2024年08月27日更新
清酒酒造・日本酒業界のM&A・事業承継事例の4選!費用・手順も紹介
近年、酒蔵の廃業が増加し、清酒酒造・日本酒業界の会社をM&A・事業承継するケースが増えている状況です。今回は、清酒酒造・日本酒業界のM&A・事業承継の事例を解説します。清酒酒造・日本酒業界のM&Aに伴う費用や手順も解説します。
目次
1. 清酒酒造・日本酒業界とは
清酒製造・日本酒業界は、日本酒の酒造や販売を主な事業として展開する業界です。
2013年に、和食がユネスコ無形文化遺産として登録されたこともあり、「日本酒」は世界中で注目を集めています。ちなみに「酒蔵」は、酒を醸造・貯蔵する蔵のことです。
清酒酒造・日本酒業界の現状
清酒製造・酒蔵・日本酒業界のM&Aを解説する前に、清酒製造・日本酒業界の現状を見ていきましょう。清酒製造・酒蔵・日本酒業界の現状は、以下のポイントが挙げられます。
【清酒製造・酒蔵・日本酒業界の現状】
- 年々酒造メーカーは減少している
- ほぼ中小企業
- 酒類の売り上げが減少している
年々酒造メーカーは減少している
近年は、日本酒業界が盛り上がっているようにも感じますが、実際のところ、年々日本酒メーカーは減少しています。日本酒の消費量におけるピークは1975年で、その頃の製造免許場は3,229場ありました。
しかし、2022年にはおよそ1,536場となり、ピーク時と比較すると日本酒メーカーの数は半減しています。
参照:国税庁「酒のしおり(令和6年6月)」
ほぼ中小企業
2015年の国税庁における調査で、清酒製造・日本酒メーカー業者のうち、9割以上は「中小企業」です。つまり、国内の日本酒メーカー・酒蔵はほとんどが中小企業で占められています。
参照:国税庁「清酒製造業の概況(令和3年度調査分)」
酒類の売り上げが減少している
酒類販売(消費)数量の推移は、2000年頃から年々減少し、ここ20年間で見てみると、清酒の年間消費数量は半減しています。その結果も相まって、日本酒の売り上げは減少傾向にあるのです。
参照:国税庁「酒のしおり(令和6年6月)」
清酒酒造・日本酒業界の課題
日本酒を製造する酒蔵は現在二極化が進んでいる状況です。知名度の高さやブランディング、次世代の杜氏候補育成等の点において成功を収め、健全な財務で運営ができている酒蔵とそうではない酒蔵への二極化です。
健全な財務で運営ができている酒蔵は極一部であり、その多くは若者の日本酒離れや設備の老朽化、造り手の不足などにより財務が悪化し、赤字かつ債務超過もしくはそれに近い財務状況となってきています。
この二極化が進む大きな理由としては、下記の3点が挙げられます。
①設備の老朽化
酒蔵の多くは業歴が長く、設備が老朽化しているケースが多い一方で、更新には多額の設備投資が必要とされることから、更新ができずにいる酒蔵は多いです。
②ブランディングの難しさ
日本酒の販売ビジネスは問屋と密接に関わっていることに加え、伝統を維持しなければならないという点から、ブランディングが難しいとされております。それゆえに、販売量が振るわない状況からの脱却もまた難しいとされております。
③製造時期
日本酒の味は製造時の「気温」と密接に関係するとされています。そのため、一般的には気温が低い冬の時期に製造が集中し、気温が高い夏場は製造を行わない、もしくは冷蔵庫の中で製造することも少なくありません。
一年を通して毎月安定した売上が立つわけではないことから、仕入(特にお米)におけるキャッシュフローの問題や、時期によって必要な人員数が変動するという雇用問題に直面してしまいます。
清酒酒造・日本酒業界の今後・展望
清酒酒造・日本酒業界の今後・展望を見ていきましょう。清酒酒造・日本酒業界の今後・展望は、以下のポイントが挙げられます。
- パ酒ポート
- ミス日本酒(Miss SAKE)
パ酒ポート
日本酒、ワイナリー、ウイスキー醸造所、焼酎醸造所などに行くと、多くの特典がもらえるスタンプラリー帳を、パ酒ポートといいます。地域を活性化するコンテンツの一つで、北海道のJTBが道内の酒業界を盛り上げるために開始しました。
休日を手軽に過ごすために、このスタンプラリーに注目した人もおり、北海道に新しい人の流れができ人との交流が生まれ、経済効果が出ています。
ミス日本酒(Miss SAKE)
ミス日本酒(Miss SAKE)は、一般社団法人ミス日本酒が主催となり、外務省、農林水産省、国税庁、観光庁、日本酒造組合中央会などにおける後援のもと、2013年9月から開始しました。日本酒・日本文化の魅力を伝える美意識と知性を持つアンバサダーを選びます。
2013年10月に、初代ミス日本酒Miss SAKEが決まり、日本以外にハワイ、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、バルセロナ、シドニー、香港などで、日本酒に着眼した日本食や日本文化の啓発などを実施しています。
日本酒や日本の魅力を伝える事業、地域の食や農産業に関する事業、日本の伝統文化に関する事業が主な活動です。これからも日本酒の人気は高まる傾向なので、日本酒の海外進出が進むといえます。
2. 清酒酒造・日本酒業界のM&A・事業承継の動向
清酒酒造・酒蔵・日本酒業界のM&A・事業承継を実施する際は、当業界のM&A動向を理解することが大切です。
M&A動向を把握しなければ、良くないタイミングでM&Aを実施してしまい、本来の価値よりも低い価格で売却したり、M&A後に多額の負債を抱えたりします。
実際に、清酒酒造・酒蔵・日本酒業界のM&A実施を検討されている方は、以下で解説するM&A動向を確認しましょう。
【清酒酒造・酒蔵・日本酒業界のM&A動向】
- M&Aの数が増加傾向
- 大企業だけではなく中小企業もM&Aに前向き
- 後継者問題を抱えている酒造メーカーも多い
- 廃業を選ぶ酒造メーカーも
- 規制や許認可取得など留意事項が多い
- 事業承継問題の解決手段としてM&Aに期待が集まる
①M&Aの数が増加傾向
清酒酒造・日本酒業界のM&A数は増加傾向です。清酒酒造・日本酒業界の現状からもわかるように、多くの日本酒メーカー・酒蔵は、経営難・財政状態の悪化に直面しています。
この状況を打破するために、そして業界再編を目的に、大手企業や異業種企業による清酒酒造・日本酒関連会社の買収が増えているのです。
②大企業だけではなく中小企業もM&Aに前向き
近年の清酒酒造・日本酒業界では、大企業に限らず、中小企業のM&Aも積極的に行われています。
M&Aを実施し、双方の企業が保有するノウハウや経験、設備などを活用して、事業拡大・シナジー効果の創出を目的とするケースが多く見られるのです。
③後継者問題を抱えている酒造メーカーも多い
清酒酒造・日本酒業界の現状で「ほとんどが中小企業」であることを説明しました。清酒酒造・日本酒業界に限らず、多くの業界・業種の中小企業は「後継者問題」を抱えています。
近年は、中小企業の多くが「人材不足」に直面し、さらに中小企業の経営者は「高齢」となり、人材不足と経営者の高齢化が相まって後継者問題が発生しているのです。
後継者問題が影響して、スムーズに事業承継できず、結果的に廃業を余儀なくされる中小企業もあります。
④廃業を選ぶ酒造メーカーも
人材不足と経営者の高齢化による「後継者問題」が影響して、事業承継がうまくできず、結果的に「廃業」を選択する清酒酒造・日本酒メーカーが増加しています。
廃業を選択してしまうと、その会社で働く従業員は職を失い、これまで関係を持っていた取引先や顧客に大きな迷惑をかけるでしょう。廃業をするためには「廃業手続き」をしなければならず、時間やコストがかかります。
このように、廃業を選択するとさまざまなデメリットが生じるため、何らかの打開策を講じる必要があるのです。廃業を避けるためにM&Aによる事業承継を実施する中小企業が増えています。
⑤規制や許認可取得など留意事項が多い
酒造業界は多数の法律や条例、規制に留意して事業を行う必要のある業界であるため、M&Aにおいても同様に留意事項が多いことで知られています。また、規制が厳しい(特に酒税法における酒類製造免許の取得)ことから、許認可の取得を新たに試みる法人や個人にはM&Aという手段も注目されております。
酒造業界の中でも特に日本酒の製造は新たな許認可取得のハードルが高いことからM&Aが検討される機会が多い一方で、伝統や地域社会と密接に関係することからM&Aを検討する上では多くの点に留意する必要があります。
⑥事業承継問題の解決手段としてM&Aに期待が集まる
設備を更新し、ブランディングに成功しても、一年中安定した供給を維持することは困難です。ブランディングに成功し、一年中安定した供給を維持できても、設備が老朽化することで多額の設備投資が必要となり、経営が苦しくなることも少なくありません。
また、後継者不在による存続危機に直面する酒蔵が多いことも事実です。
このように酒造業界の中でも日本酒を製造する酒蔵ではM&Aが有効な手段と考えられている一方で、留意しなければならない点が多く、高い専門知識を必要とします。
仮に慢性的な赤字かつ債務超過であった場合でも、事業再生という手段も大いに考えられ、そのスポンサーとして手を上げる法人も多く存在します。
今後はM&Aという手段が有効的に活用されることで、日本の伝統である日本酒の製造が絶えず続いていくことが想定されます。
3. 清酒酒造・日本酒業界のM&A・事業承継の事例4選
この章では、清酒酒造・日本酒業界のM&A・事業承継の事例を紹介します。どのような目的で、清酒酒造・日本酒関連会社がM&Aを実施しているのかなど、事例で確認しましょう。
久原本家グループによる伊豆本店の買収
2024年4月、久原本家グループは、300年以上の歴史を誇る日本酒の蔵元である伊豆本店の株式を取得し、グループの一員として迎え入れることを決定しました。
久原本家グループは、グループ全体の経営管理や商品開発、品質保証業務を担当しています。伊豆本店は、清酒やリキュールの製造・販売を行う老舗の蔵元です。
背景には、久原本家グループの社主である河邉氏が、母方の実家である伊豆本店との親戚関係がありました。また、「茅乃舎」ブランドの誕生には、伊豆本店の茅葺き屋根の再建が関わっており、「博多 椒房庵」ブランドでも業務提携を行ってきました。
こうした背景のもと、伊豆本店の技術と伝統を継承しつつ、互いの強みを生かした新たな事業展開を目指すことで意見が一致し、今回の子会社化が実現しました。
ベルーナによる谷櫻酒造の買収
2023年6月、ベルーナは、谷櫻酒造の全株式を取得し、子会社化しました。
ベルーナは、通販総合商社として、通信販売や店舗販売、不動産事業など多岐にわたる事業を展開しています。谷櫻酒造は、日本酒やその他の醸造酒、副産物の製造販売を手掛ける老舗です。
ベルーナは、日本酒事業の成長を図るため、自社ブランドでの日本酒開発や、グルメ日本酒事業におけるブランド価値向上を目指しており、このM&Aが企業価値をさらに高めると判断しました。
エルアイイーエイチによる越後伝衛門の株式譲渡
2021年6月、老松酒造が持つ越後伝衛門におけるすべての株式を譲渡することが決まりました。老松酒造は、エルアイイーエイチの連結子会社で、越後伝衛門は酒類の製造・販売を手掛けています。
この譲渡は、エルアイイーエイチがグループ内で越後伝衛門は大きなシナジー効果を生じないと判断したため実施されました。
榮川酒造によるリオン・ドールコーポレーションとの資本業務提携
2021年5月、榮川酒造は、リオン・ドールコーポレーションと資本業務提携契約および株式総数引受契約を締結して、第三者割当の方法で普通株式を発行すると決めています。榮川酒造は、ヨシムラ・フード・ホールディングスの連結子会社です。
これにより、リオン・ドールと榮川酒造の業績を上げることを狙い、リオン・ドールは、榮川酒造の日本酒などを榮川酒造の店舗で販売し売上を増やすことも見込んでいます。
4. 清酒酒造・日本酒業界のM&A・売却・買収の費用
M&Aによって酒蔵・清酒酒造・日本酒業界の会社を買収・売却する際に必要となる「費用」はどのくらいなのでしょうか。「M&Aは成功させたいがM&Aにかかる費用はできるだけ抑えたい」と考えている経営者の方も多いです。
通常、M&Aによる買収・売却にかかる費用には、「仲介手数料」と「税金」があります。仲介手数料とは、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーなどの「M&A専門家」を活用した際に支払う「手数料」のことです。
各M&A仲介会社・アドバイザリーによって、仲介手数料の金額は変化します。
もう一つの費用は「税金」です。M&Aを実施して会社を売却し、事業を譲渡した際は、その売買価格に応じた「税金」を支払う義務が発生します。税金の種類(所得税・法人税など)や税額は、実施したM&A手法(株式譲渡・事業譲渡など)や売買価格などにより異なるのです。
5. 清酒酒造・日本酒業界のM&A・事業承継の相談先
酒蔵・清酒酒造・日本酒業界のM&A・事業承継に興味がある方は、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。M&Aの深い知識・経験があまりない状態で手続きを進めてしまうと、さまざまなリスクを抱える危険性があるからです。
例えば、売却側は「本来よりも安い価格で交渉が進められる」「なかなか良い買い手が見つからない」といったリスクが発生すると考えられます。
買収側は、「M&A実施後に、簿外債務や多額の負債を引き継ぐことになる」「会社買収後、対象企業の従業員が次々に退職してしまう」といったリスクがあるでしょう。大切なM&Aを成功させるためにも、M&A専門家に相談・仲介依頼してください。
M&A総合研究所では、豊富な知識や経験を持つM&Aアドバイザーが、親身になってM&A手続きを一からフルサポートいたします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしていますので、M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問合せください。
6. 清酒酒造・日本酒業界のM&A・事業承継まとめ
酒蔵・清酒酒造・日本酒業界のM&A・事業承継は、増加傾向にあり、その背景には中小企業が多いこと、業界全体として売り上げが縮小していることがあります。
酒蔵・清酒酒造・日本酒業界で生き残るためにはM&Aを戦略的に活用するべきです。酒蔵・清酒酒造・日本酒業界のM&A動向は、以下のとおりです。
- M&Aの数が増加傾向
- 大企業だけではなく中小企業もM&Aに前向き
- 後継者問題を抱えている酒造メーカーも多い
- 廃業を選ぶ酒造メーカーも
- 規制や許認可取得など留意事項が多い
- 事業承継問題の解決手段としてM&Aに期待が集まる
7. 清酒酒造・酒蔵業界の成約事例一覧
8. 清酒酒造・酒蔵業界のM&A案件一覧
【高認知度×業歴300年以上】九州の酒類製造業
食品製造/食品卸・小売/九州・沖縄案件ID:2346公開日:2024年10月18日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
5000万円〜1億円
焼酎、清酒、リキュールの製造と販売
【中部地方 × 酒蔵】200年超の歴史ある酒造会社
その他の製造業/中部・北陸案件ID:2286公開日:2024年10月02日売上高
1000万円〜5000万円
営業利益
赤字経営
譲渡希望価格
〜1000万円
中部地方にて、200年超の歴史ある酒蔵運営を手掛ける企業
【旧酒販免許・酒造免許保有】中国地方の酒類販売
その他の卸・小売/中国・四国案件ID:2251公開日:2024年09月19日売上高
〜1000万円
営業利益
赤字経営
譲渡希望価格
希望なし
現在は酒類の卸売・瓶詰作業の請負を行う。そのほかの収益源として、自社保有の土地を大手家電量販店に対し長期間にわたり賃貸を行っており、毎年安定した賃貸料が入ってくる。
【旧型酒類販売業免許保有】東北地方×酒類販売業
食品卸・小売/その他の卸・小売/ECサイト(カートあり)/東北案件ID:2195公開日:2024年08月28日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
赤字経営
譲渡希望価格
1000万円〜5000万円
対象企業は、新規では取得ができない旧型酒類販売業免許を保有されている酒類販売企業業でございます。 業歴も長く、取引先からの信頼も厚い企業となります。
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。