2022年11月22日公開
中小企業向け事業承継・引継ぎ補助金とは?対象となる経費や補助額・スケジュールについて解説!
事業承継をきっかけに経営革新を目指す中小企業を支援する事業承継・引継ぎ補助金は、採択率も高く積極的な活用が望まれる制度です。本記事では、事業承継・引継ぎ補助金について、対象経費・補助額・スケジュールなど、制度の全体像を解説します。
目次
1. 事業承継・引継ぎ補助金とは
事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継をきっかけに経営革新を行いたい中小企業や個人事業主に対して、必要経費の一部を補助する制度です。
国は以前から、後継者問題を解決するための手段として事業承継を支援しており、事業承継税制や事業承継ガイドラインの制定などを行っています。
それに対して、今回の事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を契機として会社や事業を発展させようとする中小企業・個人事業主のための補助金であり、後継者問題というよりも国の経済の活性化を図ることが目的です。
「ものづくり補助金」や「持続化補助金」などの、中小企業の活性化を狙う補助金の流れを汲む制度だといえます。
今回の事業承継・引継ぎ補助金は3種類ある
今回の「令和3年度補正予算 事業承継・引継ぎ補助金」には、「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」の3種類があります。「廃業・再チャレンジ事業」は今回新設された制度です。
【事業承継・引継ぎ補助金の種類】
- 経営革新事業
- 専門家活用事業
- 廃業・再チャレンジ事業
申請期間は4回
今回の、令和3年度補正予算 事業承継・引継ぎ補助金の申請期間は4回あります。2022年6月現在は、専門家活用事業と廃業・再チャレンジ事業の第1回受付は5月31日で終了、経営革新事業のみ6月20日までの受付です。
2回目以降の申請期間はまだ公表されていないので、利用を検討している方は公式サイトなどで随時情報をチェックしておきましょう。
2. 1.事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)
「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)」とは、事業承継をきっかけに、新たな事業への進出などの「経営革新」を行いたい中小企業・個人事業主に対して、それに必要な経費の一部を補助する制度です。
単なる新事業への進出ではなく、事業承継によって獲得した経営資源を生かして、経営革新を行う中小企業・個人事業主が対象となります。
創業支援型、経営者交代型、M&A型の3種類がある
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)には、「創業支援型」「経営者交代型」「M&A型」の3種類があります。
つまり、まず大枠として「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」の3つがあり、経営革新事業がさらに「経営革新事業の創業支援型」「経営革新事業の経営者交代型」「経営革新事業のM&A型」の3つに分かれるということです。
前回の令和3年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金では「経営者交代型」「M&A型」の2種類だったのに対して、今回は新たに創業支援型が加わったことになります。
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の種類】
- 創業支援型
- 経営者交代型
- M&A型
①創業支援型
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の創業支援型とは、事業承継をきっかけに新会社の設立や新事業の開業を行い、その新会社・新事業によって経営革新を行おうとする中小企業・個人事業主の、経費の一部を交付する類型です。
②経営者交代型
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の経営者交代型とは、親族や従業員などを後継者とする事業承継をきっかけに、経営革新を行いたい中小企業・個人事業主に対して、必要経費の一部を補助する類型です。
先ほどの創業支援型と違って、新会社や新事業の設立は行わないのが特徴となっています。経営者交代型は、原則として承継者が個人の場合が対象となるのが注意点です。
法人が承継者となるタイプの事業承継は原則として対象外で、一旦個人事業主として承継した後に法人成りするケースのみが対象となります。
③M&A型
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)のM&A型とは、M&Aをきっかけに経営革新を行おうとする中小企業・個人事業主に対して、必要経費の一部を補助する類型です。
株式譲渡などの一般的なM&Aスキームだけでなく、合併や分割といった組織再編手法、個人事業主による事業譲渡なども対象となり、さまざまなM&Aスキームに対応する制度となっています。
経営革新事業の補助率および上限額
経営革新事業の補助額は、下限が100万円、上限が600万円です。補助率は、補助の対象となる経費に対して、補助額400万円以下の部分が3分の2、400万円超の部分が2分の1となります。
これは創業支援型、経営者交代型、M&A型3つに共通です。例えば、補助対象の経費が300万円の場合、補助額は300万円の3分の2で200万円となります。
経費が900万円の場合は、まず経費のうちの600万円の部分に対して3分の2の400万円が補助額となり、さらに残りの300万円の部分に2分の1を掛けた150万円が補助額となります。よって、この場合の補助額合計は550万円です。
経費が1,000万円の時に補助額がちょうど上限の600万円となるので、これ以上はいくら経費が増えても補助額は600万円となります。
最低額に注意
補助額で注意したいのが、100万円という最低額が設定されていることです。これはつまり、経費が150万円未満の場合は3分の2を掛けると100万円を下回るので、補助金の申請ができないことを意味します。
廃業費の上乗せもできる
経営革新事業の補助額の上限は原則として600万円ですが、経営革新にともない既存事業の廃業を行う場合は、別枠で廃業費が150万円まで上乗せされます。
つまり、廃業をともなう経営革新の場合は、合計で最大750万円まで補助金が出る可能性があるということです。
経営革新事業の補助対象となる経費
経営革新事業の補助対象となる経費は以下のとおりです。人件費や設備費など、事業で必要となるたいていの費用は網羅されているといえます。
詳細な判断基準については、「令和3年度補正予算 事業承継・引継ぎ補助金 経営革新事業 公募要領」という文書に記載されているので、こちらを参考にしてください。
原材料費に関しては、サンプル・試供品のみが対象となるのは注意しておきたい点です。製品を作るための通常の原材料費は対象となりません。
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象となる経費】
- 人件費
- 店舗等借入費(店舗の家賃など)
- 設備費(店舗の工事費、機器の調達費用など)
- 原材料費(試供品・サンプル制作の費用)
- 産業財産権等関連経費(特許取得の弁理士費用など)
- 謝金(弁護士などの専門家に支払う経費)
- 旅費(出張の交通費や宿泊費)
- マーケティング調査費
- 広報費
- 会場借料費(説明会などを開いた時の会場費)
- 外注費
- 委託費
廃業関連の経費
経営革新にともなって既存事業の廃業を行う場合は、以下の経費も補助対象となります。こちらも詳細な判断基準は公募要領を参考にしてください。在庫廃棄費は、在庫を売却して対価を得た場合は対象外となるのが注意点です。
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象となる経費(廃業関連)】
- 廃業支援費(解散登記の司法書士費用など)
- 在庫廃棄費
- 解体費
- 原状回復費(賃貸物件などの原状回復費)
- リースの解約費
- 移転・移設費用(設備の移転・移設の費用)
補助対象となるための発注・支払期日
経費が事業承継・引継ぎ補助金の対象となるためには、「補助事業期間」という定められた期間内に発注・支払を済ませる必要があります。
今回の令和3年度補正予算 事業承継・引継ぎ補助金では、補助事業期間は2022年7月中旬ごろ(予定)から2023年1月31日となり、この期間内に発注・納品・検収・請求・支払を行わなければなりません。ただし、見積もりは補助事業期間の前に完了していても補助対象と認められます。
経営革新事業の補助対象となる者
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象者となるための、主な条件は以下のとおりです。
これ以外にも、法令順守や反社会的勢力と関わらないなどの基本事項、事務局による調査やアンケートへの協力合意といった細かな条件が規定されているので、詳細は公式サイトや公募要領をチェックしてください。
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象者となるための主な条件】
- 中小企業者等である
- 赤字・コロナによる売上減など
- 対象期間内に事業承継を行う
①中小企業者等である
事業承継・引継ぎ補助金の補助対象となるのは、規模の小さい中小企業や個人事業主です。具体的には、中小企業基本法が定める「中小企業者等」に該当するかどうかが基準になります。
この基準は専門家活用事業と廃業・再チャレンジ事業も共通です。中小企業者の具体的な基準は業種によって異なりますが、大まかには資本金1億円以下、従業員100人以下程度となります。
除外される条件
中小企業者・小規模企業者に当てはまる者でも、規模の大きな会社(資本金5億円以上)の完全子会社である場合や、補助金がなくても十分な利益が出ている(課税所得15億円以上)場合は補助対象外となります。また、以下の法人形態は対象外です。
【対象外となる法人形態】
- 社会福祉法人
- 医療法人
- 一般社団・財団法人
- 公益社団・財団法人
- 学校法人
- 農業組合法人
- 組合
②赤字・コロナによる売上減など
コロナの影響で売上が落ちている会社・個人事業主や、コロナと関係なくても直近で赤字の者は、事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象となります。また、中小企業活性化協議会などによる国の支援を受けて、再生計画を立てている者も補助対象です。
なお、中小企業基本法の「小規模企業者」に該当する会社・個人事業主は、この条件を満たす必要はありません。小規模企業者の基準は、従業員数20人以下(商業・サービス業は5人以下)です。
③対象期間内に事業承継を行う
今回の事業承継・引継ぎ補助金では、2017年4月1日から2023年1月31日の間に行われた事業承継のみが補助対象になります。
除外される条件
たとえ対象期間内に行われた事業承継であっても、実態が単なる物品や不動産の売買にすぎない場合や、事業承継ではなくグループ内再編に該当すると判断された場合は補助対象外になります。
経営革新事業の補助対象となる事業
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象となる事業は、デジタル化・グリーン化・事業再構築のいずれかに資する事業となっています。
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象となる事業】
- デジタル化に資する事業
- グリーン化に資する事業
- 事業再構築に資する事業
①デジタル化に資する事業
「デジタル化に資する事業」とは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用した製品・サービスの開発、もしくは生産プロセス・サービス提供などのことです。
例えば、デジタル技術を使った遠隔操作・自動制御・部品やソフトウェア開発、もしくは業務プロセスの改善、発注業務のIT化などが該当します。
革新的な要素が全くない事業や、単なる電子化にすぎない事業は対象外となるのが注意点です。例えば、紙媒体を単に電子化するだけの電子書籍や電子契約書サービス、単なるデジタル機器の購入や書類の電子化などは対象外となります。
その他の要件
デジタル化に資する事業に該当するためには、その他の要件として以下の2つが求められます。「DX推進指標」とは、自社がどれくらいDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいるかを自己診断するツールです。
そして「SECURITY ACTION」とは、自社が情報セキュリティ対策に取り組む企業であることを自己宣言する制度をいいます。この2つは必須要件なので、提出・宣言を行わないと不採択になってしまうので注意しましょう。
【デジタル化に資する事業に該当するためのその他の要件】
- 「DX推進指標」による自己診断の提出
- 「SECURITY ACTION」による自己宣言
②グリーン化に資する事業
「グリーン化に資する事業」とは、温室効果ガス削減効果のある製品・サービス開発、または温室効果ガスの排出が少ない生産プロセス・サービス提供のことです。
例えば、省エネ効果の高い製品・サービス、石油由来でない素材を使った製品・サービス、水素・アンモニアなど化石燃料を使わない製造工程などが該当します。
その他の要件
グリーン化に資する事業に該当するためには、その他の要件として以下の2つが求められます。
炭素生産性とは営業利益などをCO2排出量で割った数値で、電気や石油の使用量などから簡易的に求める計算式があり、この数値の1%以上上昇が見込めるような事業計画の作成が必要です。
これまで実施してきた取組の提示に関しては、公募要領によると「有る場合はその具体的な取組内容を示すこと」となっているので、取組がないからといって必ずしも不採択になるわけではないという意味だと解されます。
【グリーン化に資する事業に該当するためのその他の要件】
- 炭素生産性を年平均1%以上増加させる
- これまで実施してきた温室効果ガス排出削減の取組を示す
③事業再構築に資する事業
「事業再構築に資する事業」とは、自社が今まで手がけていなかった新製品・サービス提供またはそれによる新市場への進出、もしくは製造・提供方法をかなりの程度変更することです。
何をもって新製品や新市場とみなすか、「かなりの程度の変更」とは具体的にどれくらいなのかについては、公募要領にある「非該当例」の一覧をみると分かりやすいでしょう。
非該当例によると、例えば単に製造量を増やしただけ、既存の商品を単に組み合わせたり簡単な改変を加えただけの事業などは、事業再構築に該当しないとされています。
他の補助金に採用されている場合
対象となる経費が他の補助金にすでに採用されている場合は、事業承継・引継ぎ補助金に重複申請することは原則できません。
ただし、公募要領によると、「自己負担分に対しては、地方自治体の補助金等を利用することはできる」となっているので、事業承継・引継ぎ補助金で補助されなかった部分に対しては、他の補助金が利用できるという意味だと解されます。
経営革新事業の申請期間
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の第1回目の申請期間は、2022年5月31日から2022年6月20日17:00までです。
第2回以降の申請期間については2022年6月現在まだ公表されていないので、公式サイトなどで随時情報を確認してください。
申請の手順・流れ
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の申請の手順・流れは以下のようになります。
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の申請の手順・流れ】
- 電子申請のためのアカウントを取得
- 確認書の取得
- 必要書類の準備
- 書類の提出・申請
①電子申請のためのアカウントを取得
事業承継・引継ぎ補助金の申請は電子申請のみとなるため、まずは電子申請のためのアカウントを取得する必要があります。
申請は「jGrants」という、補助金専用の電子申請システムで行います。jGrantsを利用するには、「gBizIDプライム」という行政サービスのアカウントを取得しなければなりません。
gBizIDプライムアカウントの取得には最長で3週間くらいかかるので、スケジュールに注意しましょう。
②確認書の取得
本格的な申請手続きの前に、「確認書」という書面をダウンロードして記入し、それを「認定経営革新等支援機関」へ提出し、確認を受けて発行してもらう必要があります。
確認書とは、事業計画が確かに作成されており、事業承継・引継ぎ補助金に採択される見込みがあることを専門家に保証してもらう書面です。
認定経営革新等支援機関とは、全国の商工会議所や士業事務所などの中から認定を受けた機関のことで、中小企業庁の検索システムから近くの機関を検索できます。
③必要書類の準備
次に、申請のための必要書類を準備します。共通して必要となる主な書類は確認書・決算書・履歴事項全部証明書などですが、創業支援型・経営者交代型・M&A型の違いや、申請者が法人か個人事業主かなどで具体的な必要書類が違ってくるので、公募要領で確認してください。
④書類の提出・申請
必要書類が揃ったらそれらを全てPDF形式にして、jGrantsの申請フォームから提出・申請します。
3. 2.事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)
「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)」とは、M&Aによる経営資源の引継ぎをきっかけに経営革新を行いたい中小企業・個人事業主に対して、M&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザー(FA)の費用などを補助する制度です。
売り手支援型、買い手支援型の2種類がある
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)には、「売り手支援型」と「買い手支援型」の2種類があります。
【事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の種類】
- 売り手支援型
- 買い手支援型
①売り手支援型
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の売り手支援型とは、M&Aで会社や事業を売却する者に対して、M&A仲介会社やFAの費用などを補助する類型です。売り手支援型は、売却される会社自身だけでなく、その会社の株主も申請できます。
ただし、株主に関しては、過半数の議決権を持つ株主である「支配株主」か、「株主代表」だけが申請の対象となります。株主代表とは、複数人の株主で共同して申請したい時に、その代表を務める一人の株主のことです。
一人一人の株主は過半数の議決権を持っていないが、複数人合わせると過半数を超える時に、株主代表が申請することができます。
②買い手支援型
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の買い手支援型とは、M&Aで会社を買収する中小企業・個人事業主に対して、M&A仲介会社やFAの費用などを補助する類型です。
経営資源の引継ぎと認められる条件
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)において、M&Aで買収・売却した会社・事業が経営資源の引継ぎと認められるためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
【事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)で経営資源の引継ぎと認められる条件】
- 実質的な事業再編・事業統合が行われる
- 補助事業期間内にM&Aが行われる
①実質的な事業再編・事業統合が行われる
たとえM&Aを行っても、買収・売却した事業が以下の3つのケースに当てはまる場合は、実質的な事業再編・事業統合とみなされず、経営資源の引継ぎにはあたらないと判断されます。
【実質的な事業再編・事業統合でないとみなされるケース】
- 単なる物品・不動産の売買
- グループ内再編
- 親族内承継
②補助事業期間内にM&Aが行われる
補助事業期間(2022年7月(予定)から2023年1月31日まで)内に行われるM&Aのみ、経営資源の引継ぎと認められます。
具体的には、補助事業期間内に仲介会社などと業務委託契約を締結する、または基本合意書や最終契約書を締結することが条件です。
経営資源引継ぎの形態
「経営資源引継ぎの形態」とは、株式譲渡や事業譲渡などのM&Aスキームと、主体が個人か法人か、廃業も同時に行うかといった条件によって、経営資源引継ぎを分類したものです。形態の違いにより申請の類型や必要書類が違ってきます。
(1)買い手支援型の場合
買い手支援型の経営資源引継ぎの形態は以下のとおりです。なお個人事業主は、可能な形態である株式譲渡・第三者割当増資・事業譲渡の3つのみとなります。
株式交付、出資持分譲渡、および新設分割後の株式譲渡は、株式譲渡として申請します。
【買い手支援型の経営資源引継ぎの形態】
- 株式譲渡(株式交付、出資持分譲渡、新設分割後の株式譲渡を含む)
- 第三者割当増資
- 株式交換
- 吸収合併
- 吸収分割
- 事業譲渡
(2)売り手支援型の場合
売り手支援型の経営資源引継ぎの形態は以下のとおりです。こちらも買い手支援型と同様、個人事業主の場合は可能なスキームのみが対象となります。売り手支援型では、買い手支援型と同様の6形態に加えて、株式移転と新設合併が含まれます。
また、株式譲渡を利用する場合、売却される会社自身とその支配株主・株主代表による共同申請が可能です。
【売り手支援型の経営資源引継ぎの形態】
- 株式譲渡(株式交付、出資持分譲渡、新設分割後の株式譲渡を含む)
- 第三者割当増資
- 株式交換
- 吸収合併
- 吸収分割
- 事業譲渡
- 株式移転
- 新設合併
専門家活用事業の補助率および上限額
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の補助額は経営革新事業と同じですが、補助率が少し違います。
補助額は買い手支援型・売り手支援型ともに、下限100万円・上限600万円、プラス廃業費が最大150万円です。
一方補助率は、経営革新事業では400万円超の部分は2分の1でしたが、専門家活用事業では補助額に関わらず一律で3分の2となります。
専門家活用事業の補助対象となる経費
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の補助対象となる経費は、買い手支援型・売り手支援型共通で以下のようになります。
委託費は、「M&A支援機関登録制度」に登録されたFA・仲介会社等だけが対象となるのが注意点です。登録機関の検索は、M&A支援機関登録制度のサイトのデータベースで行えます。
システム利用料と保険料は、それぞれマッチングサイト利用料と表明保証関連の保険料のことで、M&Aと関係ないものは対象外なので注意しましょう。
【事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の補助対象経費】
- 謝金
- 旅費
- 外注費
- 委託費(仲介会社の成功報酬など)
- システム利用料(マッチングサイトの利用料)
- 保険料(表明保証に関するもの)
- 廃業支援費(解散登記の司法書士費用など)
- 在庫廃棄費
- 解体費
- 原状回復費
- リース解約費
- 移転・移設費用
専門家活用事業の補助対象となる者
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の補助対象となる者は、M&Aの当事者である買い手・売り手の法人・個人事業主と、売り手企業の支配株主・株主代表です。
また、法人・個人事業主は、事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の場合と同様に、中小企業基本法が定める「中小企業者等」である必要があります。
他にも、資本金5億円以上の法人の完全子会社、および課税所得15億円以上の会社は除外されるのも、経営革新事業の場合と同じです。
一方、赤字やコロナによる売上減の条件は専門家活用事業では課されませんが、公募要領(令和3年度補正予算 事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用事業 公募要領)にこれらは「加点事由」となると記載されているので、満たしたほうが有利になります。
専門家活用事業の補助対象となる事業
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)では、地域経済をけん引し、シナジーを生かした経営革新を行うことが、補助対象事業の基本的な条件となります。
経営革新事業の場合と違い、デジタル化やグリーン化などの条件はありません。ほかの補助金にすでに採用されている時の判断基準については、経営革新事業の場合と同じです。
買い手支援型の補助対象事業
買い手支援型の補助対象となるのは、M&Aによるシナジーを生かした経営革新を行う、および地域雇用・地域経済をけん引するという、2点を満たす事業です。
何をもって「シナジー」や「けん引」とみなすかについて、公募要領に詳細な記載はありませんが、例えば「経営力向上計画」や「地域未来牽引企業」の承認は加点事由になるとされています。
売り手支援型の補助対象事業
売り手支援型では、売却する会社・事業がこれまで地域雇用・地域経済をけん引してきており、売却後も買い手企業によりこれが継続されることが条件となります。
専門家活用事業の申請期間
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の申請期間は、第1回申請が2022年4月22日から2022年5月31日までで、すでに終了しています。
2回目以降の申請期間は2022年6月現在まだ非公表なので、利用を考えている場合は公式サイトを随時チェックしておきましょう。
申請の手順・流れ
申請の手順・流れは、事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)と基本的に同じですが、確認書の取得が必要ないことが相違点です。
gBizIDプライムアカウントを取得して必要書類をそろえ、jGrantsから書類を提出・申請する流れになります。
4. 3.事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)
事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)は、既存の事業を廃業して、新しい事業を興して再チャレンジしたい中小企業経営者・個人事業主のために、廃業資金の一部を補助する制度です。
併用申請と単独申請がある
事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)は、他の2つ(経営革新事業と専門家活用事業)と違い、「売り手支援型」「買い手支援型」のような類型による分類はありません。
しかし、代わりに申請方法が「併用申請」「単独申請」の2種類あるので、この違いを理解しておく必要があります。
①併用申請
事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)の併用申請とは、経営革新事業や専門家活用事業と、廃業・再チャレンジ事業を一緒に申請することです。
併用申請の場合は、経営革新事業か専門家活用事業で廃業費用の上乗せを申請すればよく、廃業・再チャレンジ事業を別途申請する必要はありません。
②単独申請
経営革新事業と専門家活用事業は申請せず、廃業・再チャレンジ事業だけを申請することもできます。
廃業・再チャレンジ事業の補助率および上限額
事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)の補助額は50万円から150万円、補助率は対象経費の3分の2となっています。
下限が50万円で補助率が3分の2なので、経費が75万円未満だと補助額が50万円未満になるので、申請できないのが注意点です。
廃業・再チャレンジ事業の補助対象となる経費
事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)の補助対象経費は以下のとおりです。
廃業支援費は単体の上限額が50万円に設定されていること、移転・移設費用は併用申請のみ対象となるのが注意点です。
【事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)の補助対象経費】
- 廃業支援費(50万円まで)
- 在庫廃棄費
- 解体費
- 原状回復費
- リースの解約費
- 移転・移設費用(併用申請のみ)
廃業・再チャレンジ事業の補助対象となる者
事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)の補助対象となる者は、併用申請と単独申請で違ってきます。
併用申請の場合
併用申請の場合は、経営革新事業または専門家活用事業のうち、申請する類型における条件を満たす者となります。
単独申請の場合
単独申請の場合は、M&Aを試みたもののよい買い手がみつからず、やむなく廃業することになった者が対象となります。つまり、M&Aを試みず単に廃業する場合は対象となりません。具体的には、M&Aに着手したものの、6か月以上成約できなかった者が申請の対象です。
また、会社が単独申請する場合は、その支配株主または株主代表と共同申請しなければならないのが注意点です。個人事業主は事業主一人での申請となります。
廃業・再チャレンジ事業の補助対象となる事業
事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)は廃業費用の補助金なので、対象「事業」というのは製品やサービスを売る営業のことではなく、廃業登記や在庫処分といった廃業手続きのことを意味します。
公募要領(令和3年度補正予算 事業承継・引継ぎ補助金 廃業・再チャレンジ事業 公募要領)によると、併用申請の場合は「会社全体の廃業」と「事業の一部の廃業」が対象となるのに対して、単独申請では会社全体の廃業のみが対象となるとされています。
つまり、複数の事業を営んでいる会社がその一部だけを廃業する場合、単独申請はできないという意味だと解されます。
廃業・再チャレンジ事業の申請期間
事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)の申請期間は、第1回が2022年4月28日から2022年5月31日までで、すでに終了しています。
第2回以降についてはまだ公開されていないので、随時公式サイトなどをチェックしてください。
申請の手順・流れ
申請の手順・流れは、併用申請の場合は経営革新事業または専門家活用事業の申請の手順に従います。
単独申請の手順は専門家活用事業と同じです。確認書の取得は不要で、アカウント取得・必要書類の準備・jGrantsでの申請という流れになります。
5. 経営革新事業と専門家活用事業は重複申請も可能
経営革新事業または専門家活用事業と、廃業・再チャレンジ事業の併用申請ができることはすでに解説していますが、今回の事業承継・引継ぎ補助金では、経営革新事業と専門家活用事業の重複申請も可能です。
つまり、経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業の3つ全て申請することも可能であり、それ以外のどの組み合わせでも申請できるということになります。
6. 事業承継・引継ぎ補助金を活用した事業承継・M&Aの相談先
事業承継・引継ぎ補助金を活用した事業承継・M&Aをご検討中の方はぜひM&A総合研究所へご相談ください。
当社は「M&A支援機関登録制度」登録機関ですので、事業承継・引継ぎ補助金を活用したM&Aにもご利用いただけます。多数の成約実績を持つアドバイザーが、親身になってクロージングまでフルサポートさせていただきます。
事業承継・引継ぎ補助金は、赤字やコロナによる売上減の企業様が利用することが多いと考えられますが、赤字企業のM&A事例は多数ありますので、まずはお気軽にご相談いただくことをおすすめします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
事業承継・引継ぎ補助金を活用した事業承継・M&Aに関して、無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
事業承継・引継ぎ補助金は、採択率が過去実績で7割から8割程度と非常に高く、中小企業による積極的な活用が望まれます。
制度の内容をよく理解して、事業承継・引継ぎ補助金を経営にうまく活用しましょう。
【事業承継・引継ぎ補助金の種類】
- 経営革新事業(創業支援型・経営者交代型・M&A型)
- 専門家活用事業(売り手支援型・買い手支援型)
- 廃業・再チャレンジ事業
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象となる経費】
- 人件費
- 店舗等借入費(店舗の家賃など)
- 設備費(店舗の工事費、機器の調達費用など)
- 原材料費(試供品・サンプル制作の費用)
- 産業財産権等関連経費(特許取得の弁理士費用など)
- 謝金(弁護士などの専門家に支払う経費)
- 旅費(出張の交通費や宿泊費)
- マーケティング調査費
- 広報費
- 会場借料費(説明会などを開いた時の会場費)
- 外注費
- 委託費
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象となる経費(廃業関連)】
- 廃業支援費(解散登記の司法書士費用など)
- 在庫廃棄費
- 解体費
- 原状回復費(賃貸物件などの原状回復費)
- リースの解約費
- 移転・移設費用(設備の移転・移設の費用)
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象者となるための主な条件】
- 中小企業者等である
- 赤字・コロナによる売上減など
- 対象期間内に事業承継を行う
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の補助対象となる事業】
- デジタル化に資する事業
- グリーン化に資する事業
- 事業再構築に資する事業
【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)の申請の手順・流れ】
- 電子申請のためのアカウントを取得
- 確認書の取得
- 必要書類の準備
- 書類の提出・申請
【買い手支援型の経営資源引継ぎの形態】
- 株式譲渡(株式交付、出資持分譲渡、新設分割後の株式譲渡を含む)
- 第三者割当増資
- 株式交換
- 吸収合併
- 吸収分割
- 事業譲渡
【売り手支援型の経営資源引継ぎの形態】
- 株式譲渡(株式交付、出資持分譲渡、新設分割後の株式譲渡を含む)
- 第三者割当増資
- 株式交換
- 吸収合併
- 吸収分割
- 事業譲渡
- 株式移転
- 新設合併
【事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)の補助対象経費】
- 謝金
- 旅費
- 外注費
- 委託費(仲介会社の成功報酬など)
- システム利用料(マッチングサイトの利用料)
- 保険料(表明保証に関するもの)
- 廃業支援費
- 在庫廃棄費
- 解体費
- 原状回復費
- リース解約費
- 移転・移設費用
【事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)の補助対象経費】
- 廃業支援費(50万円まで)
- 在庫廃棄費
- 解体費
- 原状回復費
- リースの解約費
- 移転・移設費用(併用申請のみ)
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