2025年02月20日更新
静岡県のM&A・事業承継の案件例!事例や動向・公的支援の取組も紹介
本記事では、静岡県のM&A・事業承継にフォーカスし、動向や案件一覧・事例を紹介します。日本の他地域と同様、静岡県でも中小企業の後継者不在による事業承継問題が課題です。M&A・事業承継を検討中の方は必見です。
目次
1. 静岡県の産業の特徴
地方のM&A・事業承継を行う場合には、その地域の情勢についてしっかり把握しておくことが何よりも重要となります。
そこで、まずは静岡県の産業の特徴について説明していきます。
静岡県は多様な産業が発展していますが、特に製造業が盛んで、自動車、楽器、プラスチック製品、製紙、化学製品が主要な産業となっています。
静岡市には製紙工場が多く、富士市は製紙とパルプの生産量で全国的に有名となっています。また、浜松市はヤマハやカワイなどの楽器メーカーが本拠地を構え、世界的な楽器の生産地として知られています。
豊かな自然環境を利用した農業も特徴的であり、茶の生産量は全国トップクラスを誇っています。
また、静岡県には、富士山をはじめ、伊豆半島の温泉地や美しい海岸線、熱海温泉など有名な観光地があります。世界遺産に登録された韮山反射炉や、歴史ある神社仏閣も多く、文化的観光資源も豊富であるため、国内外から多くの観光客を引き寄せ、地域経済を活性化しています。
2. 静岡県のM&A・会社売却・事業承継動向
静岡県のM&A・会社売却・事業承継動向を3つの観点から解説します。
後継者不在率は50.3%で4年連続前年を下回る
静岡県内企業の後継者問題は改善傾向が続いており、2024年の調査では後継者が「いない」または「未定」とする企業は約3,800社で、後継者不在率は50.3%となりました。これは前年より1.6ポイント低下し、4年連続で改善し、調査開始以来最低の水準となっています。
この背景には、官民の相談窓口の普及や支援制度の拡充があり、小規模事業者にも事業承継の支援が広がったことが影響しています。さらに、自治体や金融機関が事業承継の重要性を積極的に発信したことで、承継の意識が高まったと考えられます。
一方で、経営環境の変化により事業承継を中断したケースや、後継者選びの見直し、後継者候補の辞退なども発生しています。2023年時点で後継者が不在だった企業のうち、2.5%は代表者交代直後、1.9%は計画を中止・取りやめたことが確認されました。特に高齢での事業承継では中断のリスクが高まる傾向があります。
参考:帝国データバンク「静岡県「後継者不在率」動向調査(2024 年)」
休廃業件数は3年連続で増加
2024年に静岡県で休業・廃業・解散した企業(個人事業主含む)は1,941件となり、前年比19.8%増と大幅に増加しました。これは2016年以降で2019年に次ぐ2番目の高水準であり、3年連続の増加となります。
休廃業に伴い、少なくとも2,348人の正社員が転退職を迫られ、前年(1,750人)より約600人増加しました。一方、消失した売上高は487億円で、前年(539億円)より減少しており、小規模企業の休廃業が増えている傾向が見られます。
また、休廃業した企業の60.4%は資産超過であり、49.1%は直前の決算で黒字でした。「黒字かつ資産超過」の状態で廃業した企業は全体の16.1%を占めています。
2020~2022年はコロナ関連の支援策で休廃業が抑えられていましたが、2023年以降、支援縮小や物価高、人手不足による人件費増加などの影響で、手元資金のあるうちに廃業する「あきらめ廃業」が増加しました。また、予想外の環境変化により負債が増え、破産を選ばざるを得なかった企業も少なくないとみられます。
参考:帝国データバンク「静岡県内企業「休廃業・解散」動向調査(2024 年)」
静岡県企業によるM&A件数
2021年の登録M&A支援機関の報告によると、静岡県企業におけるM&A件数は、譲渡側で130件、譲受側で109件を記録しています。所在する都道府県別のM&A件数をみると、特に東京都が多く、次いで大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県、北海道、静岡県と続いています。
参考:中小企業庁「M&A支援機関登録制度実績報告等について」
3. 静岡県近郊のM&A案件一覧
本章では、静岡県近郊のM&A案件をご紹介します。
【東海エリア】自動車業界向け産業用機械組立業
高い組付け能力と納期の早さより、取引先からの評価が高いです。社員の平均年齢が30代と若いです。自動車業界のEV化が進むことで、今後の受注が増加する見込みです。
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
営業利益 | 1000万円〜5000万円 |
総資産額 | 非公開 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 資本提携を行うことで、経営の負荷を軽減させるため |
【東海エリア/高収益/無借金経営】 総合設備工事業
ゼネコンまたはサブコンの立ち位置でありながら、少数精鋭で自社施工にも対応可能です。大型案件には協力外注先とチーム体制で取り組んでいます。
設立以来労災事故なしです。現場の安全性基準が高い大手メーカーよりプラント関連工事の案件を継続的に受注しています。
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
営業利益 | 5000万円〜1億円 |
総資産額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 3億円(応相談) |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【定員満員/高収益】東海地方・デイサービス事業所
毎日献立から調理まで自社スタッフで対応する食事が大人気です。整膚師を登用し、充実したリハビリ体制を実現しています。この理由から常に入室状況は満員です。有資格者多数在籍し、自走可能な体制を構築しています。
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
営業利益 | 1000万円〜5000万円 |
総資産額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 応相談 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【医療法人/出資持分なし/業歴20年超】静岡県の耳鼻咽喉科クリニック
院長は健康面に問題がなければ、引き続き週2~3日程度の勤務を2年程度継続可能です。将来的な後任医師不在のため、引継ぎ期間も勘案したうえでM&Aを検討しています。地域に密着し20年超の実績があり、当地では知名度を持っています。
売上高 | 5000万円〜1億円 |
営業利益 | 1000万円〜5000万円 |
総資産額 | 5000万円〜1億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
4. 静岡県のM&A・会社売却・事業承継事例
最後に、静岡県のM&A・会社売却・事業承継事例として3件をピックアップし、概要や特徴を紹介します。
稲畑産業による佐藤園の買収
稲畑産業は、2025年2月3日、連結子会社である大五通商(静岡県静岡市)を通じて、株式会社佐藤園(同市)の全株式を取得し、子会社化したと発表しました。株式譲渡は1月31日に実行されました。
稲畑産業は、情報電子、化学品、生活産業など幅広い分野で事業を展開し、大五通商は食品設備や包装資材、食品原材料の販売および鰻加工品の製造・販売を手掛けています。佐藤園は、茶の栽培・製造・販売を行い、ECサイトやカタログ通販に強みを持っています。
今回のM&Aは、稲畑産業の成長戦略の一環であり、食品分野での垂直統合型ビジネスの強化を目的としています。特に、国内外で需要が伸びる緑茶市場において、稲畑産業の海外ネットワークを活用し、欧米やアジア市場への輸出拡大を目指します。さらに、佐藤園の通販顧客基盤を活かし、大五通商の鰻加工品など農水産加工品の相互販売にも注力していく方針です。
ヤマシタとフォースタートアップスの資本業務提携
福祉用具レンタルを手掛けるヤマシタは、新興企業支援を行うフォースタートアップスと資本業務提携を結びました。ヤマシタは、フォースタートアップスの発行済み株式の約1.4%にあたる5万株を3月11日に取得しました。この提携により、フォースタートアップスから経営人材の紹介を受け、保険適用外のサービス拡大を目指します。
フォースタートアップスは2016年に設立され、スタートアップ関連のデータベース「STARTUP DB」を運営しています。2024年3月期の連結純利益は3億4000万円を見込んでいます。ヤマシタとの提携により、スタートアップ以外の顧客層にも人材紹介サービスを広げる計画です。
ヤマシタの2023年3月期の売上高は前年同期比11%増の268億円でした。同社は今後も積極的にM&A(合併・買収)を進め、2030年度に売上高を850億円まで伸ばす長期ビジョンを掲げています。
ヤマハ発動機によるヤマハモーターエレクトロニクスの吸収合併
ヤマハ発動機は、連結子会社であるヤマハモーターエレクトロニクス(YEJP)との合併を検討しています。YEJPは静岡県周智郡森町に拠点を置き、二輪車、船外機、電動アシスト自転車などの電装品の開発・製造・販売を行っています。合併の完了は2025年1月を目指しています。
現在、世界的な脱炭素の流れを受けて、規制対応や環境に配慮した製品開発が求められています。この合併は、電動化製品の開発スピードの向上、電装系人材の確保、電装分野での購買力の強化を目的としています。
ヤマハ発動機は、2022年2月に発表した中期経営計画に基づき、電動アシスト自転車事業の拡大、新しいモビリティの研究・開発、そして二輪車や船外機の電動化に取り組んでいます。CASEやカーボンニュートラルへの対応を加速させるため、経営資源を戦略的に管理し、体制を強化していく方針です。
フジオーゼックスによるマルヨシ製作所の買収
フジオーゼックスは、マルヨシ製作所の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。
フジオーゼックスは、自動車部品メーカーで、エンジンバルブやエンジン関連部品の製作・販売、鋼材の加工および加工製品の販売を行っています。
マルヨシ製作所は、セパレータフィルム製造用の金属ロールやシャフトを製造しており、これらの製品をセパレータフィルム製造装置メーカーに提供しています。
今回のM&Aにより、フジオーゼックスは事業拡大とグループシナジーの創出が見込まれると判断し、株式を取得することを決定しました。
アルコニックスによる富士根産業のM&A
2020年11月、アルコニックス(東京都千代田区、資本金30億699万円)は、富士根産業(静岡県沼津市)を子会社化すると発表しました。かねてより保有する3%を含めて95%の株式を取得し、残りの株式5%は千代田空調機器に資本参加を求めています。
本件により、買収側では、グループ内で金属加工における製販一体の事業体制を整備したほか、グローバル展開を視野に入れています。
TOKAIホールディングスによるイノウエテクニカのM&A
2020年11月、TOKAIホールディングス(静岡市葵区、資本金140億円)は傘下企業を通じて、イノウエテクニカ(静岡県沼津市)の株式すべてを取得し子会社化しました。
本件により、買収側では、静岡県内におけるビルメンテナンス事業の拡大を図っています。
5. 静岡県でM&A・会社売却・事業承継の相談ができる機関
静岡県でM&A・会社売却・事業承継の相談ができる代表的な機関を紹介します。
公認会計士・税理士・弁護士などの士業
公認会計士は、企業の財務状況を正確に把握し、分析する能力に優れています。M&Aや事業承継の際には、財務デューデリジェンスを行い、企業価値の適正評価を行います。
また、税理士は、税務に関する知識を駆使して、M&Aや事業承継に伴う税務リスクを最小限に抑えます。特に、事業承継の際には、贈与税や相続税の問題に対処するための助言を行います。
弁護士は、M&Aや事業承継に関する法的手続きをサポートする専門家です。契約書の作成や交渉、法的リスクの分析などを行い、法的トラブルを未然に防ぎます。
金融機関
各金融機関にはそれぞれ強みがあり、事業承継やM&Aの成功には自社のニーズに合った金融機関を選ぶことが重要です。
例えば、地方銀行は地域に根ざしたサービスを提供しており、地域企業の事情に詳しいです。そのため、地元の企業に対してきめ細やかなサポートを提供できます。
また、信用金庫は地域社会に密着し、地元企業や個人事業主を支援することを目的としています。親しみやすいサービスを提供し、地元企業の事業承継をサポートします。
公的機関
相談できる公的機関には、主に以下の3つが挙げられます。
- 静岡県事業承継・引継ぎ支援センター
- 商工会議所
- 静岡県よろず支援拠点
それぞれの特徴を順番に解説します。
静岡県事業承継・引継ぎ支援センター
静岡県事業承継・引継ぎ支援センターは、静岡県内の中小企業や個人事業主に対して、地域に特化した情報やサポートを提供しています。地域の特性やニーズを把握し、適切なアドバイスを行います。
初回相談は無料で受け付けており、気軽に相談できる体制が整っているのが特徴です。
商工会議所
商工会議所は地域に根ざした活動を行っており、地域の中小企業のニーズに応じたサポートを提供しています。地元の経済状況や企業の実情を把握しているため、適切なアドバイスが可能です。
商工会議所は地域の企業や専門家との広範なネットワークを持っており、必要に応じて適切な専門家を紹介することができます。
静岡県よろず支援拠点
静岡県よろず支援拠点では、初回からの相談が無料で提供されており、気軽に相談することができます。中小企業や個人事業主にとって、コストを気にせずに専門的なアドバイスを受けられるのは大きなメリットです。
経営、財務、法務、労務、販路拡大など、多岐にわたる経営課題に対して、ワンストップで支援を行います。これにより、企業は複数の課題を一箇所で解決できます。
M&A仲介会社
事業承継やM&A、会社売却を検討している企業にとって、M&A仲介会社は非常に重要な相談機関です。
M&A仲介会社は、M&Aに関する豊富な知識と経験を持っており、複雑な取引を円滑に進めるためのサポートを行います。市場動向や企業価値の評価、契約交渉など、専門的なアドバイスが受けられます。
6. M&A仲介会社を選ぶ時の3つのポイント
M&A仲介会社を選ぶ時のポイントを3つご紹介します。
①自社の業界の専門的知識・M&A実績がある
M&A仲介会社が自社の業界に対する深い理解を持っていることは、取引の成功にとって非常に重要です。業界特有の事情や市場動向、競合他社の動きなどを把握している仲介会社は、より適切なアドバイスを提供できます。
②同様の案件規模・地域のM&A実績がある
M&A仲介会社を選ぶ際には、自社と同規模の案件を取り扱った経験があるかどうかを確認することが重要です。案件の規模によって価格算定の方法や必要な手続きが全く違うことがあるからです。
また、地域特有の事情に詳しいM&A仲介会社を選択すると良いでしょう。地域に根ざしたサービスを展開している企業であれば、その地域での取り扱い案件も多く、より最適な事業承継の相手を見つけられるでしょう。
これにより、取引がスムーズに進行し、適切なアドバイスが受けられる可能性が高まります。
③報酬体系が明確である
報酬体系が明確であることは、信頼できるM&A仲介会社を選ぶための基本です。企業によっては相談料の中間金の設定が異なったり、公開されている金額に加えて追って費用を請求されたりすることがあります。
報酬がどのように決定されるのか、どの段階でどのような費用が発生するのかを事前に把握しておくことで、取引がスムーズに進行します。
M&A仲介については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
7. 静岡県のM&A・会社売却・事業承継まとめ
本記事では、静岡県におけるM&Aや会社売却、事業承継の現状と動向を紹介しました。
静岡県では、中小企業の後継者不在が大きな問題となっており、M&Aが有力な解決策として注目されています。2023年には休廃業・解散件数が増加し、「あきらめ廃業」も見られますが、M&Aの活用によって事業承継が進んでいることが分かります。
静岡県の主要産業や地域特性を考慮し、今後のM&Aの動向を見越しておくことが重要です。
8. 静岡県の成約事例一覧
9. 静岡県のM&A案件一覧
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