2023年04月26日更新
事業承継の遺贈!相続方法や気を付けるポイントなどを解説
遺贈とは、遺言によって指定した人物へ財産を無償で譲渡することです。事業承継で遺贈を用いるメリットは、法定相続人以外の人物に財産を譲渡できる点です。本記事では、事業承継の遺贈による相続方法や、遺贈で気を付けるポイントなどを解説します。
目次
1. 事業承継の遺贈とは
事業承継を円滑に進めるためには経営者が元気なうちに事業承継の準備を進めておく必要がありますが、その方法の1つに遺贈があります。本章では、事業承継における遺贈の意味や相続との違いなどを解説します。
遺贈とは
遺贈とは、遺言によって指定した人物へ財産を無償で譲渡することです。事業承継で遺贈を作成する主なメリットは、法定相続人以外の人物へ財産を譲渡できる点です。事業承継の際の遺贈は包括遺贈と特定遺贈に分けられます。
包括遺贈とは
包括遺贈とは、遺贈する財産の割合を決めて引き継ぐ方法です。事業承継の際、指定した人物に財産の3分の1を遺贈したい場合などに活用します。
包括遺贈は財産の割合を指定する方法であって、事業承継における財産の種類を指定する方法ではありません。事業承継の財産を受け継ぐ受贈者側は、財産の内容によっては事業承継に伴って負債を受け継ぐケースもあります。
受贈者は遺贈による事業承継で損をする事態を防ぐために、限定承認や相続放棄などの方法で遺贈による損失を回避できます。
限定承認とは、事業承継で遺贈した財産を超えて負債を払う必要がない承認方法です。一方、相続放棄とは、負債も含めて事業承継に伴う財産をいっさい相続しない選択方法です。
そのほか、単純承認と呼ばれる、事業承継の際に遺贈財産を丸ごと受け入れる承認方法もあります。
特定遺贈とは
特定遺贈とは、事業承継の際に財産の種類を特定して引き継ぐ方法のことです。包括遺贈が「財産の割合」であったのに対して、特定遺贈は「財産の種類」である点に違いがあります。
受贈者にとっての主なメリットは、事業承継の際に負債があった場合、包括遺贈のように負債を受け継ぐ必要がない点です。特定遺贈の場合は遺言に記載されている財産を受け継ぐのみで済みます。
相続との違い
相続と遺贈の大きな違いは、財産を引き継ぐ対象者です。事業承継における相続の場合は、法定相続人に事業承継財産が引き継がれます。
法定相続人は配偶者と血族相続人に分かれていて、相続人との関係性で相続順位が分かれています。一方、遺贈の場合は法定相続人以外の人物に事業承継財産を引き継ぐことが可能です。
相続の場合は相続順位で相続人が決まりますが、遺言がある場合は遺言で指定された人物が優先的に事業承継財産を受け継ぎます。
遺留分との違い
遺産の相続人の中でも被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分と呼ばれる一定程度の遺産の取り分が保障されています。遺留分とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪えない遺産の一定割合における留保分のことです。
法定相続人の遺留分を超える相続財産が遺贈された場合、法定相続人は「遺留分の侵害額請求」を行い、財産を取り戻すことが可能です。
2. 事業承継の遺贈・相続方法について
事業承継の際の遺言には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があります。それぞれの書き方を解説します。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言の作成から保管までを全て遺贈者自身で行うことです。事業承継の際に自筆証書遺言を作成するメリットは、遺言書作成コストが遺贈者自身の手間だけで済む点です。
公正証書遺言のように、作成を依頼する費用が必要ありません。遺言の内容は遺言者自身しか知らないので、事業承継における遺贈で情報漏えいの可能性を低くすることが可能です。
ただし、自筆証書遺言を作成する場合遺贈者が自力で作成と遺言の管理を行うので、遺贈が無効になってしまう可能性があります。
以下では、事業承継の遺贈で用いる自筆証書遺言の書き方の例をまとめました。遺言書を遺贈者自身で書く場合は、全ての文章を自身で書くこと、具体的な記載内容にすること、遺言の日付を明記することなどが注意点として挙げられます。
自筆証書遺言の書き方
公正証書遺言とは
遺言の保管も任せられるため、紛失や改ざんなどにより事業承継における遺贈ができない問題も発生しにくいです。ただし、事業承継のために公正証書遺言を作成するには、時間とお金がかかったり、証人を2人用意したりする必要があります。
公正証書遺言の書き方
秘密証書遺言とは
秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と公正証書遺言の両方の特徴を取り入れた遺言書です。事業承継の際、遺贈者は公証人を通す必要がありません。
一方で、自筆証書遺言とは違い証人の署名が必要なので、事業承継の際に遺贈を最低限の相手にのみ伝えて遺言の改ざんを防ぐことも可能です。
秘密証書遺言の書き方
3. 事業承継の遺贈を行う際に気を付けるポイント
- 自筆証書遺言の紛失
- 自筆証書遺言の改ざん
- 公正証書遺言は重要
自筆証書遺言の紛失
自筆証書遺言は紛失しないように注意が必要です。遺贈者が事業承継前に紛失したことに気付けば良いですが、もしも遺贈者が亡くなってから事業承継後に紛失したはずの遺言書が出てきた場合、事業承継に混乱をきたす可能性があります。
公正証書遺言の場合は厳重に保管されるので、紛失の可能性はまずありません。
自筆証書遺言の改ざん
自筆証書遺言の紛失とともに改ざんも、事業承継にとって大きなトラブルとなる可能性があります。事業承継前に気付ければ良いものの、事業承継後に気付いた場合は事業承継自体がやり直しになる可能性もあります。
自筆証書の紛失や改ざんは取り返しのつかないおそれがあるので、トラブルを防ぐためには公正証書遺言を作成したうえで事業承継を行いましょう。
公正証書遺言は重要
自筆証書遺言の紛失や改ざんは、事業承継に重大なトラブルを起こす可能性があります。公正証書遺言は作成に手間がかかる面もありますが、後継者に安全に事業承継を行うためには手間をかけてでも公正証書遺言の形で遺贈しましょう。
4. 20年7月に施行された遺言書保管法とは?
2020年7月から、遺言書保管法が施行されました。遺言書保管法とは、自筆証書遺言を遺言書保管所に預けられる法律です。これにより、自筆証書遺言の紛失や改ざんを防げるようになりました。
しかし、遺言書保管所に預ける際は、作成に関する相談はできず、遺言の内容も確認されることはありません。
自筆証書遺言の内容が遺贈者の意図したものとは違っていた場合や、事業承継前に誰かに改ざんされていた場合であっても、遺言書保管所で指摘してもらえるわけではない点に注意が必要です。
5. 遺贈による事業承継をおすすめしない理由
ここまで遺贈による事業承継を解説してきましたが、遺贈による事業承継は必ずしも最適な選択肢とはいえません。自筆証書遺言の場合は紛失や改ざんの可能性があり、遺贈者が存命のうちは何度でも遺書を書き換えられるので、後継者は遺書の内容に振り回されることになりかねません。
遺留分を侵害する内容の場合は、相続人の遺留分減殺請求の原因ともなります。事業承継の際に遺贈する財産に差を付ける場合は、その理由を明確にしておくことでトラブル回避につながります。
遺贈による事業承継は弁護士に相談
弁護士に相談すると、自分のケースにおいて遺贈による事業承継が最適な選択肢なのか念入りに検討してもらえます。そのほか、民法特例の要件を満たすための手続きや、合意書を作成するなど複雑な作業を代行してもらえるでしょう。
税理士と連携している弁護士も多いため、事業承継を全体的に支援してもらえます。
6. 事業承継M&Aの遺贈に関する相談先
遺贈による事業承継はさまざまなトラブルの素ともなるので、それほどおすすめできません。トラブルなく事業承継を行うためには、事業承継の専門家に依頼することも大切です。
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7. 事業承継の遺贈まとめ
事業承継を円滑に進めるためには、経営者が元気なうちに準備を進めておくことが大切です。後継者がいない場合はM&Aを活用することで事業承継が可能になるので、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
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