ホテル・旅館の事業承継マニュアル!業界動向や事例・案件例・相談先も解説

会計提携第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

ホテル・旅館業の事業承継・M&Aについて、動向や事例、案件例、成功ポイントなどを詳しく解説します。ホテル・旅館業界のおすすめの相談先についても併せて紹介しますので、ホテル・旅館業の事業承継・M&Aを検討する方は参考にしてください。

目次

  1. ホテル・旅館業界を取り巻く環境
  2. ホテル・旅館の事業承継・M&A案件例
  3. ホテル・旅館の事業承継・M&A事例
  4. ホテル・旅館の事業承継先別の流れ
  5. ホテル・旅館の事業承継を成功させるためのポイント
  6. ホテル・旅館の事業承継を行う際の注意点
  7. ホテル・旅館の事業承継・M&Aの相談先
  8. ホテル・旅館の事業承継まとめ
  9. ホテル・旅館業界の成約事例一覧
  10. ホテル・旅館業界のM&A案件一覧
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1. ホテル・旅館業界を取り巻く環境

はじめに、ホテル・旅館業界を取り巻く環境をお伝えします。

ホテル・旅館業界の市場規模

観光庁の発表によると、2024年4月に国内のホテルや旅館を利用した日本人と外国人の延べ宿泊者数は、前年同月比で10.1%増加し、約5190万人泊となりました。特に外国人宿泊者数は約1450万人泊で、前年比46.9%の大幅な増加を記録しており、訪日客の急増が顕著です。また、全体の客室稼働率は59.8%と、新型コロナ流行前の水準に近い高い数字を維持しました。

参考:帝国データバンク「旅館・ホテル市場、23年度は4.9兆円」

ホテル・旅館業界の市場動向

1ドル150円を超える円安の影響で、日本旅行が割安感から注目を集めており、国内の旅館・ホテル市場は引き続き好調を維持すると予測されています。2024年度の市場規模は5年ぶりに5兆円台に達し、過去最高を更新する可能性もあります。

しかし、現場ではフロントや調理スタッフなどの人員確保が追いついておらず、人手不足が深刻な問題となっています。このため、宿泊予約や客室稼働率を制限せざるを得ない施設もあり、高まる需要を十分に取り込めない状況が続いています。

ホテル・旅館業界の課題と展望

ホテル・旅館業界の課題と展望について、2つのトピックに分けて解説します。

人材流出と人手不足が深刻化

ホテルの宿泊者数は増加傾向にあるものの、従業員数は横ばいが続いており、人手不足が深刻な課題となっています。その主な原因として、業界特有の「離職率の高さ」が挙げられます。

ホテルや旅館業界では、深夜や早朝勤務が求められるなど不規則な勤務体系に加え、待遇がそれに見合わないことが離職を促している要因とされています。このような人手不足は、事業承継における後継者不足の問題とも密接に関わっています。

経営者の高齢化が進行

ホテルや旅館業界に限らず、多くの業種で経営者の高齢化が進み、廃業に追い込まれるケースが増えています。中小企業庁の調査によると、2015年時点で経営者の平均年齢は66歳に達し、その後も高齢のまま経営を続ける事例が多いとされています。ホテル・旅館業界でも後継者が見つからないために、経営者が高齢になっても事業を続けざるを得ないケースが少なくありません。

中には、廃業を検討していた経営者が、同業者からの提案を受けて事業を引き継ぐ形でM&Aを実行した事例もあります。しかし、経営者が高齢になってから事業承継を始めると、準備期間が足りず十分な対応ができない場合があります。そのため、経営者が60歳を迎える頃には事業承継の準備を開始することが望ましいでしょう。

【関連】ホテル・旅館の買収・売却・M&A!相場は?【売買事例あり】

2. ホテル・旅館の事業承継・M&A案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っているホテル・旅館の事業承継・M&A案件例をご紹介します。

【創業90年以上】老舗温泉旅館

創業90年以上の老舗温泉旅館です。100%源泉掛け流しの温泉と地元の食材を使った豪華な料理が売りの旅館で、大手宿泊予約サイトの口コミ平均4.5点以上と高水準で推移しています。
 

エリア 中部・北陸
売上高 1億円〜2.5億円
譲渡希望額 1000万円〜5000万円
譲渡理由 財務的理由、後継者不在(事業承継)

【関連】【創業90年以上】老舗温泉旅館(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

【海外/部屋数300室以上】 5つ星リゾートホテル事業

部屋数は300室以上を誇ります。5つ星ホテルとしての認定もあります。
 

エリア 海外
売上高 10億円〜25億円
譲渡希望額 約200億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【関連】【海外/部屋数300室以上】 5つ星リゾートホテル事業(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

【首都圏 / 好立地ホテル】都内人気観光エリアのホテル一棟貸

ホテル所在地の最寄りは都内ターミナル駅です。国内外いずれからも人気の観光エリアであり、有名観光スポットが近くにあります。
 

エリア 東京都
売上高 1000万円〜5000万円
譲渡希望額 5億円〜7.5億円
譲渡理由 戦略の見直し

【関連】【首都圏 / 好立地ホテル】都内人気観光エリアのホテル一棟貸(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

3. ホテル・旅館の事業承継・M&A事例

ここでは、ホテル・旅館の事業承継・M&Aの事例をご紹介します。

大和ライフネクストによるマックスパートの買収

2024年12月18日、大和ライフネクストはマックスパートの全株式を取得し、子会社化することを発表しました。大和ライフネクストは分譲マンションやオフィスビル、商業施設、ホテルなどの建物管理を手掛けています。一方、マックスパートはカンファレンスホテルの運営やオンライン配信サービスを提供しています。

マックスパートは、大和ライフネクストが2021年から展開しているカンファレンスホテル事業において運営協力を行い、事業立ち上げに貢献してきました。本件M&Aにより、マックスパートの豊富な取引ネットワークや営業力、ホスピタリティ人材を活用し、大和ライフネクストは既存事業の強化とさらなる拡大を目指します。

株式会社マックスパートの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

ポラリスHDによるミナシアの完全子会社化

2024年10月15日、ポラリス・ホールディングス(ポラリスHD)は、ミナシアを完全子会社化するための株式交換を決定しました。ポラリスHDはホテル事業や不動産事業を展開しており、ミナシアは「ホテルウィングインターナショナル」の運営やレストラン事業を手掛けています。

ポラリスHDは2024年6月にスターアジアグループと共同でミナシアの株式を保有する合同会社Corridaに出資し、資本業務提携契約を締結していました。

両社の事業は親和性が高く、宿泊需要の拡大に対応するため、より強固な資本関係のもとで一体的な経営を行うことでシナジーを最大化し、企業価値を向上させることを目指しています。

株式会社ミナシアとの経営統合完了、経営体制の変更及び組織再編に関するお知らせ

トラベル・アンド・レジャーによる遊子 千曲館の買収

世界最大の会員制旅行会社であるトラベル・アンド・レジャーは、長野県千曲市に位置するリゾート施設「遊子 千曲館」を買収し、日本初のクラブウィンダムブランドとして「クラブウィンダム千曲館 長野」にリブランドすると発表しました。

新しい「クラブウィンダム千曲館 長野」は、和洋折衷のデザインを持つ36室の宿泊施設で、無料Wi-Fi、地元の信州名物を提供するレストラン、温泉などの設備を備えています。このリゾートは、同社が日本で展開する19軒目のホテルとなり、アジア太平洋地域およびその他の地域での事業拡大を示しています。

トラベル・アンド・レジャーの代表バリー・ロビンソン氏は、この買収により日本での存在感を強化し、増加する観光需要に対応する意向を示しています。

コアグローバルマネジメントによる景水の完全子会社化

ホテル運営会社コアグローバルマネジメントは、「緑翠亭 景水」を運営する景水の発行済全株式をルネッサンスセブン投資事業有限責任組合(東京都港区)から取得し、完全子会社化しました。

これにより、コアグローバルマネジメントグループが所有する初のホテルとなります。

今後、コアグローバルマネジメントは地域の魅力ある旅館を積極的に取得し、運営ノウハウを活用してバリューアップを図り、地域の活性化と日本の観光立国化を推進していく予定です。

【コアグローバルマネジメント株式会社】株式会社景水を完全子会社化し、初の所有ホテルとして緑翠亭 景水(長野県・大町温泉郷)の営業を2024年3月1日より開始しました。

アマネクによる第三者割当増資

ホテル・旅館の事業承継・M&Aの成功事例1件目は、アマネクによる第三者割当増資です。

2020年に、ホテルや旅館の開発や運営を手掛けるアマネクは、地域経済活性化支援機構の100%子会社であるREVICキャピタル運営の九州広域復興支援投資事業有限責任組合とJPインベストメント傘下の事業体が運営するJPインベストメント1号投資事業有限責任組合を引受先とする、第三者割当増資を実施しました。

2021年に完成予定の地域活性化ホテル(アマネク別府)の建設資金に、調達した資金が充てられるとしています。

  • ホテル・旅館のM&A・事業承継

4. ホテル・旅館の事業承継先別の流れ

ここでは、ホテル・旅館の承継先ごとに、手続きの流れについて解説します。

ホテル・旅館の親族間承継(親族外承継)

ホテル・旅館の親族間や親族外の事業承継は以下の流れで行われます。
 

  • 事業承継計画の策定 
  • 後継者の教育
  • 資産・財産・株式・許認可などの引継ぎ
  • 個人保証・担保の処理

流れ①:事業承継計画の策定

事業承継にはさまざまな人が関わり、長期間の準備が必要になることもあるので、まずは事業承継計画を策定することから始めます。

親族の理解(親族外承継)

事業承継には、後継者となる親族や関係者の同意が必要です。可能であれば、事業承継計画の策定過程を何度も確認してもらいながら、ともに価値観や思いを共有していきます。

専門家への相談

ホテル・旅館業の経営者は日々の仕事が忙しく、じっくりと事業承継計画を作っている余裕がないという人も多いです。そのため、専門家のサポートを得ながら作成することが効率的です。

また、各都道府県には事業引継ぎ支援センターが設置されています。相談すれば、事業計画書の策定をサポートしてもらうこともできます。

そのほか、地元商工会議所やM&A仲介会社などの専門機関でもサポートが得られます。

流れ②:後継者の教育

ホテル・旅館業の後継者となる意思を確認し事業承継計画が完成したら、後継者の教育を進めます。

一般的に、後継者の育成には5年以上かかるといわれています。経営者が高齢になるまで後継者の育成をしていなかったことにより、廃業せざるを得なくなったケースも多く見られます。

後継者の育成には、社内教育のほか、公的機関で定期的に開催されている後継者育成塾・セミナーに参加させるなど、長期目線で育成する必要があります。

流れ③:資産・財産・株式・許認可などの引継ぎ

実際にホテル・旅館業の事業承継を行う段階になったら、資産・財産・株式・許認可などの引継ぎを行います。

親族内承継の場合、急に権利を主張する者が出てくるなどのトラブルが起こり得ます。事業承継の実施段階でトラブルに陥らないよう、専門家の協力などによってあらかじめ対策をしておくことが重要です。

流れ④:個人保証・担保の処理

経営者が後継者への事業承継をためらい、廃業に至る要因の一つが個人保証や担保の負担です。

近年は、銀行も個人保証の解除要件を緩和し始めていますが、解除してもらえないケースもまだ多いです。解除できなかった場合の対応など、専門家とともに準備しておく必要があります。

ホテル・旅館のM&Aによる事業承継

M&Aによるホテル・旅館の事業承継は、以下の流れで行われます。
 

  • 仲介会社などへの相談
  • 承継先の選定
  • 基本合意書の締結
  • デューデリジェンスの実施
  • 最終契約書の締結
  • クロージング

流れ①:仲介会社などへの相談

ホテル・旅館のM&Aによる事業承継では、まず仲介会社などの専門家へ相談します。

個人事業など小規模な事業承継案件の場合、仲介機関をとおさないケースもありますが、ホテル・旅館業のような取引額が大きくなる事業承継の場合は、手続きに専門知識が必要となるため、仲介機関をとおす必要があります。

秘密保持契約書の締結

仲介機関と仲介契約を結ぶと、仲介会社や後継者候補先に、自社の情報を一定部分公開することになります。

したがって、ホテル・旅館業に関する重要な情報を外部に漏らしたり、事業承継以外の目的に使用したりしないよう、秘密保持契約を結びます。

流れ②:承継先の選定

後継者候補が決まっていない場合は、仲介機関から事業承継先を探してもらいます。

仲介機関によって保有している案件情報や得意とする業種は異なります。そのため、ホテル・旅館業界の事業承継支援実績があり、ネットワークを持っている仲介機関に依頼すると、選定も円滑に進みます。

流れ③:基本合意書の締結

事業承継先が決まって合意が得られたら、基本合意契約を結びます。仲介機関によっては、この時点で中間手数料が必要です。

ホテル・旅館業のような取引金額が大きい業界の場合、できるだけ中間手数料が必要ないシンプルな報酬体系の仲介機関を選ぶと、安心して手続きを進めることができます。

流れ④:デューデリジェンスの実施

M&Aでは、デューデリジェンス(企業内調査)を行うことによって、ホテル・旅館運営会社の企業価値を精査したりリスク要因を洗い出したりします。

デューデリジェンスは、M&Aによる事業承継後の事業継続にも大きく影響するので、ホテル・旅館業のデューデリジェンスに長けた専門家に分析してもらうことが重要です。

流れ⑤:最終契約書の締結

デューデリジェンスの結果をもとに修正点があれば修正し、合意のうえ最終契約書を締結します。

M&Aは一般的に6ヶ月から1年以上、早ければ3ヶ月から6ヶ月で完了します。仲介機関のサポート体制に要する期間に差が出ることが多いです。

流れ⑥:クロージング

クロージングを迎えてM&Aによる事業承継は完了しますが、事業承継後の引き継ぎ過程が重要です。

事業承継を成功させるためにも、PMI(事業引継ぎ後の統合プロセス)を的確に行わなければなりません。

【関連】M&Aのフロー・流れを徹底解説!検討〜クロージングまで【図解あり】

5. ホテル・旅館の事業承継を成功させるためのポイント

ホテル・旅館業で廃業を防ぎ事業承継を成功させるには、以下のポイントを押さえる必要があります。
 

  1. 運営するホテル・旅館の強みやアピールポイントを理解する 
  2. 事業承継を計画的に準備する
  3. 承継・M&A先は選定する 
  4. 事業承継・M&Aの専門家に相談する

①運営するホテル・旅館の強みやアピールポイントを理解する

ホテル・旅館の事業承継を成功させるためには、以下のような運営するホテル・旅館の強みやアピールポイントを把握しておきましょう。
 

  • 利用者数の推移もデータ化する
  • 従業員の質や人数
  • 地域性

利用者数の推移もデータ化する

買い手側は、ホテル・旅館のデータも参考にしながら、事業承継後の運営を分析・判断します。

ホテル・旅館業界でもマーケティングの重要性が増しているので、参考データが多いほど買い手側にとっては材料が増えることになります。

従業員の質や人数

口コミサイト・アプリの普及により、M&A・事業承継の際は従業員の質の高さも評価基準の大事な要素です。

また、ホテル・旅館業界も人手不足により、日々の業務を十分回していけるだけの人数も求められます。

地域性

ホテル・旅館は地域性に合わせた運営が重要です。特に、リゾートホテルや観光旅館ではその傾向が強くなります。

地域性に合わせたアピールポイントを持つことにより、買い手も付きやすくなるといえるでしょう。

②事業承継を計画的に準備する

事業承継を成功させるには、以下のような計画も大事です。
 

  • 承継が完了するまでは従業員などに報告しない
  • 承継先の選択肢を絞らない
  • 譲れない条件を明確にする

承継が完了するまでは従業員などに報告しない

早い段階で従業員に伝えてしまうと不安を生じさせることにもなり、日々の業務が滞ったり急な退職者が出たりする可能性があります。

そのため、事業承継では従業員の同意を得る必要が生じる直前まで、事業承継の計画を伝えないようにしましょう。

承継先の選択肢を絞らない

事業承継に成功した企業の中には、当初想定していなかった業界の企業に引き継いだケースも多く見られます。

はじめから選択肢を絞りすぎず、専門家と相談しながらさまざまなパターンを探ってみることも、成功ポイントの一つです。

譲れない条件を明確にする

会社の理念や経営者の思いなど、これだけは譲れないというポイントが誰にもあります。

特に、中小企業オーナーは思いを大事にしてくれる相手を優先して求める傾向にあります。そのため、思いを誠実に受け止めてくれる専門家を探すことも重要です。

③承継・M&A先は選定する

事業承継・M&A先を選定するときは、以下の点に注意することが大切です。
 

  • 円満な承継ができるように交渉する
  • 引継ぎに関する条件を明確にする

円満な承継ができるように交渉する

事業承継でよくあるケースが、承継を急ぐあまり不利な条件で成立させてしまうケースと、逆に理想の条件を譲らないあまりに挫折するケースです。

交渉の負担に耐えられず廃業を選ぶケースもあるので、冷静・円満に交渉を進めることも重要です。

また、交渉のプロである仲介会社などに依頼すると、円満にまとまる可能性が高くなります。

引継ぎに関する条件を明確にする

事業承継後のトラブルも想定しておかなければなりません。例えば、従業員の雇用条件を明確に定めなかったために労働条件が悪化したり、短期間で急激に企業風土を変えられたことで退職者が続出したりするケースも見られます。

事業承継後のフォローも行っている仲介会社などもあるので、不安であれば専門家に依頼することも必要です。

④事業承継・M&Aの専門家に相談する

事業承継にはさまざまな負担と不安が付いてくるので、1人で行うのは非常に困難です。

前述したように、事業承継・M&Aのサポートを行っている各種専門家がいるので、まずは相談して、相性の良い専門家を見つけることも大事なプロセスです。

6. ホテル・旅館の事業承継を行う際の注意点

ホテル・旅館の事業承継を行う際の注意点を3つご紹介します。

情報漏洩への対策

事業承継には、「親族内承継」「親族外承継」「M&A」の3つの方法があります。特にホテルや旅館業界では、親族内承継を望む経営者が多い傾向にあります。後継者候補の子供がすでに会社で働いている場合、従業員や取引先もその子供が後継者になると予想しているケースが一般的です。

しかし、事業承継の計画が外部に漏れると、従業員や取引先に不安を与える可能性があるため、情報管理が非常に重要です。例えば、事業の縮小やリストラの憶測が広がることで従業員に動揺を与えたり、取引先に業績不振の印象を与えてしまう可能性があります。また、親族外承継やM&Aでは、従業員の間で不満が生じる場合もあるため、慎重な対応が求められます。

特にM&Aでは、内容が確定するまで情報を厳重に管理し、不要な混乱を防ぐことが重要です。M&Aは多くのメリットをもたらす一方で、マイナスイメージを持たれやすい点に注意が必要です。

後継者教育の徹底

ホテル・旅館の事業承継では、後継者教育を早期に開始することが重要です。現経営者の子供が後継者の場合、10年程度の計画で着実に教育を進めることが可能です。事業承継では、しきたりや顧客との関係性など、細やかな配慮が必要な要素を適切に引き継ぐことがポイントとなります。

役員や従業員が後継者の場合は、既存の方針を理解しているため、教育期間を短縮しやすい利点があります。一方、M&Aによる承継では、売却後も同じ運営方針を希望する場合、条件を明確に設定することが重要です。

親族内承継では、子供を社内で教育する方法や、他社で経験を積ませてから迎え入れる方法があります。いずれの場合も、後継者の年齢や適性を考慮し、早めに計画を立てて経営者教育に取り組むことが成功の鍵となります。

営業許可の引き継ぎ

ホテルや旅館を運営するには、施設ごとに「旅館業営業許可」が必要です。事業承継を行う際、この許可を新たに申請するか、適切な手続きを経て引き継ぐ必要があります。

営業許可は都道府県知事の管轄下にあり、承継や変更の際には、事前に行政機関へ相談することが推奨されています。これによりスムーズな引き継ぎが可能となります。

7. ホテル・旅館の事業承継・M&Aの相談先

ホテル・旅館の事業承継・M&Aを行う際は、目的に合わせて以下の相談先にサポートを依頼するとよいでしょう。
 

  1. 金融機関
  2. 公的機関
  3. 税理士・会計士・弁護士など
  4. マッチングサイト
  5. M&A仲介会社

①金融機関

ホテル・旅館の事業承継相談先の一つ目は、金融機関です。近年では、後継者不在による廃業の増加から、地方金融機関は地元企業の廃業を防ぐため事業承継支援を強化しています。

②公的機関

ホテル・旅館の事業承継相談先の2つ目は、事業引継ぎ支援センターなどの公的機関です。各都道府県には、国の委託により各都道府県が運営する事業承継・引継ぎ支援センターがあります。

事業承継・引継ぎ支援センターでは地元中小企業の廃業を防ぐため、事業承継に関する相談や後継者候補とのマッチング事業などを行っています。

③税理士・会計士・弁護士など

ホテル・旅館の事業承継相談先の3つ目は、税理士・会計士・弁護士などの各種士業専門家です。規模の大きい事務所であれば、事業承継の実績もあり、経営に関するトータルサポートを行っている場合もあります。

④マッチングサイト

ホテル・旅館の事業承継相手を探す手段として、マッチングサイトを活用する方法もあります。

近年は大手仲介会社や他業種大手企業によるマッチングプラットフォーム参入が相次ぎ、サービスの質が向上しています。

⑤M&A仲介会社

ホテル・旅館の事業承継相談先として、M&A仲介会社に相談する方法もあります。

M&A仲介会社はM&A・事業承継を専業としているので、一貫したフルサポートができる強みがあります。

近年は安価でシンプルな報酬体系の仲介会社が増えているので、中小のホテル・旅館でも依頼しやすくなっています。

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8. ホテル・旅館の事業承継まとめ

本記事ではホテル・旅館の事業承継について、相談先や成功ポイントなどについて解説してきました。

親族間や親族外の事業承継は以下の流れで進みます。
 

  • 事業承継計画の策定 
  • 後継者の教育
  • 資産・財産・株式・許認可などの引継ぎ
  • 個人保証・担保の処理

また、M&Aによる事業承継は以下の流れで進みます。
 
  • 仲介会社などへの相談
  • 承継先の選定
  • 基本合意書の締結
  • デューデリジェンスの実施
  • 最終契約書の締結
  • クロージング

ホテル・旅館業界の近年の動向は以下です。
 
  1. 後継者問題により廃業を選ぶ
  2. 民泊など競争激化が懸念される
  3. インターネット予約によるコスト増

ホテル・旅館の事業承継・M&Aでは、以下の専門機関に相談できます。
 
  1. 金融機関
  2. 公的機関
  3. 税理士・会計士・弁護士など
  4. マッチングサイト
  5. M&A仲介会社

ホテル・旅館業を廃業せずに事業承継を成功させるには、以下のポイントを押さえる必要があります。
 
  1. 運営するホテル・旅館の強みやアピールポイントを理解する 
  2. 事業承継を計画的に準備する
  3. 承継・M&A先は選定する 
  4. 事業承継・M&Aの専門家に相談する

9. ホテル・旅館業界の成約事例一覧

10. ホテル・旅館業界のM&A案件一覧

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