判断基準としては、実際に出資したのは誰か、株主総会の議決権は誰が行使しているか、配当は誰が受け取っているかなどを考慮し、総合的に判断します。
そのほかには、名義を借りた理由は合理的か、当事者が自分は株主であると認識しているか、株券発行会社の場合は株券を誰が持っているかなどが判断基準です。
これはあくまでも総合的な判断であり、機械的に判断できる明確な判断基準はないので注意が必要です。名義株のある会社のM&Aを行う際は、判断基準を熟知している専門家のサポートを受けることをおすすめします。
2. M&Aや相続時に起こりやすい名義株問題
名義株はM&Aの実施時だけでなく、相続時にも問題になることがあります。相続による事業承継などを行う際は、自社に名義株があるか確認しておくことが大切です。
M&A時または相続時に起こりうる主な名義株問題を下に示しました。これらのトラブルの可能性を考慮し、問題が起こらないように対策して手続きを進めましょう。
- 売主を明確にできないケースがある
- 組織再編が否定される場合がある
- 手順を踏まない株主名簿書き換えによるトラブル
M&A時の名義株問題
M&A時に名義株でトラブルになる事例としては、「売主が明確でないためにトラブルが起こる」「議決権が足りなくなり組織再編できなくなる」といったことが考えられます。
そのほか、売り手側が自分だけで名義株問題を解決しようとして、正式でない手順を勝手に踏んでしまうことで生じるトラブルも注意しましょう。
売主を明確にできないケースがある
前章で解説した判断基準を用いて名義株の株主がはっきりすれば問題ないものの、あくまでも総合的に判断するので、誰が真の株主かどうしても確定できないケースもあります。
売り手側は株主を明確にできたと思っていても、買い手や名義株主本人がそれに納得するとは限りません。
買い手としては、売主が明確でないままM&Aを実行し、お金を支払った後で名義株主に真の株主であることを主張され、売却代金を要求されるのが最もおそるべき自体です。
名義株の株主をどうしても明確にできない場合、買い手がこのようなトラブルを恐れて慎重になりM&Aを断念してしまうケースも考えられます。
組織再編が否定される場合がある
M&Aの手法にはさまざまあり、会社分割や合併といった株式譲渡以外の手法には、組織再編を目的とするものが多いです。組織再編を行うには、株主総会の特別決議で3分の2以上の賛成が必要ですが、名義株の割合が非常に多く3分の1を超えていた場合は特別決議が可決できない可能性も考えられます。
例えば、吸収合併の場合、合併契約書を締結した後、効力発生日までに株主総会を開き特別決議を得る流れです。
もしも名義株の所在をあいまいにしたまま合併契約書を締結してしまうと、締結後の株主総会でトラブルが起こりかねません。
しかし、組織再編を行うのは比較的規模の大きい会社であることが多く、発行済み株式の3分の1以上が名義株になるケースは少ないと考えられます。
とはいえ、名義株も議決権を持つ以上、株主総会の決議に影響する可能性があるのは認識しておきましょう。
手順を踏まない株主名簿書き換えによるトラブル
名義株が買い手に知られるのを嫌って、売り手が勝手に名義を書き換えてしまうといった、正式な手順を踏まない書き換えによるトラブルも考えられます。そもそも株主名簿の勝手な書き換えは違法なので、これは行ってはなりません。
このような正式な手順を踏まない名簿書き換えは、売り手にとって違法行為であるだけでなく、M&A後に事実が発覚した場合は買い手にも何らかの責任が問われる可能性があります。
名義株問題における株主名簿の書き換えの手順やタイミングは、個々の事例に基づき総合的に判断しなければなりません。売り手の経営者が勝手に判断せず、名義株に詳しいM&Aの専門家に判断を仰ぎましょう。
相続時の名義株問題
名義株の問題は、M&A時だけでなく相続時にも発生する可能性があります。旧商法時代の会社で、設立の際に親族などに株主になってもらっている会社は注意が必要です。
名義を貸した株主と実質上の株主とのトラブル
相続税法では、名義株は名義が誰になっているかに関係なく、実際の株主の相続財産となります。経営者の子供が名義だけ貸していて実際の株主は経営者である場合、経営者が亡くなって子供が相続する際に相続税が発生します。
このことを認識しておらず相続税を納税しないままでいた結果、税務調査を受けて追徴課税が課せられるケースも多いので注意が必要です。
株式の価値が高い場合、追徴課税が高額になる可能性があります。数年前に、飯田グループホールディングスが名義株の申告漏れで40億円の追徴課税を受けた事例があります。
こういったトラブルを防ぐには、名義株の真の株主をしっかり確定しなければなりません。しかし、相続は被相続人が死亡しているので、真の株主を確定させる作業がM&Aの場合より難しくなることが多いです。
税務署は名義株が相続の際に問題になりやすいことを知っているので、税務調査が厳しくなるとも考えられています。名義株を相続する際は、名義株に詳しい税理士のサポートのもとで問題が起こらないように対処することが重要です。
3. M&Aや相続時の名義株問題を解決する方法
M&Aや相続時の名義株問題を解決する方法に明確なガイドラインはありませんが、実務では下に挙げた3つが使われることが多いです。
これらのうち1つのみを使う場合や、念のため2つ以上の方法を併用することもあります。実際のM&Aでどの方法を使うかは、M&Aの専門家のサポートを受けながら判断していくのが一般的です。
一般的には、名義株主の合意が得られている場合は①の確認書の取得を行い、合意が得られないなら②か③を検討します。
- 名義株主本人から念書・確認書を取得する
- 名義貸借の経緯を調査して証明できる資料を用意
- M&Aの最終契約書に表明保証条項を入れる
①名義株主本人から念書・確認書を取得する
名義株主本人から念書・確認書を取得し、真の株主でないと認めてもらうのが最も確実な方法です。例えば、「名義貸与承諾証明書」などの名称の書類を作って自署・押印してもらい、公証役場で確定日付をつけてもらえば、名義株問題を最も確実な形で解決できます。
ただし、この方法は名義株主が自分は真の株主ではないと認めている場合にしか使えません。たとえ真の株主でないと認めていても、会社がM&Aを行うと知ると、売却代金欲しさに真の株主であると主張してくるといったトラブルが発生する可能性もあります。
トラブルの可能性が高いと判断したら、あえて確認書を取らず別な解決方法を探ることも検討しなければなりません。名義株主から確認書を取る場合は、取るべきかどうかの判断をM&Aの専門家としっかり話し合うことが大切です。
②名義貸借の経緯を調査して証明できる資料を用意
名義株主本人から確認書を取れない場合は、名義貸借の経緯を調査し、確かに名義株主であると証明できる資料を用意して買い手に納得してもらう方法を採用します。
例えば、過去の株主総会の議事録を調べて、名義株主が株主総会にまったく参加していないことを示したり、配当がある場合は配当の受取人を調べて、名義株主が配当を受け取っていない旨の書面を作ったりします。
これは名義株主本人から確認を取っているわけではなく、名義株の問題が完全に解決しているわけではありません。
しかし、資料をしっかり用意することで、仮にM&A締結後に名義株主が真の株主であると主張してきた場合に、資料を提示することでそれを退けられます。
③M&Aの最終契約書に表明保証条項を入れる
M&Aの最終契約書には、「表明保証」と呼ばれる条項を入れるのが一般的です。表明保証とは、契約に関連する事柄が間違いなく事実であることを保証し、もし違っていた場合は損害賠償などで責任を取るものです。
一般的に、M&Aの表明保証では、提出した財務諸表の内容やデューデリジェンスの時に開示した情報に虚偽がないことなどを記載します。
この条項の中に名義株主が真の株主でないことを入れておき、後で名義株主が真の株主と判断された場合には、株式の取得費用を売り手側が支払うことにしておけば、買い手は安心してM&Aを締結できます。
4. M&A時の名義株対策は専門家に相談
M&A実施時の名義株問題は特に買い手にとって重要な問題であり、解決しておかないとせっかくのM&Aのチャンスを逃してしまう可能性があります。名義株を持つ会社のM&Aの場合は、専門家のサポートを得ることが必要不可欠です。
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5. M&A時の名義株対策まとめ
本記事では、M&A時の名義株対策を中心に解説しました。名義株問題はM&Aや相続で多く発生するにもかかわらず、その対処法を知らない人が多いです。名義株の問題点と解決方法を正しく理解して、トラブルにならないように手続きを進めていくことが大切です。
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