スポーツクラブ・フィットネスクラブ業界のM&Aの最新動向は?メリットや事例も解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、スポーツクラブ・フィットネスクラブ業界の最新動向、M&Aによる買収・売却の現状や相場、メリットなどを解説します。スポーツクラブ・フィットネスクラブは、会員制で運動のための施設と指導を提供する事業です。M&Aを検討中の方は必見です。

目次

  1. スポーツジム・フィットネスクラブ業界の動向
  2. スポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&Aの最新動向
  3. スポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&Aのメリット
  4. スポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&Aデメリット
  5. スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aの成功事例11選
  6. スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aの相場と費用
  7. スポーツジム・フィットネスクラブのM&A失敗事例の特徴
  8. スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aのまとめ
  9. スポーツクラブ・フィットネスクラブ業界の成約事例一覧
  10. スポーツクラブ・フィットネスクラブ業界のM&A案件一覧
  • スポーツクラブ・フィットネスクラブのM&A・事業承継

1. スポーツジム・フィットネスクラブ業界の動向

スポーツジム・フィットネスクラブとは、主に会員制サービスによって健康維持や健康づくりのための運動施設と専門指導を提供する事業をさします。

スポーツジム・フィットネスクラブ・スポーツクラブの使い分けに明確な定義はありません。しかし、実際には提供しているサービスの内容によって、使われる名称がある程度決まっている傾向がみられます。

  • スポーツジム:マシン・器具を使ったトレーニングが中心。有酸素運動・筋トレ・サーキットトレーニングなど
  • フィットネスクラブ:マシン・器具を使ったトレーニング、スイミング、ヨガ・ピラティスなど幅広いメニューを提供している施設が多い
  • スポーツクラブ:フィットネスクラブとほぼ同じ内容

公共の体育館などにも似た設備はよくありますが、一般的にスポーツジム・フィットネスクラブと呼ぶ場合は民間施設で、フィットネス業界のくくりで表現されます。

施設には室内プール・トレーニングジム・スタジオなどが整備されているのが通常です。1970年代に始まり、2000年代に入ってからは健康ブームの広がりとともに市場も大きくなっています。

しかし、2020(令和2)年から続く新型コロナウイルス感染拡大問題の影響で、休業・閉業となったスポーツジム・フィットネスクラブは多く、業界全体が大きなダメージを受けました。

スポーツジム・フィットネスクラブ業界に見られる特徴

スポーツジム・フィットネスクラブ業界の特徴は、各事業者によりビジネスモデルが明確に区別されていることです。具体的には以下のビジネスモデルに分かれています。

  • 総合施設型:大手スポーツジム・フィットネスクラブのビジネスモデル
  • 24時間セルフ型:コンパクトな規模のスポーツジム・フィットネスクラブが多い傾向
  • ターゲット限定型:高年齢の女性にしぼったスポーツジム・フィットネスクラブ
  • 成果志向型:パーソナルジムとしてマンツーマンでトレーナーがつき、価格は高いが目標のボディメイクが達成しやすい
  • 郊外型:都市部ではなく郊外にあるスポーツジム・フィットネスクラブ
  • オンライン型:コロナ禍の対策として生まれたビジネスモデル

近年、スポーツジム・フィットネスクラブのユーザー層は、50代以上の会員が5割を超えるなど高齢化の特徴があります。

スポーツジム・フィットネスクラブの市場規模

経済産業省「特定サービス産業動態統計調査(2023年2月公表)」によると、2018年〜2023年におけるスポーツジム・フィットネスクラブの市場規模は、下表のように推移しています。
 

  売上高(億円) 事務所数 会員数(万人)
2018年 3,372 1,426 256
2019年 3,347 1,461 254
2020年 2,235 1,583 171
2021年 2,450 1,506 198
2022年 2,682 1,500 210
2023年 2,784 1,603 218

経済産業省の資料によれば、2023年におけるフィットネスクラブの売上高は2,784億円(前年比3.8%)、利用者数は218万人(前年比33.3%)となっています。

2019年までは、会員数、スポーツジム・フィットネスクラブ数、売上高ともに順調に伸びていましたが、2020年はコロナ禍の影響を受け大きく減少しました。

しかし、コロナによる行動制限が解除された以降は、売上高・会員数ともに回復傾向にあります。特に伸びているのは月額3,000円程度で利用できるスポーツジムやフィットネスクラブです。

また、最近ではトレーニングだけでなくセルフエステが利用できるといった女性をターゲットにした業態も増えており、2023年は業界の売上高もコロナ以前(2019年)の8割超の水準まで回復しています。

出典:経済産業省 「特定サービス産業動態統計調査」

健康志向による市場拡大

2019年までのスポーツジム・フィットネスクラブ業界を分析すると、その大きな要因はシニア層の利用が増えたことです。会社を定年退職した人の多くが、健康志向により、スポーツジム・フィットネスクラブの利用者へとつながっています。

また、2011年から中学校でのダンス、武道の必修化にともない、大手スポーツクラブでは教室を開講し、追い風になっています。

最近では24時間営業ジムやライトユーザー向けジムのオープンが相次いでおり、会社帰りなど時間や周りを気にせず通えるジムが人気となっています。若年層の健康や美容の意識の高まりもあり、若年層からシニア層まで幅広いターゲットがいることがスポーツジム・フィットネス業界の後押しになっています。

国外と比較した際の市場規模の小ささ

クラブビジネスジャパンの調査「日・米・英の民間フィットネスクラブ市場規模データ(2013年〜2019年)」では、アメリカとイギリスの情報も掲載されています。ここでは、あらためて日本も含め2019年の市場規模を比較しましょう。
 

国名 売上高(円) 施設数 会員(人) 人口(人)
日本 4,930億 6,188 555万 1億2,580万
イギリス 8,712億 7,239 1,040万 6,722万
アメリカ 3兆9,550億 41,370 6,420万 3億2,950万
※イギリス、アメリカの売上高は1$=113円で換算(人口はいずれも2020年の推計)

出典:クラブビジネスジャパンの調査「日・米・英の民間フィットネスクラブ市場規模データ(2013年〜2019年)」

人口比で考えると、日本が英米に比べスポーツジム・フィットネスクラブ業界の市場が小さいことがわかります。民族性なのか環境のせいなのか、あるいはスポーツジム・フィットネスクラブ以外で運動をする人が多いのか、いずれにしろ業界にとっては課題です。

会員獲得競争の激化

コロナ禍前までのスポーツジム・フィットネスクラブ業界は、大型で大勢の人数が利用できる施設が中心でした。しかし、近年は、小規模でありながら大型のスポーツジム・フィットネスクラブとは差別化した展開を行う事業者が増加しています。

その結果が、スポーツジム・フィットネスクラブ業界におけるビジネスモデルの細分化による各ターゲット層への対応となりました。

小規模経営の難しさ

スポーツジム・フィットネスクラブ業界の動向として小規模クラブが増えた点が挙げられますが、小規模クラブの運営は難しいです。

小規模クラブは、大型クラブが持つ設備・マシン機器自体の魅力やレッスン本数の多さ、多彩なメニューなどを売りにできません。当然ながらキャパシティ自体がとても小さいです。これを解決する方法として、主に以下2つの対策が取られています。

  • サービスを共通化した多店舗展開を行う
  • 客単価(会員1人当たりの単価)を上げる

多店舗展開は、カーブスやエニタイムフィットネスが好例です。客単価の値上げは、小規模フィットネスがパーソナルジムとして、マンツーマン指導の導入により値上げを実践しています。

2. スポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&Aの最新動向

ここでは、スポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&A動向を確認しましょう。

大手・中規模事業者によるM&Aについて

スポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&Aを見てみましょう。いずれも中規模事業者の売却例ですが、大手の例としては2014(平成26)年、飲料大手サントリーおよび商社丸紅が株主であったティップネスが、日本テレビホールディングスに売却されました。

また、近年は大手事業者が会員の確保・既存施設とのシナジー獲得・スケールメリットの享受などを目的にM&Aを行うケースが増えており、大手事業者が中小規模事業者を買収するケースが目立っています。

このような背景により、スポーツジム・フィットネスクラブ業界ではM&Aによる業界再編が活発化しています。中小規模事業者にとってM&Aは生き残り手段のひとつであるため、今後もスポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&Aが活発に行われる可能性があります。

M&Aによる他業種からの参入

スポーツジム・フィットネスクラブ業界が関係するM&Aには、顧客サービスの充実やスポーツ教育分野への参入を狙った異業種による買収も多く見られます。

M&A事例で該当するのは、「城南進学研究社の久ケ原スポーツクラブ買収」「三越伊勢丹ホールディングスのSWPホールディングス買収」です。

城南進学研究社は学習塾や予備校運営が事業の中心ですが、健康増進事業を含めた総合教育機関としてのさらなる発展を目指して、スポーツジム・フィットネスクラブの買収に至りました。

三越伊勢丹ホールディングスは百貨店が中心の小売店事業ですが、エステティックを始めとするトータル・ビューティ事業の取得で顧客サービスを向上させるため、スポーツジム・フィットネスクラブの運営も行うSWPホールディングスを買収しています。

同業者同士のM&Aについて

スポーツジム・フィットネスクラブ業界では大手施設による小規模施設の買収が少なくありません。

大手が全体のシェアの半分を占めており、小規模施設は価格競争や施設の維持、人材確保などに悩まされている状況が続き、M&Aを選択しとしています。

【関連】パーソナルジムのM&A・譲渡・売却!業界動向や相場、手法を解説【案件情報あり】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

3. スポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&Aのメリット

スポーツジム・フィットネスクラブをM&Aで売却・買収する場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。この章では、売却側・買収側それぞれの立場から見るメリットを解説します。

売却側のメリット4選

さまざまな業種のM&Aに共通するメリットが、スポーツジム・フィットネスクラブを売却する場合にも当てはまります。売却側の主なメリットは以下の4つです。

資本力による安定経営

小規模フィットネスクラブで特に大きいメリットとして、売却による経営安定が挙げられます。大手資本へ売却できれば、倒産や廃業などのリスクは格段に少なくなるでしょう。

現在の経営状況が芳しくない場合、M&Aによる売却は事業を好転させる大きな要素になり得ます。ただし、売却価格はあまり交渉力がないことを、あらかじめ理解しなければなりません。

後継者問題の解決

特に小規模のスポーツジム・フィットネスクラブ事業者に当てはまることですが、後継者不在問題を抱えている会社は、M&Aによる会社売却が問題の解決手段になります。また、M&Aで会社を売却すれば、買い手が後継者(新たな経営者)となって事業承継が実現するでしょう。

従業員の雇用維持・利用者の引き継ぎ

廃業や倒産をすると地域の働く場やサービスが失われます。しかしM&Aによる事業・会社の売却では、通常、会社と従業員の雇用関係やサービスがそのまま引き継がれます。中小企業の場合は、M&Aによる事業・会社売却の目的が雇用の維持に置かれることも少なくありません。また、サービスの提供を継続することができます。

事業や会社に貢献してくれた従業員に、会社都合による失業で負担をかけさせないことやサービスの継続は、会社・事業主の義務と責任です。

M&Aによる売却益

M&Aで会社や事業を売却すれば、廃業コストが省け売却益を得られます。売却益は少なくとも、数百万円のまとまった金額になることが多いです。税金を払う必要はありますが、この売却で得た資金を新事業に使えるでしょう。

買収側のメリット4選

買収側の主なメリットは以下の4つが挙げられます。

優秀なトレーナーの確保

売却側のメリットでも述べたように、M&Aで事業や会社を買収する場合のメリットに従業員を引き継ぐことがあります。特にスポーツジム・フィットネスクラブでは、優秀なトレーナーに顧客がついていることも珍しくありません。

トレーナーは直接雇用ではなく個別契約のケースが多いです。しかし、会社が変わってもそのまま働いてもらう場合、トレーナーや顧客を維持した状態で買収後の事業を始められます

既存会員の一括獲得

スポーツジム・フィットネスクラブは会員制です。解約する人もいますが、特別な事件などが起こらなければ、利用客が急激に減ることはありません。

運営するオーナーが変わっても、同じ条件で同じサービスを続ければ、買収先の既存会員をそのまま引き継ぐことができる可能性が非常に高いです。

立地条件や施設を丸ごと取得

フィットネスクラブも多くの飲食店や小売店などと同様、立地が重要です。業界内では、同じサービスを同価格帯で提供しているライバルが多いため、利便性の高い立地が顧客を囲い込む要素になります。

立地のよい場所にある施設は、買収にかかる費用が高くなりますが、既存会員に加え利便性のよい立地や施設も丸ごと取得できるのはM&Aで買収するメリットといえるでしょう。

事業スケールの拡大

多店舗展開の大手に当てはまるメリットですが、店舗施設数が多いほど街中の看板も増え、宣伝力・ブランドが大きくなります。店舗施設そのものが広告媒体です。店舗施設を買収することで広告宣伝効果が生まれ、事業スケールの拡大と強化につながります

買収した場合、一から店舗を開店する方法と比べて手間はかかりませんが、買収先の店舗と自社における既存店舗施設のイメージが異なる場合もあるでしょう。

こういったケースでは、買収店舗施設を既存店舗施設のイメージに合わせるための投資は考えておく必要があり、既存顧客が離れていく可能性も検討しなければなりません。

【関連】M&Aのメリット・デメリットとは?企業買収の効果を買い手・売り手ごとにわかりやすく解説!
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4. スポーツジム・フィットネスクラブ業界のM&Aデメリット

M&Aを行うことにはメリットもありますが、同時にデメリットも存在します。この章では、スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aを行う際のデメリットを紹介します。

売却側デメリット3選

売却側のデメリットは主に3つ挙げられます。

希望通りの売却ができると限らない

譲渡価額や雇用契約の継続など、M&Aにおいて売り手側が買い手側に希望する条件にはさまざまなものがあります。しかし、M&Aではすべて希望条件通りとなるケースはそう多くはありません。

交渉時はなんらかの譲歩が必要となる場合も少なくないので、売り手側は希望条件に優先順位をつけておくとともに、M&Aでは希望道理の売却ができるとは限らないことを理解しておきましょう。

また、希望条件に合った相手先企業がみつかるかどうかは、M&Aを行う時期・タイミングによっても変わります。満足度の高いM&Aが実現できるかどうかはM&Aのタイミングも関係するため、実施を検討したらできるだけ早期段階から準備をしておくのも成功のポイントです。

取引先との関係性悪化

M&Aを行うと、売り手側の役員や従業員だけでなく、取引先にも影響が及ぶ場合があります。中小規模の事業者は経営者との個人的なつながりから、取引先とよい関係が続いているというケースもあるでしょう。

取引先にとってはM&A後に契約先が変わるため、条件が変更されたり取引が中止されたりしないかと不安になるのも自然なことです。そのような不安から、M&Aをきっかけに取引先との関係性が悪化する可能性もあります。

権限が小さくなる

自社を売却する場合、M&A後は買い手側の子会社となるため、以降は買い手側の経営方針に従って事業を進めていくかたちとなります。

当然のことながら経営に関する権限は小さくなるので、売り手側の経営者がM&A後も自身の方針で事業を進めていきたいと考えている場合は難しいケースが多いです。

買収側デメリット3選

買収側の主なデメリットとしては次の3つが挙げられます。

簿外債務などのリスク

買い手側は基本合意締結後にデューデリジェンスを行ってリスクの程度や有無を調査しますが、限られた期間ですべての問題点やリスクを洗い出すことは極めて難しいことです。

そのため、M&A後に簿外債務や偶発責務が発覚する可能性もあります。買い手側は、株式譲渡などM&Aの手法によってはこれらを引き継ぐリスクがあることを理解しておき、財務や法務分野のデューデリジェンスは特にしっかり行うことが重要です。

想定シナジーが得られない可能性

買い手側はM&A後に期待できるシナジーを加味して買収価額を決定しますが、必ずしも期待通りのシナジー効果が発揮されるとは限りません。

シナジーが十分に得られない要因にはさまざまなものがありますが、最も多くみられるものは経営統合の失敗です。そうなれば、買収費用の回収が難しくなるだけでなく、キャッシュフローが悪化して既存事業などへも影響する可能性もあります。

シナジー発揮はM&Aを行う大きな目的ですが、得られない可能性も念頭に置き、高値掴みとならないよう慎重に買収価額を決定することが重要です。

従業員同士で摩擦が生じる可能性

M&A後はPMIと呼ばれる統合作業を行いますが、その範囲は経営・業務・意識の大きく3つに分けられます。なかでも意識面の統合は非常に難しくデリケートだといわれており、M&A後に買い手側と売り手側の従業員同士がうまくいかず摩擦が生じるケースも珍しくありません。

従業員同士の摩擦は離職につながりかねず、もしキーマンとなる従業員が離れるようなことがあれば業務にも影響するため、交渉前に売り手側の経営理念や社風がかけ離れていないかという点も考慮する必要があります。

5. スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aの成功事例11選

ここでは、最近実際に行われたスポーツジム・フィットネスクラブ事業関連のM&A事例を紹介します。

①ルネサンスによる菱紙のスポーツクラブ事業のM&A

2023年10月、ルネサンスは三菱製紙の子会社である菱紙のスポーツクラブ事業であるKSC wellness フィットネスクラブ金町・金町スイミングクラブ(KSC wellness)を譲り受けることを発表しました。

ルネサンスは複合スポーツクラブの経営を中心に、企業・自治体・地域の健康づくり支援や介護リハビリ事業など、健康ソリューションに従事しております。

KSC wellnessは1972年に三菱製紙中川工場跡地の有効活用事業から発展し、2010年にはフィットネスクラブ機能を備えた大型スポーツクラブとして新築されました。

今回のM&Aは三菱製紙の事業ドメインの見直しに伴い、KSC wellnessの事業を譲り受けることになりました。これにより、長年にわたり地域に根差した活動を展開してきたKSC wellnessが、今後も健康ソリューション拠点として発展し続けることに貢献できるとしています。

参考:事業及び固定資産(信託受益権)の譲受

②センコーGHDによるオージースポーツの買収

2022年3月、センコーグル-プホールディングスは、大阪ガスの子会社オージースポーツにおけるすべての株式を得ることに合意しました。

オージースポーツは、「コ・ス・パ」や「FITBASE 24」などのブランド名で直営フィットネスクラブ・テニスクラブ、行政などから受託している運動施設などを主に関西圏で運営し、ヘルスケア関連事業を手掛けています。

大阪ガスは、オージースポーツの新たな成長実現のためにライフサポート事業に前向きに取り組み、フィットネス分野の実績があるセンコーの下で運営することが最適と判断しました。

これによりセンコーは、フィットネス事業のエリアを広げ、介護事業と連携した新サービスを開発するなど、健康を領域とした事業の拡充によりライフサポート事業の成長を促します。オージースポーツは、センコーの経営資源やノウハウを生かし、さらなる成長を見込みます。

参考;オージースポーツの株式譲渡

③エア・ウォーターによるプラスの子会社化

2021年11月、エア・ウォーターはプラスの株式51%を取得して子会社化しました。エア・ウォーターは、産業ガス関連事業、ケミカル関連事業、医療関連事業、エネルギー関連事業、農業・食品関連事業、物流関連事業、海水関連事業などを行っています。

プラスは食料品小売(「産直市場よってって」を和歌山県、大阪府、奈良県で計28店舗運営)、不動産賃貸、スポーツクラブ経営などを行っている企業です。

エア・ウォーターは、農業・食品関連事業においてグループ各社との協業によりシナジー効果が得られると判断しました。なお、株式の取得価額は公表されていません。

参考:プラスのグループ入りについて

④アトラグループによるOne Third Residenceの買収

2021年7月、アトラグループはOne Third Residenceの全株式を取得して、完全子会社化しました。株式の取得価額は公表されていません。アトラグループは、鍼灸院・接骨院の支援事業を行っています。

One Third Residenceは、フィットネスクラブの運営、Fitness Mirror(ミラー型のオンライントレーニング用デバイス)に関する事業などを行っている企業です。両社は、2021年3月からフィットネスクラブのフランチャイズ展開を共同事業として行ってきました。

アトラグループは、同事業のスピード展開を図ることと、Fitness Mirror事業の拡張に期待して子会社化を決めています。

参考:One Third Residence の買収に関するお知らせ

⑤テーオーホールディングスによる会社分割

2021年4月、テーオーホールディングスは同年2月に新設した完全子会社の廣辯に、一部の事業を会社分割しました。テーオーホールディングスにおける別の完全子会社であるテーオー総合サービスも、同時に一部の事業を廣辯に会社分割しています。

会社分割手続き後、廣辯の全株式はアサヒ調剤薬局に譲渡されました。テーオーホールディングスは、木材事業、流通事業、住宅事業、建設事業、不動産賃貸事業、自動車関連事業、スポーツクラブ事業などを行うグループの持株会社です。

その中でテーオー総合サービスは、損害保険代理業、事務⽤品、オフィス⽤品の販売業、⾃動⾞リース業務・割賦販売業務、介護事業、スポーツクラブ事業などを行っています。廣辯に会社分割した事業は、不動産賃貸事業の⼀部とケアサービス(介護)事業です。

テーオーホールディングスは、グループ内の中核事業と有益なシナジー効果が見込みづらい状況になったと判断し、会社分割による該当事業の譲渡を決めています。なお、アサヒ調剤薬局への株式譲渡価額は公表されていません。

参考:⼦会社の設⽴、当社及び連結⼦会社の会社分割並びに⼦会社の株式譲渡に関するお知らせ

⑥ルネサンスによるBEACH TOWNの子会社化

2021年4月、ルネサンスはBEACH TOWNの株式51.7%を取得して子会社化しました。株式取得価額は公表されていません。

ルネサンスは、フィットネスクラブ・スイミングスクール・テニススクール・ゴルフスクールなどのスポーツクラブ事業、自治体、企業などでの健康づくりを行う事業、介護リハビリ事業、およびそれらの関連事業を行っています。

BEACH TOWNは、アウトドアフィットネスやヨガスタジオ、ボルダリングジム、トレーニングジム、スケートボードパーク、ランニングステーションなどスポ ーツ施設の事業プロデュースおよび運営やガイド・インストラクター養成などを行っている企業です。

ルネサンスは、BEACH TOWNの展開するアウトドアフィットネス事業の成長性が期待できると考え、子会社化を決めています。

参考:アウトドアフィットネスを展開する株式会社 BEACH TOWN の 株式取得について基本合意書を締結したことに関するお知らせ

⑦THINKフィットネスによるジョイフルアスレティッククラブの子会社化

2021年3月、THINKフィットネスはジョイフルアスレティッククラブの株式67%を取得して子会社化しました。株式取得価額は公表されていません。

THINKフィットネスは、フィットネスクラブ経営、フィットネス機器・フィットネス用品の輸入販売・輸出、栄養補助食品・飲料の販売、フィットネス用品店経営などを行っています。

ジョイフルアスレティッククラブは、ジョイフル本田の完全子会社として、スポーツクラブの経営とコンサルティング、 レストラン経営、スポーツ関連商品販売などを行ってきた企業です。

THINKフィットネスは、自社事業とのシナジー効果が得られることと、ジョイフル本田との共同経営といった事業形態を取ることにメリットがあると判断しました。

参考:株式の一部譲受に関するお知らせ

⑧ゴルフ・ドゥによるゴルフ・ドゥ九州6店舗の譲受

ゴルフ・ドゥは2020年10月、ゴルフ・ドゥ九州6店舗を買収しました。

ゴルフ・ドゥは、中古ゴルフクラブ買い取りの販売専門店「ゴルフ・ドゥ!」を運営しています。対象会社であるゴルフ・ドゥ九州は、熊本県内でフランチャイズ店を運営していました。

取得した6店舗は黒字店舗で、九州での直営事業強化につなげます。

参考:事業の一部譲受けに関するお知らせ

⑨水戸ホーリーホックによる茨城トヨペットなどからの資金調達

水戸ホーリーホックは2020年10月、茨城トヨペット、ブックエース、コスモ綜合建設、旭物産、国際ロジテックを引受先とする第三者割当増資による資金調達を実施しました。

水戸ホーリーホックは、日本プロサッカーリーグに加盟するプロサッカークラブです。新型コロナウイルス感染症の影響に伴う収入の減少、感染症拡大予防対策における費用の支出増加により、経営に大きな影響を与えていました。

今回の第三者割当増資により、経営基盤を強化して予算編成や組織体制を早期に整え、サッカークラブの成長を加速させます。

⑩丸井織物によるアドベンチャー子会社株式の譲受

丸井織物は2020年8月、アドベンチャーの連結子会社であるwundouにおける全ての株式を取得しました。

丸井織物は、繊維とITをかけ合わせた事業の多角化を積極的に進めるなど、日本最大の合繊織物メーカーです。一方で、対象会社のwundouは、スポーツ用品衣類およびカジュアルウェアの製造販売を行っています。

今回のM&Aにより、オンデマンドでのオリジナル商品サービス「Up-T」事業における進出拡大を目指すとともに、グループとしてさらなるスポーツウェア製造販売事業の売上アップを図ります。

参考:「wundou」を事業譲受

⑪ブシロードによるソプラティコの買収

ブシロードは2020年1月、劇団飛行船およびソプラティコにおける全ての株式を取得し、子会社化しました。

ブシロードは、アニメ、ゲーム、音楽、イベントなど幅広い事業を行うなど、IPディベロッパーとしてさまざまなエンターテインメントを手掛けています。

一方、対象会社のソプラティコは主にフィットネスクラブ事業を展開し、子会社の劇団飛行船は舞台ミュージカルの企画・制作・公演事業などを行う会社です。

今回のM&Aによりブシロードは、自社グループ事業を掛け合わせた業態やスタジオプログラム開発などのサービスを提供し、ライブIPセグメントのサービス拡充を目指します。特に劇団飛行船の事業は、IPを活用した新たな舞台を共同で企画するなど、グループとして重要な柱となるでしょう。

M&A成功事例50選については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&A成功事例50選!【2021年最新版】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

6. スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aの相場と費用

M&Aを行う場合、サポートを依頼したM&A仲介会社など専門家への手数料などさまざまな費用がかかり、その額は決して安いものではありません。

また、M&Aの価額は交渉によって決まりますが、適正価額での成立を目指すためにも大まかな相場を把握しておくことが重要です。ここでは、スポーツジム・フィットネスクラブのM&A相場・費用について解説します。

スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aの相場

スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aでは、サービス内容や顧客層、強みなどがそれぞれ大きく異なるので、相対的な相場を決めるのは難しいのが実情です。

設備が充実している大型店舗施設が含まれるだけでなく、設備は必要最低限であるものの、パーソナルトレーニングスタジオやスタジオだけで行えるメニューをそろえる施設もあります。顧客もシニアや女性メインから、プロや富裕層向けとさまざまです。

以上の理由から、不動産のように目線をそろえて評価を出すことは不可能で、その相場にもあまり意味はありません。しかし、ニーズが高く工夫できる余地も大きいサービス事業です。他事業からの参入が多い現状なので、比較的売り手市場と考えられます。

参考情報として、譲渡希望案件を抜粋しました。
 

  エリア 店舗数 スキーム 売却価格 種別
事例1 兵庫・神戸 1 事業譲渡 500万円 ヨガスタジオ
事例2 東京・三軒茶屋 1 事業譲渡 250万円以下 パーソナルトレーニングジム
事例3 東京・恵比寿 1 事業譲渡 250万円以下 パーソナルトレーニングジム
事例4 東京・表参道 1 事業譲渡 250万円~500万円 パーソナルトレーニングジム
事例5 不明 1 事業譲渡 250万円~500万円 ボルダジングジム

売却価格の決まり方

M&Aでは、妥当な売却価格の目安を算出するために企業価値評価(バリュエーション)を実施し、結果に基づいて売却条件の交渉を行います。

企業価値評価の手法はいろいろあり、最も正統的なのがDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法です。ファイナンス理論などに関する高度な知識が必要で、一般的に会計事務所などの専門機関に委託します。

年倍法は、数字の意味が実感しやすく簡便な手法です。中小企業の売却でよく用いられます。算出方法は、

「企業価値=時価純資産+直近年度における営業利益×2〜5」

です。

時価純資産は、貸借対照表上の資産と負債を時価で評価し直して差し引きします。つまり、会社の過去から現在までの価値を表すのです。「直近年度における営業利益の数倍」とは、「現在から将来への価値」における見積もりをさします。

売却側の収益力や、買収企業との統合で創出できるシナジー評価の大きさにより、営業利益にかける数を増減します。

DCF法では事業計画に基づき将来の利益を具体的に予測しますが、年倍法は現在の利益をもとに大まかな将来性を見積もるでしょう。

高値で売却するポイント

高値で売却するポイントを見ていきましょう。

純資産は「施設や敷地が自己所有で時価が高い」「高性能で最新の機器を有する」ことが、評価を高める要因となるので高値で売却するポイントです。

将来性・収益性は、下記がポイントになります。

  • 会員が多い
  • 認知度がある
  • 高い付加価値がある独自サービスの提供
  • 立地のよさ
  • トレーナーが人気があり雇用を継続できる
  • 店舗・施設の大きさや形状、間取りが一般的で応用できる
  • 賃貸店舗の場合は家賃が相場より安価

コロナ禍では、「個室型パーソナルトレーニングなど」「主なターゲットが若年層」「オンラインに移行しやすい」ことが高値で売却するポイントです。

スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aにかかる費用

M&Aにかかる費用は、対象企業(事業)の規模によって大きく変わります。スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aも同様であり、事業規模が大きくなるほど費用も高くなるのが一般的です。

M&A価額に影響する要素は対象事業の収益性だけでなく、ブランド力・設備・トレーナ―などの従業員・ノウハウなども加味して決定されます。

たとえば、個人経営の小規模なスポーツジム・フィットネスクラブであればM&A費用が1,000万円程度であるケースも多いですが、新規参入目的などで大規模なスポーツジム・フィットネスクラブを買収すれば数億円から数百億円規模となるケースも珍しくありません。

会社売却、M&Aの相場については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】会社売却、M&Aの相場を解説!企業評価とは?| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

7. スポーツジム・フィットネスクラブのM&A失敗事例の特徴

スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aは活発で、売買相場も高い状態にあり期待の大きい業界です。しかし、M&Aは、成功だけでなく失敗事例もあります。スポーツジム・フィットネスクラブにおけるM&Aの失敗パターンは以下のとおりです。

①適切なM&A先が見つけられなかった

スポーツジム・フィットネスクラブでは、人口減少を見越した業界再編が盛んです。健康ブームを売上につなげるため、異業種からスポーツジム・フィットネスクラブ事業に入ってくる企業も増加してきました。

一方、よいM&A案件が見つからず希望に合った取引相手に出会えないケースが、買い手側に起こることがあります。業績がよく今後の売上が期待できる売り手はM&A市場で人気があるため、タイミングによっては希望地域での売却相手に出会えません。

売り手側も信頼できる買い手が見つからなければ、M&A成立までの時間的コストが大きくなるでしょう。適切なM&A相手を見つけられるかどうかは運にもよりますが、より多くの案件を持つところに相談することをおすすめします。全国対応のM&A仲介会社は、スポーツジム・フィットネスクラブ関連の案件を多く持っています。

②予想より税金がかかってしまった

M&Aの方法にもよりますが、事業や株式を売却・譲渡する場合、多額の税金が発生するため、税務に関する基本的な知識が必要です。

考えていたお金が手元に残らず、今後の経営・プランに悪影響が出てしまう事態もあります。M&Aに関する税金の知識がある税理士などに相談して、税金対策を行いましょう。

③事業の引き継ぎに関する話し合いが不十分だった

短期間で事業譲渡を行う場合、双方の理解が不十分なまま話し合いだけが進むことがあるので、会社の事情に合わせた対応が必要です。会社の一部や、特定の事業のみを売却・譲渡する場合、M&A仲介会社などを交えて話し合いを行いましょう。

引き継ぐ事業の範囲を関係者がしっかりと把握してから進めると、トラブルや混乱は最低限に抑えられます。

④従業員がM&A後に離職してしまった

会社の今後に不安を抱いた従業員が、M&A後に離職してしまう事例も少なくありません。従業員に対して説明が不十分であると、「自分は会社から何も聞かされていない」と経営陣が不信感を抱き、会社を離職する従業員の増加が想定されます。

M&Aにおいて従業員の待遇を悪化させたり、希望を聞かずにこれまでと全く異なる仕事をさせたりすると、従業員からの不満は大きくなるでしょう。

会社ごとに個性の差が大きいスポーツジム・フィットネスクラブでは、会社文化の違いで従業員同士がなじめず、人間関係が悪化することもあります。

M&Aでは、経営者同士の話し合いが重要視されますが、従業員や取引先にM&Aの説明を行うことも大切です。M&Aに詳しい専門家などを交えたうえで、従業員や取引先に対する説明を適切に行ってください

M&Aの成功基準や成功確率を高める方法については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&Aの失敗確率は75%?成功基準や成功確率を高める方法【事例あり】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

8. スポーツジム・フィットネスクラブのM&Aのまとめ

フィットネスジム・スポーツクラブはコロナ禍の影響を受けながら、業界再編や事業の買収・売却などM&Aがますます盛んになると予想されます。

M&Aを成功させるには、専門家に依頼するのが得策です。M&A仲介会社などが実施している無料相談を活用し、自社に適した専門家選びからスタートしましょう。

9. スポーツクラブ・フィットネスクラブ業界の成約事例一覧

10. スポーツクラブ・フィットネスクラブ業界のM&A案件一覧

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